第6話
side 煌明
「うだぁぁぁぁ。」
あれから俺たちは神咲先輩を手伝った。
如月・・・・もとい翠(名前で呼べと執拗に言われたので言うことにした)が
少ししかやることはないと言ってたからすぐに終わるだろうと思っていたが・・・
「だ、大丈夫ですか?」
「無理・・・死ぬ・・・」
「情けないなぁ。最初の意気込みはどこにいったんですか。」
「・・・誰のせいで瀕死になってるんだと思ってんだ?」
「いやぁ、うちも少しやりすぎたかなぁとは思ってますよ。」
「・・・反省はしてないようだがな。」
「そうですよ。まったく、あんなはしたないこと・・・」
「だから、羨ましかったら会長代理もやればいいじゃないですか。」
「う、羨ましいなんて思ってないですよ!」
「はぁ・・・翠ちゃんの言う通り、私もやればよかったかなぁ。」
「・・・もしもし真由っち?心の声が出ていますよ。」
「はぁ・・・・ハッ!?い、いや、別に何でもないですよ煌明さん!」
「・・・・ん?何か言った?」
「い、いえ・・・」
「とにかく!今後ああいうことはやめてください如月さん。」
「はいはい、控えますよ~(三分間だけ)。」
「はぁ・・・・なんかよく分らないけど、話がまとまったんなら帰るぞ。」
「あっ、はい。ではさようなら。」
「ん?お前等は帰んないのか?」
「い、いえ、ちょっとやることがありまして・・・」
「ふぅ~ん・・・・そうっすか、分かりました。んじゃ俺はこれで。」
「気をつけてね~。」
はぁ・・・今日は色々と災難だったな。
まだなにか起こりそうな気がするよまったく・・・・
side 真由
「ふぅ・・・・では、行きますよ。」
「えっ?どこに?」
「どこにって・・・さっき仕事しているときに言ったじゃないですか玲ちゃん。」
「あぁ~、そういえばそうだったね。色々ありすぎて忘れてたよ。」
「さっきから何の話をしてるんですか?」
「これからちょっとした警護的なことをするんだよ。」
「警護?何の警護ですか?」
「煌明さんをです。」
「黒吹先輩を・・・・ですか?」
「彼は編入初日にSクラス入りという前代未聞の事態を引き起こしています。
これをあのグループが見逃すはずがありません。」
「あっ、なるほど・・・・」
「それで、あたしたちが『黒吹君を護り隊』を結成したわけだよ。」
「・・・その何とか隊には、うちも入っちゃってる感じですか?」
「もちろん!あたしは人の許可なんて必要としないからね。」
「・・・・玲ちゃん、その発言はもはや独裁者だよ。」
「よ~っし、じゃあさっそく行動開始!!」
「はぁ・・・・分かりましたよ。」
玲ちゃんは相変わらずマイペースだなぁ。
まぁそこが玲ちゃんのいいところでもあるからいいんだけど・・・・
よし、私も気合い入れて煌明さんを護るぞ!!
side 煌明
「俺としたことが・・・・」
黒吹煌明さんは絶賛大ピンチ中!!その理由は至って簡単、ただの迷子だ!
「・・・・テンション上げたところで状況は何にも変わらないのが
現実ってやつだな。はぁ・・・・虚しい。」
まぁ確かに、俺は極度の方向音痴かもしれないが・・・
それにしたってここはでか過ぎだろ!ったく・・
「はぁ・・・落ち込んでても何も変わらないか。
よしっ、気持ち切り替えてこの迷宮から脱出するか。」
そのためにはまずここがどの辺りなのかを知らないとな。
えぇ~っと、案内板的なものは・・・・・・・な、無いだと!?
「マジかよ!?おいおい、どうしたら・・・・・・ん?あれは・・・・」
何だあの人?こんなところに一人で突っ立って・・・・
まぁいいか、ここの人みたいだし、あの人に道を聞こう。
「あの、すいません。」
「・・・ん?」
「ちょっと校門までの道を教えてほしいんですが・・・」
「校門までの道を教えてくれって・・・・新入生か?」
「まぁ、そんな感じです。」
「ふ~ん・・・・名前は?」
「黒吹煌明です。」
「!?・・・・そうか。お前が・・・」
「・・・どうかしたんですか?」
「・・・・道を聞きたいんだったな。それならここをまっすぐ行けば着くぞ。」
「そうですか。どうも御親切にありがとうございました」
「今度は道に迷うなよ。」
「あはは・・・頑張ります。」
「(何たって、俺たちがこれからお前のために『歓迎会』を開いてやるんだからな。)」
「(・・・・今の人、何か妙な感じがしたな・・・)」
side ???
