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一章

   一章


 なだらかな傾斜の遊歩道は、街路樹の葉が落ちて一面黄色に染まっていた。

 歴史ある大学構内へ続くこの坂は、たしか名所の一つとしてガイドブックに載っていたはずだが、朔太郎はこの坂の名前をまだ覚えられないでいる。


 風が吹くたびに木の葉が舞う様は幻想的といえばそうだが、がさがさと音をたてて足に纏わりつくので歩きにくいことこの上ない。杜の都と呼ばれるこの街は、いかにも木々が多い。どこの道の脇にも木が植えられているし、政令指定都市とはいえ少し横に逸れると手付かずの林や山が存在している。一昨日など、自宅の至近で“鹿”に遭遇して本気で驚いた。しかしどうして街路樹に落葉樹を選んだのだろう。しかも銀杏など植えるものだから、秋になると実が落ちて歩道がギンナンの臭いで大変なことになる。


「先生。聞いていらっしゃいます?」


「え、ああすみません。ちゃんと聞いてます」


 柔らかく声をかけられ、朔太郎は慌てて視線を窓から前に戻した。


「徹夜続きで、疲れていらっしゃるんじゃありませんか?」


「いや、大丈夫です・・・続けてください」


 決まり悪く後ろ頭を掻きながら、窺うような視線から目を逸らした。集中していないのが明らかな態度をとってしまったことに、軽く自己嫌悪を覚える。


「頂いた原稿ですが、確認させていただきました」


 特に不備はなかったという言葉に安堵して、笑みを返す。

 中山 朔太郎、二十五歳。

 現在の肩書は、一応小説家である。一応、というのはどうにも未だに作家という職業に自分がついているということに違和感があるからだが、実際それを生業としているのだからそう答えるしかない。


「装丁のことなんですが、なにかご希望は・・・」


「特には」


 こだわりがあってあれこれいうのと、何を訊いても適当にというのとではどちらがいいのだろうかなどと思いながら目の前に座った編集者の顔を見たが、にっこりと微笑されて思わず俯いた。

 どうであれ、自身に何の希望もないのだから他にしようもない。


「ではこちらである程度案をお出しして、何かあれば・・・」


「ああ、はい。それで、よろしくお願いします」


 逐一反応を見ながら話をしてくれているのに、我ながら熱の無い返事だ。

 特に原稿が遅れたこともないし、大きなトラブルを起こしたことも無いが、なにせ自分は面倒な問題を抱えている。眼前の女性編集者が、そんな自分の担当を申し付けられた心境は図りかねた。


「では今度の打ち合わせのときに・・・」


 伏せられていた長い睫が、窺うようにこちらに向けられた。


「あ、すみません。ちょっと待ってください」


 慌てて携帯電話を取り出し、スケジュールに打ち合わせの予定を入れる。

 朔太郎にとって携帯は必需品だ。感覚的に片手で操作できる小ささと、膨大なデータの管理、持ち運びになくてはならないものになっている。


「先生、体調は何もお変わりありませんか」


 どこか躊躇いがちに訊ねるのは、彼女が当然ながら事情を知っているからだ。


「はい。変わりありません。なにも」


 おかげさまで大丈夫ですとかなんとか、言うべきだったかもしれない。正直なままに返事をしてしまい、内心舌打ちする。


 三年前、朔太郎は事故にあった。以来、左手は後遺症で麻痺してしまい使えない。

 発見されるまでの経緯、どんな事故だったのか、全く覚えていなかった。空白は三日間。

 携帯や財布等所持品もなく、深夜に大学のサークル仲間と別れ、帰路に就いたというところで記憶も周囲の証言も途切れた。どこでどうしていたのか、委細不明。気づけば全身ぼろぼろの状態で、住宅街にぼーっと突っ立っていた。

様々な検査がされたが、特に異常は無かった。強いストレスによる突発的健忘であろうと診断されたが、発見から四日が経過してさらに異変が生じた。

精密検査の後、重篤性はみられなかった為経過観察として退院し、全身の擦過傷と打撲の治療に改めて通院した時だった。

 朔太郎は“怪我をして通院する”ということは覚えていたが、保護されたことも救急車で搬送されたことも忘れていた。

 原因は不明。それから一日経つごとに、一日分前の出来事を忘れていった。

 何かが起こった日。その直前までは覚えている。が、“今日”から四日以上前がわからない。この奇異な記憶障害と、完全に麻痺してしまった左腕。どうしてそうなったのかまるで分らない。

 器質的病変がない以上、いつ何時治ることもあろうから気を落とさないようにと医師は励ましたが、それも朔太郎には三日の賞味期限である。


「なにかありましたら、すぐにご連絡ください」


 にっこりと笑う人の良さそうな編集者の顔も、実は覚えていなかった。

 会う直前に携帯のメモリで写真と名前を確認した。名前は伊波(いなみ) 奈々(なな)。年齢は二十八歳。前任から引き継ぎの二代目となる担当で、データによれば約一年の付き合いになる。


「ありがとうございます。僕の方こそ、何かおかしなことをしたら指摘してください」


「そんなとんでもない。先生のお仕事は早くて間違いが無いですし、いつもさすがだなと思っているんですよ。前回も大変好評で、私個人も先生のファンとして続きを楽しみにしているんです」


 この一年、どのように付き合ってきたのかはわかないが、態度を見る限り関係は良好であるようだ。


「はあ、がんばります」


「よろしくお願いします。ではまた」


 立ち上がり、上着のポケットに入れたままだった左手を外に出す。だらりと垂れた左腕を後ろに隠して会釈をした。分りやすく三角巾で吊ればいいのかもしれないが、どうにも怪我人だと誇示しているようで気が引ける。

 気遣わしげに一度振り返った伊波にもう一度会釈をして、椅子に座り直した。今し方のやり取りを、早速携帯に入力する。伊波奈々の項目に、簡単なメモを足した。


 三日会わなければ、知らない人。次に会う時もまた、この人は知らない人になっているんだろう。




 中途半端な時間帯の大学構内は閑散として、時折すれ違う学生たちの歩調も心なしか速い。もう少し暖かだった季節には人で溢れていたクラブハウスの前を通り、()(ぶか) (りょう)は昼間でも薄暗い建物の中へ入った。


「十一時か、ちょっと早・・・お」


 腕時計を確認し、待ち合わせより若干早く着いた分をどう紛らわそうかと首を巡らせた先に待ち人を見つけた。

 学生生協のスペースで、ぼんやり本を眺めるその人物は、一見地味だがなぜか少し周囲から浮き上がって見える。首に巻いたマフラーからスニーカーまで黒一色。おさまりの悪い黒髪の襟足だけが赤茶色で色がついている。意図して好きな色で統一しているというより、単に洒落込む気がないだけだと知っているので、相変わらずの様子に苦笑した。中山 朔太郎という男は、妙な具合にものぐさなのだ。


