57.失ったもの
ということで追い出されたのでミントの家にでも行ってみるか。
ぶっちゃけ周りの目が怖すぎる。
なんでこんな目で見られてるのかって思ったけど、獣人の奴隷が多いのも関係していそうだった。
「あの、ミントっていう人の家どこにあるかわかりますか?」
「…あんた、あの子に何の用だい」
なんか警戒されてるな。
いやまぁ俺が人間だからだろうけど。
「前に旅した仲間で、地元って聞いたので会いに行こうかなぁって」
かなり怪しまれてる気がする。
なんかあったのかな。
「…ここを真っ直ぐ行ったあと、2つ目の分かれ道を右に曲がった先だよ」
「わかりました、ありがとうございます」
教えて貰えたから感謝はしとこう。
めちゃくちゃ視線が冷たいけど。
ということでミントの家へ到着。
扉をノックしたが今は留守らしい。
うーむ、いない時のことを考えて宿屋探すか。
てか、普通にここに泊まる気だった俺エグイな。
ということで再び中部に戻ってきた訳だが、やはり視線が冷たいな。
というか薬草は買っておくか。
ぶっちゃけやらかしすぎて足りなさそうだし。
薬屋に行くと、ポーションだったりが売っている。
その中で、毒消しなどを買っておくことに。
「これって麻痺とかにも有用なんですか?」
「…見りゃわかるだろ」
冷たいな。
普通の獣人ってこんなに人間に冷たいのか?
それとも、やっぱこの国の人だからって感じなのかな。
薬屋を出て、宿屋を探そうかと考えていると声をかけられる。
「あれ、ユージ?おーい、ユージ!」
振り返れば青い髪に猫のような耳にしっぽの生えた獣人、ミントがいた。
久しぶりの再会な気がするが、それ以上に、脳に焼き付くものがあった。
「ミント…左足…」
「あぁ、これ?ちょっとやらかしちゃってさ…まぁ気にしないでよ」
ミントの左足はなくなっており、杖のようなものを使っている。
…いやいや、気にするだろ。
今ここで突っかかっても仕方ない問題か。
「荷物持つよ。家って南にあるところだよね?」
「あれ、教えたことあったっけ?」
「モミジさんから聞いた」
ミントから荷物を受け取りつつ雑談しながら家まで行くことに。
周りの視線が冷たいと言うと
「みんなあんまり人間が好きじゃないからね…ほら、奴隷って獣人が多いでしょ?人間が獣人を奴隷にしてるのって結構多いから、ここの人…この国の人はあんまり好きじゃないんだよ」
なるほどな。
想像通りだな。
もし仮に人間と獣人の立場が逆なら俺でも冷たい目で見る。
それが知らない人でも。
「着いた、ここが私の今の家だよ。あがって!」
「お邪魔します」
部屋はかなり片付けられており、この部屋だけで全てが完結するようになっている。
「お茶出すから適当に座ってて」
「俺がやるよ」
「いいって、お客さんでしょ?これくらいはもう慣れてきたから大丈夫だよ」
そういいながらお茶を用意してくれた。
港でわかれてからまだひと月も経ってないはず。
何があったか聞くのは怖い。
もし俺が一緒に旅を続けていたら、ミントは左足を無くさずに済んでいたのだろうか。
「ねぇ、ユージはこっちに来てどんな旅をしてきたの?」
「俺か?俺はだな…」
この大陸に来てやったことか。
リアーシに会って、Aランクの結界師ムバルトにも会って、その後巨大スライムも倒したっけ。
で、ワイバーンに殺されかけたところを聖騎士団に助けて貰った。
そしてゼファーノスではフロストの妹、ルビアと一緒に行動をして紅竜と出くわしたり、街を破壊しようとする奴に殺されかけたりした。
あの時ジオラスがいなかったら死んでたかもな。
そうしてゼファーノスを出発してベルノとハーデンに出会って、火山地帯でわかれた。
そして今に至る。
こう言葉にして思い出すとかなり濃い内容だな。
みんな元気にしているだろうか。
「色んな人と会って楽しそうだね。私もそっちに行けばよかったかな」
「…ミントは、何があったんだ?その、言いたくないなら言わなくても大丈夫」
「私の方はねぇ…」
ミントは港からツービスまで一直線で来たらしい。
そして、この街に着いたあとダンジョン攻略に参加したとのこと。
シーフという役職柄先にダンジョンの中を見に行ったらしい。
その時、左足を失った。
運が良かったとミントは笑って言った。
本来なら即死級のトラップだったが運良く足だけで済んだ。
一緒に先行した部隊がいたから命も助かった。
だから、運が良かった。
「冒険者としての私はもう死んじゃった。けど、まだ生きてるからやりたいことして生きていたいの」
今のミントは街でお手伝いなどをして過ごしているらしい。
鑑定スキルがあるためそれを使って調べ物をしたり、魔法で色々手伝ったりしている。
また、家に手伝った人が来てくれたりしてご飯を作ってくれたり、掃除をしてくれたりするとのこと。
助け合って生きている。
それが今のミントらしい。
やりたいことができない日々が楽しいのか俺にはわからない。
俺が足を失って旅が続けられなくなったらどうなるだろうか。
死んだほうがマシと思ってしまうのだろうか。
でも、ミントはそれでも楽しいと笑っている。
1番やりたかったことは当然冒険者だが、今の生活も楽しい。
そう、思っているようだった。
そういえば一つ、足を戻す手段があったな。
「教会にはいったのか?」
「いったよ。でも、お金が足りないからさ」
失った四肢を生やすのには王級レベルが必要になる。
そもそも使い手が少なくて見つからないし、当然かなりのお金が必要になる。
それを用意することはできなかった。
「旅を続けたいとは思わないのか?」
「...思うよ。でも、できないから」
聞いちゃダメだったな。
俺にできること...はないし、聞くべきじゃなかった。
聞いたところで、俺にできることはないのに。
「暗い話はおしまい!ユージって泊まるとこもう決まってるの?」
「まだだよ。これから探そうかなって」
「なら、うちに泊まってよ!その代わり、ちょっと手伝って欲しいこともあるから」
「手伝って欲しいこと?」
ということで宿は獲得。
明日ミントを手伝うことに。




