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いきなりクロスボウで撃ち抜こうとするなんて卑怯ですよっ!〜あの、避けないでください!〜

暖かな木漏れ日と風に揺れる木々の音が辺りに響く

風はとても優しげで心地良く肌に触れていく

とても平和な【迷宮(ダンジョン)・フォレストの神殿】の門の近くに2つの影があった

どちらとも木にもたれながら何やら会話を繰り広げていた


「あいつ、大丈夫か?」


「大丈夫だと思うよ。しかしアナタがそんな事を気にするなんて珍しい」


「一応、無理やり魔王の仕立て上げる存在だからな。多少の心配はする」


セアバルトとホンジュアは先程のリィウについて話していた

セアバルトという男は、赤の他人にはまったく興味を持たず冷たい態度で接したりすることが多い

そのため会ったばかりの存在にあんな態度をとるのは珍しいのだ

逆に言えば、それほどリィウに強く興味をもっているからかもしれない

そう考えると少しホンジュアは笑ってしまった


「何かおかしいか?」


「いや、何もおかしくないよ。ただ面白いのが見れただけ」


リィウは、"角が生えた人魚"であり体内に何故か最初からコアを持っているのだ

こんな存在に興味を持たざるを得ない

彼女もリィウの存在に強い興味と好奇心を抱いている

いやもしかしたら全員リィウに好奇心をもっているかもしれないだろう

彼がどのような魔王になり沢山の正義を殺していくのか

そう考えると結構楽しくなってしまうのだ

だからこそ、そんな存在をすぐに壊れないように扱う必要性がある

例え身体が不死身で何度でも蘇っても心は壊れてしまえば蘇らすことは難しい


「しかし、本当に無事であればいいんだが」


「フフッ、本当にアナタは心配性だね」


彼は大切なものほど本人がいないところで心配したり色々と考えたりする男だ

人前で冷たい態度さえとらなければ、きっと周りから人気者になっていたかもしれないだろう

そう考えながらホンジュアはギアーナの支持を待つのだった


・・・


一方、セアバルトが心配する原因になってしまったリィウは湖の畔にいた

あれからモンスターに出会うことなくただ警戒しながら進むだけとなってしまったが、森を抜けると鏡のような湖が広がっており思わず近づいてまじまじとその光景を見ていたのだ

少しだけ心に余裕の出来たリィウは人間の姿に変えて水に触れる


「思ったより冷たいなー」


前々から人間の姿になるたびに何に触れると今まで感じることのなかった感覚を味わっていた

どうやら人間という身体は思ったより敏感に色々な感触や温度を感知することが出来るらしい

その代わりに嗅覚や聴力などの一部の機能が鈍いということも知った

だからといってリィウは人間の姿は嫌ってはいない

当たり前の事かもしれないが人間の姿になれば蛇のようだった下半身は足が生えて立つことが可能になり、視界が高くなるお陰でいち早く敵の存在に気がついたり、感覚が感じやすくなるため味覚も楽しめるようになったりと色々と役立つ部分がある

例え人間の姿で補え部分があればその部分だけ元の姿に戻せばいいだけの話だ


「そういえば、リロラさんから火炎放射器貰ったけど試しに使ってみようかな?」


リロラから渡された火炎放射器は使い方は教えてもらったもののどれぐらいの威力を持っているのか知らない

ちょうど目の前に湖があり、たとえ燃えてもすぐに対処出来る場所だ

言われた通りに色々と操作して火炎放射器の銃口を湖に向け引き金を引く


「うわぁ…」


どうやら火炎放射器の威力は想像以上だったようだ

射程距離が恐ろしく長く、放出している間、熱が人間の肌に触れ感じたことのない熱さを感じた

今まで火の近くにいた時もあったが大体は本来の姿でいたためにそこまで強い熱さを感じたことがなかったのだ

火に触れてもないのに肌が燃えてしまいそうな熱に驚いながらすぐに放出を止める


「こんなに威力あるんだ、でもこれは最終手段かな?」


今回は湖に向けて放出した為に燃えることなんてないが、木々の多い場所で放出すればすぐさま燃え広がり火の海となるだろう

この人間の体で火に近づいただけで燃えそうな感覚になるのに対して、体に燃え移ってしまったらどれほどの苦痛を味わう羽目になると思うとゾッとしてしまった

気を取り直してセアバルトからもらったチャッカマンを使う

火炎放射器を小さくしたようなもので気軽に使えることができそうだ


「青色の火か、綺麗だな〜」


リィウにとっては青色の火は見たことないらしい

ゆらゆらと揺れるの青い火に魅入られたのか?

それとも何かを思ったのか?