「サク」


 近づいて呼ぶと、びくっと驚いて振り返った。小動物のような動きだ。十年の付き合いになるが、こういう所が未だに面白いと伊深は思う。


「ああ、おつかれ」


 読んでいたらしい本を置き、照れたように笑む。


「売れ行きチェックか?先生」


 地元作家、OBの本、と手書きのポップが貼られた本が平積みにされている。


「いや、たまたま・・・」


 言葉尻を濁して、周りを気にするように首を竦める。


「や~あの展開さすがだな。後でサインもらっていいか?」


「このドエスが・・・」


「なんだ、宣伝してやったのに」


 店内には昼食を選ぶ男女とサラリーマン風の男がいたが、こちらに気付いた様子はない。


「いいから。早く行こう。混んでくる」


 嫌そうな表情を一瞬浮かべて、店から出る。


「席はあるな。ずいぶん待ったか?」


 年期の入ったガラス戸を開け、ざっと見回した学食内は少しずつ人で埋まりつつある。


「いや、ちょっとだけ早く着いた」


 テーブルにマフラーとジャケットを置き、席を確保してトレイを抱えた列に並んだ。


「しかしここでよかったのか?俺は近くていいけど」


 伊深は大学教授の秘書をしている。二人が大学を卒業してからも、度々ここで昼食をとっていた。手慣れた所作で並んだ料理の皿を運びながら、粛々と列は進む。


「ああ、うん。俺もそこのカフェで打ち合わせだったし。慣れてるところの方がいい」


「へえ、つうかけっこう打ち合わせ多いよね」


 どこか疲れたような語尾に、相当消耗したようだと横目で顔色を見る。


「本の相談と新しい企画の打ち合わせで・・・」


 ぼそぼそと話す朔太郎の元々白い顔はさらに青白く、しかめられた目元にはうっすらとクマができている。


「ああ、伊波女史だっけ」


 以前聞いた覚えのある編集者の名前を言うとこっくりと頷いた。


「ねらわれてんじゃねえの?」


「イブならともかく、俺にそれはねえだろう。それより、俺・・・浮いてるか?学生してた時は気にならなかったけど」


 カレーとウーロン茶の載った盆をテーブルに置き、落ち着かなげに椅子を引く。


「気持ちはわかる。けど別に、学生じゃないと利用できないわけじゃなし」


 二人がこの大学を卒業して三年になる。伊深はそのまま大学の事務局に入所して働いているが、学校というコミュニティーを一度離れてしまった朔太郎は、一種の疎外感にも似た落ち着かなさを感じるのだろう。


「わかってんだけどな。なんとなく・・・安くて美味いし、好きなんだけど」


 自身に言い聞かせるように呟きながら、スプーンを口に運ぶ。

 さっきからチラチラと視線を向けられているのは伊深も気づいているが、それは朔太郎が学生ではないという以外に外見や職業に由来するものだとは考えつかないらしい。

 地元出身の作家として、大きな賞こそとっていないもののその処女作は高く評価され、書籍化されるのにそう時間はかからなかった。姿の露出は大分苦労して断っていたようだが、若く才能に溢れた悲劇的作家の注目度は今も高い。

 高校時代から文章を書くのが好きだといっていたが、本当に実現させるとは大したものだと伊深は思う。


「イブ、麺伸びるぞ」


 じ、と朔太郎の左手辺りを見つめたまま動かない伊深に、朔太郎が怪訝に声をかける。


「え、ああ」


 はっとした様子でメガネを押し上げ、担担麺に箸を刺す。


「メガネ曇ってる。最近、調子は?」


「んー相変わらず。まあ繁忙期は過ぎたけど、コンクールの論文手続きで書類山積み。偉い先生方にメールで通知すんだけどさ。これがまた日本語あほ程めんどくせえの」


「ああ、こまかそう」


「そうだよ。仰ってる意味が分かりません、なんて言われた日には血が凍るね。出来るだけ丁寧に。遠まわしに。でも分りやすくってなあ」


 湯気で曇ったメガネを外し、ため息を吐くと朔太郎があるあると何度も頷く。


「サクでもそんなことあんの」


「ある。超ある」


 意外だという伊深にカレーを咀嚼しながら思い出しているのか眉をしかめる。


「へえ、やっぱプロでも・・・いや、だからか。大変なん」


「いや」


 低く、否定の言葉が遮った。


「いやほら、俺の場合は、前になんて喋ってるかわかんないから気を付けて話さないとさ。ただそうすると、なんかちょっと変な喋り方してるみたいなんだよね」


 へらりと困ったように笑む声の調子はすっかり元に戻っていたが、表情は沈んだままだった。最近よく、こういう表情をしている。


「ふうん。俺は好きだけどね、その喋り方」


 事故以来、何があったとか、何で悩んでいるとか、共有することはどんどん減ってきた。朔太郎自身、追い切れないものが増えているのだろう。眼鏡をかけ直して顔を上げると、苦笑するような視線が返ってくる。


「そういえば、彼女・・・ケイコちゃんだっけ?結婚するんだろ?近いうち」


「ああ、うん。まあすぐにじゃねえよ。調整中」


 そっか、と呟いて食事に集中する。

 最近のことが話題になると話し方がぎこちなくなってしまうことを、朔太郎は気にしているようだった。

 新しい情報を反芻するように、目を閉じる。

 そして時々、無意識に左腕を揉むように掴むのだ。


「サク。手、痛いのか」


「え?ああ、ちがうちがう。大丈夫」


 いつの間にか右手で握りしめていた左腕を、テーブルの下に隠した。


「本当に?」


「ほんとに。なんでもないよ」


 高校時代から、もう十年の付き合いになる。互いに気心が知れているからこそ、打ち明けられない心の内があるのかもしれないと伊深は思う。歯痒い、せつない瞬間だった。




 歓楽街手前の、表通りから一本奥に入った住宅街との境目。マンションに挟まれた二階建ての四角い建物。その二階に、朔太郎の部屋がある。四つの部屋が合体した、洋館のような佇まいの右側一階はカフェバーになっていて、見落としそうに小さい看板にopen(開店)の札がかかっていた。見た目より軽い木製のドアを開けると、来客を告げる鈴の音に店主の豊島が顔を上げた。


「いらっしゃ・・・ああ、中山君か。おかえりー」


「ただいま、です」


 グラスを磨いていたらしい豊島(とよじま)に軽く頭を下げ、店内を見渡す。壁際にソファ席が三つ。カウンター席が六つ。黒とこげ茶色を基調にした店の中は静かで、細く音楽が流れている。午後六時。開店したばかりのVivid(ビビッド)に、まだ客の姿はない。


