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28.空飛ぶ魔物

朝、鳥のさえずりで目が覚める。

寝起きで機嫌の悪いリアーシを連れ、再び旅路に着く。


もう次はゼファーノス。

これでリアーシとの旅も終わりだな。

思ったより早く着く気もするし、長かった気もする。

まぁまだ着いてないけど。


「何ぼーっとしてるんですか。ただでさえ危機管理能力皆無なんですからしっかりしてください」


めちゃくちゃ辛辣じゃない?

この変化がいちばんの驚愕だよ。

最初のシスターどこ行った。

…最初からこんな感じだったか。

嫌な顔とか見間違いじゃなかったな。


軽口を言い合いながら道並みを進んでいく。

既に王都が近いということなのか、だいぶ道が整っている。


すると、茂みの方から音が聞こえる。

魔力探知はしていたつもりだが、かなり弱々しいものだったからか見落としていた。


剣を抜き、構える。

しかし、そこから出てきたのは満身創痍の冒険者だった。


「お前たち…冒険者、か…?すまない、金は払う、手当を…して欲しい…」

「リアーシさん!」

「わかってます!」


リアーシの回復魔法により傷が癒えた冒険者。

しかし、MPや疲労などまでは回復できないようで疲れが未だに見える。


とりあえず話を聞くか…。


「依頼を請けてたんだ…盗賊を捕まえる依頼…聞いてない…ワイバーンがいるなんて…」


盗賊、ワイバーン。

あの時聞いた話だ。

ワイバーンを制御する盗賊。


ワイバーンはBランクの魔物。

前にイリスが覚えてないって言ってたからそこまで記憶に留めてなかったが、Aランク冒険者でなければ倒せないほど強い魔物。

そんな魔物を制御してる盗賊…?

ヤバすぎるだろ。


「俺はギルドに戻って報告する…先に進むなら注意してくれ」


そういうと冒険者は回復分の金を置き、俺たちが通ってきた道を戻って行った。


「…私たちも帰ります?」

「え?帰るって?」

「いや、普通にさっきの街に…ワイバーンとか私たち2人だと蹂躙されて終わりですよ?」


確かに。

反論の余地もない。

よし、戻ろう。


「…と言いたいところなんですけど、諸事情がありまして私はこのままゼファーノスに向かいます」

「え?いや、え?」

「ここからはひとりで行けますので、大丈夫ですよ」

「いやいやいや、大丈夫じゃないですよね?ワイバーンとかですよ?死んじゃいますって…」


話を詳しく聞けば教会に送る資金をなるべく早く届けたいとのこと。

教会自体の回復魔法等は有料ではあるが、それだけではゼファーノスでは成り立たないらしい。

聖騎士団がかなり強いようで、その影響で孤児院も経営しているゼファーノスの教会はかなり経営が厳しい。

だから自分が行かないと…。

そう考えているようだ。


「なら、2人で行きましょう」

「もし鉢合わせたら蹂躙されて終わりですよ?」

「それでもです。まぁ最悪逃げればいいんですよ逃げれば」


そもそも合わなければいいだけだからな。


魔力探知を途切れさせず、常に警戒して進む。

まぁそうそう出会うことはないだろう。


夜までなんの魔物と鉢合わせることなく野営の準備を始める。

妙な静けさが不安を募らせる。


「…さすがにここまで静かだと不気味ですね」

「ワイバーン…Bランクの魔物がいるせいでほかの魔物が動けない、と考えるのが自然ですかね。結界魔法は張っときますが、大きすぎるとかえって危険なのでテント1つ分程度にして寝ましょう」


まじか。

となると一緒のテントじゃない?

見張りの交代の時でも寝巻きすらも見せなかったあのリアーシと?

