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 セミの鳴き声が響き渡る。

 そんな山の中に少年と少女はいた。



『……ふーん。で、君はどれくらい世界をめぐったのかい?』


「分かんない。15回あたりから数えられなくなっちゃった。」



 ある日の夕暮れ、少年と少女は鳥居の上に腰かけながら話していた。

 噂によると、今日は花火らしい。さびれた神社の鳥居の上は、絶景の穴場スポットなのだ。


 少女の名前はめぐりちゃん。めぐりちゃんはいろんな所、いろんな時代をめぐって、いろんなことを学んだ。笑い方に、暇な時間の過ごし方、陰湿なやり返し方とか。他にも、いろいろ。


 会話するのが少し得意になっためぐりちゃんは、2週間くらい前に出会った少年と、いろいろ話して仲良くなった。でも少年は、なかなか自分の事を話してくれなかった。

 ……いつかの美容院のときととはまるで逆だ。

 なんとなく不公平で腹が立ったので、めぐりちゃんは少年を蹴っ飛ばしてやろうかと何度も思ったけど我慢した。


 めぐりちゃんがそんな事を考える度に、少年はパピコを半分分けてくれたので、なんか許してやることにしていたのだった。



「なかなか花火上がらないねー。」


 パピコを食べながらめぐりちゃんは呟いた。


『君はさ、いつまでめぐり続けるの?』


「分かんないけどもう勘弁してほしいよ。そろそろ落ち着きたいもん。」


 それはめぐりちゃんの本音だった。めぐれば今回みたいに友達は出来るけど、そのたびに別れなきゃいけないのは正直嫌だった。ひまわりのお姉さんとももう二度と会えないと、めぐりちゃんは感じていた。

 そんなめぐりちゃんの考えも、少年はちゃんと理解しながら聞いていた。



 ドーン!ドドーン!



 花火の打ち上げが始まった。

 少年とめぐりちゃんは、それを二人で眺めていた。

 眺めていたのだけど、めぐりちゃんはちょっと変な感覚に陥った。


 そろそろめぐる時間らしい。少年ともお別れだ。

 そうだなぁ、ちょうど花火が終わる頃かなぁ。嫌だなぁ。

 ……どうやら少年も、そんなめぐりちゃんの様子を察したようだ。



『もう行くの?』


「うん、そろそろ。」


『今回の世界で、君は何か得ることが出来たかな?』


「わかんない。けど何もないのもいいんじゃない?」


『じゃあ僕がプレゼントをあげよう。』


「え?」


『君のめぐりはこれでおしまい。これから君が歩むのは普通の人生。実は僕はね……』



 ドーン!ドドーン!



 最後の打ち上げが終わった。

 あー、まためぐるんだなー。少年とももうお別れだなー。じゃあねー、ばいばーい。それにしてもアイツ、最後意味分かんないこといってたよなー。

 だんだんと意識がぼんやりしていく中、めぐりちゃんはそんな事を考えていた。


 そのまま静かに、めぐりちゃんはだんだんと消えてった。






『さぁ、最後の仕事かな。』


 少年は、実はさびれた神社の神様だった。さびれすぎちゃって、力も弱くなっちゃって、いつの間にか姿も少年になってしまった神様だった。

 少年は、消えかかっためぐりちゃんに、自分に残った力を分けた。

 めぐりちゃんが完全に消えたとき、少年も一緒に消えていた。


 鳥居がミシミシと音を立てて崩れ落ちた。


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