「何か手伝いますか」


「いや、今は大丈夫。ありがとう」


 暇だし、と苦笑気味に笑って、グラスを並べる。


「それより、何か飲むか食べる?顔色悪いよ」


 ヒゲにメガネの愛嬌のある顔が、お穏やかに問う。


「大丈夫です。・・・天気が、崩れてくるかもしれません」


 左腕を持ち上げてみせたら、納得したようにああと頷いた。


「天気予報より当たるもんねー。となると今夜は閑古鳥かなあ」

 小さな窓の外はもうすっかり日が暮れて、真っ暗闇しか見えない。


「ひどく痛むの?」


 心配げに左手を指され、慌てて首を振る。


「そんなにじゃないんで、大雨にはならないと思いますけど」


「そう?まあでも早く休んだ方がいいよ」


「そうします。じゃあ・・・」


 わずかに開いた扉の向こうから、湿気をはらんだ空気が流れ込む。その冷気から逃れるようにカラン、と鈴の音がして、スーツの女性が入ってきた。接客に入った豊島に目礼して、奥の階段を上がる。渦を巻いた階段を上り、すっかり闇に沈んだ部屋の中を迷わず進んで、敷かれたままの布団に倒れこんだ。手繰り寄せたコードの先についたスイッチに触れ、ライトスタンドを点ける。薄ぼんやりと部屋の内情が浮かび上がった。むき出しのフローリングに、這ういくつもの黒い電化製品のコード。巨大なテーブルと化した、古いグランドピアノ。ハンガーラックと机と本棚。物の少ない殺風景な部屋だが、全てを覆い隠すように大小様々な紙がそれらの上に散乱している。細かにびっしりと文字の書かれたものや、模様や図形が描かれたものなど内容は多種多様だ。


 紙に埋もれた部屋の中央で、これまたメモだらけの壁の一画をぼんやりと眺める。


『先生のお仕事は早くて間違いがないですし』

『次回作を楽しみにしている声も多いんですよ』


 しん、と静まり返った空間。昼間の記憶が耳に甦った。


『すごい才能をお持ちです』


「・・・・・・」


 じ、と左手を見つめる。男にしては白く細長い指は、中指の第一関節の内側にペンダコがある。

 三年前まで、朔太郎の利き手は左手だった。事故に合い、左の肘から先が麻痺してしまったため右手を使うように矯正したのだが、まだペンダコは消えないである。


『ファンはこれからもどんどん増えるでしょうね』


 甘すぎると思うのにどこか冷やかに響く声が、大脳皮質を滑り落ちる。


「さあ、どうかな」


 意識的に声を出した呟きは大した音にはならず、そのままゆるゆると眠気に包まれた。




 雨が降っていた。

 気温は決して低くないが、大粒の雨に体温が奪われていく。

 春といえばのどかな風景をイメージするが、実際は天気が崩れやすく、一度機嫌を損ねると厄介な季節だと思う。


 信号を待つ間にバイザーの雨滴を拭う。吐く息で内側は曇り、外側は拭いても拭いても雨粒にすぐ埋め尽くされて視界が悪い。白く塗り潰されたバイザーの隅で信号が赤から青に変わったのを確認し、そろそろとバイクを発進させた。


 大きくゆったりとした道路はまっすぐどこまでも伸びている。これが晴天ならさぞかし気持ちがいいだろう。ローンを組んでやっと手に入れた愛車に後悔はしていないが、こういう日ばかりは傍らを通り過ぎていく車が少し恨めしくもある。大学が近いのに、この辺りは電車が通っていない。地下鉄工事予定の看板を横目に、今度は最終バスの時刻もちゃんと確認しておこうと心に決め、信号を左折。切り替わった視界に突如、赤い色が躍った。


 アスファルトの上にあるはずのない色に、考えるより先にハンドルを切っていた。


 何を見たのか。


 認識する前に衝撃を感じた。


 揺れ、跳ねる。


 あれだけ気になっていた雨の音と感触が消えた。


 自分の体よりも遠くへ滑って行ったバイクが、スポットライトのようにハイビームを飛ばしている。照らされた光の輪の中にじわじわと赤い色が染みだし、その端から雨が薄めていく。



 遠く、雷鳴を聞いた。




 夢を見ていた、と覚醒してすぐに気が付いた。

 しかしどんな内容だったのか、次の瞬間にはもうわからない。どのくらいの間眠ったのか、窓の外を見たが月は出ていなかった。窓ガラスを、雨が叩いている。

 起き上がって携帯で確認すると、午後九時になろうとしていた。

 短い間と感じたが、帰宅してから三時間が経過していた。

 手足を伸ばし、軽く首と肩を回して立ち上がる。

 朔太郎の仕事は夜に活動することが多い。日が暮れてから作業を始め、朝日を迎えることもしょっちゅうだ。

 照明を点け、壁に貼られたメモをチェックする。


「編集伊波さんと打ち合わせ」


 読み上げながら、用が済んだものを剥がしていく。ひらりひらりと外されたメモが宙を舞い、床に落ちる。


「受注見直し、実家連絡」


 3dayと書かれたコルクボードに貼られたメモの、約半分が床に落ちた。

 次いで、新たに書き込んだメモを空いたスペースに貼っていく。


「さて、こんなもんかな」


 携帯のメモと照らし合わせながら、漏れが無いのを確認して一つ作業が終わった。


「本の続き、か」


 机の上に置かれた、青い装丁の本を手に取る。朔太郎の処女作となった本だ。どこか他人事のように、ぱらぱらとページを捲ってみる。


「どんな話なんだか」


 どういう気持ちで、どういったきっかけで小説を書くことになったのか、その時のことを覚えていない。

 手に取った本のストーリーも、所々拾い読んでみてもまったくわからない。これで小説家として生計を立てているのだから、なんとも申し訳ないような気持ちになる。


「悩んでいるな、青年」


 柔らかな声が肩を叩いた。

 いつからか、微笑を浮かべた男が傍らに立っていた。朔太郎よりいくらか年上だろう。ずいぶんと背の高い男だ。


「―ケイ」


 突然現れた男に特に驚くこともなく、朔太郎はゆっくり振り向いた。


「続編が決まったよ」


 トン、と本の表紙を叩く。


「たいへん好評だってさ、先生」


「そうか、それはよかった」


 表情乏しく硬質な印象の朔太郎に対し、ケイと呼ばれた男はよく笑う。逆光にその細部はぼやけ、顔の造作ははっきりとしないが長い前髪の下の口元が綻んでいる。

 す、と長い腕が後ろから抱くように回された。朔太郎の左腕に、白く大きな手が重ねられる。


「仕事を始めよう」


 ケイの声とともに、朔太郎の左手が動き出した。机に広げた紙の上を、滑らかにペン先が走る。


 ぶつかりそうな距離にあるケイの頭は所々が滲み、部屋の向こう側が透けて見える。屈み込むようにして立った腰から下は、闇に溶けて見えない。白く浮かび上がった掌はぶつかること無く連動して、よく動いている。


 ケイが何者なのか、朔太郎はわからない。少なくとも、事故の後に知り合ったことだけは確かだ。どんな風に出会い、どういう経緯で今のような状態になったのか、まるで分らない。ただ昨日も一昨日もそうしたように、日が暮れ、部屋の中がすっかり暗くなったら仕事を始める。


 どんどん紙面を埋めていく文字を見るともなく眺めながら、これはいわゆる超常現象なのだろうかと考える。

 肘までは、確かに自分の腕が在るが、その先は欠落してしまったように何も感じない。淀みなく動き続ける左手からは、本当なら伝わってくるはずの紙を擦る皮膚の感触もペンを握る感覚も、何も感じ取れない。


