88.未完成と謎
しばらく進んでいくとイリスの様子が少しおかしく見える。
寒そうにしている…という訳では無いし、なんなんだろう。
「どうかしたのか?」
「魔物が集まってるところがある」
どうやら魔物が全く出てこないのはそれも関係しているみたいだ。
「どうする?」
「うーむ、ぶっ潰した方がいいだろうな。放置してたらダンジョンになるだろうしよ」
「賛成」
ウェンディゴがいたのもこれが影響しているかもしれないのかな。
ということで向かってみることに。
どうやら魔物が集まっているところは洞窟になっているみたいだ。
「どうするか、イリスの魔法で焼き尽くすとかでよくねぇか?」
「ダメ、毒で中が確認できなくなる」
魔物を燃やして出る一酸化炭素が怖いもんな。
となると中に行ってほかの魔法でって感じかな。
「じゃ、行ってくる」
どうやらイリスは1人で行くつもりだったらしい。
さすがにそれは危険では?
「エルダは行かないのか?」
「俺ァ行っても戦えねぇだろうしな。洞窟が崩れちまうからよ」
そういう理由があるのか。
リコリスはさすがに行かせられないし、そうなると…。
「なら俺が一緒に行くよ。足手まといにはならないようにするから」
「それは心配してない。エルダとリコリスを2人にする方が心配」
「…大丈夫、カードゲームしてる」
既にバッグからカードゲームを取り出しているリコリス。
遊ぶ気満々だな。
「お手柔らかに頼むぜ…」
そういえばこの前2人で遊んでたんだっけ。
確かリコリスがボコボコにしてたような気がする。
というかこいつ元気だな。
「じゃあ行こっか」
「そうだな、行くか」
ということでイリスと2人で洞窟へ。
ダンジョンが生成されてしまうと階層が作られ、下に行かなければならなくなる。
ただし、生成前に魔物を全滅させればそうはならない。
全滅させずとも強い魔物を倒すだけでもダンジョンが小さくなるということでとりあえず倒すだけでいいらしい。
「基本は私が戦う。ユージはサポートお願い」
「わかった」
洞窟に入って早速出てきたのはなんかコウモリっぽいやつ。
多分元から洞窟に住み着いてたのだろう。
とりあえず鑑定するか。
「ストーンエッジ」
鑑定しようとした時、イリスが手を壁につけながらそういう。
すると天井や床から岩が生え、コウモリの体を貫いた。
…鑑定させてよ!
始めてみる魔物なんだから…。
「どうしたの?」
「いや、始めてみる魔物だったなぁって」
「モルバット、弱いから気にしなくていい」
イリスにとって弱くても俺にとってバカ強い可能性はあるからな。
というか、洞窟内での土属性の魔法ってめちゃくちゃ強いな。
全ての空間が武器みたいなところあるもんな。
ベルノもそうだったけど、土属性使える魔法使いと洞窟系にいるのまじで頼もしい。
それはそれとして…。
「知識として持っておきたいから、出来れば鑑定させて欲しいなーって。無理なら大丈夫」
「わかった。知識は大事」
次魔物が出てきたら鑑定するか。
「てか何が出るかエルダに聞いておくべきだったかな」
「知ってるよ、ある程度は。モルバットとムブユッカ、あとホワイトウルフとかだったはず」
ホワイトウルフとかいう名前の魔物はなんなんだ。
狼って素で白じゃないのか。
と思ったけど、まじで白い狼らしい。
まぁダークウルフだっけ?もいたしそんなもんだろう。
「あ、スノーウルフだった」
なんだこいつ。
そんなこんなで魔物を殲滅しながら進む。
コウモリっぽいやつに狼っぽいやつ、それになんかでかいキノコもあった。
ちなみにキノコも魔物だったらしい。
毒を吐き出す厄介な魔物らしく、イリスは壁に取り込ませていた。
土属性の魔法便利すぎでは?
「いるね、強いの」
「イリスの強いって俺にとってバカ強いだからめっちゃ怖いな」
近づいてみるとどうやらウェンディゴのようだ。
しかし、明らかに様子がおかしい。
「これは…」
明らかに痛めつけられた痕がある。
ウェンディゴ自体はこの前の2体より明らかに大きい。
つまり、これを痛めつけることが出来るやつがいるってことだ。
「イリス、魔力探知は?」
「何も」
ってことはこれを痛めつけたやつはもう居ないってことだな。
…魔物とはいえ、可哀想だ。
「早くトドメをさしてあげよう」
「なんで?」
「なんでって…可哀想だろ」
「これは魔物だよ。持たない方がいい、可哀想なんて感情は…ストーンゴーレム」
イリスはそういいながら岩のゴーレムを召喚する。
それらは辺りを捜索している。
罠がないか、ウェンディゴになにか仕込まれてないかを確認しているようだ。
しばらくしてイリスはゴーレムを解除し、それらはバラバラになって砕ける。
「サンダーランス」
イリスがそういうと雷の槍が生成され、それがウェンディゴに突き刺さる。
やっぱり、可哀想だな。
「…なんでそんな顔してるの、ユージ」
「可哀想だと思ったからだ」
「さっきも言ったけど…」
「魔物だとしてもだ。生まれが違うだけで同じ生物…きっと、何かが違えば友達とかになれたかもしれない」
転生したからこそ、この世界に神様がいるということを知っている。
もしかしたら転生した時ゴブリンになってたかもだし、虫とかになってたかもしれない…のはさすがにないけど、さっきのウェンディゴもウェンディゴとして生まれたかったというわけじゃないと思う。
「…そう、かも」
「強制とかはしないけど、そういう考えもあるって思って欲しい」
別に魔物が好きとかそういう訳じゃない。
けど、それでも可哀想と思ってしまう。
それにジオラスが望んでた全ての生物が手を取り合う世界。
リコリスが多分、魔物と同じ言葉を喋ってたから現実味が出てきた気がする。
「戻ろうか、他に魔物もいないし」
結局ウェンディゴを痛めつけたのは何かわからなかった。
ちなみにあのウェンディゴが洞窟内で1番強い魔物だったからダンジョン自体は生成されてもそこまで大きいものにはならなかったようだ。
あれ自体はかなり大きい個体で強かったらしいけど、痛めつけられてたからあんまり分からなかったな。
動けないほどやられてるのってやばいよな。
「…おかえり」
「ただいま…ってエルダどうしたんだ」
「もう許してくれ…」
ボコボコにされすぎたのだろう。
可哀想に。
リコリスはだいぶ楽しんでいたようだ。
ということで再び旅路に就く。
明日には街に着きそうだな。