何故かリィウは青色の火に指を突っ込んだ


「アッツ!!」


すぐさま火傷した指を湖の水に突っ込ませる

同時にチャッカマンの火を止め、しまいながら悶絶の声を上げて転げる

そして体を小さく縮こませ、声にならない声を上げて、暫くして何事もなかったように起き上がった

しかし指は肉ごと焦がされ、皮に守られている血肉が空気に触れヒリヒリとした痛みも襲った

だが指は時間を巻戻したかのように"修復"され元の綺麗な指に戻る


「使うの気をつけよう…」


ボソリと呟きながら立ち上がり、服についた土を払い落としながら湖の側を歩き始めた

どうやら指が元に近い状態で"修復"されたことに気がついてないらしい

少しだけ火に突っ込んだ指が痛いが我慢しながら取り出した斧を握りしめて辺りを見渡す

今回の倒す相手は、妖精の女王だ

少なくとも妖精の女王の持つ杖を5本手に入れなければならないので5匹も倒さなければならない

同時に妖精の女王は少しレアなモンスターの為に探すのが少し大変なのだ

事前にもらった情報では大体沢山の妖精の近くにいるらしいが、まず妖精がどこにいるかさっぱりわからない

確か水辺の近くか花が沢山生えているところに妖精がいるという事を先生の教えてから思いだしながら歩いて行く


「はわわ」


「ん?」


リィウの耳に甘ったるい声が聞こえた

声の方向を見れば可愛らしい少女をそのまま小さくしたような姿と半透明な蝶の羽の形を持つ生き物がいる

間違いないあれは妖精だとリィウは確信した

妖精は基本的に魔法攻撃してくるのだが、大きい存在に恐れているのかこの妖精は攻撃してくる気配がない


「ということはこの奥に行けば会えるのかな?」


先程の妖精の事を完全に無視して人間の姿のまま奥に進んでいく

一方、妖精はリィウの存在に興味でも持ったのか、そのまま彼を追うようについていった

そして他にも隠れていた妖精が次々と姿を現し、リィウの周りを取り巻くかのようについていく

実はここの妖精達は珍しいことに中性的な立場である

好奇心旺盛であるために多少のイタズラをしたりするが、乱暴に扱ったり妖精の女王に傷つけなければ敵対することはない安全なモンスターだ


「はわ?はわわ」


「はわわ!」


「はわわ」


ここの世界にはある教訓が存在する

妖精を1匹見かければ、少なくとも近くには30匹以上はいると思ったほうがいいということ

まさにそのとおりと言うべきか、リィウの周りには甘ったるい声で鳴きながら飛び回る妖精が大量にいた

尽きることのない羽音と甘い声に少し苛立ちつつも我慢して妖精の女王を探す

その時、一匹の妖精がリィウの手に止まった

指に抱きしめるような優しい止まり方であり、第三者から見れば少し癒やされる光景なのかもしれない

しかし苛立ちを抱えているリィウにはそんな行動をしてはいけなかった

リィウは反射的に片方の手で妖精を叩き潰したのだ

パンッと乾いた音と少し湿ったような不快な音が鳴る

同時に周りに飛んでいた妖精達は潰されたくないのか、彼から離れる


「うわぁ…妖精の血の色って…」


鮮やかな緑色の液体が手にべったりとついており思わず引いた

何で拭こうかと考えている最中、妖精達はブツブツと呟きながらがリィウに手をかざしていた

魔法陣に光が集まり出し、仲間を殺した彼を撃ち抜こうとする

妖精は中立的な存在だが敵対すれば威力の高い魔法を集団で攻撃してくる厄介な存在と化とする

強い光線が放たれて来ていることに気がつき、すぐさま回避したものの、先程まで彼がいた場所は黒く焦げており煙を上げていた


「あちゃ〜、完全に敵対しちゃった」


困ったと言いたげにしながらも、すぐに片手斧を出現させ戦闘態勢に入る

妖精達は数十匹が敵討ちしようの光線を放とうとしており、残りはどこかに行ってしまう

それはリィウにとって非常に都合が良かった

上や右、下や左などありとあらゆる方向から放たれる光線を避けながらもそのうちの一匹を狙って斧を振り下ろす

だが敵は小さくうろちょろと飛び回るために綺麗に避ける者もいればよけきれずに中途半端な傷を負う者もいる

一匹の妖精がふらりと落ちそうになった

片腕には斧によって痛々しい傷がおり、緑色の液体が流れてでている

それでも態勢を立て直して戦いに参加しようとするが、リィウはそんなチャンスを見逃すことなんてなかった


「よし、一匹目!」


妖精は無残にも真っ二つに切断されてしまった

リィウは少しコツでも掴んだのか二匹、三匹と次々と叩き切り、地に落ちても飛ぼうとする妖精はすぐに踏みつぶす

早くこの妖精を片付けて、逃げていった妖精達を追い駆けたいのだ

先程は敵が減って好都合と思えたが、何かしらの時間稼ぎをされている気がしてたまらない


「あれが、仲間を殺した悪い奴なのですね?」


あの妖精と同じように、甘い声がハッキリと聞こえた

声が聞こえた方向をみればそれはいた

沢山の妖精を引き連れ、愛らしくもひれ伏してしまうようなオーラをまとう一人の少女

しかし肌の色が異常なほど白く、背中か、半透明な羽が生えており、服などはいろんな種類の植物の葉や花を組み合わせたようなドレスを着て、杖と鈍器を組みわあせたような指揮棒を片手に持っている

リィウは確信した、この少女は妖精の女王なのだと

ならば、ギアーナから与えられたミッションをこなすだけだ


「はわわ!?いきなりクロスボウで撃ち抜こうとするなんて卑怯ですよっ!」


「あの、避けないでください!そこまで上手くはないので」


あー、はずしちゃったと呟きながらがクロスボウをしまい、再び斧を構える

一方妖精達は完全に敵対する存在と認識されていた

人間にも優しく問題ごとなどを交渉などで解決してくれる女王にまで手を出したのだ

女王も彼の存在を危険な人物としてみなしたのか武器を構える

恐ろしく冷たい視線を浴びる羽目になっているリィウは気にせず、妖精達に向かって駆け出しながら斧を振り下ろしにいった


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