 ケイが操る、自分のものではなくなってしまった手を見つめながら、奇妙な現象だとは思うが、そう悲観も恐怖もしないのは、きっとそうなった時の哀しみを覚えていないからだろう。


 事実を認められずに、悩んだ時期もあったかもしれない。だがもう、忘却されている。


「朔太郎」


 徐に意識を呼び戻され、驚いて椅子から落ちかけた。


「なんだよ」


 跳ね上がった心拍を整えようと深く息を吐きながら、傍らを振り返る。


「集中してないな」


 ケイが器用に片眉を上げてみせる。いつから気取られていたのか、なんとなく罰が悪くて探るような視線から顔を逸らした。


「別に・・・そんなことないけど」


「勝手に動く左手を眺めているのは退屈、か?」


 その通りだったので、何も言えずにケイの顔を見つめる。

 クスクスと小さな笑い声が空気を震わせた。


「いやいやごめん、すっかり定番になったやりとりだからさ」


 知らないことで笑われても困る。憮然として眺めていると、悪気はないんだと背中を叩くような仕草をする。よく笑う男だ。


「ケイ」


「なんだ?」


「ユーレイ、なんだよな?」


 普通はもっと恨みがましいとか未練がましいとか、陰鬱なものなのではないのだろうか。

 クスリ、と笑う気配がした。天井近くで弧を描く口元が、まるでチェシャネコのようだ。


「それを訊かれるの何度目かな」


 ふわりと尾を引いて机に腰掛ける。長い脚を組み、幽霊が顔を覗き込んでくる。


「時間は誰にでも平等であり、死は確実に訪れる。逃れるものはない。だが君

は、三日後には何も覚えていない」


「どういう意味だ?」


 質問か嫌味か、はぐらかされたのかそれすらも分らない。


「そのままの意味さ」


 肩を竦め、また軽々と飛び降りる。

少し待ったが、返答がなかったので今度は別の質問をした。


「昼間はなにをしてるんだ?」


「それは初めての質問だ」


 何が面白いのか、ケイは上機嫌に喉を鳴らす。


「何も変わらないよ。答えは一緒だ、朔太郎。俺は昼も夜も昨日も今日も変わらない。君が忘れているだけ」


 指が眉間を指した。知らぬ間に寄っていた眉根を伸ばすように動く。


「変化は生きているものにだけなんだ。俺は、変わらない」


 噛んで含めるように、ゆっくりと話す。



「ユーレイだからね」




 差し込む光で目を覚ました。雨は上がり、窓枠に水滴が光っている。

 いつのまにか眠ってしまったらしい。まばたきを何度か繰り返し、大きな欠伸をした。頬に張り付いた紙の跡を擦りながら辺りを見回すが、ケイの姿はなかった。

 幾筋も光の帯が差し込む室内は雑然としていたが、とりあえず見て見ぬふりをしてシャワーへ向かうことにした。

 机に伏して固まった体を伸ばし、床に散らばった紙を踏んだり蹴ったりしながらその内に整理をしようと思った。濡れた足で歩くと張り付いてかなり面倒だ。少なくとも昨日一昨日と、そう思ったのを覚えている。


 ランドリーボックス代わりの籠に衣類を放り投げ、狭いユニットバスのカーテンを引く。

 

 熱めの湯を頭から被りながら、記憶を探る。昨日したこと、一昨日したこと、昨夜就寝する前から順に遡り、ぴったり二日前の朝で停止した。頭の角度を変えながらどうにか思い出せないかと試みるが、やはり今朝もそこから前にはいけそうになかった。

 

 昨夜はよく動いていた左手も、魔法が切れたようにだらりと下がってぴくりともしない。右手で左手を持ち上げ、湯を当てたり外したりを繰り返す。マネキンの腕を持っているみたいだ。半ば儀式的に頭と手のリハビリをしたことにして、簡単に身づくろいを済ませ、部屋を後にした。

 

 電気ブランの残り香漂うVividの中を抜け、街に出る。

 朝の歓楽街は人気がなく、清浄な空気の中で白々と明るい。動き始めた日常に戻ろうと、まだ酔いの醒めない幾人かがよろよろと支えあって歩いている。

 まだ人もまばらなアーケードを抜け、エレベーターで雑居ビルの五階に上る。薄暗い通路の奥、簡素なドアに事務所然とした白いプレート。長谷川治療院。

 朔太郎は三日に一度、ここに治療に訪れている。


「―はようございます・・・」


「おっ、おはようさん。一番乗りだな、中山くん」


 扉を開けてすぐ、白衣を着た初老の男が迎えた。手には新聞と湯気の立ったマグカップを持っている。


「いい天気だね。今日は混んでくれるかなぁ」


 院長である長谷川が、快活に笑う。この小さな治療院で大きな混雑に出くわしたことはないが、腕は確かだ。といっても、朔太郎の担当は長谷川ではない。


「おーい、笠原くーん。いらっしゃったよー」


 スリッパを鳴らしながら奥へと歩き出す長谷川を追って仕切りで区切られた待合室から施術室へと足を踏み入れたところで、可憐な声がした。


「あ、おはよー・・・中山さん」


「おはよ。笠原先生」


 笠原(かさはら) 仁奈(にな)。朔太郎を担当する鍼灸師だ。そして、恋人でもある。


 三年前の事故後、麻痺してしまった左手の治療を請け負ったのが彼女だった。


「調子は?」


「ああ、変わらな・・・いいよ」


 変わらない、と言いかけて訂正した。今更遅かったかもしれないが、そこには言及せずに一つ笑みを返して寝台へどうぞと促される。

 大きく片側の壁が窓に開放された施術室は、治療用ベットが三台並んでいる。カーテンで区切った一台に通された。仁奈がタオルを準備する間に、籠に私物を入れてベットの下に置く。


