妖精湯治 その2
湯治のその2です。鬼怒川はおろか、日光にすらケンカを売ってます。まあ歯牙にもかけられないでしょうが。
妖精湯治 その2
さて、鬼怒川方面の旅も2日目。
まずは朝からメモを見ながら、ホテルの売店でお土産を買って、寅さんには甘いもの、馬さんには何故か売ってた岩塩かな?でも、あれ?何か頼みごとが書いてある。けどこれは・・・同じ関東方面とはいえ、今回の旅ではこっちには行かないな。またの機会という事で。後は・・・と。なかなかハードな内容だ。まだ会えていない蛇さんには食用コオロギが良いかな。猿は人間用の何かで良いかなと
。思いきや、あれ、お願い事項がある。これは途中で寄るあそこかな?あとは・・・と心配事は尽きない。え~とあの方は良いのかな。来てるし。だけどバスの乗客じゃないから持って帰れるわけで無し、と困っていると、シイナが、
シイナ「般若湯が良いんじゃないかな。。」
と、アドバイスをくれた。でも何か悔しそうだな。まあ、地酒の良さそうなのを4合瓶で。他にもミイナの意見も聞いて、鬼怒川での買い物を終わる。う~ん、人間へのお土産ないな。道の駅の人は、だいたい来てるしなぁ。
良いころ合いで朝ごはんの時間。今朝も別室・・・なんだ、「般若の間」って。まあ、あの女将さんだからなあ。ただどうやら昨日(今朝だろ)深酒しすぎて、今朝はお休みだとか。僕も何となく顔を合わせづらいからまあいいか。でも朝から豪勢だ。地場産の納豆に半熟卵と湯豆腐に熱い味噌汁、そして名物の味噌漬。これがあれば天国さ。他にも各種いろいろ。コーヒーに牛乳やジュース。デザートもあって、妖精どももご満悦だ。シイナが少し元気がなさそうなのが心配だけど、まあ、すぐに立ち直るよ、とはミイナ談だ。そのミイナは・・・何故か沢蟹(生もの)と格闘している。何があったんだか。
ミイナ「この、この。」
おいおい、食材に負けるなよ、妖精。
食事が終わったので、食休みを兼ねて一階ロビーで珈琲タイム。うん、これは欠かせない。そこでバスの運転手さんと同席したのだけれど、何か探してる。
運転手「おかしいなぁ、昨日はあったんだけど。」
「どうかしたんですか?」
運転手「やあ、ミイナシイナちゃんたちのとこの。」
あ、そう言う括りなんですね、僕。それで?
運転手「バスのフロントに置いといた、セントくんとドアラが無くなってるんだよ。どこやったかなあ。」
「さあ、特に見ませんでしたが、もう一度バスの中を探してみては?」
運転手「う~ん、そうだね。もう一度探してみるよ。」
そう言って外へ出て行った。大変だなぁ。おや、入れ替わりに入ってきたミイナとシイナがサムズアップをしている。何だ、あいつら。いつの間に?
