92.謎の夢、カカロジへ
夢を見た。
それは、俺じゃない誰かの何か。
でも、それは俺の体験した記憶のようにも思えた。
イリス、タフト、ナズナ、リアム。
この名前が出たってことは…。
「タフトの過去の体験をした?何言ってんだお前」
「いや、俺も何言ってるかは正直…でもめちゃくちゃリアルだったし、多分俺が絶対知り得ない情報をエルダに伝えることもできる」
「言ってみろ」
ウェンディゴの話や、不審者の話、それにエルダとリアムが2人で魔物を倒しに行った時に村が襲われたこと。
俺が知り得ない、この人達だけの過去。
エルダはそれを聞いて俺の話を信じたのだろう。
「…合ってんな。どうなってんだ?…いや、それよりも…」
「魔物化について…だよな」
「…この話は俺とユージだけで留めるぞ。仮に嘘だとしても、それを試すバカが出るかもしれない」
「それがいいと思う」
花を食べたら魔物化する。
それ自体もかなりヤバい情報な気がするが、花を食べるように勧めるヤバいやつもいる。
そういうことを認識しておくべきだ。
「…俺は一旦カカロジにビーネスとリコリスを送り届けるけど、エルダはどうする?」
「俺ァここに残ってそのことを少し調べてみる。運が良けりゃリアムがここに来るかもだしな」
「イリスには伝えなくていいのか?」
「伝えらんねぇだろ、こんなこと。…カカロジに行ったらセラエムってやつに会うんだろ?そんなら、魔物化について聞いてきて欲しい。Sランク冒険者ならなんか知ってるだろうし」
「わかった」
ということでカカロジに向かうことに。
「リコリス、起きろー」
昨日はめちゃくちゃ遊んでいたらしく熟睡している。
まぁこうなるとは思ってたが。
よく見ると目の周りが少し赤い気がする。
「お別れの挨拶はしたよ、昨日。泣きじゃくってた」
まぁ初めての友達みたいなもんだしな。
別れるのも辛いだろう。
挨拶はちゃんとしたみたいだし、連れてってもいいだろう。
「一旦カカロジまで行くけど、大丈夫そうなら連れてこれるように頼むよ」
とは言っても行けるかは怪しいけど。
まぁ聞くだけ聞こう。
「じゃあまたな」
「うん、またね」
ということで出発する。
痛めつけられたウェンディゴだったり夢の件だったり色々怖いものはある。
慎重に行こう。
「カカロジまでよろしくお願いします」
「よろしく。俺はセラエムって人に会いに行くんだけど、ビーネスは?」
「ちょうど私もセラエムさんに用があるんです」
どうやらお父さんがセラエムと関わりがあったらしく、お父さんが行けない代わりに行くとの事。
それならちょうどよすぎる。
「特に寄るところがないのなら直行しようと思うんですが、どうします?」
「特にないからセラエムのとこに直行でいいぞ」
「なら、そのまま行きますね」
荷台にリコリスと乗って馬車に揺らされる。
村で物資を下ろした分結構広いな。
なんなら前が見える。
「カカロジってどんな場所なんだ?」
「色々便利な場所ですよ。どちらかといえばユージさんの言う転生前の世界に近いですね」
街中には電灯だったりがあるし、馬の必要のない馬車もあるらしい。
…馬の必要のない馬車ってただの車やん。
とはいえそういうめちゃくちゃくちゃすごいのは富裕層しか使えないレベルらしい。
そんな感じで進んでいく。
リコリスの爆睡具合を眺めながらビーネスにカカロジのことを聞いていくが、聞けば聞くほど科学が発展してないか?って感じがする。
「ちなみになんだけど、セラエムって魔法使いの二つ名を持つSランク冒険者だよな」
「そうですね、魔法使いです」
「ということは魔法で発展してるってことか?」
「そうではないんですよね…」
「どういうことだ?」
どうやら魔法使いと呼ばれているのは何をしているか分からないから、ということらしい。
一説によれば指を動かすだけで辺り一帯を爆発させたり、体を重くしたりなどの意味わからんことをしてくるらしい。
「というか、その人って人間なのか?」
「種族は人間って聞きますけど、1000年以上生きてるみたいなので…」
不老なのかな。
俺以上に異世界転生の主人公してない?
「もうちょい色々聞きたかったけど、魔物が近づいてるっぽい。ちょっと行ってくる」
「大丈夫ですか?」
「多分、前戦ったことあるやつっぽいから大丈夫」
ということで行くか。
馬車より先に行くこと数分、宙を舞う鳥が目に入る。
1度見たことある魔物だな。
クローコープス
HP:173 MP:142 攻撃力:153 防御力:117 素早さ:239
弱い者を狙うあの魔物を放置しておけば確実に馬車が狙われる。
なら殲滅が前提だな。
数は3、群れとは行かないけどまぁ多いな。
とはいえ俺の方には気がついてないみたいだし、1体は先に処理させてもらうか。
「ファイアアロー!」
弓を構えるように矢を放つ。
放たれたそれは1体のクローコープスの翼を貫き下に落とす。
落ちてきたそれを剣で刺し、斬る。
動かないことを確認し、残る2体を見る。
こちらに気がついたようだ。
向かってこずにどこかに飛んでってくれれば嬉しいんだが…。
そんなことを考えていると2体のクローコープスはこちらに向かって飛んでくる。
まぁ正直1度見て思ったけどこいつらに負ける理由はないな。
「ファイアボール」
向かってくるのに合わせて火を放つ。
それを避けるように飛んだところを剣で斬り、1体撃破。
残りの1体の攻撃はわざとくらい、避けられないように剣を刺す。
結構余裕を持って勝てるな。
とはいえカウンターとかあんまり慣れないことをするべきじゃない。
結構痛いし、失敗してた時は普通にめんどくさかったし。
とりあえず戻るか。
来た道をもどり、ビーネスとリコリスの乗る馬車と合流する。
「倒してきたからそのまま進んで大丈夫…って、リコリス起きてたのか」
馬車を見るとビーネスの隣にリコリスが座っている。
ご飯を一緒に作ったりして仲良くなったのだろう。
「お疲れ様です。ポーションありますけど使いますか?」
「じゃあいただいて…」
ポーションってあんまり美味しくないよな。
これ傷口にぶっかけるものなのかな。
ということで俺だけ荷台に乗せられてぼっち感満載になりつつもカカロジへと向かう。
結構時間がかかるらしいが、まぁゆっくり行こう。