「まずうつ伏せで」


 人一人が横になったらいっぱいの簡易なベットに腹這いになる。足、腰、背中から肩と掌が移動した。


「また机に伏せて寝てたの?」


 後頭部に苦笑する気配が伝わる。


「ばれたか」


「ばれますよ」


 ぐりぐりと肩甲骨の間を擦られる。どんな具合かさっぱりだが、体に触れるだけで彼女はすべてお見通しらしい。


「首、痛くなかったの?」


「んー派手な音はした」


「ボキボキしちゃダメだって」


「伸びしたら勝手に鳴ったんだよ」


 呆れたように嘆息して、では始めますよ不良患者、と言われた。

真面目に通っているのに心外だが、動機が不純なうえに注意をちゃんと聞けていないので反論できない。


「あ~・・・けっこう痛いかも」


 意識していなかったが、首や背中を押されると筋肉が凝り固まっている気がする。


「そうでしょうとも。頭痛は?」


「無い。あーでもそこ痛い」


 首と頭の境目を押されると、額に突き抜けるような痛みが走った。心地よいのに痛い。いや、痛いのに心地よい。


「眼精疲労。頭痛発作一歩手前。睡眠不足。長時間の同一姿勢による筋疲労」


 淡々と語られる言葉は百発百中だ。超能力者なんじゃないかと思う。


「あはは、おっしゃるとおりで」


 仰向けになり、目があった。大きな瞳が、見透かすようにまっすぐに見つめる。


「最近は忙しいの?」


 左手の状態を見ながら仁奈が言った。関節を一つ一つ動かし、様々な角度に曲げては伸ばしている。


「ああ、まあ、まだ締切っていうんじゃないけどさ。新しいの書かなきゃいけなくて、打ち合わせとかもあってめんどくさいんだ」


 実際発案しているのはケイなので、生みの苦しみとは無縁なのだが、文字通り一晩中手を貸すのは骨が折れる。


 そして、中身が分らない作品について作者として編集者と渡り合うのも。

 しかしそれで糊口を得ているのだから、文句を言っては罰が当たるというものだ。


「ふうん、そうなんだ。ちょっと、できるだけ私の手を強く握ってみて」


「うん」


 答えてその通りにしようとするが、左手はぴくりとも動かない。


「・・・はい、いいよ。じゃあ鍼するね」


「うん、よろしく」


 心持ち俯いた仁奈の様子に、なんだか申し訳ない気持ちになる。昨夜には、あれほど滑らかに動いていたのだ。


「はい、いきます。痛かったら教えてください」


 慣れた所作で鍼が打ち込まれていくのを眺めながら、昨夜のことを思い出す。不思議と腕だけ放って置いて好きなようにする、なんてことはできず、一晩中勝手に動く左手に付き合った。一部の機能が他人に譲渡されたにも関わらず、あくまでもこの腕は自分のものなのだと思い知らされる。

 鍼に電気が通され、送られる刺激に筋肉が脈打ち始めた。電流に合わせて指先が震える。


「どこか痛いところはある?」


「無いよ。大丈夫」


「じゃあこのまま通電するから少し眠る?」


 柔らかい声が耳に心地よい。


「うん、寝る・・・あ、仁奈」


 カーテンを閉めて出て行きかけるのを呼び止めた。


「なに?」


「俺の・・・小説、読んだことある?」


 一瞬躊躇って、問うた。


「読んだよ」


「続き、見たいと思う?」


「つづき?」


 唐突な質問の意味を考えるように、二、三度瞬きする。


「うん、見たい。やっぱり続きあるんだ?楽しみにしてる」


 薄黄色のカーテンの向こうに笑顔が隠れ、それに反応したように腕が震えた。





「やっぱり続編あるんだ?ってことは、そういう終わり方なのか」


 頬杖をつき、窓の外を行く人々を眺めながら、先ほどの仁奈の言葉を思い出していた。

 当然自分も目にしたはずなのだが、全くもってその物語がどんな話なのか分からない。


「はーい、おまちどうさま。憂い顔だね、ネタ出し中?」


 明るい声とともに、色味も鮮やかな料理の皿が目の前に置かれた。振り仰ぐと、背の高い女性が両手に山と料理を乗せた盆を持っている。さて、顔なじみのようだがなんと返事をしたものか。


「まあ、そんな感じです」


「気分転換も必要だよ?今日のランチは自信作だからね、堪能していって」


 朗らかに笑って、狭いテーブルの間を細い腰を翻し去って行く。

 この店も、治療院に近いオープンテラスでふらりと入ったつもりだったが、馴染みのようだ。


「いただきマス」


 本日初めての食事とあって、食欲を刺激する芳香に急激に空腹だと感じた。

 店はランチタイムということもあって大盛況だ。全体的にモデルルームのような佇まいで、客の大半も女性である。天気の良い今日はテラス側を中心に埋まっているが、コの字型の店内は奥にいくほど薄暗く、雰囲気もあって夜はこちらも人気が出そうだ。なんとなく男一人ではそう長居もし辛いな、などと思いながらフォークを握った瞬間だった。


「わあ、すごい偶然ですね!」


「え・・・あ」


 聞き覚えのあるトーンに顔を上げる。


「こんにちは、中山先生」


 忘れていない。昨日見た顔だ。


「伊波、さん」


「ここのお店、いいですよねー。おしゃれだし、リーズナブルだけどおいしくて。よくいらっしゃるんですか?」


「はあ、まあ」


 なんとなく見つかってしまったことが居心地悪くて言葉を濁す朔太郎とは対照的に、伊波は上機嫌だ。


「あ、お食事中ですよね。どなたか待ち合わせていらっしゃいました?」


「いえ・・・」


 声の調子、間の取り方まで完璧な問いかけで適当な嘘を考える暇もない。優秀な編集者であるということだろう。それとも自分がよほどのへたれだということだろうか。

 そんなことを思っている間に伊波はにこやかに朔太郎の向かいの椅子を引き、自分の飲み物をオーダーしている。


「まさかこんなところでお会いできるなんて、僥倖でした」


「いやいやそんな、おおげさな」


「本当ですよ。ちょうどお会いしたかったところなんです。あ、どうぞお食事なさってください」


 促されても、なんだか気まずい。何がどうという訳ではないが、この一々完璧な所作から逃げ出したくなってくる。


「早速なんですけど、食べながら聞いていただいていいですか?」


 曖昧に頷いて、とパスタをすすりサラダを突いてみたがあまり味はしなかった。


「単行本発売に合わせて、中山先生の特集を組もうと。インタビューか、エッセイみたいなものを」


「えっあ、いや・・・」


 思いがけない内容に話を遮ってしまった。インタビューなど以ての外だし、エッセイだって土台無理な話だ。


「もちろん、先生の・・・事情はよく配慮させていただくつもりです。どういった形の特集にするのか、先生のご意向に沿わないようなことは決してしないとお約束します」


「はあ、でもですね・・・」


「中山先生のことを知りたいというファンの声は多いんです。何度かファンイベントのご提案もさせていただきましたが・・・」


 無言で首を振る朔太郎に、ですよね、と苦笑して頷く。


「露出やSNS等を先生がお嫌いなのは存じております。それで以前、打ち合わせの時に少しご相談をさせていただいて、その時はご了承頂いたんですが・・・」


「えっ」


 窺うように、微笑の奥から目が問うている。

 覚えていない。いつの話だか分からないが、なぜ自分は了承したのだろう。今聞く限りでは、到底快諾できる話ではない。


「ああ、そう・・・でした?」


「ええ、考えていただけましたでしょうか」


 やはり自分に話を通したという口ぶりだ。昨日チェックした伊波の情報について思い出す。この件に関する情報は何も無かったはずだ。取るに足らない、すぐに消える冗談のような話だと思って記録に残さなかったのだろうか。

 口の中に残ったトマトソースをお茶で流し、小さくため息を吐いて頷いた。


「わかりました」


「ああ、本当ですか!よかった」


 瞬間広がった満面の笑みが、次の言葉を発する前に口を開く。


「ハイ、頑張ってみますのであの・・・」


 次の言葉を待って一時停止した伊波に、しかしすぐに封じ込めるためのいい文句が出てこない。


「では、詳細を・・・」


「あの、詳しいことは、もう少し考えてみてからでいいですか」


 話しかけられたタイミングに重ねて、強引にその先をまとめた。さっさとこの場をやり過ごし、至急この件について確認したい。字際書けるかどうかどうかは方向性によろうが、不確定なものが多すぎる今、話を進めるのは危険だ。


