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“元”伝説の勇者様!!  作者: 暇神
第1章『元勇者の新たな門出』
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第3話『天下無双の電子精霊』

≪――本艦は戦闘航行状態への移行を開始


 ――戦種を遠距離戦闘と認証、敵反応との距離を一定に保つため、急制動を行った後全速での後進を開始します


 ――急制動まで残り5秒、船体が大きく揺れますのでご注意ください≫



 船内に響き渡るフェアリスのアナウンス。それからきっかり5秒後、天空翔る偉大な竜王(シエル・バハムート)の超音速航行を可能とする2枚の大翼が、進行方向に逆らう形で大きく羽ばたいた。


「うおっ――ぐぅ」


「――っ」


 船内に掛かる多大なG、唸りを上げる機関部と魔導炉。進行方向へ向けて生み出していた風と逆向きの風がぶつかり合い、それだけでAAAクラス程度の魔物なら叩き落としそうな烈風が吹き荒れる。



≪――全機関部出力緊急上昇、エネルギーライン5番6番をオープン


 ――エネルギー充填率30%上昇、全力での後進を開始


 ――敵魔力反応との距離、現段階でおよそ38キロ。基本性能で劣っているため、秒間約250mずつ距離を詰められます≫



「それだけあれば十分だ!!『天空切り裂く万の聖光(アルテミス)』発射準備!!」



≪――Yes,My master.無限魔導炉出力緊急上昇


 ――『機械仕掛けの大魔術師(マキナ・マギ)』への魔力充填開始≫



 『天空翔る偉大な竜王(シエル・バハムート)』に搭載された二つの攻撃系武装の一つ、それが『機械仕掛けの大魔術師(マキナ・マギ)』。

 俺が『固有能力スキル』を用いて創り出した物であり、持ち得る効果は『魔力の充填、魔力回路と術式の展開、そして魔法の発動』、つまり魔法発動時において、肉体を持たないフェアリスの手足となる武装だ。

 魔導理論や術式などの知識はフェアリスが、それを行動に移す手足は機械仕掛けの大魔術師(マキナ・マギ)が、魔力は無限魔導炉がそれぞれ担い、1つの魔法を発動する。


 大賢者の知識に、機械仕掛けの超高速かつ正確な術式展開、魔素(マナ)がある限り無限に魔力を供給する無限魔導炉。


 その力はまさに天下無双。戦闘状態のフェアリスは、魔導の頂点に立ちし者(スペル・マスター)に勝るとも劣らない魔術師となる。



≪――魔力充填率50%突破を確認、照準の設定を開始


 ――魔力回路及び術式を展開――完了≫



 『天空翔る偉大な竜王(シエル・バハムート)』の前面、手前から奥へと直線状に並ぶよう展開されるのは、銀光煌めく2枚の大型魔法陣。

 その内の手前、奥と比べて少し小さめな方の魔法陣に、莫大な魔力が白銀の光となって収束されて行く。



≪――使用魔力量『200000AURA(アウラ)』で固定


 ――照準を最終設定――lock-on


 ――魔力充填率80%突破、術式詠唱を開始します


 ――シャルル・アイリス・スペルマスター著『大魔導原典(グラン・グリモワール)』第6章34節より抜粋『――聖なる光は人を癒し魔を祓う。今、我が導きの元、光集いて光条を成し、天空切り裂く刃となれ――』


 ――魔力充填率100%到達、術式詠唱完了――――撃てます≫



「遠慮はいらん!!ぶっ放せ!!」



≪――Yes,My master.奔り貫け――――天空切り裂く万の聖光(アルテミス)



 謡う様に紡がれる術式名。瞬間、魔法陣に収束していた銀光が爆音とともに撃ち出された。


 吹き荒れる魔力の余波、反動により激震する天空翔る偉大な竜王(シエル・バハムート)。撃ち出された銀光はもう1枚の魔法陣に触れると同時、吸い込まれる様にして魔法陣全体に拡散。1万本の光条に姿を変え、標的へ向けて空を奔る。


 外を映し出す全てのスクリーンが白で染まり、思わず目を閉じるほどの光が操縦室内に満ちた。

 流石は教皇級にランクされる魔法、余波からして半端ではない。


 だが当然、威力は折り紙付きだ。


「『聖天系統』や『天空系統』の遠距離攻撃魔法に共通する属性効果【超高速飛翔】。『天空系統』に分類される『天空切り裂く万の聖光(アルテミス)』にも当然その属性効果が付与されている――さぁ、超音速で迫る1万の光線、巨体の竜種に避けられるかな?」


 メインスクリーンに映し出される標的の姿。200mを越える巨体に、その胴体でさえ小さく見えるほどのとてつもない大きさの双翼。SSクラスの下位に属する翼竜種、名を『グランド・ワイバーン』。


