83.謎の魔物
山も下りに差し掛かり、東から昇る太陽は少し遅くなる。
フローディアが近づいているからか、夜は冷たい。
凍える指で剣を拭く。
星がすげぇ綺麗だな。
そんなことを考えていると魔力探知になにか引っかかる。
…いや魔力強ぇって。
やべぇの近づいてきてるって。
とりあえずエルダ…よりイリスを起こした方がいいな。
「イリス、やばいの近づいてきてる」
「…エルダに頼んで…眠い…私…」
ダメじゃん。
まぁ一応エルダの方行くか。
あの人Cランクの割に強ぇんだよな。
「エルダ、やばいのが近づいてきてるんだが…」
「…ンガッ」
「いびきで返事しないでくれ」
「イリスは?」
「エルダに頼めって…」
「わぁーったよ、行くからちょいと待ってろ」
ということでエルダ同伴でゆっくり近づいてきている魔物の方へ行くことに。
「近いな…エルダ」
「わぁーってる。気配は感じる」
エルダは魔力探知が下手くそらしい。
結構強い魔力を俺でも感じるが、エルダからしたらちょっとしか感じないとの事。
その代わり、気配だったりを感じ取れるらしい。
少しづつ近づいていくとその正体が見えてくる。
それは前に見た事のあるあの魔物だった。
■■■(■■) 種族:■■
HP:281 MP:1433 攻撃力:278 防御力:146 素早さ:127
「あいつ、デーモン…じゃないよな」
「…なんでここに…イートカリーの仕業か?」
エルダの様子がおかしい。
てかあの魔物、あんなに魔力高かったっけ?
個体差かな。
その魔物は何かを探すかのようにウロウロしており、こちらに向かってくる。
「おい、エルダ…エルダ!」
「…ッ…すまん、一旦引こう」
「…わかった」
テントまでは距離がある。
向こうに近づく前に対処はできるだろう。
エルダが何か知ってそうだし、それを聞いてからでも遅くない。
少し離れたところまで来てエルダに先の魔物について話を聞く。
「…あいつァ俺の弟子に酷似している…おそらくイートカリーの幻術だろう」
「どういうことだ?」
「そのまんまの意味だ。俺の弟子と姿形が似てるんだよ」
どんな弟子だよ。
人間じゃねぇじゃねぇか。
お前の弟子は悪魔かなにかかよ。
とは言っても嘘言ってるように見えねぇんだよな…。
「少し落ち着いてくれ。暗闇で見間違えただけかもだろ。俺にはデーモンとかに似た姿に見えた」
以前リアーシがあの魔物をデーモンと呼んでいたが、その理由は今ならわかる。
デーモンロードに近い姿をしている。
前に見たことがあるから。
だからこそデーモンの類いと考えるのが妥当だろうとわかる。
「あれはデーモンだ。もしくはそれに近しい何か。エルダの弟子が魔物かなにかなら話は変わるが、そうじゃないなら見間違いだ」
「…そうじゃねぇんだ…見間違うわけねぇんだよ…」
何かありそうだな。
めちゃくちゃトラウマそうにしてるし聞かない方がいいんだろうなぁ。
「今はあれをなんとかしよう」
「…そうだな…やつのステータスは?」
「MPがめっちゃ高かった。ほかはそこまで」
「…イリス起こした方が良くねぇか?」
それはそう。
「まぁやるか…」
ということでVSデーモンっぽい魔物。
前回と同じなら爪での攻撃とかもしてくるし、それも注意。
どんな魔法を使ってくるかは分からないが、そっちはエルダが対処してくれるらしい。
まずは不意打ち。
エルダがなんか気みたいなのを溜めてそれを魔物に向かって放つ。
スキルでそういうのがあるらしい。
波動拳かな?
「こいよォ!」
味方でもわかる程の圧。
こっちは威圧とかなのか。
隙を作るからそこに魔力をありったけ詰め込んだ魔法剣をぶつける。
「■■■■■」
推測通り魔物は魔法を使ってくる。
エルダはそれを拳で打ち破り、どんどん殴っていく。
…なんか聞いたことのある言葉な気がする。
気のせいか?
「■■■■■」
再び放ってきた魔法をエルダが打ち消して反撃のアッパーで魔物を打ち上げた。
「ユージ!」
「任せろ!」
落ちてくる魔物の下に行き、魔法剣を構える。
あとは重力に任せればいい。
「■■■■」
そう思っていると空中にいる魔物が火の槍を放ってくる。
おそらくファイアランスだ。
…ヤバくね?
「ユージィ!俺を信じてそのままいろ!」
「わかった!」
ということでエルダを信じてこのままでいることに。
…怖すぎるだろ!
目の前まで火の槍が来てるんだぞ!
チビるって!
「ウィンドウォール!」
えっ、エルダの魔法で耐えるとかないよな?
絶対破られるだろ。
そんなことを考えているとエルダが空中を蹴って空へ上がっていく。
なるほどそういう事か。
あれで耐えようとしてるのではなく足場にして上に行く。
それでファイアランスを拳で相殺。
エルダらしい戦い方だな。
「おんどりァ!」
エルダが俺に向かって飛んでくるファイアランスに向かって拳を振るう。
「あっ」
その瞬間、エルダは足を踏み外し下に落ちて行く。
…え、じゃああの火の槍どうすんの?
そんなことを考えていると魔物と共に火の槍が落ちてくる。
俺目掛けて一直線に。
今までありがとうございました。
死因はファイアランスでの串刺しです。
「ファイアランス」
死を覚悟していた時、横から別の火の槍が飛んでくる。
なんか知らんけど大丈夫そう?
なら、あとは魔物をぶっ倒すだけだ。
「喰らえ!」
落ちてくる魔物に魔法剣を思いっきり突き刺す。
中にある硬い何かを砕きながら、魔法剣は魔物を貫いた。
「ユージ、大丈夫?」
「まじでありがとう…イリス来てくれなかったら死んでた…」
さっきのはイリスの魔法だったようで、それが魔物のファイアランスを相殺してくれたらしい。
イリスは心配で見に来てくれたとのこと。
まぁ結果的にその心配は的中した訳だが…。
「いやぁすまんすまん!踏み外すとは思ってなかったんだがな!」
「俺死ぬとこだったんだぞ…」
「…すまん…」
思ったより反省してそうだし、許してあげるか。
まぁ結果的には生きてるしな。
イリスに感謝しろよお前。
というか、こいつは一体なんなんだ。
「…こいつ、やっぱり前に見たデーモンっぽい魔物に似てる」
「デーモンっぽい魔物?」
「その時一緒にいた仲間がデーモンっぽいけどデーモンじゃないって言ってたから」
デーモンロードと比べるのはあれかもだが、デーモンが持ってる羽とかしっぽとか持って無さそう。
そういうのを踏まえると多分こいつはデーモンじゃない。
それにこいつは…。
「こいつ、魔法を使う時声を発してた」
あれは、リコリスが発してた言葉と同じだった。




