44.黒いローブの貴族たち
ガサゴソというなにかの蠢く音で目が覚める。
まじで嫌な予感がするし、外に出たくない。
とはいえ結界魔法の時間もあるし、見に行くしかないか…。
外に出てみれば虫のような何かが結界にへばりついていた。
見た感じ10匹は余裕でいる。
キモすぎ!
シザービートル
HP:47 MP:54 攻撃力:37 防御力:72 素早さ:28
羽のついた背中に鎌のような手になっているそれはシザービートルというらしい。
マジでキモイ。
本当に嫌だ。
ということで結界魔法の内側からファイアボールで燃やして駆除していくことに。
確か羽と手の鎌が素材として取れるらしいが、普通にそんな余裕は無い。
燃やして最後に残った魔石を回収する。
マジでキモかった。
食欲がわかないため野営で使ったものを片付けて早速出発。
ジャッカロープならまだいいが、シザービートルはマジで会いたくない。
そう思いながら進んでいく。
シザービートルは足が遅いため最悪逃げればいいか。
魔物を警戒しながら進んでいくが、特に何事もなく夜になる。
野営の準備をするのだが、シザービートルに対してどうにか対策をしたい。
とりあえずなんか買ってた虫除けスプレーを使ってみるか。
結界魔法の外に虫除けスプレーを撒いてみる。
そして就寝するのであった。
朝、ガサゴソという音で目が覚める。
最悪な事態を予測しつつも、外に出る。
また虫が群がっていた。
シザービートル、今回は15匹。
増えてるじゃねぇか!キモ!
ということでファイアボールで駆除をする。
でもほぼ無傷で魔石を回収できるのはありがたいが、いかんせんキモすぎる。
ということで慣れてきたこともあり、駆除後ご飯を食べ再度出発。
虫フィーバーで魔石がかなり集まったからさっさと街に行って売りたいところ。
しばらく歩いていると整備された道が見えてくる。
森の中ではあるものの、かなり歩きやすい。
ここら辺も聖騎士団が整備してるのかな。
道に沿って歩くこと数十分、森を抜けて街の入口が見えてきた。
「イッッッッッッッッタァ!」
女性の叫び声が聞こえた。
もう嫌な予感がする。
一応心配なので見に行くと、黒いローブに身をつつみ、指があらぬ方向へと曲っている女性がいた。
マジで痛そう。
「あの、大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけ!…大丈夫に決まってるでしょ!私を誰だと思ってるのよ!」
今大丈夫なわけって言ったぞ?
女性と言ったが、パッと見の年齢はルビアと同じくらいにも見える。
「えっと…ポーションいります?」
「大丈夫って言ってるじゃない!」
「お金は大丈夫ですので…」
「だーかーらー大丈夫って言ってるじゃない!この私、ベルノ・ジュシームがそう言ってるのだから信じなさいよ!」
…ジュシーム?
なんかどっかで聞いたことある気がするな。
鑑定してみれば名前が本当かわかるか。
鑑定!…あれ、失敗?
ファンレンに鑑定失敗した時みたいに鑑定阻害持ちなのか。
そんなことを考えていると、ベルノと名乗る女性は何かをぼそっと言う。
「…あっ、ヤバっ、名前言っちゃダメって言われてたっけ…」
おいこらなんで言ったんだよじゃあ。
聞いた俺殺されたりしない?
「と、とにかく!私は大丈夫だから!あと!今聞いたことは忘れなさい!」
「えぇ…」
まぁめんどくさそうだし立ち去るか。
うん、絶対めんどくさいもん。
「まぁ気をつけてくださいね…」
そう言い残し、街へ向かおうと振り返る。
ドンッとなにかにぶつかりよろけてしまう。
後ろに誰か立っていたようだ。
「イテッ…すみません、よく見てな、く、て…」
後ろに立っていたのは黒いローブに身を包んだ男性だった。
終わった、聞いた俺殺されるじゃん。
「…貴様、そこで何をしていた」
「えっいやっ…叫び声が聞こえて…」
男は剣を抜き、こちらに向けてくる。
終わった、殺されます。
今までありがとうございました。
「ハーデン待って!大丈夫、私名前言ってないから!」
「普通に聞いてましたよ。お嬢様がベルノ・ジュシームって自己紹介するところ」
「あら、そうなの?じゃあごめんなさいねそこの人。ハーデン、やっちゃって」
おいこら俺の命をなんだと思ってる。
え、まじで殺されるの?
「…おい、名前はなんだ」
「ユ、ユージです…」
「ユージ、貴様に問う。貴様は追っ手ではないのだな?」
追っ手?
なんの事だ。
マジでわからん。
てかこの人たち何かに追われてるの?
「ち、違いますよ。本当に悲鳴が聞こえてきたから来ただけで…」
男はこっちをじっと見たあと剣を下ろす。
「そのようだな。行っていいぞ」
なんなんだよマジで。
怖かったわ。
…あれ、ジュシームってもしかして。
「没落貴族の…?」
「貴様、動くな」
あ、口に出してた。
終わった。
もう俺は殺されます。
今までありがとうございました。
「待ってハーデン、こんな貧乏そうな冒険者が私たちのこと知ってるわけないでしょ?」
この女まじで失礼だな。
「いやいや、知ってますよ?確か没落した貴族ですよね?この前のパーティーで聞きましたもん」
ちょっと腹が立ったので言い返してやったぜ。
まぁ嘘は言ってない。
「…本当のようだな。では、ここで死んでもらおう」
言い返さない方が良かったやつじゃーん。
今までありがとうございました。
「でも追っ手ではないのでしょう?なら殺すのは可哀想じゃない?」
そうだそうだ!
追っ手ってなんだよ!
俺そんなの知らないって!
「それに、身分を隠して街で素材を換金するのもそろそろ限界じゃない?だったら正直に話して協力させた方がいいわよ」
そうだそうだ!
…うん?今協力させた方がいいって言った?
いや、聞き間違いだろう。
きっと解放してくれる…はず。
「…お嬢様がそう言うなら…」
「じゃあユージ、貴方に2つの選択肢をあげるわ。ここで死ぬか、私たちに協力するか」
なんだその2択、ほぼ1択じゃねぇか。
そうなったら死にたくないし…。
「協力で…」
「なら、殺す必要も無いわね!ハーデン、武器をしまいなさい」
「わかりました」
ゼファーノスを出て3日目、早速トラブルに巻き込まれてしまった。
面倒なことにならなければいいのだが。




