79.死の山へ
何もすることなく街をブラブラする。
なにかないかなー。
「そこのかっこいい兄ちゃん、見ていかないかい?」
「…俺か?」
「そうだよ、あんた以外にかっこいい男がどこにいるんだい!」
あーね。
そういう呼び込みね。
俺は引っかからないよ?
「これ2つでいくらだ?」
「銀貨6枚さね」
「…銀貨3枚」
「いや、銀貨5枚」
「4枚だ。それ以上は出せない…」
「毎度あり!」
何やってんだ俺は。
しかもこんなアクセサリーが1個銀貨2枚?
ぼったくりすぎる。
まぁリコリスとイリスへのプレゼントとしよう。
…俺もおじさん臭くなってきたな。
ということでそのまま山を越えるために必要そうな道具だったりを買っていく。
そんなこんなでだいぶ日が傾いてきた。
ご飯を済ませ、宿屋に戻ると既にエルダは戻ってきているようだった。
ちなみに隣の部屋のリコリスとイリスも戻ってきているようで部屋の明かりがついている。
扉をノックする。
「2人ともいるか?」
「いるよ。入っていいよ」
ということでお邪魔します。
…女子の部屋とかではないな。
まぁ宿屋だし、同じ内装だし。
「どうかしたの?」
「これ、さっき買ったアクセサリー。2人にって思って」
ということで買ったのがこちら。
つけていると魔力を少しづつ貯めてくれるネックレス。
そしてそれと同じ効果のある色違いのネックレスだ。
「これ…」
「怪しそうなおばさんの口に乗せられて買っちゃったんだ。俺はMPとかないから、良かったら貰ってくれ」
「いいの?」
「あぁ、受け取ってくれると助かる」
「ありがと」
2人にネックレスを渡し、部屋に戻る。
魔力を貯めておけるネックレスってすごそうだけど、あんな胡散臭いおばさんが売ってるわけないし、それを銀貨2枚はアホすぎる。
さすがに偽物だろうけど、まぁオシャレとして貰ってくれたのだろう。
「おう、戻ったか。何してたんだ?」
「詐欺にあってイリスにたかってた」
「ユージ…最低だな…」
「冗談だよ」
まだ寝るには早いのか少し暇そうにしているエルダ。
それならと思いフローディアについて少し詳しく聞くことに。
「なぁ、フローディアってどんなとこなんだ?」
「フローディアか。まぁ簡単に言えばでかい雪国だな。国土面積がでかいのと、国を囲んでいる山がでかくて難攻不落の大国なんて言われたりもしてたらしい」
たしかに前地図を見た時かなりでかく見えた。
それに、1週間から2週間かかる山を越えないといけないのはそりゃ難攻不落だわ。
雪国ってことで年中雪が降っているらしいのだが、季節とかはあるのだろうか。
「ちなみにだが、俺の住んでたとこはフローディアの中でも山になってる場所でゴミみたいな立地だったぜ」
「なんでそんなとこに住んでたんだ?」
「大人の事情ってやつだよ…お前さんも大人になればわかるさ…」
いや俺もう20歳超えてるからな。
…この人55歳だっけ。
エルダおっさんすぎるだろ。
「ま、明日から山に入るんだ。ゆっくり休めよ」
そういうとエルダは布団に潜ってしまった。
明日から1週間ちょっと山で生活だもんな。
早めに寝るか。
おやすみなさい。
ということでおはようございます。
エルダはもう起きているようで布団を見るが既にもぬけの殻。
とりあえず顔洗いに行くか。
外まで歩いていくとエルダがいた。
「おはよう、エルダ」
「おう、ユージか。おはよう」
なんか懐かしいな。
最初の朝も、こんな感じだったな。
「ウォーター」
水を出して顔を洗う。
この魔法自体はエルダに教わったんだもんな。
今じゃウォーターブローまで使えるようになって…。
成長が著しいんじゃないか?
「もうこの世界での生活は慣れてきたんだな」
「え?あぁ、だいぶ慣れてきたよ。といっても、命の価値とか戦闘とか種族とか…元の世界とは違いすぎるものはまだ慣れないけどな」
人の死に慣れたかと聞かれれば答えはノーだ。
まぁ戦闘には慣れてきたけど、慣れちゃダメな気がする。
それに対して種族もあんま慣れないな。
人間や獣人、エルフにドワーフ、それ以外にも沢山いる。
実際に見てもファンタジーすぎる。
「そういうもんだろ。なんせ、お前さんは20年以上別の世界で生きてきたんだろ?なら、仕方ねぇもんさ」
そうだな。
20年も生きてきた常識を突然変えるのは難しいだろう。
ならいっか。
軽く話しているとイリスがリコリスを連れてくる。
だいぶ眠そうにしている。
「おはよ、エルダ、ユージ」
「おはよう2人とも。…リコリス、イリスに迷惑かけてないよな?」
「…うん、多分」
「大丈夫だよ。迷惑かけてない。妹ができたみたいで、楽しい」
楽しんでるみたいでよかった。
ということで用意が終わったので出発することに。
「お前たち3人はあの山は初めてだよな」
「俺はそうだな。リコリスもずっとあっちの大陸にいたみたいだし」
「初めてかな、物心がついてから」
昔フローディアに住んでて、1、2歳でこっちに来たんだっけ。
それだと覚えてないわな。
「なら気をつけろよ。あの山は本来横を突っ切れば5日以内に通り抜けることができる」
1週間から2週間かかるんじゃないのか。
てことはなにか要因があるのか?
「ある魔物と、この山を覆う瘴気が合わさった結果迷いの山脈、死の山なんて呼ばれてやがる」
詳しく聞くと、ある魔物とはイートカリーという魔物らしい。
身体能力自体はゴブリン以下、厄介なのはその能力らしい。
イートカリーの能力は対象の記憶を読み取り、その幻影を見せるもの。
…ヤバそうなやつが出てきたな。
「ちなみに俺は何度か遭遇したことがあるが、戦えなくて走って逃げた。まぁちゃんと戦えば殺せるレベルの雑魚だから気をつける程度でいいぞ」
強すぎるんだけど。
遭遇したら俺の場合何が出てくるんかな。
まぁ大丈夫だろう。
心配なのはリコリスだな。
気にかけておこう。
「で、瘴気の方だが、こっちはとあるSランクの魔物だ。遭遇したら死ぬから気にしなくていいぞ」
「気にするでしょ、死ぬって言われたら。どんな魔物?」
「俺も知らん。知ってるのは化け物がいるってことだけだ。生きてるだけで魔力が漏れ出して毒になる魔物。考えるだけ無駄だぜ」
もう行く気失せたんだけど。
俺死ぬくない?
もう嫌だ。
「あとは単純に魔物が強い。最低でもDランクレベルしか出ないから注意しろよ」
俺もう死んだかな。
生きて帰れればいいな。




