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40.庶民とナイトダンス

今から行くパーティーは基本的に男女が2人1組で行けるものらしい。

俺の相方は?と思っていたが、ホタルが相方をしてくれるとの事。


普通は夫婦や兄弟姉妹、婚約者が相方になるらしい。

それがいない場合は使用人を代理に立てることも。

ホタルは婚約者がいないから俺が相方でも問題ないらしい。


「では、エスコートをお願いしてもいいかな?」

「…慣れないなこういうのは」

「形だけさ。想い人がいるなら申し訳ないがな」


ホタルの手を取り、会場に入っていく。

でかいシャンデリアが吊るされていたり、明らかに高そうな装飾品をつけた人もいる。

詐欺師が売ってそうなツボまで置いてあるな。


しばらくすると色々な人が中へと入ってくる。

それを眺めながら待機する。

周りの会話に耳を傾ければ様々なことが聞こえる。


「カナリア様達はさすがね。是非ともお近づきになりたいわ」

「勲章の贈られる8人のうち1人は平民なんだろ?」

「今回のパーティー本当はあの人と来たかったのに」

「ジュシーム家は来ないのか?」

「聞いてないの?あの家はもう没落したのよ」


うん、噂話に政略が渦巻く俺の苦手な陰気な感じだな。

まぁ貴族のパーティーって感じはする。

というより、ぶっちゃけパーティーって何するのか分からない。

曲が流れたら踊るんだっけ?

今のところ噂話と政略の会場みたいになってるけど。

てか挨拶とかしないとなのかな。


「キョロキョロするな、シャキッとしろ」


ホタルに釘を刺されてしまった。

まぁ見栄えが悪いか。


姿勢を正してシャキッとする。

…パーティー終了まで持つかな。


すると、1人の男性がこちらに歩いてくる。


「失礼、君たちはホタル・カナリア氏とユージ氏で間違いないかね?」

「はい、間違いありません」

「初めまして、アキシア家当主、クシバ・アキシアだ」


アキシア家当主…。

つまりルビアの父親か?

…フロストの父親でもあるのか。


「ホタル・カナリアです」


そういいながらホタルはスカートを摘んで軽く屈む。

貴族の挨拶、と言った感じだ。


やべっ、俺貴族の挨拶なんて知らねぇ。

とりあえずそれっぽくやるか。


右手を胸の前に、左手を後ろに回して軽く腰を折る。


「ユージです」


軽い挨拶が済み、クシバの話が始まる。


「まずは君たちに感謝を。紅竜の件で活躍したと聞いている」

「私たちは私たち自身がやるべきことをしたまでです。感謝をされる道理はありません。ですが、ありがたく受け取らせていただきます」

「そうしてくれ。…そして、本題だ」


物腰柔らかかった感じから一変、空気が変わる。


「娘を危険に晒すのはやめていただきたい」


なるほどな。

たしかに今回の怪我だったりは俺たちのせいでもある。

無理にでも連れていかなければルビアが怪我をすることはなかった。


「たしかに今回の件で冒険者としての娘に箔がついた。それ自体は喜ばしいことだ。反面、未来のアキシア家を率いる娘がいなくなるのも困るのが現状。君たちは危険なものだとわかって娘を連れていたのではないのかね?」


