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人間になりたくないかい?〜いきなりどうしましたか!?〜

赤い絨毯にアンティークな仕事机

一人の男がいろんな紙に文字を書いたり判子を押したりして、次から次へと右から左へ紙の山を変えてゆく

この男の名前はオクルス

主に彼は奴隷を始めとした魔法薬や武器などを売る商人である

また、彼の奴隷の売り方は少々独特でもあり最高品質な奴隷を売る者として人気を集めていた

例えば、奴隷として売られる事を待つ者には食事や衣服などを与え、衛生面も考え清潔に保つようにしたりする

だが商品として最高なものを売るだけの行動であり愛情はない

また追加料金が発生するが特別な依頼さえあれば依頼に応じた調教や生け捕りなどもしてくれるのだ


「オクルスさん、薬茶が入りました」


「ありがとう、ロンア」


しかし、今回の特別依頼は料金なんて発生しなかった

むしろ交換(トレード)という形で一人の少女―ロンア―が手に入ったのだ

本来ならば、角が生えている雄の人魚と共に交換されるはずがお試し期間などと言われ押し付けられるように貰ったという方が正しいかもしれないが

今回、ロンアを手に入れた理由は暗殺者やスパイを油断させるためだ

人気な奴隷売りでもあり、その分沢山の金を稼ぎ、そのうえ若くて容姿などが整っているために恨みや嫉妬などの色んな目で見られるから仕方がない

たまにハニートラップとかもしてくる女性などもいるが、それよりも奴隷として売ったほうが金になると本人は考えている

とはいえ、念の為にちゃんとした護衛も雇っているのだが隠せきれてない威圧のために襲われることはなくなった

逆にいえば、表面上なくなっただけであり裏では動いている可能性が高い

そのため、戦闘する事もできるロンアにはぴったりな仕事だ


「失礼しました」


ロンアは丁寧にお辞儀をして部屋から出る

一般的に見れば召使いの少女として見られるかもしれない

だがそんな彼女の正体は竜人(ドラゴンニュート)や悪魔などを組み合わせた合成獣(キメラ)のような生き物

試しに、借金で飼い殺している高位冒険者と戦わせてみるとすぐに仕留めたのだ

見た目から想像できないほどの獣らしい戦い方なのだから、敵に回したら手強いだろう

暫くして、怪獣のような下級悪魔のような可愛らしい魔獣の姿をした魔機械人形(オートマタ)が紙を持ちながら入ってきた


「失礼しやーす。グルナでーす!報告書を持ってきました」


「ありがとう、それであの商人はどうなった?」


「シュテルトによって処分されました」


どうやら、シュテルトによって処分されてしまったらしい

個人的には生け捕りにして、じっくりと無断売買した理由と動機を聞きたかったのだが仕方がない

優雅に薬茶を飲みながら報告書をみる

魔機械人形(オートマタ)のグルナは小さなコウモリの羽をパタパタと動かしながら様子を見ている

すると、ある内容を見て思わず眉間にしわを寄せた


「"神の声"が聞こえたから実行したような事が書かれているんだがどういうことだ?」


「正直私もよくわかりません。その報告書の推察通り、幻聴でも聴こえるような薬を使っていたんじゃね?それとも精神的におかしかったんじゃねーの?」


「そうか…」


ぶれぶれな口調ながらも魔機械人形(オートマター)グルナ自身の考察を聞きながら少し考える

ちなみにこの魔機械人形(オートマター)はオクルスの所有物ではない

本人曰く、ある人物(マスター)が大量生産したものの一つであり、自由気ままに色んなところを巡っているそうだ

同時に、ここでは巡る為の小遣い稼ぎとしてバイトという形で昔から今に至るまで働いている

半分ありえないような話だが、荷物運びや素早い動きなど出来るので深く突っ込むことなく働かせているのだ


「それよりも、妙に例の存在にこだわりすぎじゃない?」


「あの人魚のことか、無断売買され誘拐された以上取り戻して購入するはずだったお客さんに渡すことぐらい普通だろう」


「わりぃ、そこもだけどロンアのことも含まれているんだべ」


「あぁ、ロンアはあくまでも護衛だが?」


意外な質問に冷静に答えたが、何かしら裏があるようだ

まさか、グルナから見ればオクルスをロリータ・コンプレックス(略してロリコン)と認識している可能性もある


確かに見た目は子供だが戦闘技能とか高い…いやまて、別に子供じゃなくてもよかったのでは?

同じ戦闘技能でもふんわりとした雰囲気を放つような人物でもよかったのでは?

そもそも何故子供を選んだ?

無意識に選んだのか?いや、選んでしまったのか!?


「安心しろ。おいらはオクルスの事をロリコンだと思ってもないし、そんな趣味なんて無い事もわかっちょるから」


まるで自身の心の声でも聞こえていたかのようにグルナは声をかけた

思わずオクルスは我に返りいつもの冷静さを取り戻そうと再び薬茶を飲む

そんな姿を少し呆れたかのようにため息をつきながらグルナは口を開く


「とりあえず、お前なりのこだわりで手に入れたのなら可愛がった方がいいぞい」


「いや、なおさら誤解が混ざる」


「大丈夫じゃろ?あやつならな。それに本性を出させたほうが便利だゾ」


「というか、その言い方からしてロンアとは知り合いなのか?」


「オラじゃくて製作者(マスター)がロンアの事を知っとる」


一体グルナの製作者(マスター)は何者なのだろうか?