「はい、かまいません。いいお返事がいただけて良かったです」


 かなり無理やりだったと思うが、どうにかやりすごしたようだ。


「それじゃあ私、社に戻って準備を始めますので」


「よろしくお願いします」


 たどたどしく頭を下げ、甘い匂いを残して去っていくスーツの後ろ姿を見送りながら、知らず詰めていた息を吐いた。


 自信に満ち溢れた人だ。なんとなく、気遅れしてしまう。

 ゆっくり首を回すと、盛大に凝り固まった関節から音が鳴った。


「せっかく仁奈のところに行ったっつうのに」


 首をさすりながら見下ろしたテーブルには、伊波の頼んだシトラスティーが僅かに減った様子もなく残っていた。




「やれ、また随分ととっ散らかってるな・・・」


 現れて早々にため息をつくケイに、読んでいた本から顔を上げる。


「少し片付けたらどうだ?これじゃあ足の踏み場もないぞ」


 散乱した、を通り過ぎてもはやフローリングのこげ茶色を探すのも困難なほど紙で埋もれた床を呆れたように見回している。


「ああ、うん」


 そういう自分には足がないじゃないかと言いそうになったが、たしかにひどい状況ではあるので生返事に留める。


 朝、片付けようと思ったのだが、結局今の今まで放置している。しかも帰宅してからの習慣で今日の分もさっき床に放り投げてしまった。けして暇がない訳でもないので、ものぐさと罵られても反論できない。


「なにを熱心に読んでいるんだ?」


 床から目を背けるように見ていた手元をケイが覗き込む。


「なんだ、自分の本か」


 意外ともつまらないともとれる具合に片眉を上げる。


「君の、だ」


 一応、訂正を入れて本を閉じた。


「感想は」


「感想?」


「帰ってからずっと読んでたんだろう。感想は?」


 探るように視線を向けてくるケイから顔を逸らしながら、小さく咳払いする。


「まだ半分しか読んでないけど。書き方が丁寧でテンポもいい。続きが気になる」


 気恥ずかしいのだが、これも仕事だと自分に言い聞かせる。


「ただ・・・」


「ただ?」


「主人公が、なんか気になる」


「なんか気になる、ね」


「やあ・・・まあ、なんていうか。この主人公、まだ何か隠してる気がする」


 良いとも悪いともいえない。具体的に何が気に入らない訳でもないが、ひっかかりを感じた。この微妙な気持ちをどう形容したものか口ごもっていると、ケイがくすりと笑った。

 てっきりなんだそれはと突っ込まれると思っていたので少々面食らう。


「前と同じ感想だからさ」


「同じ・・・」


 ということはやはり前にもこの本を読んでいるのか。同じように感じ、同じように言葉を選びあぐねて答えた。


「変に思うことはない。君が君であるということだ」


「何も成長してないってことだろ」


 半ば自嘲気味に息を吐く。


「そんなことはない。見たものはすべて記憶されている。一つ一つを思い出せなくても、全部脳に残されている。今日一日に何を見て何を聞き、食べ、感じたのか。それらすべてが、今の君を構成するんだ」


 さらりと温度のない指が額を掠めた。


「さて、始めようか」


 憮然と机に向かう肩に、腕が回された。投げ出された朔太郎の左手が、糸に吊られたように動き出す。さらさらと文字が連なっていく。


「続きを考えるのに悩んだりしないのか」


 ああでもないこうでもないとペン先が迷うことなど、まず無い。昼間のうちに考えているのか、もう予め頭の中に出来上がっているのか。

 すぐ傍にある顔は、そういう表情もできるのかというくらい真剣だ。


「考える、ということは変化だからね。私にはできないことだ」


 穏やかな言葉の意味がいまいち掴み切れず、眉を寄せる。


「考えないで書いてるのか」


「語弊ある表現だが、まあそういうことだな」


 特に言及するつもりはないらしく、あっさりと答える。なんにせよ、器用な男だと思う。


「これは共生だと思えばいい。君がいなくてはそもそも生まれないものだ。協力して作り出せるのさ」


「あんたの名前で出すべきだろう」


「俺はユーレイだ。存在しないものさ」


 変化は生きているものだけ、と言っていたのを思い出す。たしかに、覚えていなくても自分は日々を生き、年を重ねているのだろう。三年前、自分は二十二歳だった。まだ大学に在籍していた。ちょうど、本の主人公と同じ年頃である。授業に出て、バイトをして、研究のために・・・


「そうだ。院にいこうと思ってたんだ」


「うん?」


「あ、いや・・・この主人公みて思い出したんだ。俺、大学院に進もうと思ってたんだ」


「ふん、そうなのか」


 穏やかな返事は、知っていたのか知らないのか判然としない。よどみなくペンは動き続ける。それ以上何を話すこともなく夜は更けたが、朔太郎は妙に落ち着かない気分だった。




「お疲れさま」


 インターホンを押して数拍、開いたドアから明るい光と笑顔が迎えた。


「ん、お邪魔します」


 もう何度も訪れているはずの部屋だが、とりあえず三日以上前なので初めてのように緊張する。

 そんな自分の態度もいつものことなのか、笑みを一つ見せて仁奈が先導してくれた。横に長い、白い部屋だ。


 仁奈の家は、住んでいる人間を体現して優しく爽やかな印象を与える。区切りのない広めのワンルームという点では自室と同じなのに、雑多で暗い自分の部屋とここは対局にあるかのようだ。どぎまぎとしながら、ソファにとりあえず鞄を置いた。


「適当に座ってて」


「うん」


 さてそういってもどこに座ろうか。ソファか椅子か、どこにいつも座っていたんだろう。

 そんなことを考え始めた自分に苦笑して、二人掛けのソファに腰を下ろした。


 クリーム色のフローリング、アイボリーのラグ、ライム色のカーテン。自宅には無い色ばかりだとぼんやり眺めながら、初めて来た気がしない、のは当たり前か。


「・・・なんか、手伝う?」


「ん?いいよ、大丈夫。もうできた」


 取りとめのない思考を切って振り返ると、テーブルの上に料理の乗った皿がいくつも出現していた。大体の準備はしてあったらしい。


「いい匂いする・・・うれしい」


「簡単なのだけだけどね」


「まじですごい。おいしそう」


 並んだものは、確実に自分の好みを把握しているメニューばかりだ。数えきれないくらい一緒に食事をし、覚えてくれたのだろう。


「うん、うま」


「本当?塩足りなくない?」


 調味料のボトルをだし、自分は特にかける訳でもなく箸を進める。彼女にとっては丁度いいということだろう。が、言われてみれば自分には少し薄味な気もする。


「大丈夫・・・好み抑えてんね」


 箸を齧ったまま上目に窺うと、照れたように笑む。


「そりゃあ、観察してますから」


「・・・ふーん、そうなのか。まあ俺も仁奈がどうするとどうなるかじっくり観察してるからなあ」


 なんとなくこちらも気恥ずかしくなって、軽口で返した。


「なっ、バカじゃないの?」


 すぐに真っ赤になって睨んでくる。全然恐くない。むしろ逆効果。こういうリアクションがくることがなんとなくわかってた。予想通り。思い出せないけど、ちゃんと覚えているのだ。