ミイナ「ナイス、ダーリン‼」
シイナ「今、丁度お返ししてきたところだったからナイスたイミングよ。」
ああ、やっぱり妖精関係ね。そういえば昨日の、到着時もどっか消えてたもんな。もしかして。
「セントくんって、あのお方か?」
ミイナ「さすがだね。それに憑依して来たの。」
シイナ「めざといわね。気をお遣いになる方だから、ご移動も色々大変でいらっしゃるのよ。」
やっぱりそうか。でも、あれ、ドアラって⁇
ミイナ「そのうち判るかもよ。」
シイナ「まあ、判らない方がいいかもだけどね。」
??。まあいいか。気にするだけ無駄だろうな。
珈琲も飲んだし、そろそろ出発だな。
他の道の駅のお客さんたちと共に昨日のバスに戻ると、さっきの運転手さんが挨拶してくれた。
運転手「やあ、さっきはどうも。あったよ、運転席に。座席に置いてあるとは思わなかったけど。」
見つかって良かったですね、とだけ声をかけて僕もバスに乗り込んだ。後ろからついてきていた仲居さん(みなさん、鬼、なんだよな。)達がお見送りをしてくれる。ありがとうございました。いざ、出発。
日光東照宮は鬼怒川からは割と近い。奥座敷とはよく言ったものだが、今回の旅行、各地の道の駅の視察旅の側面もある、事になっているから面倒だ。その他いろいろツテを頼っているみたいで、昨日あれだけの料理がでたのに、予算の余裕はあるらしい。2日目は丸一日日光なんだから旅行名、日光への旅、でも良かったのに。まあ、でも日光だとリピーター多いだろうからなあ。僕でさえあるし。僕が最初に日光に来たときは、まだ爺さん婆さんが健在であり(いや~元気だったな、当時は。)東照宮のてっぺん、東証大権現の廟所まで行ったものだけど、今でも行けるかな。もう無理だろうな、体力落ちたし。あの時、中禅寺湖畔の釜飯屋で湯葉釜飯を食べたのがきっかけだったのだろうな、今に至る僕の湯葉好きの。道すがら懐かし気に独り言を繰り返す僕を、周りの席のお客さんはおろか妖精たちまで遠巻きに見ているだけだ。うむ、これは楽かも。
ミイナ「ね、ちょっと気持ち悪いよ。」
シイナ「せめてあたしたちとぐらい会話したら?」
いや、それが一番気持ち悪いだろう。他の人、から見れば。だけどミイナがちょっとくらい顔を言った。
ミイナ「さっきの話、憶えてる?」
シイナ「ドアラのマスコットの事よ。覚えてるわよね。」
そういえばそんな事いってたような。
ミイナ「あれ、当たっちゃったみたい。」
シイナ「まさかこんな状態になってるなんて。」
何が?もうすぐ見どころだぜ、そんな意味深な。
バスが進む。看板が見える。まずは華厳の滝かぁ。ただ、窓を開けていると、どこからともなく焦げ臭い臭いが。・・・え、火事⁉
ミイナ「あちゃぁ、やっぱりか。」
シイナ「たぶん、焼き栗の仕業ね、あの中だと。他にもいそうだけど。」
何か真剣そうな顔で、妖精どもが変な事を言ってる。
「おい、なんか焦げ臭くないか?」
小声でミイナに質すと、
ミイナ「あ、気がついた?注意はしてたんだけどね。」
シイナ「まだ多分ボヤの状態だけど、華厳の滝がアレじゃあねえ。昔と違って水道水だから、自然の制御が効きづらいのよ。」
ミイナ「心配だから、東照宮にいそご。」
シイナ「ちょっと行ってくるわ。大人しくしていてね。」
何も説明せずに、妖精二人は慌てたように運転席あたりに飛んでいく。何か騒いでいるようだけど、聞こえないし、何しに行ってるんだろう?
疑問に思うも車は進む。しばらくするとバスは東照宮の有料駐車場に着いた。ドアが開くとわっ、ここにも焦げ臭い匂いが漂っている。まだ早い時間ではあるが、周りにいた観光客も何事かと辺りを見回している。家のバスは・・・あれ、みんな寝てている⁉先ほどまではそんなことなかったのに。
ミイナ「緊急事態だから、眠ってもらったの。外の方もシイナ達が手を打ってる。」
急いで僕のところまで飛んできたミイナが事態を説明してくれる。よくよく見ると周りの観光客も何故か倒れ伏している。いつのまにかバスの周りには鬼怒川温泉の仲居さんの格好をした鬼女が数十人、陽明門の方を見て何か捲し立てている。先頭に女将さん、て、般若?