「おい、今そっちに向かわせたぞ。」
『・・・・!確認しました。どうします?』
「そんなもんは決まってる。いつもの場所へ誘い込め。」
『分かりました。誘い込んだあとは?』
「俺が来るまで手は出すな。他の奴らにも重々言っておけ。」
『了解。』
「くっくっくっ、待っていろ黒吹煌明。今すぐお前を歓迎してやる。」
side 煌明
「う~ん・・・・あの人の言った通りまっすぐ来てみたが、どこにあるんだ?」
見たところ体育館みたいなところしかないが・・・・っと、中から誰か出てきたな。
「おや?こんなところに誰かが来るとは。」
「いやぁ、少し道に迷ってしまって。あなたは何故こんなところに?」
「まぁ何というか、ここが隠れ家的なものになってね。
以外と快適だから毎日ここにいるんだよ。」
「へぇ、そうなんですか。」
「っと、立ち話も何だし、中に入りな。お茶菓子ぐらいは出すよ。
それとこの学園の見取り図と現在位置も教えてあげよう。」
「本当ですか!じゃあお言葉に甘えて・・・」
「どうぞどうぞ~。」
うわっ、本当に家みたいだな。生活感に溢れてる。・・・けど何だ、この妙な感じは?
まるで大勢の人に見られてるような・・・
「どうかしたのか?」
「・・・いえ、本当に家みたいだなぁと思って。」
「ははは、ここは自分の生活用品をかき集めてるからね。はい、お茶と菓子。」
「ありがとうございます。」
「・・・・・・。」
「?・・・どうしたんですか?」
「・・・何でもない。気にしないでいいから君は食べてなよ。
俺は案内マップを取ってくるから。」
「あ、はい。色々とすいません。」
はぁ・・・真由と言い神咲先輩と言い、この学園の人は本当にいい人ばっかだな
・・・・・・翠は違うか。それと・・・・
「ほら、これが案内マップだよ。」
「ありがとうございます。えぇ~っと、ここの場所はっと・・・・」
「ん?食べないのか?」
「え?あぁ、まぁそうですね。俺別にこんな処で寝るつもりないんで。」
「・・・は?」
「俺が気付かないとでも思いましたか?これ、睡眠薬か何か入ってるでしょ?」
「ッ!!??」
「あぁ、やっぱりですか。俺こういうのには鋭いんですよ。」
「くっ・・・・・」
さて、どう動くのか・・・・『くっくっくっ。』・・・・ん?
「さすが、噂のゴールデンルーキーだ。」
「か、頭!!」
「それを察知するとは思わなかったよ。」
「そりゃどうも。しかし頭か・・・あんたも随分と古臭い呼ばれ方をされてるな。」
「ふん、呼び方なんてどうでもいいことだ。それより・・・・翔。」
「ッ!?」
「さっき、俺が来るまで何もするなと言ったはずだが?」
「ヒッ!!??」
おーおー、凄い殺気だな。でもSクラスだから当然っちゃ当然なのか?でも真由や四ノ宮
があんな風にできるとは思えないな・・・・神咲先輩はできそうだけど。
「・・・・まぁいい。今回はなかったことにしよう。
こいつを上手く中に手引きしたみたいだしな。」
「はぁ・・・はぁ・・・あ、ありがとうございます。」
「・・・随分と恐怖政治だな、あんたのグループ。」
「力は偉大だ。これまでの歴史でも力を持った奴がその時代を支配してきた。」
「だがそう言う奴に限ってすぐ足元をすくわれて崩れるがな。」
「ふっ・・・そうかもな。だからこそ、俺達はその足元を強固なものにしたい。」
「・・・・・。」
「俺達に賭けろ、黒吹煌明。」
「は??」
「お前はここに来たばかりだが、既にSクラスだ。この意味が分かるか?あの『女王神』
がお前の力を認めたということだ。」
「『女王神』・・・・理事長のことか。」
「力で言ったらお前はSクラスでも上位に入るはず。そこでさっきの提案だ。」
「・・・話の繋がりが見えない。俺の力とあんたに賭けるっていうのとどう関係してる?」
