30.初めての中級魔法
「ユージさん、おはようございます!」
朝、ギルドに向かうと元気な声が聞こえてくる。
振り返ればルビアがいた。
朝一なのに元気なことだ。
「おはよう、元気だな」
「実は魔法を教えるのに少し憧れてまして...先生って呼んでくれてもいいんですよ?」
「じゃあ、今日はお願いします。ルビア先生」
「はい!任せてください!」
ギルドに行き、ギルド付属の訓練場を借りる。
許可を取る際ギルドマスターと話したが、やはりやる気のなさそうな威厳のイの字もない人だったな...。
「まずなんですけど、杖って使うつもりはありますか?」
「剣メインのつもりだから杖は使うつもり無いかな」
「なるほど、では適性を聞いても良いですか?」
「火と水だよ」
その後も簡単な質問に答える。
今までフロストとイリスの2人に教わったが、かなり本格的な感じがするな。
まあフロストはポンコツそうだし、イリスは天才だし、そう考えるとまともに教わった記憶が...。
「とりあえず、現状できる魔法がファイアボールとウォーターボールだけなので新しいのを覚えましょう。魔法剣が火属性が出てたってことは最も適性の高い属性は火属性なので、火属性の中級魔法を教えますね」
火属性の中級魔法か。
現状火属性で見たことがあるのはファイアボールとプロミネンスだけなんだよな。
あんまり想像がつかない。
「攻撃魔法なら、ファイアアロー。文字通り火の矢を作り出して放つ魔法です」
ライトアローに似たのが出てきたな。
説明を聞くとファイアボールとは違い、矢の形を形成する分難易度が上がるとの事。
上手くできなければファイアボールよりも威力が下がり、魔力を無駄に消費しただけとなるらしい。
「私は火属性の適性がないのであれなのですが、ファイアボールができるならおそらくは見本がなくともできると思いますよ!」
なんかかなり期待されてる気がするな。
とりあえずやるだけやるか。
おそらくライトアローと似た感じの見た目になればいいのだろう、見本なら一度見た。
「ファイアアロー!」
ファイアボールを作り出し、それをこねくり回して矢の形に整える。
そして放つ!…前に、火は霧散してしまった。
この感じ前にもあったな。
「ユージさん自身で気づけたようですね」
「手元で長いこと維持しようとしすぎて色んな方向に魔力が散乱したって感じか?」
「その通りです!ファイアボールなどを飛ばす際、標的に向けて放つ。つまり魔力の方向が一緒だから色んな方向に飛んで行ってしまわないって感じですね」
なるほどな、前にウォーターボールで起きたことと同じことだ。
となるとかなり難しいな。
「弾を出してから形を変えようとしちゃダメですよ。ちゃんと頭の中で作ってからそれを出すイメージにしないとさっきみたいな感じになっちゃいますからね」
頭の中でしっかりイメージする。
矢の形。
あれだ、矢じりがあって木を挟んで最後に羽根がある。
羽根は矢が真っ直ぐ行くように補助する役割だっけな。
というか、弓を引くイメージでやればいいのでは?
手に魔力を込めながら弓を構えるイメージで。
「ファイアアロー!」
それを言うと同時に手の魔力を放つ。
弓を引き、矢を放つように。
真っ直ぐと飛んでいった火の矢は丸太を突き破り、燃やした。
できた!
転生前の記憶がだいぶ役に立ってる。
転生無双できるんじゃないか?
「やりましたねユージさん!魔法自体は成功です!…成功なんですが…」
「なんですが…?」
「ユージさんって剣メインですよね?あの感じでやろうとすると両手をフリーにしないとだから杖を使うのと余り変わりないなぁって…」
あ、そうじゃん。
弓を構えるイメージでやったら剣どうすんねんって話だしな。
「あながち間違いではないよ」
声の方を向けば1人の女性が立っていた。
今は訓練場を借りてるから誰も入って来れないはずだが…。
「失礼、夫から許可は取っている。まずは自己紹介だ。私はリサ・カナリア、ゼファーノス聖騎士団の団長を務めている」
騎士団長、つまり俺とリアーシを預けてくれた人たちのトップか。
「お久しぶりですリサさん。こちらは…」
「ユージです、この前は助けてくれてありがとうございました」
「あぁ、知っているよ。君に感謝を伝えに来たんだ。君たちがワイバーンを地に落としてくれていたおかげで迅速に討伐できた。ありがとう」
すごい人に感謝されてるのだけはわかる。
とはいえ落としたのは俺じゃないんだよな。
「あの、感謝なら…」
「シスターに、だろう?もう伝えたさ。そのうえで、君がいなければ不可能だったと言っていたよ。君の勇気に敬意を払わせてくれ」
まじか、リアーシ俺のおかげだと思ってるのか。
じゃあ俺のおかげだな!
…この後何話せばいいの?
「そういえばリサさん、さっきのあながち間違いって…」
「あぁ、先程の構えについてだ。間違いでない理由はいくつかあるのだが…私が見せた方が早いだろう」
そういうとリサはルビアに土の的を作るように頼む。
ルビアはかなり硬そうな岩を土魔法で2個作り出し、こちらに戻ってくる。
「ファイアアロー」
リサは手を前に出す。
手のひらの前に形成された火の弾が矢のように飛んでいき、岩を貫いた。
「ふむ、こんなものだろう。では次に構えをした場合を見せよう」
リサはそういうと弓を引くように構える。
「ファイアアロー」
放たれた火の矢は先程よりも数段早く、岩を貫き、破壊した。
明らかに威力がおかしい。
「魔法はイメージだ。矢を放つイメージ自体は間違いではない。まぁ近接戦をしながらだとそんな余裕は無いだろうが、遠距離なら有効だろう」
なるほど、そもそも近接戦なら魔法剣に頼るし、遠距離攻撃手段としてだけなら今の感じでもいいのか。
それに、これなら杖を持つ必要も無いし荷物にもならない。
「もちろん、予備動作無しで出せるのが一番いいのだがね」
それを言ったら元も子もないでしょう。
Dランクにそんな高度なことを言わないで。
「とりあえず、感謝は伝えたし私はここらで消えるとしよう。あとは若い2人で頑張りたまえ」
そういうとリサは訓練場を出て行ってしまった。
若い2人で、と言っていたがリサもかなり若そうだったが。
てかあの気力無さそうなギルドマスターの奥さんすごいしっかりしてたな。
しかも美人ときた。
…尻に敷かれてそうだな。
「…失礼なこと考えてませんか?」
「え?」
「いえ、なんでもないです。…リサさんにいい所取られちゃったので、次は水属性の魔法を私が!教えます!」
なんかやる気になってるな。
まぁ教わる側としてはありがたいが。
その後ウォーターブローを教えて貰ったが、水がないところではできなさそうだった。
魔力効率的にも水場でないと燃費が悪いらしい。
となるとしばらくは火属性メインだな。
「ありがとうルビア、かなり魔法にも慣れてきた」
「私よりリサさんの方が力になった気がしますけどね」
拗ねちゃった。
ただし可愛い、これがフロストだったらぶん殴ってた。
「気持ちを切り替えて、魔法の練習もしたいし依頼請けない?」
「そうですね!早速行きましょう!」




