「出会い」
「ぐっ...母.....さん」
その日俺はある夢を見ていた。
「なあ、母さん何処に居るんだよ...母さんはちゃんと何処かの世界に居るんだよな...?そうだよな?...」
「うん。母さんはいつも貴方の傍にちゃんと居るわ」
そう言う意味じゃないんだよ...違うんだよ!!
「...消えた⁉︎待ってくれ、行かないでくれ!母さん...」なんでいつも消えて行くんだよ.....
「何処に居るんだよ!!」
ジリリリリ
ジリリリリ
夢の中で、目覚ましの音が鳴った様な気がして俺は目覚めた。起き上がると、体中冷や汗まみれだった。どうやらうなされていた様だ。
「早く支度しないとな...」
俺は学校の支度をして家を出た。
「はぁ...」
正直俺はこの世界に疲れている...ってそれは皆同じか
「パラレルワールド...か」
昔俺は母さんからこんな事を聞いた。
「あのね柊知ってる?この次元以外にも世界がある事を、それはパラレルワールドって言って数え切れない程の幾つもの世界が広がっているの。」
「そうなの?なんか面白そうだね。」
「まだ日本では存在するのかどうかも分からないらしいんだけどね。...でも一つ絶対やってはいけない事があるの。それは...」
そこからの記憶がどう思い出そうとしても途切れて思い出せない。父さんは単身赴任の末、他の女を作って帰って来なかった。母さんはそれから不安定になって...
「柊、私パラレルワールドに行ってくるね」
「え、どうして?行かないでよ...」
「ゴメンね...でもすぐ帰って来るから...」
「うん...分かった。絶対すぐ帰って来てね?...」
「........えぇ、大丈夫よ。絶対帰るからね。」
そう言った母さんの顔は笑っていた。でも、どこか凄く悲しそうな顔をしている様にも見えた...
その次の日に、ふとニュースを見た。そのニュースの内容は、海で女性が自殺したという物だった。そこに書かれていたのは、母さんの名前だった...でもその時はまだ小さかったのもあって、あまり意味を理解する事が出来なかった。でも大きくなるにつれて、自殺の意味を知っていった。でも俺はまだ、母さんがパラレルワールドに行ってるんじゃないかと思っている。現実を受け入れられないでいた...だからこの記憶は、途切れたままだった。
「やってはいけない事ってなんだったかなぁ、嗚呼もう思い出せねえ」
そう呟いた時だった
「ちょっと何言ってんのよ、しっかりしなさいよ!」
「うわ!何だよお前かよ、ビックリさせんな」
「だってさっきからパラレルワールドだの色々変な事言ってて私に気が付かなかったから」
このおてんばで天真爛漫な奴は四月一日 馨これでわたぬきと読むのに最初は驚いていた。だから「おい、しがつついたち」とか呼んでいた時もあったな。
因みに俺は夜桜 柊という至って普通の男子高校生だ。
「お前いつから居たんだよ」
「あんたが独り言言ってる時からずっと居たよ」
え、俺そんなに気付いてなかったのか?
「何だと...全部聞かれていたなんて」
「あんた昔から独り言大きいからある程度遠くに居ても聞こえるよ。で何?私に聞かれたらマズイの?」
「いや、別にマズくはないけどさ」
さっき心の中で思ってた事が独り言として出てなければいいけど...
「じゃあ良いじゃん」
「そういう問題じゃないんだよ」
「テヘペロ!」
「うわー気持ち悪」
「は?何よそれー」
「はははっ悪かったよ」
「もー」
そうこう話している内に学校に着いた。学校の前まで来ると、俺はいつもの様にため息をついた。
「はぁぁ...」
「...今日も頑張らなきゃダメだよ?」
「あぁ、分かってるって、じゃあな。」
「うん、バイバイ。また帰りに会おうね」
「おう」
あいつと俺は違うクラスになった。小学生の頃からずっと奇跡かの様に同じクラスが続いていた。高校も同じになったが、俺たちは初めてクラスが離れた...それからはあいつがクラスでどう過ごしているのかは分からないが、一つ気になる事があった。それはあいつのクラスに転校生が来たと言う事だ、どんな奴かと見に行ってみれば...
「まあ、悪い奴では無さそうだな」
そうは思っているものの、どうも不思議な感じがする。あいつから聞くには成績もトップに入るぐらい頭が良いらしい。なんか無性に腹が立つんだよなぁ(オマケに頭に生えている物は何なんだよ、触覚か、アレ?
