72.海大蛇とお友達
再び2日間の船旅。
前回と違って今回の旅の仲間はリコリスだ。
俺が守らなくては…。
そんな冗談は置いといて、前回は海賊にセイレーンとめっちゃくちゃ危険だった。
2回も守られてたしな。
…冗談抜きで俺がリコリスを守らないといけないな。
アメリアは俺を拾ったあと、操縦の方に向かった。
まぁあの人が船長だし、そもそもあそこで俺を拾ってくれたこともかなり奇跡に近い気がする。
ちなみに俺はと言うと今船の中にいる。
リコリスが眠そうにしていたので寝かせ、隣で待機。
離れてる間にフードが外れるとかがいちばん怖いからな。
「オエッ…」
隣で嗚咽をしている人がいる時が着き、隣を見ると明らかに具合の悪そうな男性がいた。
「だ、大丈夫か?」
「…大丈夫、だ…オエッ…」
持っていた紙袋を渡し、背中をさする。
どうやらかなりの船酔いをしているようだ。
まぁ初回の俺よりはマシみたいだが。
空腹の状態の可能性も考えて飲み物を渡し、飲んでもらう。
とりあえず、少し落ち着くまでここで背中さすって、落ち着いたら風にあたりに行こう。
そう考えているとリコリスが声をかけてくる。
「…ユージ?」
「起こしちゃったか?ごめんな」
「…大丈夫」
まだ眠いらしくポワポワしている。
そのまま膝に寝っ転がり二度寝を始めた。
懐かれていると喜ぶべきなのだろうか。
妹がいたらこんな感じだったのかな。
「オエッ…」
あ、忘れてた。
船酔いをしている人がいたんだった。
しばらく背中をさすっているとだいぶ良くなってきたようだ。
「リコリス、風にあたりに外に行きたいんだけど、ちょっといいか?」
「…うん、行く」
ということでこの船酔いをした男性とリコリスを連れて風にあたりに外に行く。
外に出れば心地の良い風が頬を撫でる。
「すまない、だいぶ落ち着いた…」
「大丈夫だ。俺も初めて乗った時だいぶ船酔いが酷かったから」
ということで互いに自己紹介をする。
彼はゼノンというらしい。
色んなところを旅しているが、船旅だけなれなくて一生船酔いしているとの事。
俺は1回乗ってかなり慣れたけど、慣れない人は慣れないんだろうな。
「俺はユージ。今はこの子と旅をしてる」
「そうか」
…あんまり興味無さそうだな。
まぁ興味を示される方がめんどくさいからちょうどいいが。
「なにか食べ物は持ってないのか?」
「あいにくだが、俺はご飯を必要としない。だから持っていない」
まじかよこの人。
なんかそういうスキルがあるのかな。
船酔い対策で軽い軽食…消化の良いものを食べた方がいいということで買っていた非常食の中の消化のいいものを渡す。
「これ、空腹だと船酔いが酷くなると思うから食べてくれ」
「…そうなのか。では、いただくとしよう」
ゼノンはそれを頬張ると、こちらに感謝を伝えてくる。
「代金はこれで足りるだろうか」
そういいながら金貨を渡してくる。
ヤバすぎるだろ。
そんな価値ないって。
「いいよこんなに。そんなに高価なものではないし」
「だがあいにくこれしか持ち合わせていない。受け取ってくれ」
「いや、まじで受け取れない…貸し1ってことでどうだ?」
「…わかった、そうしよう」
良かった、さすがに受け取れないし貸し1にできて。
まぁ船旅後会うか分からないから貸し借りとか無さそうだけどな。
というかご飯を食べたことないってヤバくない?
金貨しか持ってないし…この人やばい人なのか?
そんなことを考えているとアメリアの大きな声が聞こえてくる。
「全員!衝撃に備えろ!」
その声のすぐ後、船が大きく揺れる。
リコリスを引き寄せ、船に掴まる。
…まずい、振り落とされる。
そう思っていると腕を掴まれる。
「大丈夫か?」
「ゼノン!助かった、ありがとう」
そのままゼノンに引っ張られ、リコリスと共に海に投げ出されることなく助かる。
海の方を見てみれば、何か動いているものが見える。
あれは…なんだ?
シーサーペント
HP:3912 MP:1442 攻撃力:1438 防御力:1211 素早さ:418
強すぎるだろあいつ。
シーサーペント…海の龍か!
マジでやばいじゃん!
なんで俺が乗ってる時こんなに大事になるの?
「急いでここを突破する!振り落とされるなよ!」
アメリアの声が響きわたる。
無理やり突破しようとしてるのか。
いや、むりくね?
そう思っているとさらなる衝撃が伝わってくる。
シーサーペントが体当たりをしているようだ。
てかあの体当たりに耐えられるのすごいな。
「…大丈夫?」
リコリスが顔を上げてこちらに聞いてくる。
ぶっちゃけまじで大丈夫じゃない。
本当にやばい。
「…そんなにやばい状況か?」
「いやいやいや、やばい状況だろ。シーサーペントのステータス見る限りAランクレベルはあってもおかしくないぞ?」
「そうなのか」
ゼノンって冒険者だよな?
この状況で落ち着いてるのヤバすぎるだろ。
「…私がお願いしてみる」
「リコリス?おい!身を乗り出したら危ないぞ!」
リコリスは身を乗り出し、シーサーペントの方を見る。
そして、何かを言う。
その時フードを外そうとしたので急いで隠す。
「《■■■■■》」
そう聞こえたと同時に船の揺れが静まっていく。
海の方を見れば波が段々と穏やかになっていく。
どうやらシーサーペントがこの場から離れているらしい。
「シーサーペントが引いていくぞ!」
「良かった…本当に良かった…」
「野郎ども!まだ油断するなよ!一時的に距離をとっただけかもしんねぇ!引き続き警戒態勢を緩めるな!」
どうやらリコリスが魔術を使ったのを見てた人はいないらしい。
良かった。
「...あ゛ぁ…喉が痛い…」
「大丈夫か!」
急いでリコリスにフードをかぶせ、喉を見る。
少し赤く腫れているが、どうやら大丈夫そうだ。
「その子は…なるほどな」
「っ!」
近くにいたからそりゃ聞こえてるか。
自体が自体とはいえまずいか?
「…その、見なかったことにしてくれないか?」
「安心しろ、誰かに言いふらしたりなんかしない。恩もあるからな」
そういうとゼノンは水をリコリスに渡す。
まぁそれ俺がさっきゼノンに渡したやつなんだけどな。
「喉、痛いだろう。飲め」
「…」
チラッとこちらを見るリコリス。
元は俺が渡したやつだから、大丈夫と伝えるとそれを受け取り飲み始めた。
「…ありがとう」
「感謝されることではない」
そりゃね?
だってそれ俺のだし。
てか、ゼノンもしかして魔術とかそういうの詳しいのかな。
「なぁゼノン、魔術について知ってることってあるか?」
「浅い知識程度ならな。一応冒険者の端くれでもあるからそれくらいは知っている」
「良ければ教えてくれないか?」
俺はこの子のことをもっと知るべきだ。
魔族についても、魔術についても。
だから、知れる機会があるなら逃したくない。
「いいだろう。これで貸し借りなしだ」
「ありがとう」
こうして、風に当たりながら、ゼノンから魔術について聞くことになった。




