いち
僕は何かを探していた。暗い、冷えた部屋の中で。別に、特別な物など無い、一般的な家の一室で。物が多いというわけでもないので、すぐに見つかりそうに思えるのになかなか見つからない。
「どこだ・・・・・・?」
探しても、探しても、見つからない。
さがす?
「なにを・・・・・・?」
わからない。しかし、見つければすぐにそれと分かるモノである気がする。
そう考えている間にも、僕の身体は探すのを止めない。まるで、僕の頭とは関係がないかのように、探し物を続けている。
そのうちに、時間が迫ってきているような、テストで終了五分前の知らせを聞いた時点で、テストが半分も埋まっていない時のような焦りを感じ始めた。間に合わないのは解りきっているのに、諦めることもできない。悪足掻きを続けてしまう。
あぁ、もう数秒しかない。
意思とは反して、涙が出てきた。顔が暑い。汗もかいているようだ。
そして、暗かった部屋が徐々に光に照らされていく。
いやに明るい光の中で僕は思った。
今日も見つけられなかった、と。
そういえば、この部屋は、間取りがどことなく僕の部屋と似ていると、光に照らされたことではじめて気づいた。