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81.人の心を蝕む悪夢

ということで再び登山を再開。

そこそこ歩いたところで違和感を覚える。


「…ここ、さっきも通らなかったか?」

「通ったと思う。さっきつけた傷跡が残ってる」


イリスはそういうと木を撫でる。

木にはナイフで付けられたような跡があった。


さすがAランク冒険者、俺と違ってすぐ気がついて確かめてたのか。


「捕まっちまったか…そうなると厄介だな」

「どういうことだ?」

「こいつァイートカリーの幻術だ」


最悪だ。

ヤベェやつに捕まっちゃったじゃん。


イートカリーの能力には大きくわけて2つ種類がある。


1つ目、対象の記憶の中にいる人物を見せる幻術。

こちらが本来備わっている幻術らしい。

以前エルダが会った時はかつての弟子の姿で現れたらしい。


2つ目、対象の感覚をバグらせる能力。

こちらがこの山に生息するイートカリーの能力らしい。

本来は使い得ないものなのだが、Sランクの魔物の影響で使えてしまうとの事。


今俺たちを捕まえているのは2つ目の能力。

先に進むには幻術を打ち破るか幻術の使用者を殺すしかない。

しかし、イートカリーは非常に狡猾な魔物。

対象の精神が弱まるまで姿は見せないらしい。

となると頼りはイリスだけだな。


「無理、ごめん」


どうやらイリスは幻術対策の魔法を持ち合わせていないらしい。

…まじかよ、詰んだか?


「ちなみにエルダはこの状況になるかもって予測してなかったのか?」

「まぁ予測はしていたが、イリスなら大丈夫だろって思ってたんだよなァ…すまん!」


俺の異世界生活終わりました。

という冗談はさておき、こうなったらイートカリーが出てくるのを待つしかないらしい。

狡猾といえども魔物は魔物、腹を空かせれば我慢できずに出てくることもある。

その時幻術に負けなければいいだけだ。


「なら、対策しておこう。何が出てくるか予めわかっていれば対処しやすいだろ?」

「賛成」

「…そうだな、そうするか」


なんだ今の微妙な間は。

1回幻術に会ったエルダがそういう言い方すると怖いんだけど。


「出てくるのはエルダだと思う、私の場合。そもそもいないから、深く関わってきた人」


何その悲しい話。

めちゃくちゃ申し訳なくなるんだけど。

聞きたくなかったよそんなこと。


「なら殺せるな。よし、ユージはどうだ?」


言ってて悲しくないのかお前は。


「俺は出てくるとしたら両親かな。恋人とかはいなかったから」


…言ってて悲しくなるな。

とは言っても多分出てくるなら親2人のどっちかだろう。

可能性があるなら友人だが、親の姿の方が殺しにくいからなぁ。


「それならユージも大丈夫そうだな。今この世界にいない人間だから、迷いなく殺せるだろ」

「無茶言うなよ…幻術とはいえ親の姿形してたら殺しにくいだろ…」

「なんで?殺せるでしょ、幻術ってわかってるんだから」


鬼かこいつは。

いやまぁ幻術だって覚悟しとくか。


「ちなみに俺ァ多分前回と同じだろうな。役に立たねぇと思うから助けてくれよな」


無責任すぎて草。


「何か理由があるのか?」

「…トラウマみてぇなもんだ。思い出したくもねぇ」


まぁ50年以上生きてればトラウマのひとつやふたつあるか。

それならしょうがない。

最悪イリスが助けてくれるだろ。


「ちなみにリコリスは?」

「…わかんない」

「出てくるならダンボだと思う。とはいえ、そもそも出てくるかすら怪しいが」

「どういうこと?」


ということでリコリスの固有スキルについて説明。

多分魔物を操ったり会話ができる能力。

ぶっちゃけチートすぎる。

俺にくれ。


「ってことは今イートカリーに大声でお願いすりゃァ幻術といてくれんじゃねぇのか?」

「…多分、無理」

「ゴブリンとかには反動がなかったけど、シーサーペントの時は反動があったんだ。多分、相手の強さが関連してんだろう」

「ならイートカリーは弱いし行けるだろぅ?」

「…そもそも大きい声出せない」


そっちだったかぁ。

まぁたしかに、大声を出してるとこは見た事ないな。

それにあの固有スキルがそもそもどういうものか分からない以上頼るのは良くない。

というか頼らないって前に決めた気がする。


「大丈夫、私が何とかするから」

「お願いしますイリス様…何卒…」


ということでイリスにおまかせ作戦で行こう。


しばらく歩いていくが、いつまで経っても先に進めない。

一旦ここで野営をする事に。


「エルダは前に何かあったのか?その、言いたくないなら言わなくていいんだが」

「何かあったかって…なんの事だ?」

「弟子のことだよ。ほら、前にイートカリーに会った時戦えなかったんだろ?」

「あー、その事か。そうだな…簡単に言えば、弟子を俺が殺した」


重すぎて草。

聞くべきじゃなかったかな。


エルダはそういいながらテントを立てている。

俺はリコリスの晩御飯の用意をしていたが、エルダはイリスに聞かれたくないようでそちらをちらちら見ていた。


晩御飯を食べ終わったあと、再びエルダの方へ行く。


「弟子を殺したって、なんか理由があったのか?」

「あったが、まぁ大した理由じゃない」


言いたくないってことかな。

そもそも踏み込むべきじゃなかったか。


「そのお弟子さんって…」

「イリスのオヤジだよ」

「だから気にしてたのか、イリスが聞いてないかどうか」

「まぁ本人は気づいてるかもだがなぁ。いつか言わなきゃだが、今じゃねぇってずっと逃げてる。置いたもんだな」


何があったのか分からないが、後悔していることだけは伝わってくる。

深く聞くべきではないとわかっていても、聞いてあげたいというエゴがいる。


「俺ァもう寝る。順番になったら起こしてくれ」


そういうとエルダはテントへ行ってしまった。

聞くべきじゃなかったかもしれないな。


そんなことを考えながら夜空を見上げる。


山の空って綺麗に見えるよな。

…俺の場合誰が出てくるんだろうな。

誰が出てきても殺せる気しねぇな。

まぁそれがイートカリーの狙いなんだろうが。

警戒しないとだな。


「…空、綺麗だなぁ」

「そうだな」


ぼそっと呟いたひとりごと。

誰かが返事をした。

横を振り返れば、もう会えないはずの人がいた。


「よっ、久しぶり。少し大きくなったか?」

「…親父…」


それは、俺を育ててくれた、親父だった。

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