35.空の支配者
「おはようございます!」
ドアを開ければ元気な声で挨拶をするルビアがいた。
高校時代はぼっちだったからあれだが、幼なじみとかいたらこんな感じになったのだろうか。
いやまぁラノベとかの世界だけだろうが。
「ホタルさんはギルドマスターとお話があるそうで、迎えに来ちゃいました」
「お話?」
「なんでも奥さん…リサさんを怒らせてしまったらしくて…」
夫婦のいざこざじゃねぇか。
娘に仲裁してもらうなよギルドマスター。
ということでギルドへ行くことに。
ルビアが既に話を通していたのか受付の人にすぐに奥に案内された。
ドアを開くとしょんぼりしているルヒターと呆れているホタルがいた。
「あぁ、ルビアとユージか。すまない、今話すことは終わったから行こうか」
「えっと…いいんですか?それほっといて…」
「母上に来るように頼んだから私の役目は終わりさ。こってり絞られるといい」
上下関係が垣間見えるな。
多分ルヒターが悪いのだろう。
ギルドを出てスラムに向かう。
特に地図などはないためホタルについて行くことに。
「さっきのあれ、何があったんですか?」
「あれか…いや、あまり話すようなものではないのだが…父上が母上との約束を破ったというべきか。あまり気にしないでやってくれ」
かなり生々しい話っぽいな。
よし、聞かなかったことにしよう。
となるとひとつ聞きたいことがあるな。
「Sランク冒険者のジオラスってどんな人なんですか?」
Sランク冒険者の1人、ジオラス。
500年前に最後の戦争を終わらせた英雄。
「ジオラス様か、端的に言えば平和主義だな。あの方の目標は全ての生命の共存、全ての種族ではなく全ての生命だ」
全て…ということは魔物とかも含めるのか。
魔物ってゴブリンとかスライムとかもだよな。
いや理想高いな。
「あとは魔法を使わなかったり、スキルも使わないですよね」
「そうだな、武術だけであの高みに辿り着いている。最後の戦争でも武術だけだったらしいしな」
まじのバケモンじゃん。
会うことがあればステータスを見せてもらいたいな。
「今はどこにいるんですか?」
「かなり自由奔放なお方だからな。かなり遠くにいるかもしれないし、ここら辺にいるかもしれない」
なるほど、つまりどこにいるか分からないと。
「それとユージ、私に対してはタメ口で構わないぞ。歳も私の方が下のようだしな」
それはね、俺も思ってた。
けど聖騎士団だから敬語の方がいいと思ってたんだもん。
「ならそうさせてもらうよ」
ということでかなり楽になった。
敬語ってむずかしくない?
間違った敬語使ってそうでかなり怖い。
話しながら歩いているとホタルが足を止める。
「今日はここからだな」
「ここは?」
「盗賊共が使ってた場所だ。記録に残ってるところを見て回ってはいるんだが、今のところ何も見つかってなくてな」
そういいながらドアを蹴破る。
中に誰かいないのか確認しないのか?と思ったがルビアがそこら辺はしてくれているらしい。
なぜそんな完璧な連携ができているのだ。
しばらく探したが特に目新しいものはない。
そのまま家を出て別の場所に行くことに。
「盗賊ってかなりいるのか?」
「そうだな…近年はあまり見ていなかったが、ここ最近活発になってきている。ユージも外の街で聞いていないか?」
そういや聞いた気がするな。
てかあれ、ワイバーンを制御するみたいな話してたのって盗賊?
あれ、これもしかして重要じゃね?
