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71.託す者と託される者

夜の森は危険だ。

獣人などとは違い、夜目が効かない人間にとっては特にそうだろう。

だから多くの冒険者は結界魔法により野営をし、明日に備えて休暇をとる。


だが、今は追っ手が迫ってきている。

のんびり野営をする時間などはない。

とにかく急いだ方がいいだろう。


ということで馬車は夜間にもかかわらず進んでいく。

ダンボはこの道を通ったことがあるのか、まっすぐ迷うことなく進んでいく。


「ユージ。少し、話せるか」

「大丈夫ですよ」


馬車を走らせながら、ダンボは話しかけてくる。

リコリスは後ろで寝ており、起きているのは俺とダンボの2人だけ。


「これを、受け取ってくれないか?」

「これって..」

「船のチケットだ。2人分ある」


そういえばチケット買ってなかったな。

金貨50枚だっけ…改めて思ったけど高くね!?

というか、チケット代持ってたっけ。

でもこれを受け取ればそんな心配も要らなくなる。

…いや、受け取れるわけないだろ。


「えっと…受け取れないですよ。めっちゃ高いじゃないですか」

「もちろん、依頼の報酬込みでだ」

「依頼、ですか?」

「あぁ、港までの依頼の分とこれから頼みたいと思っている依頼の分だ」


それでも金貨50枚分ってやばくない?

いや2枚だから金貨100枚分じゃん!

めちゃくちゃ大金だぞ。

しかも港までの依頼分でさらにお金くれたし…。

まずは聞くか。


「その依頼ってなんですか?」

「リコリスをセラエム…カカロジの所まで送り届けて欲しい」


なるほど、そういう依頼か。

今回の依頼の延長戦、俺に引き続き護衛をして欲しいということなんだろう。


そうだとするなら、なぜ2枚なんだ?


「なんで2枚なんですか?」

「リコリスの分も含めているからだ。」


…まて、その前提だと…。


「ダンボさんは?」

「俺は行かない。ユージ、君に頼みたい」


まじかよ。

いや、なんでだ。


「なんで俺なんですか?」

「俺じゃ力不足だからというのと、あの子は君に懐いているように見えたからだ」

「…そう、ですか」


何か違う意図があるようにも感じる。

それに、俺がこれを請けるメリットが無さすぎる。

断るのが懸命だ。


「…わかりました。その依頼、請けさせてもらいます。ただ、完全な先払いですよ?」

「!もちろんだ…ありがとう…」


何やってんだ俺のバカ野郎!

何カッコつけてんだよ!

絶対面倒だろ…。


一度請けると言ったんだ。

言葉には責任を持とう。


「少し、馬車をお願いしていいか?」

「えっと…」

「手網を握っているだけでいい。この先はずっと直進だから、曲がり角が来るまでには戻る」


そういうと半ば強引に手網を渡され、ダンボは後ろへと行ってしまった。

話したいことがあるのだろう。

なんか、覚悟を決めた人って感じがしたし。


しばらくしてダンボが戻ってきた。

手網を返す。

少し、目の周りが赤くなっているようにも見えた。


手網を返したあと後ろに行く。

どうやらリコリスはダンボと話していたようで、今は起きている。

眠そうにも見えるが、少し、悲しそうにも見える。


「話は、ダンボから聞いたか?」

「…うん」


なんて声をかければいいか分からない。

数日しか一緒にいなかったが、ダンボとリコリスが親子のようだったのは俺でもわかった。

なんて声をかけるべきなのか。


「…大丈夫。きっと、大丈夫だから」

「…うん」


根拠の無い言葉で、励ますことしか俺にはできなかった。


日が昇っても馬車は先に進む。

疲れているのかリコリスは寝ている。

魔力探知は常にしているが、Aランクレベルが追っ手だと意味がないだろう。

早めに着いて欲しい。


そんなことを考えていると潮の匂いがしてくる。

どうやら港までもうすぐらしい。


「すまないが、ここからはリコリスを連れて歩いて行ってくれないか?」

「え?どうしてですか?」

「商人の勘だ。…頼まれてくれるか?」

「わかりました。また、会いましょう」

「…ありがとう」


リコリスを抱えて港へ向かう。

それとは対照的に馬車は森へと戻っていく。

俺たちが船に乗り、向こうに着くまで時間稼ぎをするということだろうか。

なら、早く行こう。


眠っているリコリスを起こさないように小走りで港まで向かう。

船はまだ出港していないようだが、何やら騒がしい様子。


…え、今から出発するの?


大きな鐘の音が港に響く。


これ1回目の鐘か?

確か、前回は1回目の鐘が予告で、2回目が10分くらい後に出発の鐘が鳴るはず。

ってことはもう出発まで時間ないじゃん!


「リコリス、走っても大丈夫か?」

「…うん…大丈夫…」


寝ぼけた声でリコリスはそう返事をする。

まぁダメって言われても走るしかないが。


うおぉ!間に合え!


全力疾走で船へ向かう。

剣が足にぶつかって痛いし、こう改めて全力で走ると荷物が重い。


2回目の鐘が鳴る。


アカン!これ間に合わんヤツや!

これ逃したら次いつ船出るんだ?

いや、次なんて考えるな。

ここで乗らないとまじでやばい。


「チケット!あります!乗らせてください!」

「すみません、もう出発しているので今から乗るのは…」


まじかよ。

せっかくここまで来たのに。

なんか無いかな。

今から飛び乗って壁をよじ登るとか?

いや、現実的じゃない。

クソッ、ここまでか…。


「ユージ!掴まれ!」


船の方から声が聞こえてくる。

顔を上げれば海から水の手がこちらに伸びている。

それに急いで掴まると、握るようにして港から船へと投げられる。


乗れそうだけど…これはこれでやばい!

受け身を取らないと!


荷物がクッションになるように背中から落ちる。

衝撃が来ると思い、目を閉じ、備える。

しかし、特に何も衝撃は感じなかった。


「おう、久しぶりだなユージ」

「アメリアさん!」


さっきの声の主はアメリアだったようだ。

そして、受け止めてくれたのもアメリアだった。


「ありがとうございました…まじで助かりました」

「あん時ゴロツキを運ぶの手伝ってくれたからな。その借りを返しただけだ」


そういえばそんなこともあったな。

覚えてるとは、義理堅い男すぎる。


「そっちの子供は?」

「えっと…依頼でとある場所まで護衛を頼まれてて…」

「…なるほどな。深くは聞かねぇ。だが、安心しな。俺がいるからには安全な船旅にしてやる」


ということで無事に船に乗ることができ、ヴェルマリーナまで向かうことに。

2日間の船旅が始まる。

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