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89.名前の無い村へ

「なるほどな…魔石の大きさを見る限り、結構大きな個体だったろう」


昨日洞窟にいた死にかけのウェンディゴの魔石を見せるとエルダはそう言った。

やはりエルダから見ても異常なことらしい。


「わざわざ魔物を痛めつけて放置ってやってること終わってんなァ。それに、周りに死体とか戦闘跡があったわけじゃねぇんだろ?」

「何も無かった。トラップすらない」

「そうなりゃ、相当な手練にやられたんだろうな」


まぁ考えても仕方ないということで街を目指す。

リコリスは昨日遊び疲れたのか背中で寝ている。

いつも寝てるなこいつ。

とはいえ最近は元気になっててちょっと安心。

元気ならそれでいい。


「そろそろ着くぞ」


そんなこんなで街に着いた。

…街って言ってもそこまで大きくないんだな。


「とりあえずギルド行くか」

「ここにギルドなんてねぇよ。ギルドがあるのは2個先の村んとこだ」


まじかよ。

ギルドって街に1個あると思ったんだけどないなんてことあるのか。

てかそうなると魔物でた時どうするん?


「魔物が出たときゃ街の自衛団みたいなのがやるんだとよ。まぁこの国ゃ古いもんだからな」


排他的な思想が多いんだろう。

自分の身は自分で守る、ギルドになんて頼らない、と言った感じか。

ギルドはないものの素材売ったりする場所はあるらしいので諸々を換金して宿屋に行く。


「どうする?何日か休んでいくか?」

「私はどっちでも」

「…どっちでも」

「じゃあ明日出発すっかねェ」


そんなに疲れてないのかって思ったが、普通にベッドの心地が悪い。

こりゃ休めるもんも休めねぇな。


「ギルドがないって言ってたが、依頼とかどうしてるんだ?」

「個人依頼のやつだな。ギルドある場所に向かうなら介入してもらうし、ないなら個人間の取引になんだよ」


結構めんどくさそうだな。

まぁエルダに任せるか。


ということでゆっくり休む。

次の日の朝、エルダが護衛依頼を持ってきたと言うことで集合場所に向かう。

集合場所には大きな馬車と1人の商人がいた。


「ビーネスです。時間通り来てくれてありがとうございます」


商人の方はビーネスという名前の若い方。

目的地はこの先にある村らしい。

そこまで物資を届けるためにここまで来たのだが、護衛の人がここで別れてしまったため新しい護衛を探していたらしい。


「てことでよろしくな」

「はい、よろしくお願いします」


かなりしっかりしてる人だな。

ふざけたこと言ったら殺されそう。


そんなわけで俺とリコリスとイリスとエルダの4人にビーネスが追加されて5人旅。

馬車があるのめっちゃ楽でいいね。

と思ったが、俺とエルダは徒歩らしい。

荷台に乗れるのは2人だけということでそっちにはイリスとリコリスが乗るということで男2人は徒歩。

悲しすぎる。


「ちなみに村ってなんて名前の村なんだ?」

「名前もねぇ村だよ」


名前がないレベルでちっさい村なのか。


「元々ギルドの仮設場所に人が集まったって場所なんですよね。だから名前とか特にないって感じの」

「嬢ちゃんわけぇのに物知りだな」


普通に会話してくれるタイプの人だ。


なるほど、だからギルドのある村なのか。

そもそもこの国に留まる冒険者も少ないらしい。

だからギルドがあっても人がいないから結局無くなるみたいなパターンもあるとか。


まぁ俺でも留まらないわこんな寒い地域。


「とは言え人はいる。だから物資を届けるために商人が行き来してんだよな」

「はい、一応儲かるので。護衛を依頼する分であんまり増えませんけどね」


悲しい現実の話を横でしないで欲しい。

てか、商人って配達員みたいな感じなんだろうな。

儲かっても使う時間がないのが辛いんだよなぁ。


「そういえば、村の方に向かうって言ってたけど街1個経由するのか?」

「しないつもりでしたが…した方がいいならしますよ」


物資を届けるのは村だけなため直進で行く予定だったらしい。


「まぁ寄る必要ねぇし、いいだろ。ユージは一旦村寄ってからカカロジ行くんだろ?」

「あぁ、そのつもり」


村で一旦別れて、カカロジにリコリスを連れてった後にまた3人で旅って感じかな。


「私も村の後カカロジに向かうつもりだったので、引き続き護衛を依頼してもいいですか?」


まじか。

となるとイリスとエルダの2人と別れたあと俺とリコリスとビーネスの3人ってことになるのか。

本当にいいのか?


「俺はCランクだぞ?それに、リコリスは冒険者でもないし」

「大丈夫ですよ。護衛がいるだけでありがたいですし。それに、エルダさんもCランクなんですよね?」


エルダはCランクだけどCランクじゃないんだよ。


「カカロジ方面なら魔物もそこまで強くねぇし大丈夫だろ。馬車乗れて報酬も貰えて断る理由ねぇんじゃねぇか?」

「たしかに、なら請けさせてもらおうかな」

「では長旅になりますね。改めてよろしくお願いします」

「あぁ、よろしく」


ビーネスは現在22歳で父親が商人をやっていたのをきっかけに商人を始めたらしい。

同い年なんだな。


「ユージも前は商人みたいなことやってたんだろ?配達員だっけか?」


あの、その質問されると俺が異世界転生したことバレるくないですか?

てかもうそれなら話した方がいい気がしてきた。

そもそもエルダはイリスにも伝えてたり個人情報を漏洩しすぎな気がする。

まぁいいか。


「前の世界ではこの世界の商人みたいなことしてたな」

「前の世界ってどういうことですか?」

「ユージは異世界転生ってやつしてきたんだよ」

「へーそうなんですね」


絶対信じてないなこの人。

まぁ普通は信じないだろう。

俺が元の世界で「俺異世界出身です!」なんて言われても信じないし。


「まぁ信じられないだろうから、無理に信じろとは言わないよ」

「信じる方が難しくないですか…?」


それはそう。

異世界の知識を使って無双とかよく見たけど、別にそんな細かい知識ないから無双できないんだよなぁ。

証明できないし、証明する必要もないだろう。


「てかエルダに文句言いたいんだった。イリスに勝手に転生したこと言ったろ」

「ありゃ、ダメだったか?」

「普通言わないだろ…」

「まぁイリスだからいいかって思っちまった。すまんな!」


まぁいいけども…。


「異世界の文明とかどんな感じなんですか?」

「え?あー電気が普及してたり機械が進化してたり?」

「…その話詳しく」


ということで元の世界のことを根掘り葉掘り聞かれた。

覚えてないことも聞かれてマジで困った。

この世界も元の世界と同じくらい便利になればいいのに。

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