自分でつけてるのか?アレ)
「でも学校にあんなのつけて来たら怒られるよな?と言う事はアレは本物なのか?...」
「ちょっとまた独り言?恥ずかしいから止めてよね」
「うわ!今の聞いてたのか?」
「別に聞こえなかったよ」
「あいつ絶対おかしい」
「何でそう思うの?」
「だって...いるか?成績も良い、運動神経も良い、そんな漫画みたいな奴」
「何?嫉妬してんの?」
「べ、別に嫉妬なんかしてねえし...はぁ」
「やっぱりしてるじゃない」
「う、うるせえな、してねえって」
「ウフフ」
こいつにはこう言っていたが腹が立つというか不思議な感じがするというほうが勝っていた。
「嗚呼やっと学校が終わった」
正直学校は昔から好きでは無い。まあ、ただ単に面倒くさいからだったんだけどな。でも、今はそうじゃない。今は前よりも学校が嫌いになっていた。俺のクラスではイジメがある。そんなものを何も出来やしないのに毎日見てるだけなんて、何だか自分が惨めになって嫌だからだ。勿論イジメにあっている奴が一番辛いのは分かってる、だけどそいつの気持ちが分かったところで下手に口出しすると悪化するんじゃないかと思って結局何もしてやれないままだ...本当、自分が情けねぇ...と、馨と別れた後に俺がそう思っている時だった。
「貴方は学校が好きでは無いんですか?」
「え、何で分かr「イジメを何も出来やしないのに毎日見て、その子の辛そうな泣き声を聞いて、その子の辛そうな泣き顔を見て、毎日楽しいですか?」
「楽しい訳が無い...ってお前は隣のクラスの転校生...!」 「そうですけど、何か?」
「うぜぇ、とてつもなくうぜぇ」
「えー何でなんですかー」
この時俺はこいつに心を見透かされている様で何だか嫌だった。
「何で俺の考えている事が分かるんだ?まさか全部見てたのか?」
「いえ...実は私はこの次元の者では無いのです...」
「え...嘘だろ」
何だか不思議な感じはしていたが、こう言う事だったのか
「いいえ、本当です」
「えーー」
「じゃあどの次元の奴なんだ?」
「それは...言えません」
何で言えないんだ?はっ!
「もしかしてパラレルワールド...なのか?」
「はっ...知ってるんですね...」
「ああ、昔母さんから聞いた事があるからな」
「そうなんですか...」
そう言ったきりそいつは黙ってしまった...
でもコレは母さんを探し出せるチャンスかもしれない。この沈黙を破る様に俺の口は勝手に動き出していた
「俺もパラレルワールドに行けたりなんかはするのか?...」
「...え」
「俺みたいな至って普通の奴でも違う次元に行けるのかって聞いてるんだよ」
「それはちょっと難しい事ですね。」
「何でなんだ?」
「行けない事はないのですが、パラレルワールドの事を知っていても破ってはいけない約束事があるのです。それを破ると...大変な事になってしまいますから...」ふと、昔の事を思い出した。
「でも一つ絶対やってはいけないあるの。それは...」
くっ、思い出せそうなのに、何かがつっかえてるみたいで思い出せない、くそぉ...
「その約束事は、普通の人間にはあまり喋ってはいけませんから私の口からは少ししか言えませんが、一つだけ言えるのは、パラレルワールドの全ての次元には自分自身がいるんです」
「どういう事なんだ?」
「自分から言えるのはこれだけですのでこれ以上は何とも...すみません。まずパラレルワールドは、普通人間が観測するのは不可能に近いんですよ、だからそう言う面でも難しいかなと...」
母さんは、日本では存在するのかも分からないらしいって言ってたけど、こいつの話を聞いてる限りは確かに存在はしてる...頼めば本当に行けるかもしれないんだよな...ここは頑張って粘るか。
「そうなのか?でも君なら俺を連れて行けるんじゃないのか?」
「まあ、そうですけど...」
「じゃあ...お願いだ。行かせてくれ...」
頼む!...
「はぁ、特別ですからね...」
「よっしゃー。って何でこんなあっさりと許可をくれたんだ?」
「なんとなく貴方には、何か目的が有るんじゃないかと思いましてね。」
こいつはやっぱり俺の考えている事が分かるんだな...一体何者なんだろうか?
「あっ、一つ忠告するのを忘れていました。」
「何だ?」
「絶対に違う次元の自分とは、ばったり会わないで下さい。」
「会ったらなんかあんのか?」
「まあ、あまり説明は出来ませんが、パラレルワールドに居る自分と会ってしまうと、大変な事になると言われているんですよ。」
「そうなのか...」
まあ、あまり言えないって言ってるし、今は深く聞かないでおくか
「あ、そうそう時間がある程度経つと次元が変わるとも言われています。私にはよく分かりませんが...では、転送しますね。」
「あぁ」
こいつ、よく分からないって言ってるけどパラレルワールドに住んでるんじゃないのかよ。ところで転送ってどう言う風になるんだろうか?
「あっ、万が一の時の為にコレを渡しておきますね。」「何だコレ?」
「まあ、ブザーみたいな物ですね。このボタンを押すと、私がそっちの次元に行きます。まあ聞きたい事などがある時にいつでも呼んで下さい。あと周りの者に気付かれない様に音は私にしか聞こえない様になっておりますのでご安心下さい。では...転送!」
キシャーー
その禍々しい音と共に俺は転送されていた。転送って思っていたよりも一瞬だったんだな。
ーーー目を開けるとそこには...俺の家があった...




