48.温泉に潜む見えない魔物
数十分して2人が戻ってきた。
ハーデンはどうやら温泉に入った訳ではなく、服も着替えてないし髪が濡れている様子もない。
それに対しベルノは着替えており、髪をタオルで拭いている。
「じゃあ今度は私が荷物見てるから、ユージとハーデンで入ってきなさい」
ということでハーデンと2人で温泉へ。
荷物をベルノ1人に任せるのは怖いが、そういえばめちゃくちゃ強いんだった。
先程2人が来ていた場所なのか、岩肌が濡れている気がする。
「そっちはお嬢様が使ったところだから、俺たちが入るのはこっちだ」
そう指さされた方を見ると明らかに灼熱のお湯が張ってある。
ボコボコと沸騰しており、絶対に入ったら火傷する自信がある。
ハーデンは服を脱ぎ、温泉に入っていく。
絶対熱くて無理だろと思ったがそのまま肩まで浸かってゆっくりしている。
「どうした、入らないのか?」
「いや絶対熱いでしょ…」
「男だろ?それに、ちょうどいいぞ」
そう言われワンチャンちょうどいい可能性にかけて手で触ってみる。
うーん、体感90度から100度ってところかな。
「アッッッッツ!!!バカなの!?熱すぎるだろ!」
「そ、そんなにか…?」
マジで火傷しそうだし、別の場所探すか。
隣の湯を触ってみるとちょうど良さそうだったのでそちらに入ることに。
服を脱ぎ、右足のつま先から湯につける。
そのまま全身をゆっくりと入れて肩まで浸かる。
「あったまる〜」
久しぶりにしっかりした風呂に入った気がする。
全身があたたまる…というか、なんか魔力が循環してる感じがする。
もしかしてこの湯そういう効果あるのか?
「なぁハーデン、この温泉魔力を循環とかさせる効果あるのか?」
「どういう意味だ?」
「なんか魔力が体を循環して、る…感じが…」
なんか力が抜けていく。
リラックスしすぎたか?
「ユージ!さっさと湯から出ろ!」
ハーデンはそういうと手を引っ張り、一瞬で湯から俺を引き上げた。
そして、尻から岩肌に落ちる。
「イッッタ!もうちょい優しく引き上げてくれ!」
そういいつつ、お風呂の方を見ると何かがお湯を泳いでいるようにも見える。
いや、泳いでいるように見てるが何かが見えるわけではない。
こういう時は鑑定をしてみれば何がいるか見えるか?
アブソージック
HP:91 MP:467 攻撃力:65 防御力:71 素早さ:127
何かいる!
一体だけっぽいが…姿が見えないのが厄介すぎる。
「ハーデン、こいつは?」
「多分、アブソージックだ。水に同化して泳いでる生物を襲う魔物だ」
水に同化…てか、なんで俺の入ったとこだけいるんだよ!
武器持ってき忘れたし、魔法でやるしかない。
…ハーデンに頼んでもいいな。
「冷静に対処すればお前でも倒せるはずだ。頑張れ」
「まじかよ…なら、気をつけることだけ教えてくれ」
「身が美味いからなるべく傷つけないでくれ」
そういうのじゃねぇんだよ!
「あと、舌から魔力を吸い取ってくるから気をつけろ」
なるほどな、魔力が巡ってたと感じたのは魔力が抜けてたのか。
まぁとりあえずやるしかないか。
水の中にいるから火属性の魔法は使えない、かと言って水属性の魔法が通じるのか?
とりあえずやってみるか。
ルビアに教わったけど、水がなくてできなかったあの魔法。
「ウォーターブロー!」
温泉の水をそのまま利用して水の拳を作り出す。
…なんかちっちゃいな。
まぁいいやいけ!
生成した水の拳でお湯を叩きつける。
多分、倒せなくてもこれで陸にあげることができるはず。
すると、弾けて飛んだ水が岩肌に打ち付けられ、その中に魔物がいるのがわかった。
緑色の体をしていて、カエルをそのまま大きくした感じの見た目だ。
キモすぎぃ!
これに俺魔力吸われてたの?
とりあえず倒したいが、傷を少なめにしたい。
ファイアアローだとぶち抜くよな…。
てことはあの時やったあれだな。
「ファイアバレット!」
指先に魔力を集め、火の弾を放つ。
それは肉を貫き、緑色の血が温泉に落ちた。
「…今のがファイアバレットか?」
「え、そうだけど」
「…」
もしや弱いとか言うつもりか?
まぁ言わないでくれると嬉しい。
ちょっと悲しくなるし。
「とりあえず、1人で倒せたろ?」
「まぁ倒せたが…」
全裸のままハーデンがアブソージックの血抜きを始める。
鮮度が命とはいえ全裸でやることか?
てか緑の液体めっちゃ出ててやばい。
「ユージは武器がなくてもそこそこ戦えると思うぞ」
「と言うと?」
「武器に頼りすぎだ。戦うとなった時最初に何を考えた?」
最初に…。
『武器持ってき忘れたし、魔法でやるしかない』
…なるほどな。
「わかったみたいだな。とりあえず温泉でゆっくり休め」
そうだな、とりあえず湯に入るか。
…緑の液体浮かんでて最悪なんだけど。
てか寒い!
もう最悪だよ…。
ということで入れるところを見つけ直し、入り直す。
今回は特に魔物もいなくてよかった。
温泉から上がり、テントを設置した場所にもどる。
「遅かったわね…って、ハーデン、あなた何持ってるの?」
「アブソージックです。明日の朝ごはん用ですね」
「それ食べるの…?」
それは俺も思った。
いやまぁ多分鶏肉みたいな感じなんだろうけど。
てかやっぱキモイなこの魔物。
「何言ってるんですか。お嬢様、この前も美味しそうに食べてたじゃないですか」
「…へ?」
「7日前くらいに食べましたよ」
「…」
可哀想。
ざまぁとも思う。
とりあえず、温泉で休めたしあとは寝て、明日に備えるか。
…本当に休めたか?