ミイナ「ダメだョ。もう引退してるんだから、そんな風に言ったら。」
シイナ「そうだよ。みんなこの日光を守るために頑張ってるんだから、」
戻ってきたシイナも一緒に、ミイナに促されて僕もバスから降りてこわごわ仲居さん⁉達の所へ向かうと、女将さん⁉と一緒にいたのは、あのお方と、ドアラ⁇
僧服のセントくん⁇「やあ、この格好では初めてだね。」
「いえ、判ります。いつもお世話になっています。」
僧服のセントくん「やあ、理解が早くて助かるよ。実はお願いがあるんだ。狼狽えている僕に、横で狼狽えている⁉ドアラを紹介してくれた。
僧服のセントくん「この方は、ここの主神で、東海竜王様だ。あなたには、辰さんと紹介した方が判り易いかな?」
紹介を受け、何かよく解らない反応をするドアラ・・・もとい東海竜王様・・・もとい辰さん。
ミイナ「辰さん、本来しゃべれるんだけど、ここに来てから調子が悪いみたい。」
シイナ「あんた、この方のお話をしっかり聴くのよ。まったくもったいないことね。」
僧服のセントくん「まあシイナ、そう言ったものではないよ。大変なことをお願いするのだからね。そう云う訳で済まないけれど、私たちと一緒に廟所まで行ってくれないかな?」
えっ、この訳の判らない状況の中で?と思わないでもないのだけれど、さすがにそんな事言っていられない雰囲気だ。だから、
「僕で良ければ。」
ミイナ「さすが、マイダーリン♡」
シイナ「ふぅ、じゃあ、行くわよ。さ、竜王様。・・・緊張感、ありませんね。辰ちゃん、行きましょう。」
するとドアラはその場でくるりとトンボを打つと(わあ、凄い。)、元⁉のドアラのマスコットに戻って、駐車場のアスファルトの上に転がった。
ミイナ「竜王様を拾ってお運びして。」
シイナ「あたし達では、霊力が強すぎて触れられもしないのよ。よくもまあ、アノ運転手、こ。れほどの品を2体も持っていたものね。」
僕は言われるまま、転がったドアラを拾い上げ、上着の胸ポケットにしまった。へぇ、これが、いや、この方が東海竜王、もとい辰さんか。畑の連中最強ってことだけれど・・・。
僧服のセントくん「彼と私は神格が違うから、やはり私でも運べないんだ。すまないね。あなたが頼りですよ。」
そんなもったいない。辰さんも僕らの畑の大切な仲間ですよ。もちろん・・・あなたも、とは、知った以上、恐れ多くて言えやしないけれど。
どうやら、鬼女さん達が手を打っていたようで、誰かに止められることも無く僕らは陽明門をくぐった。門をくぐってすぐに蜂の大軍が襲ってきた。けどこれは、周りにいつの間にか立ち込めている煙から逃げているだけだな。倒すまでもない。というか、煙に巻かれてはたまらない。先を急ごう。何か、有名な三猿のあたりの煙が濃いような・・・仲居さんたちが消火活動に入ったようだけど、これは出来れば雨待ちかもなあ。どんどん階段を上って廟所行きの看板は見つけたけれど、何か煙以上に臭ってくる。焼き栗に蜂ときたら、もしかしてこの臭いは。
「なあ、ミイナ。もしかしてこの臭いは。」
ミイナ「さすがダーリン。もちろんう〇こよ。冴えてるじゃん。」
シイナ「ここまで来て解らないんじゃ日本人じゃないわ。まあ緊急事態ではあるから構わないけど。」
なんだその、「まんが日本〇ばなし」的な展開は。やはり現代の一般的人類の与り知る事柄ではないと思うんだけど。
ミイナ「今更言わないの。」
シイナ「あんたが望んで触れたんだから、諦めなさいっていうのに。」
いやいや、だからそれは・・・っと、ミイナが何か寂しそうな顔してるし。ああ、わかってるよ。自分の考えたらずが招いた結果だ畜生。
ともかく次は牛糞対策か?ところが何かが地響きを立てながら、高速で僕らの後ろから上ってくる。アレは・・会津の赤ベこぉ!?あの頑丈そうなフォルムは昨日買ったものに似てなくもないけど、大きさと醸し出す雰囲気はいつもの畑の牛さんだ。なんでここに?
