55.勇者と死の定義
目が覚めると知らない部屋にいた。
ベッドに横になっていたようで、横を見れば荷物やら魔法剣やらが置かれている。
荷物を確認すれば特に無くなっているものもなく、誰かに助けてもらったのだと理解 する。
どうやらこの家は小さな小屋のような場所で、室内を見るに誰かが住んでいるようにも見える。
とりあえず感謝もしたいし待っとくか。
しばらくすると1人の老人が家に入ってきた。
「…!誰じゃ貴様!わしの家になぜおる!」
え、助けたのあんたじゃないのか?
とりあえず腰抜けてそうだしちゃんと事情話すか…。
「なるほどな…よく残っておったの。人間は恩を返さぬカスばかりと思っておったが、貴様は見どころがあるようじゃ」
そういえばこの人は獣人か。
「助けてくれてありがとうございました」
助けてくれたのはサイジという老人だった。
ここら辺には街がなく、ひとりこの小屋で過ごしているらしい。
ちなみにベノムスネークの毒はかなり強いらしく、普通の冒険者は薬草だったりを持ってから入るらしい。
何も知らない俺はバカってことか。
「持ってないなら売ってやる。ただし、対価はしっかり払ってもらうぞ」
「いくらですか?」
「金じゃない。体で払ってもらうぞ」
えっ…。
か、体で…?
ということで少し移動した先、何かの銅像が建てられている場所に来た。
「これの掃除をくまなくやったら薬草をやろう」
「この銅像って誰の銅像なんですか?」
「若造が、ガベラ様を知らないのか?」
誰だガベラって。
Sランク冒険者…の中には名前がなかったもんな。
いや、他にいるみたいな話してたっけ。
てことは聞いてないだけでSランクの人なのか?
「後で確認するか、しっかりやるんじゃぞ」
そういうとサイジは小屋の方へと戻って行った。
とりあえず掃除するか。
タオルは置いてあるし、ウォーターを活用してやってくか。
「ウォーター!」
銅像の上から水をかけていく。
というかすごいな。
かなりしっかり作られてる。
細部もかなり作り込まれてるし、作った人はかなりの腕前がありそう。
まぁ素人目線だけど。
大きめだったため掃除にしばらく時間がかかったが、綺麗にすることができた。
とりあえずサイジに報告しに行くか。
家に戻り、ドアを開ける。
「サイジさん、銅像の掃除終わりましたよ」
「うむ、では次だが…」
「え、次ですか?」
「なんじゃ文句があるのか?さっきの銅像掃除は貴様の命を助けた分じゃ。次が薬草分に決まっておろう」
ということで次は薪割りをすることに。
「斧はそこにあるから、使うなら使え」
気が沢山積まれた場所まで連れていかれ、薪割りをすることに。
薪割り初めてするかも。
ということで斧でとりあえずやってみるのだが、とにかく腰が痛い。
これ魔法剣の方が斬れるくね?
魔法剣に魔力を込め、薪を割っていく。
かなりサクサク行けて日が沈む前に終わった。
「終わりましたよ」
「早いじゃないか、本当にやったのか?」
疑うサイジとともに割った薪を見に行く。
サイジは薪を見て興味深そうに見ている。
「貴様、何で斬った」
「えっと、この魔法剣です」
魔法剣を見せると奪うようにして取られる。
じっくりと魔法剣を見た後、こちらに投げ返された。
「あのジジイの跡があるな。ふんっ、まだ生きとったか」
「あのジジイって…モーラスさんのことですか?」
どうやらサイジはモーラスと知り合いらしい。
日が沈んできたということでとりあえずサイジの家で泊まらせてもらうことになり、そのまま過去を聞くことに。
「モーラスさんとは知り合いなんですか?」
「あんなジジイ知らんわ」
「…見た感じ同じくらいの年に見えますが…」
「なんじゃと!?」
めんどくさいタイプのジジイだな。
もう寝ようかな、聞かなくても良さそうだし。
「ふんっ、あのジジイとは昔腕を競った程度じゃ。まぁわしの方が凄かったがな」
多分同じくらいだったかモーラスの方が凄かったんだろうな。
「サイジさんはなんでここに住んでるんですか?」
「英雄を誰かが覚えておかなければならないだろう?ガベラ様を世界が忘れるのはあってはならぬ事だ」
「そのガベラ様って…」
勇者ガベラ。
かつて世界を脅かした魔王を倒した人間。
ジオラスやそれ以外のSランク冒険者よりもはるか昔の英雄。
残っているのは銅像などのみであり、もう知っている人もほとんどいないらしい。
「全員が忘れた時、ガベラ様は真の意味で死ぬ。だから、忘れてはいけないのだ」
人の死は2度あると聞いたことがある。
1度目は肉体的な死。
生命活動が停止することだ。
2度目は記憶的な死。
全員から忘れられた時、世界から忘れられて存在が消えるというものだ。
…サイジって今何歳だ?
ぶっちゃけ歴史館でも見なかったし、もう伝えていくのも限界な気がするが。
「わしももう歳だ。もう銅像を磨くのすら厳しい」
「…じゃあ、俺がガベラさんのこと覚えていますよ」
「はっ、貴様にガベラ様の何がわかる」
「いやサイジさんもガベラさんのこと見たことないでしょ…」
そういうとサイジは黙ってしまった。
とはいえ、多分この人も誰かから受け継いだのだろう。
いつか忘れてしまうかもだけど、せめて俺が忘れるまで生きてて欲しい。
そんな気持ちが少しある。
そんな感じで雑談をして、眠くなったから寝る。
朝起きると机には薬草が置かれていた。
「起きたか、それ持ってさっさと行け」
思っていたより薬草が入ってる。
「ありがとうございます。それと、助けてくれてありがとうございました」
「ふんっ、わしが好きでやったことじゃ」
ツンデレジジイとわかれ、リンソウまで向かうことにする。
ここから約2日歩いたところにリンソウがあるらしい。
とりあえずリンソウに行って、モミジと会ってって感じか。
ミントはどこら辺にいるのだろうか。
そこら辺も聞けばよかったな。
そんなふうに考えていると、魔力探知に何かが引っかかる。
動き的にこれはベノムスネークだな。
ふっ、今の俺に死角はないぜ?
そう思いながら魔力探知で場所を探し、そこにウォーターボールを放つ。
そして、それを避けようと出てきたベノムスネークに剣を刺す。
いっちょうあがり。
で、今回はまだいる可能性を考慮して油断しない!
「イテッ」
そう思っていた矢先、お尻に痛みが走る。
…噛まれとるやんけ!
剣で蛇を真っ二つにして急いで薬草を取り出す。
この調子だと貰った薬草全部使い果たしそうな気がする。