「なぁ、ここに来る前、盗賊っぽいやつらの話を聞いたんだがホタルは聞いてるか?」
「一応耳にはしている。ワイバーン討伐後辺りを探したが盗賊がいたらしき跡はなかった」
違ったわ、恥ずかしい。
「でもワイバーンを制御って話、紅竜の件ともかなり関係ありそうじゃないですか?」
「いや、そこは関係があるとは思えない。紅竜はAランク、ワイバーンはBランク。ランクの差は1つしかないが、この差はかなり大きい。冒険者ランクで例えるならDランクとAランクの差くらいはあるからな」
どんだけ差があるんだよ。
俺とイリスくらい差があるってことかよ。
俺を制御できてイリスを制御できるか?って話だと確かに納得はできる。
「確かにそうなると難しそうですね…」
「もちろん可能性がない訳では無いが、紅竜を操るレベルの支配魔法を持っている者がこんなところでコソコソと隠れる理由もないと思うしな」
支配魔法なんてものもあるのか。
結界魔法があるんだからあってもおかしくはないが。
ドラゴンを支配できる魔法ってやばいな。
そう話しているとどうやら次の場所に着いたようだ。
先程の場所と違い蜘蛛の巣が張ってなかったり少し使われているようにも見える。
再びホタルがドアを蹴破り中に入っていく。
中を物色していくが特に目新しいものはないように思えた。
しかしルビアが何かを見つけたようだった。
「あの、これ…」
ルビアが持ってきたものを見てみれば地図のようなものだった。
どうやら火山のものらしい。
なぜ火山?
「これってそういうことですよね…?」
いやそういうことってなんだよ。
俺にもわかるように言ってくれ。
「16年前、火山の紅竜が暴れる事件があった。ジオラス様が収めてくれたから大事にはならなかったが…」
ここで紅竜が繋がってくるのか。
「ユージ、君が見た紅竜のステータスを思い出すことはできるか?」
「え?…えっと…HPが4000くらい、MPが…1000くらい?攻撃力と防御力1000くらいで…素早さが500くらいかな…」
「…おかしいですね」
「おかしいな」
おかしいの?
かなりバカ高いステータスで腰抜けたんだけど。
「そのステータスなら紅竜としてはかなり低い。おそらくまだ成体ではない。HPに関しては成体なら約2倍はあるはずだ」
どんだけ強いんだよ紅竜。
化け物じゃねぇか。
いやまぁ化け物なんだろうけど。
というかそれって…。
「全てが繋がったな」
16年前、スラムの誰かが紅竜の幼体だったりを火山から盗み出し、それにより紅竜の成体がブチ切れた。
ただ、それはジオラスによって収められてしまい大事にはならなかった。
そして現在、16年の年月を経て紅竜がスラムで成長しているということだ。
一体誰が何のために?
「16年前…何かありましたっけ」
「当時私は4歳、ルビアに関しては2歳だから知る由もないだろう。一応聖騎士団の団長を決めたりと色々あったらしいが…一度ギルドに戻って聞いた方がいいだろうな」
それが懸命だな。
ということでギルドにもどることに。
受付の人にホタルが話を通しそのまま奥の部屋へ行く。
「失礼する…父上は?」
「あぁ、ホタルか。ルヒターは買い出しに行っているよ。後ろの2人は…ルビアとユージか、要件なら私が聞こう」
「先日話した紅竜についてですが…」
ホタルが事情を説明している間それを横で眺めている。
ぶっちゃけ場違い感が半端ない。
ルビアもそう思っているのか少しソワソワしている。
「なるほど…そうなってしまうと我々の仕事になるな。ホタル、それに2人とも、ここまでの調査、感謝する。あとは我々聖騎士団に任せてくれ」
そういうとリサとホタルは立ち上がり、聖騎士団の本部へと行くようだった。
俺たちの仕事はこれで終わり、ここから先は首を突っ込むべきではないだろう。
ギルドの外へと行く。
一瞬、大きな影が空を覆う。
何事かと上を見れば、大きな何かがいた。
「全員伏せろ!」
声に呼応して咄嗟に伏せる。
頭スレスレに何かが通った。
紅竜
HP:8292 MP:2990 攻撃力:2153 防御力:2837 素早さ:592
俺が見た紅竜の倍近いHP、圧倒的な体躯、あれがAランクの魔物、紅竜なのか。
次元が、違う。




