【10】竜玉の弟子
「桂子、やっぱりあっくんは私が貰うがや」(桂子=お母さん)
強烈な頭突きが飛ぶ。
「痛いわさ、母親に向かって頭突きとは何事じゃ」
「頭突きで済んでありがたく思いなさい。他人なら間違いなく刺してるわよ」
「おっかないねー。あっくんを養子にくれって言っている訳ではないさね」
「どういう事?」
「あっくんを私の弟子にしようと思っているだわさ」
「!? 本気なの?」
「あの子は天才だわね。ねぇ、あっくんは本当に只の記憶喪失なのかい?」
「どういう事?」
「15歳とは思えんのよ、もう立派な大人になりよる」
「でへへ~、あっくんだからね」
「あんたが親であっくんも大変さね」
「あっくんはなんて言ってるの?」
「かなり、乗り気だわさ、正座して『宜しくお願いします』って言いよる。可愛かったの~」
「ちゃんと写真撮った?動画は?」
「ちゃんと焼き付けたさ、私の胸の中だけに……こっ、これ首を絞めるんでない」
こうして桐島歩は竜玉のおばあちゃんの弟子になった。
「お母さんあっくんを危険な目に合わせないでよ」
「そんなの承知の助さね。香の命に変えてもあっくんは守るさね」
「わかってるなら、よし!」
頑張れ香ちゃん……
「あっくんだけど学校どうしよう?」
「別に通わんでいいわさ」
「それはあっくん本人に聞いてみるわ」
「それが良いね。現状の将棋界では対局相手は全て女だから、学校に行って女の恐怖心に勝つ特訓にもなるさね」
「私が心配で負けそう……」
「あっくんを呼んでおいで」
お母さんが歩を呼びに行き、これまでの経緯を話す。
「おばあちゃん、俺学校行くよ。只高校からにしようと思う。中学はもう良いや」
「ほう好きにしなさい。私は将棋をしっかり勉強さすれば良いよ」
「ありがとう」
「後の手続きは学校はお母さん、将棋はおばあちゃんに任せなさい」
「ありがとう」
「あっくん頑張ってね」
素晴らしい家族に恵まれていた様だ。
次回、次回からはヒロイン出てきます……
こんなに女の子が出てこないあべこべ小説って……




