36.それぞれの役割
紅竜が地に降り立ち、彷徨をあげる。
今まで見た全ての生物を凌駕する化け物が目の前にいる。
怖い。
逃げなければ。
「ファイアランス!」
炎の槍が紅竜に直撃する。
大したダメージになってはいなそうだが、紅竜は攻撃が飛んできた方へと向く。
そこには聖騎士団団長、リサがいた。
「全員!避難することだけを考えろ!ここは私が引き受ける!」
そういいながらリサは炎の剣を構える。
なんだあれかっこいいな。
紅竜が大きく口を開け、口には熱が集まっていくのがわかる。
あれを受け止めるのか?
いや、無理だろ。
一点に集中された炎が、リサに向けて放たれる。
「ライトウォール」
直前、光の壁が間に入る。
紅竜の前に1人の男性が割って入る。
「すまない、遅れた」
「問題ない。行けるか?」
「遅れた分は働く」
ゼファーノスのギルドマスター、ルヒターだ。
Aランクの強者といえど、2人で勝てるのか…?
「ホタル!いるか!」
「ここに!」
「スラムの方はお前達に任せる!住民の避難は他の騎士に任せてお前はお前の責務を全うしろ!」
そういうとルヒターはリサと共に紅竜を抑える戦いに向かった。
…今お前達って言った?
「ホタルさん、行きましょう」
「ルビア、ユージ、危険なものになる。それでも、協力してくれるか?」
「もちろん」
ここよりは安全だろうし。
急いでスラムの方へと向かう。
そして、違和感に気がつく。
やけに静かだ。
「…誰もいませんね…」
「私が調べようと思っていた場所があと3箇所ある。そこをあたってみよう」
ホタルの推測が正しければあの紅竜は子供を助けに来た可能性が高いとの事。
つまり、俺が見た紅竜は先程の紅竜の子供。
それがスラムにいるならその紅竜を見つけなければならない。
「見つけ出せたとしても最悪の場合、誰かに操られている可能性も高い。そうなったら一度制圧するか、操っている人を無力化するかしなければならない」
「かなり厳しくないか?」
「…厳しいな」
絶対ほかに助っ人呼ぶべきだったな。
いや、弱音を言っても仕方がない。
ゼファーノスNo.2、3の2人が対応しているとはいえAランクの中でも強い紅竜、長くは持たないらしい。
「!ホタルさん!」
「あぁ…いるな」
ルビアが何かを探知したのかその方へと向かう。
奥に何かがいるのが見えた。
紅竜
HP:4375 MP:1657 攻撃力:1352 防御力:1184 素早さ:457
あの時の紅竜だ。
しかも、こちらに気がついている様子。
「ユージ、やつのステータスを教えてくれ」
「HPが4375、MP1657で攻撃力1352、防御力1184の素早さ457だ。…3人で勝てるか?」
「無理だな」
うん知ってた。
どうするのこれ、無理じゃん。
俺の異世界生活詰みました。
「ここは私が引き受ける。2人はこの紅竜を操っている奴を探してくれ」
「ホタルさんそれは…」
「私を信じろ。それに、紅竜がここを守っているということは奥に何かがいると言っているようなものだ。危険はあるだろうが、ここで止めなければこの都市自体が危ない」
…任せるべきだな。
「ホタル、頼む」
「あぁ、任せてくれ。むしろ、ルビアを頼むぞ」
紅竜を避け、奥へと走る。
追ってこようとしていたがホタルに止められ、紅竜はこちらへは来なかった。
「さて、幼体といえど紅竜。私1人でどれだけ持ちこたえられるか…。だが、背中を任せてもらったのだ。死んでもここは通さんぞ」
紅竜を任せたはいいものの、場所がわからない。
「ユージさん!この建物の奥、微弱ですが魔力探知に反応が!」
指さされた先には小さな小屋があった。
この小屋に?
いや、今は信じていくしかない。
ドアを破り、中へと行く。
特に何も無い部屋だったが、何かが引きずられた跡がある。
本棚を横にスライドすれば何やら空間が出てきた。
「この先だな」
ゆっくりと進んでいく。
足場がそこまでいいわけではないらしくかなり滑りやすい。
明かりが見えてきて開けた空間が出てくる。
「ったく、ここもバレてんじゃねぇか。計画を早めなきゃ行けなかった上に嗅ぎ付けられるなんてついてねぇなぁ」
奥の方に2人分の影が見える。
いや、違う。
1人の人影と、1つの死体の影だ。
「なんだ、犬どもじゃねぇのか」
すかさず鑑定をする。
しかし、失敗した。
「おいおい、いきなり鑑定かよ。時間はたっぷりあるんだ、ゆっくり話そうぜ?」
鑑定が失敗したってことはそういうスキルを持ってるってことか。
「お前は誰だ」
「人に名前を聞く時は自分からって習わなかったのか?まぁいい、俺はファンレン。革命を起こす者だ」
ファンレン…俺は聞いたことがないな。
ルビアの方をちらっと見るが、思い当たる節があまりないらしい。
それを察したのかファンレンは苛立たしそうに死体を蹴り飛ばす。
「どいつもこいつも舐めやがって!…まぁいい。どうせお前らもこいつと同じようになるんだからな」
「目的はなんですか」
「あ?革命だっつってんだろ」
紅竜の方のことも考えて早く倒した方がいいが…ステータスが分からない以上無理に動けない。
「紅竜を操ってるのはお前か」
「あぁ?違う違う、あいつは俺のことを親だと思ってんだよ。だからなんでも聞いてくれる。まぁ支配を使ってるっちゃ使ってるがな」
「…!ユージさん!後ろ!」
ルビアの声で後ろを向けば泥のような何かがこちらに向かって攻撃をしてきていた。
それを剣で振り払い、泥と距離を取る。
「チッ、これで終わってくれりゃ楽だったんだがな」
会話は危険だな。
速攻で倒すべきだ。
「ルビア、やるぞ」
「わかりました。サポートは任せてください」
「おいおい、もうちょいゆっくりしていけよ。なんなら、外に出たっていいんだぜ?」
時間稼ぎがしたいのか、油断を誘いたいのか、どちらにしろ乗るべきじゃないな。
…いや、泥を操る魔法なら外に出るべきか?
「迷ってる場合か?ここは俺の、テリトリーだぜ!」
ファンレンの後ろから泥が現れる。
部屋を覆いそうな勢いだ。
急いで回避し、外に出ようとする。
しかし、出入口は泥で塞がれていた。
「ウィンドカッター!」
風が泥を切り裂き、出入口が出てくる。
急いでそこを通り、外に出る。
室内だとまずいな。
とはいえ、外に出てきてくれないならジリ貧だ。
どうするべきか。
「自分の魔法だが、泥ってもんはあんま好かねぇな。汚れてしゃあない」
「…それだけの理由で外にノコノコ出てきたのか?」
「あ?まず前提だが、俺はお前ら2人程度に負けねぇんだよ」
剣を構える。
ここで討つ。
それが俺たちの役目だ。




