38.最強の冒険者
なんかどっかで見たことある人のような気がする。
というかもしかして援軍が来てくれたのか?
「ジオラス…!テメェ、この近くにいやがったのか!」
「我がどこにいるか、それはさほど問題ではない。今、ここにいる。その真実こそ重要であろう」
何言ってんだこの人。
難しいこと言わないでくれ。
…てかジオラスって言った?
ジオラスってあのSランクの?
まじか、最強じゃん、勝ったな。
「ユージさん!」
ジオラスのあとから1人の女性が走ってくる。
うおっ、胸が揺れて…じゃなくて、リアーシじゃん。
まだゼファーノスにいたのか。
「すぐ回復魔法をしますね」
「俺は…後でいいです。先にルビアを…」
おそらく俺の怪我は足の出血と骨が(おそらく)折れてるだけ。
それに比べてルビアは絶対やばい。
足は折られてるし、明らかに壁にぶつかった時の衝撃がえぐそうだったし。
「2人の勇者は彼女に任せ、我は我のやるべき事をしようか」
そういいながらジオラスはファンレンの方へと歩み寄る。
先程まで生き生きとしていたファンレンの様子がおかしい。
蛇に睨まれた蛙の如く動かなくなっている。
「く、来るな!」
「なぜ?我の家を荒らし、我の家族に手をかけた。それなのになぜ、やめろと言える」
1歩進む事に圧が放たれる。
俺に向けてではないのに、息苦しくなる。
「おっと、熱くなりすぎてしまったな。では貴様に問おう。死ぬ覚悟は、できているな?」
「…テメェのせいだろ…テメェが俺を!俺を選ばなかったからこうなった!テメェの責任だろうが!」
逆ギレにも程がある。
おそらく聖騎士団の団長選抜の話だろう。
このゼファーノスで最も強いジオラスがリサを選んだ。
その結果選ばれなかった方が逆恨み。
ヤバすぎるな。
「言い残すことは、もうないな?」
「…ッ!テメェに殺されるくらいなら!俺は!」
ファンレンがバッグに手を入れると、その手が落ちた。
何が起こったか分からない。
見えなかった。
「せめて、人として死ぬといい」
ジオラスの言葉が終わると同時にファンレンの首が落ちる。
そして、ジオラスがこちらへと歩いてくる。
「教会まで送っていこう」
「ジオラス様、こちらの少女の応急手当も済みました。あとは教会で」
「うむ。…では名も無き勇者よ、少し、休むといい」
助けが来て安心したのか一気に疲れが来る。
そして、めちゃくちゃ痛みも来る。
あ、これ無理だ、意識飛ぶ。
そう思いながら意識を手放した。
意識が戻り、ベッドの上で目を覚ます。
なんかデジャブを感じるな。
「あ、起きましたか」
声の方を見ればリアーシがいた。
これもデジャブだな。
「じゃ、私の付き添いはこれで終わりなんで、しばらくは安静にしててくださいね。…あ、次会った時は死んでそうだし、これ渡しておきます」
そういうとリアーシはブレスレットのようなものを渡してきた。
どうやら自然治癒能力を高める効果があるらしい。
かすり傷程度ならすぐ治るとの事。
めちゃくちゃ強いじゃん。
「いいんですか?」
「まぁいいですよ…あと、敬語もやめていいですからね」
そういうとリアーシはドアを開けて、こちらを振り返る。
「あまり無理しないように。じゃあね」
そういうとリアーシは行ってしまった。
てか俺の好感度めちゃくちゃ上がってない?
まぁ今回は頑張ったし、これくらい上がってもおかしくないな、うん。
リアーシが出てしばらくした後1人の男性がが入ってくる。
それは、紅竜を聖騎士団団長と共に抑えていたギルドマスター、ルヒターだ。
「…二度目か」
それは俺も思った。
まじでデジャブを感じる。
「…事の経緯をまず教える。明日、ジオラス殿からお話がある。それまでに聞いておきたいことがあれば聞け」
そういうとルヒターは話し始める。
まず、紅竜の子供を従えていたのは元聖騎士団の団員であったファンレンという男らしい。
16年前団長の座を巡って競い、負け、その時に紅竜の卵を盗みだし、スラムに身を潜めたということらしい。
そしてついこの間、支配魔法の実験で部下の盗賊にワイバーンを渡したがそれが聖騎士団にバレて計画をはやめた。
元々は紅竜が大人になってからやるつもりだったと話していたらしい。
ちなみにこの話は盗賊団の団員を拷問して聞き出したとの事。
ファンレン自身かなり気性が荒く、部下を何人も殺していたため一人一人の持っている情報がかなり少なくてめんどくさかったらしい。
「といった感じだ。他になにか聞きたいことはあるか」
「それなら…ルビアは無事ですか?」
「無事だ。後遺症もないし、怪我の跡も残らないらしい」
良かった。
いや、良くは無いな。
俺のせいで死にかけたんだ。
俺がもっと強ければ…。
「…あまり自分を卑下するな。お前は十分やった方だ。Dランクにしてはな」
そういうとルヒターは席を立つ。
「明日、使者を迎えに行かせる。今日はゆっくり休め」
そのまま部屋を出ていった。
とりあえず荷物をまとめ、宿屋に戻ることにする。
「ユージ、起きたのか」
声の方を見ればホタルがいた。
向こうもなにかの帰りなのか私服姿だ。
「足の怪我だったりは大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫。ホタルこそ、子供とはいえ紅竜と1人で戦ったんだろ?そっちこそ大丈夫か?」
「大丈夫だった、といえば嘘になる。が、死ぬ前にジオラス様が止めに入ってくれたからな」
俺たちがファンレンと戦っている間にジオラスが紅竜をなだめてくれたらしい。
というかそれまで紅竜を抑えていた3人まじで今回のMVPすぎる。
「そういえば、ユージは正装を持っているのか?」
「セイソウ?」
「明日のパーティーに着てくる服だ」
なんそれ、え、明日パーティーがあるの?
ホタルに詳しく聞いたところ、元々明日は貴族のパーティーがある予定だったらしい。
その上で今回の騒動で活躍した人達に勲章も贈られるとの事。
ぶっちゃけこんな騒ぎがあった翌日にパーティー開催なんて呑気すぎる気がする。
正確には俺が丸1日寝ていたから二日なのだが。
まぁ今回の被害はほぼゼロだったらしいしそんなものか。
てか問題が…。
「服、ない…」
「…まぁ、そうだろうな」
そうだろうなって言ったこいつ。
酷い、そうだけども。
「父上の服…は大きすぎるしな…買う金はあるのか?」
「…」
バッグを開き、財布を確認する。
かなり持ってはいるが…。
「服っていくらぐらい?」
「安いやつでも金貨20枚が平均だろうな」
高すぎて草。
スライム討伐代全部使うまじか。
まぁ買うしかないか。
「じゃあ買いに行くか…」
「それなら明日一緒に買いに行かないか?ルビアも連れて」
「そうするか」
ということでそのまま解散することに。
貴族のパーティ…少し怖いな。