ミイナ「さすが丑さんだぁ。依り代があればひとっ飛びだね。」
シイナ「普段はゆっくりだけど、さすが神牛様だね。じゃあ、p願いできる?」
コクコクとうなずいた赤べこは、背中に僕らを乗せると、高速で牛糞がべたつく階段を上り始める。さすが本家!?足を取られることもなくなおかつ高速で廟所までの道のりを駆け上がる。最初から来てくれたら楽だったのにな、と言うのは贅沢なんだろうな。そういうお約束なんだろうし。
ミイナ「そうそう、何ごとにも決まり事ってあるのよ。」
シイナ「一期一会って言うじゃない。それがこの世の定めなのよ。」
何か判ったような判らんような。ともかくおかげで道のりは大幅に短縮できて、僕らは徳〇三代の廟所入り口にたったのであった。
「でも、大丈夫か?まだ蟹にも本命の臼にも合っていないようだけど。」
ミイナ「蟹なら、今朝ホテルで話をつけたよ。モズク酢をかけてモズクガニにしてやったら。我に返って辰さんに平伏していたよ。水神様に川の者が反旗を翻すなんてあるわけ無いのさ。」
シイナ「先ほどのう〇ちだって、この廟所までは入ってこないでしょう。今頃は我に返ってガタガタ震えているでしょうね。
え~と、擬人化しておっしゃっていますが、牛糞って、ガタガタ震えられるんですかね。まあ、やっぱり気にしたら負けなんだろうか。そうなんだろうな、そうに違いない。僕も気を確かに持たねば。
僧服のセントくん「あなたも判ってきたようですね。良いことです。」
有難いお方にそう言われると、面はゆいやら何やらで、少々いたたまれない。さ、でもこれからが本番だ。と言うか、何すればいいの?
ミイナ「さあ、早くドアラこと竜王様をお出しして。」
シイナ「東海竜王の御帰参を高らかに宣言するのよ。」
そうか、要するに黄門さまの印籠みたいなモノか。蟹さんも平伏したってことだしな。さて、ここは竜王様、いやさ辰っちゃん、期待してますよ。
ところが当の竜王様もといドアラもどきさんは、飛び跳ねたり色々しようとしているのは判るのだけれど、一向に何かが起こる気配がない。
ミイナ「どうしたの、辰っちゃん。」
シイナ「お声もお出しにならず、どうなされたのですか。」
ん~そういえば、喋れなくなってるとか言ってなかったか?言葉は大事そうだから、その辺何かあるんじゃ?
その時、同行していた女将さんが気づいたように声を上げた。
女将さん「竜王様、角はどうされたのですか?力の象徴たるあの御角は。」
そうか、竜と言えば角だよなあ。あれ、でも、どこかで見たことがあるような。昔話なんかで見るようなあの立派な鹿角・・・・・・、あ、判った。あれだ。
えーと、何とお呼びすればいいのかな?