「ん?なんか変なこと言った?何の話だと思ったのかな?」


「っ、知らない!」


 つんと顎を反らして横を向いてしまった。耳まで赤いのが可愛いと思う。きっとこういうやりとりもいつものこと。それでも毎回律儀に反応するのだと思うと、面白くてたまらない。


「なんだ、残念。興味あるなら懇切丁寧に教えたのに」


「知りません!ごはん冷めるよっ」


 あまりしつこいと本当に怒らせてしまうので、からかうのはこれくらいにして食事を再開する。

 ふと思う。せめてこの、頭が正常であったなら。毎回毎回、三日ごとに自分は初めてのように感動したり戸惑ったりしてしまう。この先、何年、何十年。着実に降り積もる仁奈の記憶と、先端の七十二時間だけの記憶で、段々と広がっていくその差異を、どうやって埋めればいいんだろう。

 左手が正常に戻ってくれたら、何か別の職業に就くのだろうか。今まで就職したことがあったのか。そもそも大学は卒業したのだったか。


「どうかした?」


「いや・・・なんでもない」


 急に足元が頼りなくなったような感覚にとらわれて、頭を振って切り替える。


「仁奈、うちに来たことあったっけ」


「サクの家?んーん、ないよ」


 意外な質問だったのか、数度瞬いて首を振る。


「無いのか・・・」


 仁奈に関しては、会う前にあまり情報を見ないようにしている。情報自体が仁奈のところだけ漠然とした残し方しかしていない。なんとなく、素のままで対峙したいような気がしている。


「どこにあるのかも知らないよ」


「は?まじで」


 ぽつりとこぼれた言葉に驚いて見返すと、若干呆れたような顔をしている。


「あの辺、みたいなのはわかるけど・・・詳しくは知らない」


 来たこともなければ場所もしらないという。なぜそんなことになっているのか、考えてみる。


一、Vividがあるから、豊島の手前なんとなく彼女を連れ込むというのが気になる。

一、部屋が汚くて恥ずかしい。

一、もしも二人でいるときにケイが現れたら?


 どれもありえるし、複合的になのか。しかしどの理由も、説明しづらいものばかりだ。


「汚いから、ダメっていう」


 思案していたところに、仁奈が言った。


「汚い・・・たしかに」


 散らかっている。


「仕事の、紙とか散らばってるんだよね。一面」


 小さな嘘をついた。散らばっているのは抜け落ちた記憶、記録だ。わざわざ紙媒体に記録して放っておく意味はないのだが、目に見える形で囲まれていると安心するのだ。

 そして、そんなものに埋もれて生活していると仁奈に知られたくない。


「ふーん?じゃあ掃除してあげるっていうのもできないね、大事なものがあるんでしょ」


 優しい、と思う。テリトリーに入られる恐怖から、拙い説明しかしないのに理解と提案を示してくれる。


「ちゃんと、掃除するよ。夜は仕事するからダメだけど、昼間とか遊びにきて」


 ぼそぼそと付け足すと、嬉しそうに笑った。こんなに喜んでくれるなら、さっさとしておけばよかった。そうだやってみなくちゃわからないじゃないか。

 珍しく前向きな気持ちになって、もっといろいろやってみようという気持ちになる。掃除をして、ケイにもいろいろ訊いてメモしておかなければ。さっそく帰ったら何から始めるかと脳内シュミレーションする。


「今日は、何時までいられるの?」


 食器を片づけながら仁奈が言った。


「夜は仕事するんでしょ?夜、家じゃないとできないんだって言ってた。ちなみに、そういう訳でお泊りされたことはありません」


「あー・・・そうか。うん・・・」


 ナチュラルに帰宅してからのことを考えていた。彼女の家にいるのに、気もそぞろなことこの上ない。っていうか、大丈夫か自分。でも本当に仁奈のことは好きだ。そうだ。それは間違いない。


「終バスくらいかな」


「ん、わかった」


 そっけない返事。怒っただろうか。それとも呆れているか。愉快ではないだろうなとあらゆるパターンの想像をしつつ、そろそろと皿を洗う後ろ姿に近づいた。


「うわっびっくりした!なに?」


 そっと抱き付いて、細い肩に顎を乗せる。


「洗い辛いんですけど。ぎゃあっ」


 耳に息を吹きかけたら、びくりと震えた仁奈の手元でガチャンと陶器のぶつかる音。


「こら、危ないじゃん!邪魔するな」


 怒ってもがくが、泡だらけの手ではさして抵抗もできずに終わる。


「邪魔なんかしてないよ。抱き付いただけじゃないか」


 わざと耳元に口を近づけて喋る。ざわざわと毛を逆立てた彼女のあやうい手から、グラスを抜き取ってシンクに置く。


「息かけないでよ!」


「そんな、息しなかったら死んじゃうよ」


 耳が弱いのか、と思うがたぶんこれも俺の確信犯だ。


「耳元で、喋るな!」


 瞬間沸騰して顔が赤い。さっさと手を拭ってしまえば簡単なのに、考えが及ばぬようだ。


「ええ?なに、どうしたの。よくわからないな、教えてくれる?」


「意地悪だ!」


「意地悪じゃないよ。知りたいから教えてって言ってるんじゃないか」


 白々しく嘯くと、キッと振り向いて睨む仁奈。


「確信犯でしょ!」


 おお、するどい。さすがだ。


「いやーほら、リハビリって反復復習が基本でしょ?」


「何言っ・・・」


 なぜ自分が仁奈について詳細な記録を残さないのか、わかった気がする。


「終バスって何時だっけ」


 携帯を探そうと身を捩ったら、腕の中から小さな声がした。


「十一時十三分・・・」


「十一時十三分?」


「・・・・・・」


「そうか。あと三時間半、くらい?」


 壁の時計を確認する。


「じゃあ、まだゆっくりできるね」


 排水溝にゆっくりと流れていく泡を眺めながら、蛇口を捻った。仁奈の手から、積み上がった皿から、みるみる加速して泡が消える。


「焦らずじっくりもリハビリの基本だよね」


 真っ赤な耳孔に吹き込んだら、泡が消えて呪縛が解けたのか振り向きざまに蹴りを入れられた。


 十一時十三分のタイムリミット。たぶんこんなやりとりも、いつものことなのだろう。


「なに、微笑ってるの・・・」


「ん、べつに?」


 いつものことだとしたら、とても幸せだなと思えてうれしかった。




「夜。すべてのものが寝静まった、深夜のこと。行き交う人もなく、吠える犬もいない。

 白々と月だけが出ていて、静止したかのような世界を照らす。

 彼もまた眠っている。

 自室に眠りを脅かすものはなく、時計の音さえひそやかに秒針を進めている。

 窓から射す月の光に浮かされて、寝返りを打った彼から影が床に落ちた。

 真っ黒なシルエットがベッドから廊下、路の上を滑り、伸びに伸びて街の外れまで行く。

 そこで、彼の影は両の掌で土を掻きはじめた。

 鉄の熊手のような指が、もくもくと地面を掘り返していく。懸命に土を掘るその下に、ある秘密が眠っている。」

 中山 朔太郎の小説、ナハツェーラーの冒頭である。墓場から甦り、夜な夜な鐘を突き鳴らす吸血鬼、という意味だそうだ。シュレージェン地方やバヴァリア地方、カシュービア人の間で信じられている蘇生した死体。早すぎた埋葬、生きているにも関わらず死んでしまったと勘違いされて土葬されてしまった例が伝承の元となっているらしい。