オクルスは未だにその製作者(マスター)が謎すぎてしまい考え込んでしまう

グルナは自分の言いたかったことが言えて満足したのか、部屋からさっさと出ていった

暫くしてグルナは薄暗くなった庭に行くとロンアが草取りをしているのが見えた


「確か…ここに…お、あった!幸福の四つ葉のクローバー…?みたいなものだ!後で、押し花にして栞にしてオクルスにあげようっと!」


いや、正しくは幸福を呼ぶと言われる四つ葉のクローバーを探していたらしい

本当のロンアは大人しい少女というよりは少年らしい性格の持ち主

同時に言葉使いが結構アレだが問題の解決方法を共に探したり、一緒に考えてくれる

例え、他人のことであってもだ


「そうだ!ついでに他の草花を摘んで一緒に押し花にしてやろう!」


閃いたと言わんばかりにまた草花を摘み始めていく

その顔は、オクルスの時とは違い子供らしい顔だった


・・・


清々しい朝、リィウはセアバルトとギアーナによって服を着る脱ぐといった作業の練習をしていた

なぜ、服の着る特訓をするはめになったのか

これは、数分前の出来事に遡る


昨日とは違い柔らかいベットの上で起きたリィウは特に体調も悪くなく疲労も回復していた

朝ご飯を食べて暫くすると、ギアーナがこんな事を言い出した


「ねぇリィウ、人間になりたくないかい?」


「いきなりどうしましたか!?」


「人間になってみたくないかいッ!!」


「ちょっと待ってください!」


なぜリィウにそんなことを言ったのか詳しく聞くとギアーナは以下のことを話した

まず、リィウは目玉商品でもある奴隷として売られていた存在でもあり見た目を考えると目立つということ

そしてこれから人間が多い街や都市などに向かうために隠しながら移動するということだ

魔物や魔獣などの存在を見下している国もあるので仕方のないことかもしれない


「ま、まさか、どこぞやの物語の人魚みたいに声とか代償にするんですか!?」


「やっぱり人魚姫知っているんだ。でもそういうのやらないから安心して」


「よかった…」


「その代わり、色々と基本的なことを教えるから覚悟してね!」


そして冒頭に至る

特に上半身の服は問題ないのだが、問題は下半身の服

今の彼の姿は魚のような蛇のような下半身ではなく人間の足が生えていた

鱗や粘液などに包まれて分かりづらかった外気が直接肌に触れるために寒く感じてしまう

同時に肌を強くつまんでみれば恐ろしく柔らかく鋭い痛みも味わい小さく悲鳴も上げてしまった

今まで味わったことのない感覚に悩みつつも黙々とズボンを履く


「どうだ?足に違和感とか感じるか?例えば、少し動かすだけで痛いとかあるか?」


「いや、少なくとも痛みはないです」


リィウを人間の姿に変えた張本人でもあるセアバルトが質問しながらベルトを渡してくる

質問に答えながらベルトを受け取り言われた通りに着けた

セアバルトは昨日、血液などを色々と作り変えたりすることができると言ってきたが生きているものでも可能らしい

試しに立ってみると少しふらついたがしっかりと立つことができた

また靴を履いて外に出て、歩いたり飛んだり走ったりしてみたが多少の靴の圧迫感を感じるぐらいで周りと同じようにできる


もしかしたら、セアバルトの力はものを作り変える程度ではないのだろう

そう思いながら、体装備を身につけて外に出た


「着替え終わったみたいだね」


「リィウさん、服や靴のサイズはどうですか?大きいですか?それとも小さいですか?」


「全体的に大丈夫ですけど、しいて言うなら靴が少しきついかな?」


「わかりました。大きめの靴をすぐに用意しますので暫く我慢して下さい」


そう言うとリロラは光の粒になって消えたかと思うと、片手に靴を持った状態ですぐさま現れた

渡された新たな靴に履き替えて少し確認する

きつくもなくちょうどいいサイズだ


「でもさ、これは予想外だよ」


「どこがだ?ギアーナ」


「身長」


そう言うと、ギアーナはもう一度リィウの方を見た

約175cmもあるホンジュアの身長よりも少し低いが、170cm近くの身長を持つギアーナより高いぐらいだろうか

羨ましい感情と嫉妬に近い感情が入り混じった視線に気がついたのか、思わずギアーナの方を見るがいつも通りの笑顔でニコニコと笑っているだけだ


「今日も狩りに行くぞ。その体がどのように動くかなれることも兼ねてな」


「わかりました」


「あと今日の夜は、これからの動きについて話すからすぐに寝ないようにな」


「は、はい!」


今日もリィウはセアバルトの跡をついて狩りに出かけるのだった




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