逡巡する僕の様子を見て、ご理解なされたようなあのお方がお声をかけてくださった。
僧服のセントくん「私に呼びかける時は、そうですね、釈迦・・・ではあれだし、セントくんでは心外だし、イムは色々あるし、私の呼称・・・そうですね、クロミとでもお呼びください。
クロミってあなた。そんなサン〇オに喧嘩を売るような・・・でもご本尊もといご本人がそう仰ってるんだから。これまで直接お呼びすることを避けていた自分にも問題があるのだし。それでは・・・クロミさ・・・ま。失礼ながら。
僕はそう声をかけると、セントくんもといクロミさまの頭に生えた二本の角に手をかけて引っこ抜いた。血が噴き出すとかそういうことも無く、あっけなくスポッという感じで角は抜け、僕の手には二本の角が残った。僕はそれをそのまま頭上に掲げ、横で狼狽えているドアラの頭に突き刺した。キランと一瞬辺りが光って、どこからかピロピロリンという感じの効果音が聞こえてきた気がした。気がつくとドアラの姿が掻き消え、そこにいたのは、いや、降臨されたのは、恐れ多くも東照神君、東海竜王その方の尊いお姿であった。
僧服のセントくんもといクロミさま「おやおや、そうか。気づかなかったな。」
女将さんもとい般若「そう、角があっては釈・・・えーとクロミさまではありません。そうか、竜王様の御角か・・・。気がつかないものですね。」
ドアラもとい辰っちゃんもとい東海竜王「ワシとしたことがうっかりだったわい。汝、くろうをかけたのう。」
いやいや、人以上を匂わせるあなた方がそれを言いますか。いや、仰いますか。もうやだ、誰かこの空気をどうにかしてくれ。
ミイナ「ああ良かった。辰っちゃん、この火事どうにかして。あちこちで火の手が上がってきたよ。」
シイナ「そうですね、そろそろ小火では済まなくなりそうです。さあいつものお力で。」
竜王様「シイナよ、ところがのう。願いを叶えるには足りないモノがあってな。」
いささか歯切れが悪く、竜王様が呟く。
ミイナ「何、どうしたの?」
シイナ「もしかして、スランプですか?」
竜王様「いやなあ、ここのところ願いを聞く際に、捧げものを受ける癖がな。」
ちょっと待てや。ここ自分のホームグランドだろ、と、つい詰め寄ってしまう。他の方々は見た感じお手上げといった風に知らんぷりを決め込む構えだ。
だがそこで、ミイナが僕の頬をつついて言ったものである。
ミイナ「上着、ほら上着のポケット!」
シイナ「あんた、良い物持ってるじゃない。これを献上なさい。」
上着のポケットには・・・そういえば昨日ガチャったドラゴン〇ールZのガチャの景品・・・そうか、ドラゴンボ〇ル風の玉が。ちょっと回しすぎたかとは思ったけれど、良かった、7つはある。
「こちらをお納めください、竜王様。」
竜王様「おお、かたじけない。これがあれば。」
途端に、一天にわかにかき曇り、空から大粒の雨が。
クロミさま「ぬし、もう少し出力調整をしてくださいな。」
竜王様「おお、これはしまった。では少し、搾るとしようかの。」
すると、大粒だった雨が小降りになり、霧雨のように恐らく東照宮全体を潤す様な振り方に変わり、あちこちから黒い煙が立ち上っては消え、小一時間とかからず焦げ臭い臭いのみを残して、火の手は消え去ったのであった。
・・・・・・ 鎮火 ・・・・・・
帰りは牛さんに頼ることなく(神牛様なんて、恐れ多くてそうそう乗れるもんかい。)クロミさまと、ドアラもとい竜王様にはマスコット姿に戻っていただいた上で上着のポケットに入れて、徒歩にて陽明門まで戻った。牛さんの特殊能力も知れたので、何か得をしたような余計に疲れたたような。門の周りでは鬼怒川の鬼こと仲居さんたちが小火の後始末に大わらわだった。それでも僕らを見つけると、皆、丁寧にお辞儀をしてくれる。鬼女女将のひろみさんが、僕のポケットのクロミさまことあのお方(ああ、面倒くさい)を気にしつつも、仲居さんたちに指示を飛ばし始める。やっと終わったんだな、と思って眠り猫の前で休んでいると、突然ドーンと轟音を上げて何やら黒こげの物体が門の上から落ちてきた。