「ふん・・・・確かに、これだけじゃ分からんな。さて、どこから話すか・・・・・・
・・お前、今『五帝』の席が一つ空いているのは知っているか?」
「あぁ。確か『漆黒の夜叉』とやらがいなくなってそのままだったな。」
「そうだ。そして今、世界中の『人外消滅』がその空いた席を狙っている。
そして、それは俺たちも例外ではない。」
「・・・つまり、あんた達がその空いた席を取っちまおうって訳か。」
「そういうことだ。」
「でもそれであんた達が席を取ったとしても、空いてるのは一つだろ?」
「それに関しては何の問題もない。俺自身が『五帝』になれば、自動的に俺に付いている
奴らは『五帝』として認識される。まぁ言うなれば一つのチームだ。
現に『五帝』の一人、『光聖の魔女』はそういう形だ。」
「それで、あんた達に賭けるってのは?」
「俺たちのチームに入れ。そうすればお前も『五帝』になれる。保障しよう。」
「・・・・・なるほどね。」
要は戦力強化か。全く、この人たちはどんだけ俺を過大評価してるんだか。
いくらSクラスにいきなり入ったからといっても、『人外消滅』としての経験
はゼロだというのに。
「さぁどうする?この状況だ。お前も答えはおのずと決まってくるだろう。」
まぁ確かに、返答次第では全員が襲い掛かってくるだろうな。
「・・・ひとつ聞きたい。何故あんた等は『五帝』に・・・地位にこだわる?この学園の
Sクラスに所属しているだけで名誉なことだと聞いた。何をしようとしている?」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・何も。」
「?」
「『五帝』になったところで別に何もしない。少なくとも俺はな。俺はただなれればいい。
俺という存在を世界に知らしめることができればそれでいい。」
「・・・・・・。」
「お前も少しは分かるはずだ。自分は本当に必要とされているのか。自分という存在は
この世界に居ていいのか・・・・・。それを証明するための『五帝』だ。
俺が『五帝』になり世界がどう思うか。俺はそれが知りたいだけだよ。
だから、『五帝』になるために俺はどんな手でも使う。」
「集団で『歓迎会』とやらをやっているのもそのためか。」
「あぁ。そして俺の誘いを断った奴には力で知らしめてやった。俺という存在を。」
「ここにいるのは、あんたの思想に共感した奴らという訳か。」
「俺たちはただ自分の存在価値を知りたいだけだ。それのどこが悪なんだ?」
「・・・・・。」
「俺たちと共に来い黒吹!」
「はぁ・・・・・・存在価値、ねぇ・・・・。」
「・・・・・・。」
「悪いが、興味がないな。」
「・・・・そうか。残念だ。」
ザザッ!!
ありゃりゃ、こんなにいたのか。予想の二倍はいるな・・・・
「本当に残念だ、黒吹。」
「あんたの話を聞いたときから答えは決まってたよ。」
「ふん・・・・。なら、お前にはここで力というものを教えてやろう。」
「そりゃ楽しみだ。」
とはいっても、さすがにどうしたもんかなこの人数。しかもほとんどが拳銃か。
というか、それが普通で俺が異例なんだったな。さて、この刀一本でどうやって
・・・・・・・ん?
「あれ?刀が無い・・・・・・・・あっ」
そういえば生徒会室で手伝いしてる時、翠が見せろって言ったから見せてやって
そのまま渡したまんまだった………
「おいおい、『人外消滅』にあるまじき姿だな。
まさか武具を失くすとは。」
「あぁ…………」
「ふっふっふっ!今ならまだ答えを変更することも可能だが?」
「バカ野郎。一度宣言したことをすぐ諦めるなんてのは腰抜けがすることだ。
俺はそんな奴に成り下がるつもりはない。」
「フン…………やれっ!!」
その男の掛け声とともに、待機していた全員が煌明へ襲いかかった。