「成程『グランド・ワイバーン』か。竜種の中でも最速クラス、秒速1000mも頷ける。が、それは直線加速での話し、避けるのに三次元的立体挙動を要する術式をかわすには巨体すぎるぞ!!」


 俺の言葉と同時、30キロ弱の距離を一気に奔り抜けた天空切り裂く万の聖光(アルテミス)が、グランド・ワイバーンへと襲いかかった。

 超音速で飛翔する光線を避けようと縦横無尽に飛び回るグランド・ワイバーン。しかし【追尾】を付与されている術式を避けきるには、やはり巨体すぎた。数瞬の遅れが僅かな隙を生み出し、たった1発、1万分の1発が翼に掠る。

 それにより微かに乱れる動き、連鎖的に生まれる隙。全長200m超、横幅に至っては300mを越える巨体を瞬く間に銀光が包み込み、次の瞬間には収束、大爆発を巻き起こす。


 閃光が弾け、白煙と業火の華が空に咲き、余波の烈風により遥か下方の大地が蹂躙されて行く。



≪――対象への天空切り裂く万の聖光(アルテミス)直撃を確認


 ――撃墜には至りませんでしたが、30%ほどのダメージを与える事に成功したと予測


 ――対象の速度、60%低下を確認


 ――現時点での天裂き翔る竜王神話(ドラゴン・ブラスト)直撃確立、98%です≫



 纏わりつく白煙と業火を翼の一振りで一掃して姿を現すグランド・ワイバーンだが、その体には至る所に傷が出来ており、一見するだけでかなりのダメージを負った事が分かる。

 激昂した様子で咆哮を上げると再度こちらへ飛び始めるが、その動きにも先程までの機敏さが無い。


「行けるな――天裂き翔る竜王神話(ドラゴン・ブラスト)発射準備!!」



≪――Yes,My master.天裂き翔る竜王神話(ドラゴン・ブラスト)の発射準備を開始


 ――無限魔導炉出力上昇、超過駆動域での動作に移行


 ――天裂き翔る竜王神話(ドラゴン・ブラスト)発射機構への魔力充填を開始≫



 『天空翔る偉大な竜王(シエル・バハムート)』が搭載するもう一つの武装、『天裂き翔る竜王神話(ドラゴン・ブラスト)』。

 『機械仕掛けの大魔術師(マキナ・マギ)』と同じく、俺が『固有能力(スキル)』を用いて創り出した物であり、天空翔る偉大な竜王(シエル・バハムート)の主砲となる武装だ。


 その威力は魔法に例えるなら上から3番目の伝説級。最高位階であるEXクラスの魔物(モンスター)だろうと、直撃すればただでは済まないレベルの威力。

 当然、必要とする魔力量は洒落にならないし、少しでも操作を誤れば暴発してしまうが、天空翔る偉大な竜王(シエル・バハムート)とフェアリスの手に掛かればその心配は無い。



≪――魔力充填率50%突破を確認、照準の設定を開始


 ――大型5連装砲撃魔法陣を天空翔る偉大な竜王(シエル・バハムート)前面に展開≫



 朗々と響きわたるアナウンス。天空翔る偉大な竜王(シエル・バハムート)の前面、手前から奥へと直線状に並ぶよう展開される5枚の魔法陣。



≪――使用魔力量『600000AURA(アウラ)』で固定


 ――照準を最終設定――lock-on


 ――魔力充填率80%突破


 ――耐熱、防音、耐衝撃術式展開完了


 ――魔力充填率100%到達、伝達各部異常無し――――撃てます≫



「砲撃を許可する!!撃て!!」



≪――Yes,My master.翔けよ竜王――天裂き翔る竜王神話(ドラゴン・ブラスト)



 瞬間、咆哮の如き爆音を響かせ、白銀極光の大砲撃が放たれた。手前から奥へ、1枚、また1枚と【増幅】の属性効果を付与した砲撃魔法陣を通過するたび、ただでさえ桁違いな威力はさらに跳ね上がって行く。

 そして最後の1枚、一番奥の5枚目を通過すると同時に大破壊力を秘めた白銀極光は一気に加速、【超高速飛翔】の上位効果である【光速】の効果を持って撃ち出された。


 純白に染まり用を成さなくなるスクリーン。耐衝撃術式を施したにもかかわらず激震し軋む天空翔る偉大な竜王(シエル・バハムート)


 そんな攻撃の結果を知ることすらままならない状態が数秒続いた後、


「うーん?どうなった?」


「分かりかねますね」


 ようやく映像が戻ったスクリーンだが、そこにグランド・ワイバーンの姿は無く、天裂き翔る竜王神話(ドラゴン・ブラスト)の余波によって木々が消し飛び、大きな道の様になっている地表だけが映っているのだった。

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