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82.幻影、心を蝕む

違う、こいつは親父じゃない、幻覚だ。

だって、もうこの世界にいないはずなんだから。


剣を取り、魔力を込める。


「まぁ落ち着けよ。久しぶりの再会なんだ、ゆっくり話そうや」


…違う、違うんだ。

やめろ、こいつは斬らなきゃダメなんだ。


「ユージ、大変だったな」

「…親父…俺…」

「言わなくていい、辛かったな」


イートカリーの見せる魔法。

それは、相手を油断させるための魔法。


「こっちで上手くやれてんのか?ほら、お前友達少ないだろ?」

「上手くやれてるよ。今だって3人の仲間と旅してるし」

「彼女はできたか?」

「…できたに決まってるだろ!」


この世界に来て、いちばんの後悔。

それは肉親と二度と会えないということ。

大した親孝行もできていない。

その後悔が、油断を誘う。


「なぁ、ユージ。もう一度、抱きしめさせてくれないか?」

「なんだよ親父、気持ち悪いな」

「いいだろ?久しぶりの再会なんだ」


イートカリーのステータスはゴブリンと大差ない。

武器を持っていなくとも、成人男性なら簡単に倒せるだろう。

しかし、油断をしていれば首元を一撃でかっ斬られる。

そして、殺される。



1歩、1歩、近づいていく。

かつての後悔を、踏み倒すように。


「…ダメだよ、ユージ」


小さい少女の声が聞こえた。


「リコリス?起きてたのか」

「…うん」

「紹介するよ、こっちは俺の親父」

「…違うよ」

「違うって…何がだ?」

「…それは、お父さんじゃないよ」


何を言っているんだ。

そう思いながら横を見る。

そこにいるのは俺の親父で、俺を育ててくれた人。


「…《■■■》」


リコリスの小さい声が、暗い夜に響く。

小さいけど、はっきりと聞こえる。


親父は立ち上がり、舌打ちをしながら去っていった。


「親父!」


あとを追い、そう呼びかけた。

しかし、そこには何もいなかった。


そこで改めて理解する。


「…ごめん、ユージ」

「いや…いいんだ。あれが親父じゃないことくらい、わかってた」


リコリスが止めてくれなければ俺は殺されていたかもしれない。

それでも、やっぱ悲しいものだな。


「大丈夫?」


振り返るとイリスがそこに立っていた。

どうやらリコリスがいなくなったことに気がついて起きてきたらしい。

それで様子を見に来てくれたのだとか。


「大丈夫だ。リコリスのおかげで。ありがとな、リコリス」

「…うん」

「眠いだろ?イリス、一緒に戻って寝てあげてくれ」

「しなくていいの?交代」

「次はエルダの番だろ?それに、2人の方がリコリスも寝やすいだろ」

「わかった」


そういうと2人はテントへと戻って行った。


もう変わる時間だが、少し夜風に当たっていたい。


「時間になっても来ねぇと思ったら…何してんだユージ」

「…まだ、寝てても良かったんだぞ」

「明日に支障が出るだろ?早く寝た方がいいぜ」


ごもっともすぎる。

だけど、寝れる気がしない。


「イートカリーならもう出ないと思う。それに、幻術も解かれてると思う」

「どういうことだ?」


イートカリーが親父に化けて出たこと。

そして、騙されて食われかけたこと。

リコリスがそれを追い払ってくれたこと。

それを話した。


エルダは笑うかなって思ったけど、笑わずに最後まで聞いてくれた。


「そいつァ…ツレェだろうな」

「…笑わないのか?覚悟して、それでも殺せなかった俺を」

「俺が同じ立場だったら殺されてたよ」


同じ立場だから共感してくれる。

それができる大人でもある。

この人が旅に着いてきてくれてよかった。


「…俺ァ自分の手で殺した弟子と、その奥さんも出てきたよ。どっちも俺が殺したみてぇなもんだ」

「…」

「そんな奴が出てきたら、逃げる以外なんも出来ねぇもんなんだ。戦うなんてもってのほか、逃げるのも辛かったさ」


ただ強い魔物なら拳で殴って解決出来る。

でも、精神的に攻撃してくるタイプは厳しい。

意外な一面だな。


「親父さんのこと、好きだったんだな」

「…あぁ。なんたって、1人だけの父親だからな」


話してスッキリした。

ということでエルダにバトンタッチして寝ることに。


おはようございます、ユージです。

昨日の親父の姿形を思い返したのですが、なんかちょっと違うなぁと思いました。

多分髭生えてたわ。

ってことで出発。


「なんか、空気がいいね」

「そうかァ?あんま変わんねぇだろ」

「回ってないし、道。進めてる」


そう言われ周りを見ると確かに景色が進んでいる。

どうやらちゃんと抜けれたみたいだ。


本来イートカリーは長い時間をかけて幻術で疲労させるらしいのだが、今回は早めに出てきて早めに諦めてくれたおかげでかなりスムーズに進めるらしい。

あと3日くらいで降りられるとの事。


「…なにかいる」

「なにかって…なにが?」

「…わかんない」


そう言われ辺りを見渡すが特に何もいない。

擬態系の魔物か?と思いイリスに聞くがイリスの魔力探知にも何も引っかからないとの事。


「…あれ」


そう言われ見た先には祠のようなものがある。

デジャブかな?

なんかどっかで見たことあるぞ。


「エルダ、これは?」

「あぁ、それはSランクの魔物が封印されてるやつだから触るなよ」


危険すぎて草。

んなもんこんなとこに置くな。


「前あったら死ぬって言ってたけど封印されてるんだな」

「あー、そんなこと言ったな。実際はめちゃくちゃ前に勇者だかなんだかが封印したんだとよ。忘れてたわ」


なんだこいつ。

50代でボケてきてんのか。


「で、どんな魔物だったの?」

「時空を操る魔物だってよ。詳しくは知らねぇが、その分身が今も世界中にいるらしいぜ」


時空を操る魔物って神みたいなもんだろそれ。

そのレベルがSランクってヤバくない?


「ちなみにその化身もAランクレベルのバケモンだから、気ぃつけろよ」


化け物が化け物産んでて草。

もう死を覚悟します。


ちなみにSランクの定義なのだが、暴れたら世界がやばいってことらしい。

まぁ…そうだよね。


冒険者のSランクも他のSランクの冒険者を考慮せずに考えた時世界ぶっ壊せちゃう人達が集まっているとの事。

つまりジオラスやモミジは世界壊せちゃうレベルだったのか。

そんな化け物と喋ってたの俺。


そんなことを考えながら進んでいくが、特に何事もない。

そのまま日が沈んできたため野営となる。

昨日と違いかなり順調に進む。


「かなり魔物が少ねぇから、夜は注意しろよ」


ということで夜になり、見張り番。

何も出なければいいが…。

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