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65.一人前として

「…来い、私が相手だ」


先程と違うドスの効いた低い声。

おそらくスキル威圧だろう。


ダークウルフは威圧に屈している様子はない。

おそらく実力が近いからだろう。


黒い狼と1人の騎士が睨み合う。

先に動いたのはダークウルフだった。

黒い弾がホタルに向かって放たれる。

それをメイスのようなもので打ち払い、ホタルはゆっくりと歩いていく。


魔法は打ち消されると理解したダークウルフは闇に溶け込む。

そして、姿が見えなくなる。


「ダークウルフは闇魔法を使うことができる珍しい魔物だ。他種のウルフが同族をくらい続けてなるケースが多いらしい」


説明しながら倒すの?

余裕ありすぎじゃない?

今姿見えなくてかなりピンチに見えるけど。


「いちばんの特徴は影に紛れることだ。そして、その対策は2つある。火属性の魔法、もしくは光属性の魔法だ。ライトアロー」


そういいながら光の矢を放つ。

光の矢は地面に突き刺さるが、放たれている光が木陰を消し、ダークウルフが影から押し出される。


「ライトアロー」


それに合わせ、再びホタルは光の矢を放つ。

ダークウルフはそれを交わしながら木を盾に動き回る。

こうなると捉えるのが難しいのではないだろうか。


「傾向と対策だ。闇に紛れることができないと分かればスピードに頼る。だから、引っかかる」


後ろで大きな音がする。

振り返れば足が沼にハマっているダークウルフがいる。

先程ホタルがアースリクイドで沼を作っていたらしい。

こうなることまで予測していたのか。


「もちろん、知識あっての対策だがな」


光の矢を足に向けて放つ。

沼にはまったダークウルフは避けることができない。

ゆっくりと近づいていくホタルに恐怖すら覚える。


「あとは倒すだけだ。凄惨なものになる。見るのはおすすめしない」


振り上げたメイスのようなものでホタルはダークウルフを殴り続ける。

その命が途切れるまで。


ダークウルフが動かなくなり、ホタルはナイフを取りだして素材を剥ぎ取る。

魔石の回収まで終わったようでこちらに振り返る。


「さぁ、帰ろうか」


ということでCランク昇格試験も無事達成、イレギュラーはあったもののホタルが対処してくれた。

素材を剥ぎ取りギルドに戻ることに。


かなりサクッと行けた気がする。

まぁホタルがいなかったら多分ダークウルフに負けて俺の旅終わってたけど。


「ホタルは最初から気がついてたのか?」

「何がだ?」

「ダークウルフがいるってことに」

「最初から気づいていたわけではない。確信を得たのは今朝足跡を見てだ。統率の取れた動きをしていたように見えたのと、3匹を囮に使ってたように見えたからな」


場数の違いか。

俺はそんな発想にはならなかったな。

まぁ知らなければ無理なものでもあるが。

ステータスだけじゃなくてこういった差がBランクとCランクを分けてるんだろう。


「というか、ステータス的にはあまり差がなかったようだが…」

「ステータスはあくまで可視化できる数字に過ぎない。もちろん、圧倒的な差があるのなら覆ることはほぼないが、拮抗しているなら知性が勝敗を分ける」


要するに、人間だったり獣人だったりの種族と魔物では賢さに差があるため、ステータスが同じくらいでも前者が勝つということか。

逆に魔物の方が頭が良かった場合負けることもあるってことだしな。

ステータスだけで見るのはやめよう。


といった感じで話しつつ、1度の野営を経てギルドに戻る。

討伐分の素材を渡し、冒険者カードも渡す。

返ってきた冒険者カードにはCの文字がある。

これで正式なCランク冒険者だ。


休むための滞在だったはずだが、昇格試験でかなり疲れたな。

ちなみに冒険者のCランクは一人前。

かなり嬉しい。


「私は明日から仕事があるからこれでお別れだな。ユージはどうするんだ?」

「少し休んだら出発しようかな」

「そうか、今度あった時はどんな旅だったか教えてくれ」


そうしてホタルはギルドを出て行ってしまった。

なにかすることないかなぁと考えていたが、あることを思い出す。


スラムの子供たち、元気だろうか。

正直思い入れがある訳では無い。

なんならスラムでは殺されかけたしちょっと怖い。

けど、学校が始まったルビアはスラムの子供たちのことを見てあげられてないのではないかとも思った。

偽善だなとは思いつつ、スラムに向かうことに。


その前に買い物へ。

この前ルビアが買ってたのとか持ってくか。


無事に買い物を済ませ、スラムに向かう。

何度か来たところだが、あんまりなれないな。

しばらく歩いていると見覚えのある家を見つける。

あそこだったっけな。


扉をノックする。


「誰かいますかー?」


…返事がない。

まぁ中にいたところで出てくるわけないか。

困ったな。


「…何してるんだお前」


声の方を振り返れば見覚えのある男性が立っていた。


「え、ルヒターさん?なんでここにいるんですか?」

「娘から頼まれているからだ」


パシられてるの草。

なるほど、ルビアが来れない時はこの人が来てたのか。


「おじさん!」


扉が開き、子供が数名出てくる。

おじさんとはどうやらルヒターのことらしい。


「そっちの人は…?」

「不審者だ」

「えっ!?」

「冗談だ」


カナリア家の人達は冗談が下手くそすぎないか?

普通に子供たち怯えちゃってるじゃん。


怯えられてるので買ってきたものを渡して帰ることに。

ルヒターも帰るらしく途中まで同じ道でかなり気まずい空気が流れていた。


「…Cランクに昇格したらしいな」

「え、あ、はい。昇格しました」

「そうか」


…え、それだけ?

マジでこの人なんなの?

怖いんだけど。


「多くの冒険者はCランクで生涯を終える。それには死も含まれる。Dランクとはわけが違う。一歩間違えれば死だ」


ルヒターはどうやらこちらを心配してくれているようだ。

ワイバーンの時とファンレンと戦った時の2回、俺はこの人に瀕死の状態を見せている。

だから、心配してくれているのだろう。

なんだかんだやっぱり優しい人だ。


「あとは、武器に頼りすぎるなよ。武器はあくまで道具で、自分の力ではない」


それは本当に忘れちゃだめだな。

最近俺強くね?ってなってるけど、攻撃面に関しては魔法剣のおかげだし。

というか水纏わせるのも防御として優秀なんだよなぁ。


「肝に銘じておきます」

「まぁ、頑張れ」


スラムを抜け、別々の道に進む。

みんな、いい人だったな。


ということで宿屋に戻り、寝ることに。

晩御飯をイカつい…じゃなくて、宿屋の兄ちゃんに貰い、食べる。

意外と美味しいんだよな。

フロストを連れてきた時もここでお世話になろう。

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