…普通に恐怖が勝つな。

寝相悪そうで怖い。


「…なんか失礼なこと考えてません?」

「え?」

「いや、なんでもないです。とりあえず一緒に寝ましょう。どうせ襲撃されたら2人とも死ぬんですし、そうじゃない可能性に賭けて明日のためにゆっくり休むが堅実です」


そして何も起きることなく朝になる。

ちなみにリアーシの寝相が悪すぎて2回ぐらい殴られた。

マジで俺が何したってんだ。


「さっさと出発しますよ」


こいつを1回殴っても俺は怒られないと思う。


そんなことは置いといて、再び魔力探知を途切れさせず行くことに。

リアーシの魔力探知の半径は約200メートル。

そこそこ広いため安心できるっちゃできる。

まぁ、油断するのがいちばん良くないが。


しばらく歩いていてさすがに違和感を感じる。

魔力探知に一切の反応がないらしい。

強い魔物のせいで逃げてる…?

だとすると…。


突然、ひとつの影が2人の影を覆う。

雲が太陽を隠したような影ではない。

もっと早く、近いもの。

魔力探知が届かない上空、空を見上げればなにかが飛んでいた。


「あれは…ワイバーン…!ユージさん!逃げますよ!」


空を飛ぶワイバーン。

上空にいたのか、気づかなかった。

いや、考えてみれば当然か。


こちらに気づいていない可能性も考えたが、旋回しているのを見るに気づいている様子。

となるとまずいな。


上空から炎が降り注ぐ。

ワイバーンのブレス、さすがに距離が離れている分減衰しているのだろうが明らかに火力がおかしい。


「ライトウォール!」


光の壁が炎を防ぐ。

明らかに火力に押されているが、範囲を狭めることで何とか防いでいるようだ。


「リアーシさん!」

「大丈夫です!それよりも早く何とかしないと魔力不足でジリ貧ですよ!」


そもそも遠距離攻撃手段がない俺に本職がヒーラーのリアーシ。

空を飛ばれているだけでくるしい。


「まずは叩き落とします!羽に穴を開けて飛べなくする、なにかいい案ありませんか!」


俺のファイアボールとウォーターボールは多分届かない。

あるとすれば…。


「スライムの核を貫いた私のライトアローでやりましょう!ただ、その間ブレスへの対抗手段が…」

「俺が何とかします!だからお願いします!」

「…わかりました、30秒耐えてください!」


そういうとリアーシが魔力を手元に込め始める。

ワイバーンのブレスの間隔は5秒溜めて10秒ブレス、一度出したら10秒は耐えないといけない。

つまりあと最低でも2回、何とかしなければならない。


できなきゃ死ぬ。


剣に魔力を込めろ。

炎を、相殺しろ。


ワイバーンの炎を剣に纏った火で相殺する。

当然押されるが、魔力を込めれば何とか持ちこたえられる。


一回目のブレスは何とか耐えられた。

ただ、もう魔力が…。


ワイバーンがブレスを溜めようとしているのが見える。

次の攻撃に備えろ。

リアーシを守れなければ俺も死ぬ。

なら、本気で守れ。


二回目のブレス。

全力で耐える。

魔力を全て吐き出す。


熱い、手が燃える。

剣から伝わってくる熱が手を燃やす。

耐えろ、耐えるんだ。

魔力が底を尽きても気合いで耐えろ。


魔力が底を尽き、その炎が剣を折る。

10秒、ワイバーンのブレスが止む。


目の前が揺れる。

魔力はもう残ってないし、火傷が酷いな。

それに、魔法剣も折れた。

もう、限界だな。


「ライトアロー!」


光の矢がワイバーンの翼を貫く。

魔力を最大限に溜めたそれは大きな穴を作り、空を飛ぶことを許さなかった。


地面に落とせた。

作戦は成功…かな。

ただ、この先を考えてなかったな。


「すみません。俺、もう魔力がないです」

「奇遇ですね、私もです」


地を歩くワイバーン。

Dランクとヒーラー2人でよくやった方か。


死を覚悟した。

目の前まで歩いてきたワイバーンは眼前でブレスを溜める。


5秒経過、炎が放たれる。


「ストーンエッジ!」


地面から生えた岩がワイバーンの顎に直撃。

溜められていた魔力は口の中で爆ぜる。


「ワイバーンを視認、これより駆除を開始する」


声の方を見れば複数の鎧姿の人達がいた。

そういえば、この国には聖騎士団なんてものがあるなんて言ってたな。

良かった…これなら、大丈夫、か…。


意識が薄れ、視界が暗転する。

少し、休もう。

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