 昼間は品行方正、優秀な大学生である主人公の影が、夜中独りでに動き回り、隠された秘密を暴き出すのだ。ジキルとハイドのように、この影の存在を知らない主人公は痕跡に恐恐としながら日々を過ごす。

 純粋で、哀切で、奇妙な小説を書くと誰かが評した。朔太郎自身がそんな感じだと、伊波は普段接していて思う。

 特殊な障害を負った、悲劇の小説家。少しの謎と不幸は、なまじか他が整っているだけに魅力としてとらえられる。本人に自覚はないようだが、うまくいけば彼自身がもっと売れるだろう。

 中山朔太郎特集の企画草案をファイル保存し、伊波はパソコンのスイッチを切った。真っ暗な社内に、誰ももう残っていない。しん、としたフロアを眺め渡し、コートを手に取った。鞄と書類束を持って、部屋を出る。月を背に、廊下に出ようとしたところで床に長く影が伸びた。


「ナハツェーラー・・・」


 夜毎墓から甦り、教会の鐘を鳴らすという吸血鬼。もはや死んだものと、埋葬された者。本人の知らない真実を知り、暴こうと徘徊するもう一人の自分。

 三日以上前のことは知らない朔太郎。彼の影は、すべて知っているのだろうか。

 ナハツェーラーの鳴らす鐘を聞いた者は皆殺しにされ、彼の影に触れた者も死ぬという。

 昼間に会った、朔太郎の顔を思い出す。端正だが青白く、自信のない表情。

 彼の秘密は、いつか甦るだろうか。そして、彼を殺してしまうのだろうか。

 もっと彼について知りたいと思う。だが、秘密は秘密だからこそ魅力なのだろう。

 伊波は矛盾した思考を抱えたまま、扉を施錠しビルを出た。




 西洋風の、レンガ造りの箱みたいな建物。暗闇の中そっと置かれたように佇む自宅を、なんとなくまじまじと眺めてから、朔太郎はVividのドアを開けた。

 今夜の客は三人いて、誰も彼も初見だと思ったが、二人組の女の方が豊島に続いて親しげにおかえりと声をかけてきた。


「サクくん、今帰ってきたの?」


「ええ、まあ」


 どうやら顔見知りらしいがよく分からないので適当に相槌を打つ。


「一緒に飲もうよ。こっち来て」


「・・・スイマセン、俺これから仕事なんです。締切やばくて」


 本当は差し迫ったものなどない。女が嘘に気づいたらどうしようかとどきどきして気が気じゃない。


「はいはい、ダメだよー。先生は忙しいからねー。次は何飲むのー?」


 豊島が助けてくれて、謝意を込めて会釈する。


「じゃあまた今度ねー」


 はい是非、と手を振りかえして奥の階段に逃げ込んだ。

 知らない人。いや、覚えていない人だ。ずいぶん気安い感じだったから、何度か一緒に飲んだのかもしれない。気さくに話しかけてもらったのはうれしいのだが、戸惑いと罪悪感がやはり掠める。人と会うのは、緊張する。相手とどの程度の新密度なのか、距離を測りかね、どういう話し方をすればいいかわからない。不自然ではなかっただろうかと考えながら階段を上った。


「ただいま・・・」


 部屋に入ると、安心する。

 壁、床一面に散らばった紙の白い色が電灯の光を反射して眩しい。テーブルのようになってしまったグランドピアノに、敷きっぱなしの布団。机。どこもかしこも紙に浸食されていて、ちょっと異様な風景だ。自分としては落ち着く空間だが、これはたしかに少し片付けた方がいいよな、としみじみ思う。


 さて、どこから手をつけたものか。迷って右往左往しながら、まずいつも通りに壁のメモから今日済んだものを剥がして床に放った。新しいメモを貼り、さらに増えた床の紙たちを振り返る。大きく息を吐いて、その場に座り込んだ。手近なものから目を通し、明らかに要らない物ともしかしたらこの先必要かもしれない物とを分けていく。手が届かなくなったら移動して、とにかく目につく紙類を積み上げていった。こうしてみれば、ほとんどがいつ何をするといった内容で、携帯にも残してあるのですぐに処分していいものばかりだ。というか要らなくなった時点ですぐにゴミ袋に入れればいいのだが、段々とすっきりいていく部屋にどこか落ち着かない気持ちになる。記録としてはしっかり残しているのに、目に見えるメモを捨てるのが恐い。


 とりあえず、いつ何が大事になるかわからないと自分に言い訳しながら隅に寄せた。

 目につく所の散らばったものを一纏めにしただけでもずいぶんときれいになった気がする。隠れていた床の目や家具が見えて、なんだか新鮮だ。


「ん?なんだこれ」


 基本的に白い紙が多い中に、色のついたハガキが混じっている。


「登録?そんなのしたのか」


 それはクレジット会社のDMで、サイトに登録したことに感謝する云々と書かれている。そもそもクレジットカードなんて持っていたのか、という疑問が頭を過った朔太郎である。確認してみるとたしかにカード入れにそれは収まっていて、一体いつどんなつもりで作ったのか我がことながら首を傾げた。


「使わねーし、むしろ持ってても危なくねえか・・・?」


 気になって重要な契約書などが入っている引出しを開けてみた。いろいろな会社のDMや請求書、領収書などの書類の中に、葉書と同じ社名の封筒を見つけた。曰く、月々の明細書の送付を廃止するのでサイトで確認してほしいということらしい。もともとカード払いで買い物などそうしないのだが、詳細が分かって安堵する。


「びびった・・・」


 ため息を吐いて封筒に葉書を入れ、仕舞った。ついでにぱらぱらと引出しの中を見ると、この中身も随分と整理が必要な気がする。積もり積もったり三年分。はたして一年前に期限が切れた火災保険の契約書は取って置いた方がいいのだろうか。どうなのだろう。


「ん?」


 下手に今手を出すと藪蛇になりそうだと迷う指先に、一冊のノートが触れた。抜き取って見てみると、表紙はくすんでかなり使い込まれた物だと分かる。勿論、見覚えはない。


「なんだ、これ・・・」


 捲った最初のページに書かれていたのは、ひどく汚い文字の羅列。


「平、成・・・二十二、年、四月二十、五日?」


 歪んだ線の塊を、苦心して読み解く。どうやら、日記のようだ。


 三年前、事故直後に書かれた、朔太郎の日記であった。





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