ミイナ「あ、あれ、臼だよたぶん。」
シイナ「ホントだわ。今頃何で出てきたのかしら。あれ、でも焦げちゃってる。火にまかれたのかな?」
そう言って妖精たちは、落ちてきた臼のもとに飛んで行った。手すきの仲居さんたちも同様に周りに集まってきて、落ちてきた臼を取り囲んだ。臼は生えていた(!?)足も無残に焦げ、息(!?)も絶え絶えに僕に、というよりも僕のポケットの中の竜神様に詫びていた。
臼「竜神様、面目次第もございません。姿形が変わった程度で大恩あるあなた様に刃を向けましょうとは。この臼め、死んでお詫びするほかにこの不始末を雪げは致しません。」
ミイナ「この臼さんは真っ正直な男らしい、一本気だけど優しい臼なんだよ。例年東照宮の新年恒例の餅つきで活躍していたんだけど、もともとは猿蟹合戦に参戦した、由緒ある臼さんで、ここ東照宮で竜神様のご差配でツクモガミになって、そのまま東海竜王にお仕えしていたの。」
シイナ「そのツクモガミが何してんのよ。」
臼「朝のうちは竜神様を語る奸物とばかり思い込んで、この門の下を通ったら上から押しつぶしてやらん、と息巻いていたのですが、長年手足を引っ込めていたがため成らず、この上は帰り際を襲ってやろうとここで待っておりました、が。]
うわ、僕、あぶなかったのね。ミイナも顔をゆがめている。
臼「とはいえ、この場で栗めの放った火が風に乗りこの門に焦げを作らんとするのを目の当たりにして、竜神様おわさぬ間にこの門を焼け落ちさするは、あまりの不孝であると考え至りまして、飛ぶ火の粉をわが身で受け止め、延焼を起こさぬように必死でございました。その内に振り出しました雨にあなた様の神気を感じ取れまして、ああ、そうかとようやく腑に落ちた次第にございます。なにとぞ、不肖なる我が身をお許しください。」
その時、ただ沈黙していた竜神様が、突然僕のポケットから飛び出し、大ドアラの形をとると、息も絶え絶えの臼の手を取り(なんか変な表現だ)こう告げた。
竜神様「許さぬ。このまま息絶えようなど許すわけにはいかぬ。お主は生きて、なおこの東照権現に仕えるが運めぞ。汝の勝手で逝くなぞ許さぬ。」
うーん、これが神様っつうやつか。判るような判らんお話だ。でもまあ、これで大団円かな。
臼「ははあぁぁ。ご厚情痛み入ります。我が主よ。」
うん、何か終わったみたい。さあこれで御仕舞い。・・・とはならないよなあ。何でこんな事態に。
僕が独り言ちていると、まずミイナが語りかけてきた。
ミイナ「朝に私、蟹さんと渡り合ってたよね。あの時蟹さんも同じような感じだったんだけど、拳で語り合えば解りあえるものなのよ。」
シイナ「あたしも驚いたわよ。星座の方じゃなくて猿蟹関連とはね。もう何百年も前の話の筈なのに。本人たちもほぼ恨みつらみも消えていっる頃だからさ。そもそも当時を知るものなんて、それこそ臼さんぐらいでっ・・・て、あれ、どうしたの?」
僕は考えていたんだ。今回の事態、誰かが裏で糸を引いていたんじゃないのかって。だってあまりにもタイミングが良すぎる。良すぎて何か大団円みたくなってしまっているけど、逆に何かピースが狂っていたら被害が大きくなりすぎないか?ではこんな事をしていったい何を目指していたのか。まずは情報を関係者からしっかり聴きとるべきだ。例えば先触れとなった蟹さんからかな。他にも聴くこと、聞くべき関係者共に多数だ。気になることもあるし。旅程はあと一日半。まずは一度バスに戻って、あの人から聴いてみなければ。それから・・・僕でこの短い期間で解決できるだろうか。まずはどっかで休憩したいな。
その2終
温泉旅行も2日目、なのにまだ終わらない。その3に続いてみたり。もう気力もありませんがネタはある。書けたら投稿してみたいです。でも別の異世界モノ書いてみたいな、と。




