26.堕落シスターと不穏な旅路
リアーシとは部屋は別々だが、一応場所は教えて貰っている。
顔を洗って朝食を食べた後、いないことを確認して部屋まで行く。
「リアーシさん?そろそろ出発したいんですけど」
ノックや呼びかけに返事がない。
出かけてるのか?と思ったが、女将さんに聞いても出てないと言っていた。
つまりまだ寝ているということか。
とりあえずノックしまくるか。
「リアーシさーん。朝ですよー」
しばらくして物音が聞こえる。
なにか大きなものが落ちる音と共に悲鳴が聞こえる。
「イッッッッタ!…うるさいわねぇ!聞こえてるわよ!」
え、俺怒られた?
てかリアーシキャラ違いすぎない?
しばらくしょんぼりして待っていると、しっかりとシスター服を身にまとったリアーシが出てきた。
ほんとにさっきの声の人か?
「すみません、寝ぼけてまして…」
まじか、この人寝ぼけてたで通そうとしてるのか。
素が出てたぞ素が。
「では行きましょうか」
そう言われ、スアトフから次の街へと向かうことに。
一応護衛依頼がないか確認したが、特にいいのがなかった。
それとは別にどうやらワイバーンがこの辺りをうろついているとの事。
最近は盗賊団も活発になってきていたりなど危険がいっぱいらしい。
むしろ俺たちが護衛依頼を出すべきな気がしてきたな…。
特に危険な魔物に遭遇することなく道を進む。
王都が近くなっていくにつれて道が整理されているようにも感じる。
リアーシと少し交流を深めておくべきか。
「リアーシさんって、朝のあの感じが素なんですか?」
「は?…あ、すみません。いきなりどうしたんですか?」
絶対聞くの間違えた。
いやまぁ気になってたんだけど、この人絶対に素があの口悪い方でしょ。
「いやぁ…その、無理してるんじゃないかなぁって。ちょっとの間とはいえ一緒に旅する仲間ですし、素でいいんですよ?」
なんか上からっぽくなっちゃったな。
でも素を出さないようにしてあれだとなんか居心地悪いし、フロストやミントがタメ口でいいって言ってくれたように、今回は俺から言うべきかとも思うし。
「…はぁ…いやまぁ…お気づかいなく…」
うん、好感度下がったな。
深く踏み込みすぎたか。
とまぁそんなことは置いといて普通に雑談はすることに。
「ユージさんはゼファーノスに何しに行くんですか?」
「何しに…強いて言うなら、ゼファーノスに行くか、フローディア方面に行くかの二択だったんですよ。それで雪山だと死ぬ気がしたので…」
「あ〜確かにそんな感じしますね」
失礼だなこいつ。
いやまぁ俺のせいなんだろうけど…。
「リアーシさんはゼファーノスに行く理由あるんですか?」
「教会の都合ですね。教会といっても経営はありますし、そういったのを調査しなきゃなので」
なるほど、確かに言われてみればそうだ。
無償で回復します!とかだとどうやって成り立たせてるんだって話になる。
初級回復魔法を無料で教えて貰えるのって相当ありがたいよな。
「本当は行きたくないけど…」
なんかボソッと言ってるな...。
まあ深堀りすればまた機嫌を損ねるだけだし、聞かなかったことにしよう。
「そういえばこの前ルバルトさんがギルド本部から〜って言ってましたけど、ギルドに本部とかあるんですか?」
「ユージさんって冒険者ですよね...?なんで知らないんですか?」
そりゃ転生者だし...。
一緒に旅する仲間だし言ってもいい気がするけど、多分信じてくれないよなぁ。
田舎者ってことで誤魔化そう。
「田舎出身で最近旅を始めたんです。だから知らないことが多くて」
「かなり無理ある理由ですけど、深くは聞かないでおきます。別に知りたくもないですし」
辛辣だなこいつ。
好感度のメーターがあったらマイナスだろこれ。
「そもそも冒険者ギルドを経営する団体の話になりますね。例えば聖騎士団とかならカナリア家が中心となってこのアフトランスが経営しています」
その例えがわからないんだけど...。
まぁ突っ込んでも話を遮るだけだし、一旦聞くか。
「何が言いたいかといいますと、大体の組織は国が経営するってことです。教会も聖国マーハウが運営をしています。その中で冒険者ギルドは国が運営していない特殊な団体なんです」
「...つまりどういうことですか?」
「何もわからないってことです。運営する上はいる、けどそれがなにかはわからない。そういう認識でいいと思います」
なるほど、わからん。
むしろ聖騎士団とかしらないのが出てきたりして更にわからなくなったな。
まぁAランクレベルが所属するのが本部ならあんま関係ないだろう。
俺Dランクだし。
そんな事を話しているとリアーシが何かを探知したようで隠れるように促される。
「何かいるんで…」
「静かに」
勢いよく口を塞がれる。
俺の魔力探知には何も引っかかってないけど、そんな化け物がいるのか?