反論の余地もない。

絶対に危険があるものであった。

それでも止め切ることができなかったのも事実。

なんなら止めてないし。


「おっしゃる通りです。以後このようなことがないように気をつけます」


そういうしかない。

でも、反論したい。

フロストを捨てたこの男に、反論がしたい。


「お言葉ですが、ルビアさんの意思は、ルビアさんのものであるのでは?」

「なんだと?」

「彼女はこのゼファーノスを守るために我々に着いてきました。それが危険なものになるとしても。それを止める権利が我々にあるとは思えない。もちろん、あなたにもです」


ルビアがやったことを否定させたくない。

危険に晒したのは俺の責任だ。

でも、それがあの子を制限する理由にはならない。


「何が言いたいのかね」

「ルビアさんは…あなたの子供は、あなたの道具ではない」


言ってやったぞ。

フロスト、お前の分も言ったんだからあとで感謝しろよ。


険悪な雰囲気になった時、ひとつの足音が会場に響く。

重く、大きな音。

それでいて軽く、小さな音。

矛盾に思えるその足音はこちらに近づいてくる。


「クシバ殿、その辺でやめておきなさい。その子が言う通り、子供とはいえそれを決めるのはあなたではなく、あなたの子供だ」


声の方を向けばそこにはジオラスがいた。

最初に見た時よりかなり厳粛な感じがする。


険悪だった雰囲気が1人の男によって制圧される。

クシバは反論することなく、軽く会釈をして離れていく。


助かった…。


「ジオラス様、お手数をおかけして申し訳ございません…」

「何このくらいなんて事ないさ。せっかくのパーティー、楽しむべきだろう?」


パーティーを楽しむ感じの人なのか。

あんまり人物像が掴めないな。


クシバが去った後、また別の足音が聞こえてくる。


「ホタルさん、ユージさん、先に来ていらしたのですね」


綺麗なドレスに身を包んでいるのはルビアだった。

こう…なんというか、正装だとかなり大人の女性に見える。

…というか、18歳って成人か。


「ルビア様、ご無事そうで何よりです」


敬語で話すホタル。

こういう場では敬語の方がいいのか。


「えっと…ご無事そうで何よりです」

「ふふっ」


笑われたんだが。

なんでやねんホタルと同じように挨拶したろ。


「別に敬語じゃなくてもいいんですよ?ホタルさんはカナリア家の者として公的な場では敬語を使わないとってだけなので」


なるほどそういう事か。

恥ずかしい。


「怪我の方はもういいのか?」

「はい、ユージさんこそ」

「俺も大丈夫だよ。手の火傷はワイバーンの時のだし」


互いの体を心配しながら軽く雑談をする。

ルビアはあの後大変だったらしい。

親がルビアを次代当主として育てているのもあり、瀕死の怪我をしたからかなりの大騒ぎになったとの事。


「そんなに弱くないんですけどね、私」

「心配するのが親だよ」


雑談をしていると司会っぽい人が階段の登った先の高いところで喋り始める。


長ったらしい挨拶が終わり、パーティーが開催される。

演奏団っぽい人達が曲を弾き始める。


「最初は相方と踊る決まりなのだ。私と踊ってくれるか?」


終わった、俺踊れない。


踊れないことを察したのかホタルは軽く笑いながら話してくる。


「私がエスコートするから、安心しろ」

「じゃあ、よろしくお願いします」


ホタルの手を取り、曲に合わせて踊る。

足を踏まないように細心の注意を払う。

まぁ何回か足を踏んだが。


1曲目が終わり、ダンスも終える。


「ごめん、めっちゃ足踏んだ…」

「気にするな」


他の人は別の人と踊ったりしている。

もちろん、用意されたご飯を食べている人もいる。


ルビアがこちらに戻ってきて話しかけてくる。


「2人ともこの後はどうするんですか?」

「私は父上と踊ってこようかと」

「俺は…踊る相手もいないし、ご飯でも食べてようかな」

「なら、私と一緒に踊ってくれませんか?」


まじか、ホタルと違って足踏むのマジで怖いぞ。

まぁ断る権利なんて俺にはないけど。


ルビアの手を取り2曲目を踊る。


案の定足を踏んでしまう。

謝ろうと思ったその時、足を踏まれる感覚があった。


「お返しです」


イタズラに笑いながら足を軽く踏んでくる。

下手に気を使われるよりこっちの方がありがたいな。

とはいえ俺はただ下手なだけだから許して欲しいけど…。


その後何回か転けそうになったり足を踏んでしまったりしたが、ホタルの時よりは上手くできた…気がする。


「ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとう」


2曲目も終わり、ダンスを終える。

ルビアのことは冒険者として今まで接していたが、改めて見ると礼儀正しい。

貴族って感じがする。

フロスト、お前も見習え。


「この後はどうするんですか?」


3曲目は特に踊る人もいないため食事に移る。

社交辞令というものなのか、かなりの人が踊っている気もするが、俺にそんな相手はもういない。


「特にやることないし、勲章?が贈与されるまで待機かな。ジオラスさんから話しあるって言ってたからそれも待つ感じ」

「暇そうですね」


あまりそういうことを口に出さない方がいいぞ。

泣いてしまう。


「ルビアは?」

「私も勲章が贈られるらしいのでそれまで待機ですね」

「暇そうだな」


ムスッとしている。

これが言葉に刺される者の気持ちだぞ。

という冗談は置いといて、暇ではある。

というかルビアはこんな所で俺と話している場合ではないのでは?


「アキシア家のルビア様ですよね?良ければ1曲、踊ってくれませんか?」


ボンボンの坊ちゃんみたいな感じのがルビアにダンスのお誘いをする。


まぁそうなるよな。

貴族の令嬢だし、綺麗だし。


「すみません、今はダンスのお誘いは断らせていただいてて…先日の怪我の影響もあり…」

「そうですか、先日の活躍は聞いております。早く治るよう心から願っています」


そういうと貴族の坊ちゃんは別の場所へと行ってしまった。


「断ってよかったのか?」

「いいんですよ。怪我は事実ですし、お父様と1回、ユージさんと1回の計2回も踊ればもう満足です」


そもそもダンス自体があまり好きではないらしい。

ホタルに比べて上手くはなかったしそうだろうなとは思った。


「…失礼なこと考えてます?」

「え?」

「…なんでもないです。あ、ホタルさん!」


何曲か踊ってきたであろうホタルがこちらに戻ってくる。

ぶっちゃけ2回のダンスで俺は疲れたのだが、ホタルは全く疲れていないらしい。

スゴすぎるだろ。


その後3人で雑談をしつつ、たまに貴族の人がこちらに来て2人と話したりして時間が過ぎていった。


そして時間が経ち、勲章が贈られる時間との事。


贈られるのは計8名。

紅竜の成体を足止めしたルヒターとリサ。

民間人の避難の際、特出して活躍した3人の聖騎士団員。

紅竜の幼体をひとりで足止めしたホタル。

そして、ファンレンと戦闘した俺とルビア。


まぁ俺たちに関してはボロ負けで助けられる感じになってしまったが。


ジオラスから勲章が贈られる。

皆から賞賛される。

ちょっとだけ自分が誇らしかった。

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