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私の家族は面白い!?

我が家の権力について

作者: 白零志亜

 我が家の上下関係を分かりやすく説明すると……

 ってこれはそれ以前の問題じゃない?

 だって、一般家庭に上下関係とかあるのかな?

 もしかしてこれが普通なの?

 え?だって気になるじゃん。

 一般家庭に我が家みたいな分かりやすい上下関係がねずいているのかどうか。

 この間夕飯作りながら誠也とそんな話で盛り上がってたよ。”我が家の常識と一般家庭の常識について”ってさ。

 ……えー、クダラナクナンカナイヨー。これ結構大事なんだよー?

 ん?どう大事かって……そりゃまぁほら?外と中が違えば将来いろいろと大変……どうでもよくないでしょうが!

 あんちゃんもいずれぶつかる問題なんやで!? 

 もうちょい真剣に考えたらどうかいな!


 なんて言う下らない話をして夜兄貴の部屋から追い出されたのは、つい最近の話である。




「ねぇひどくない?あれはやりすぎだと思うんだけどなぁ」

 それから一夜あけて今日。

 いつも通り朝の洗濯物やら洗い物やらを片づけた美咲は、誠也しかいないリビングでグチっていた。

「どぉんまい、お姉ちゃん」

 まぁるい机の上、なにやら紙や本などを広げて作業をしている弟は気のない言葉を返す。

「追い出されるのはしょうがないとしても、あんな追い出し方ある?」

 誠也の隣でグデ~ンと机の上に上半身を投げ出しながら眉間に皺を寄せる。

「まだ中身の残っているペットボトルを投げつけなくてもいいじゃんよぉ」

「お姉ちゃん、お兄ちゃんの部屋でグチってて追い出されたんだら?」

「うん、そう」

「それじゃあ文句言えないね。しょうがないしょうがない」

 誠也のその物言いに美咲は机に押しつけていた自らの鼻をそのままの体制で誠也の方に向け、唇をタコのように突き出した。

「なんか今日の誠也つめたいよー?」

 なんでよーと不満げに言うも、誠也は答えずに机に向かって何かをがんばってやっている。

「ねぇ、あんたさっきから何やってんの?」

「んー? べっつにー、何もぉ」

 上の空。

 美咲はなんとなぁく気になって上半身を持ち上げた。

 寝そべった体制のままでは何も見えない。

 起きあがると、誠也が何を書いているのか上から見下ろせるようになり体を寄せてさらにのぞき込んだ。

「…………あぁ、なるほどね」

 そこに書いてあったのは三角の図。

 中にいくつかの線を書いて使う、ピラミッドのような形をした図だ。

 中には、下から順番に『力がない』順に名前を書いていく。

 私たちはこれを『王政国家の図』と呼んでいる。

 さて、では上から読んでいこうか。


 まず、一番上に君臨するは”王”の祖母。

 この人の言うことなら誰でも聞いてしまうという力の持ち主だ。

 一番上に立つ王様であり、私たちの強い味方だ。

 その一つ下には母親の頼子が”大臣”として立っている。

 祖母の言うことはホイホイ聞くが、他の者の言葉には一切耳を貸さない性格を持っているためこの位置づけになった。

 その一つ下には”大貴族”として父親が。

 もう一つ下にはぐうたらで何もしない”貴族”の兄がいる。

 この二人は微妙だ。

 説明しようがないほど、女に対して押しが弱い。

 父に関してはもう少しがんばれば大臣に昇格できるはずだが、今の時点では到底難しいだろう。

 影ながら応援する私である。

 その下は”平民”のちびっ子二人。

 私と誠矢はどうやらその下であるようだ。

 私と誠矢の名前の隣に小さく『奴隷』と書いてある。

 何じゃこりゃ。


「ちょっと誠矢。”奴隷”って何、奴隷って」

「え? 違うの?」

 そこ、無邪気に首を傾げるな。

「違うだろ。せめて召使いとか執事とか」

「ん、それじゃ執事の方で……」

「いや待て何でそっちをチョイスした?」

 迷いなく紙に向き直る弟をあわてて止める。

「だってお姉ちゃんが言ったんじゃん」

「まあそうだけど」

「ん? ……だってお姉ちゃん、男でしょ?」

「どうしてそうなった!? そして無邪気に首を傾げるな気持ち悪い!」

「違うの?」

 さらに首を傾げる弟。

 う、ちょっと可愛いじゃないかと思ってしまう私っていったい……。

「気持ち悪いっ!!」

 二通りの意味で。

 そして目の前でニヤついてるこいつが憎たらしい。

「おにぃちゃん」

「黙っとけ!!」


 暖かい日差しが我が家を照らす。

 静かなほんの少しの微睡みのあと、また今日も平穏な日々が始まった。


「ってぜんぜん平和じゃねぇーー!」

「まぁまぁお兄ちゃん落ち着いて」

「お前は黙っとけぇーーーー!!」




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