しばらくして話し声が聞こえてくる。
「…だよなぁ。まぁあれだ、頭領が革命を起こせば俺らも稼ぎやすくなる。そのために多少なりとも協力はしねぇとな」
「でも大丈夫っすかねぇ。ワイバーンってBランクっすよね?制御失ったら俺らもヤバくないっすか?」
「そうなったらトンズラこけばいいんだよ。さっさと戻って準備すっぞ」
「うっす。そういえば…」
…なんかすごい会話が聞こえたな…。
頭領が革命?
ワイバーンを制御?
いやいやいや、ヤバすぎないか?
そう思いちらっとリアーシの方を見る。
かなり面倒くさそうかつ嫌そうな顔をしている。
魔力探知に引っかからなくなったのか、声をかけてくる。
「…さて、行きますか」
え、スルーまじ?
絶対ギルドとかに報告するべきでしょ…。
「ギルドに報告とかした方が良くないですか?」
「信じてもらえると思ってるんですか?」
「俺はともかく、シスターのリアーシさんの言葉なら信じてもらえるんじゃないんですかね」
ものすごく嫌そうな顔をしている。
いやまぁ絶対めんどくさいもんな。
とはいえ結構な危機だろ…。
「…わかりました、次の街で報告しましょう。戻るより先に進む方が早そうなので」
戻った方が早い気もするが、これ以上何か言うと殴られそうなのでそっとしておくことに。
ヤバめの話を聞いて緊張感もあり、野営は早めに準備をし、見張りにも緊張が走る。
リアーシの魔力探知の範囲はそこそこ広いらしいが、俺の魔力探知はそこまで広くない。
視認や音で確認することが多くなり、かなりドキドキする。
とは言うものの、特に襲撃などもなく夜が明ける。
そのまま旅路につき、次の街を目指す。
「何かいますね」
かなり日が傾いて来た頃、リアーシの魔力探知に何かが引っかかったらしく、警戒しながら見に行くことに。
野営をするにも危険があるなら排除しておきたいしな。
動き的に人間ではなく魔物っぽいらしい。
近づいていくと影が3つ見える。
「…ゴブリンですね」
視認できるところまで近づきゴブリンだとわかる。
久しぶりにまともな魔物とあった気がする。
まぁそもそも冒険者自体がグロリアスより多いんだと思うけど。
近づいていくと約3体程のゴブリンがいる。
今更ゴブリンごときに遅れを取る気はしないが、まぁちゃんと戦うか。
「それぞれのファイアボールで2体殺って、残り1体は俺が剣で殺ります」
「了解です」
「「ファイアボール」!」
火の弾がゴブリンを襲う。
2発とも命中し、2体はその場に伏せる。
もう1体はどこから攻撃が飛んできたのかわからずあたふたしているようだった。
魔法剣に魔力を込める。
「くらえ!」
背後から剣を振りかぶり、肩から反対側の脇腹まで引き裂くように振り下ろす。
魔力で強化された魔法剣は止まることなくゴブリンを両断した。
人間相手じゃなくて、魔物だったら人型でも結構行けるんだけどな…。
そう思いながら剣を拭い、素材を取る。
討伐依頼でなくとも素材を売ること自体は可能だ。
その後もたまに出てきた魔物を倒し素材を集めながら歩みを進める。
日が沈み、野営をすることに。
「ゴブリン、かなり手強かったですね」
え、あれで手強かったの?もしかして俺強くなってる?
「そうでしたか?結構サクッと殺れてあんまり違いが…」
「鑑定してないんですか?」
俺鑑定持ってるって言ってたっけ。
「初対面で鑑定してくるような失礼な人だったので、全ての生物にしてる感じかなぁって思ったんですけど」
あ、バレてたんだ…。
そりゃまぁ感知できるスキル持ってたらそうだよね…。
「勝手に鑑定してすみません…」
「いやそれはいいんですよ。何が言いたいかっていうと、魔物のレベルがだんだんと上がってる気がするってことです」
「でもファイアボールでワンパンでしたし、剣で両断できましたよ?」
元々ゴブリンの強さなんて気にしたことないし、そんなものなのではないのか?
「はぁ…いいですか?まず、ゴブリンをワンパンは基本です。それに加えてあなたの持っている魔法剣は高価なものです。本人以上の力を出せるものなんですよ。…もう話しても意味なさそうなので寝ます。時間になったら起こしてください」
呆れられてしまった…。
まぁそこまで重要なことではないだろう。
強くなってるといってもワンパンできるレベルだし。
そう思いながら見張りをすることにした。
…流れで俺から見張りになってるな。
まぁいいか。
そんなことを思いながら夜を過ごした。
特に襲撃などもなく夜が明け、そのまま旅路に着く。
軽く雑談をしながら歩いていると次の街が見えてきた。




