16.この世界のあれこれ
「あれって...もしかして...」
いや、間違いないだろう。
ほぼほぼ確信はしていたが、一応思い違いの可能性もあるので、ミントに聞いてみた。
「奴隷だよ…」
声のトーンを落として、ハッキリと言われた。
俺の思った通りだった。
「じゃあ…」
「いや、悪いやつじゃないはず…」
ミントは続けざまにそう言った。
どうやら、俺の思ってる奴隷とは少し違うらしい。
俺がさっき見た奴隷というのは、この世界では『犯罪奴隷』と呼ばれるものだ。
犯罪奴隷にも二種類あって、軽犯罪奴隷と重犯罪奴隷というものがいる。
軽犯罪奴隷は、罪を犯した人達が、罪を償うために奴隷として売りに出される。
用途は主に冒険者パーティや、街中での肉体労働だそうだ。
一定の期間仕事をすれば解放されるらしい。
勿論、冒険者パーティの方は危険も多いので、命の危険もある。
一方重犯罪奴隷の方はというと、国に反逆するなどの大罪を犯した人を、どうせ殺すなら死ぬまで使ってやろうということらしい。
扱いはとんでもないくらい酷いな。
使われ方は様々で、中には自爆特攻に使われてるやつもいるらしい。
大犯罪者とはいえ、可哀想に思えてくるな。
そして闇奴隷。
俺が想像してた奴隷はこれだな、一番許せないやつだ。
闇奴隷は、名前の通り一般市民を攫ってそのまま奴隷として使う。
特に子供が多い。
使われ方なんてものは特に決まっていない。
奴隷商人に売り出された後は、何も逆らえないまま自由に使われる。
重犯罪奴隷よりも待遇が酷い。
物流が盛んな港町ではまず見かけないが、人気のない場所で奴隷売買が行われているとのこと。
今俺が見た奴隷は軽犯罪奴隷にあたるものだそうだ。
まあ、見ていて気分が良くなるものでもない。
ミントは獣人が多いことを不思議に思っていた。
差別が横行してたり、冤罪をかけられていたりするんじゃないのかって。
そう言われたら、そうも考えられるような気がしたが、どこにも証拠がないため動き出せずにいるらしい。
今回いるのがたまたま獣人ばっかりだった可能性だって考えられるのだ。
下手には動けないだろう。
そうやって沈んだ気分のまま歩いていた。
俺はなんとか気分を良くしてあげようとミントに話しかけた。
「海でも見に行かないか? きっと綺麗だぞ」
…自分で言ってて思った。
なんか気持ち悪い!
こういうキャラじゃないだろ俺!
「…いいよ! 行こう!」
意外とすぐ機嫌が良くなった。
良かった、嫌われなくて。
ということで海に向かうことにした。遠くでも綺麗だったが、近くで見るともっと綺麗だ。
「やっぱり海はきれいだね!」
ミントは元気な声で言って水面を眺めている。
ああそうだ、俺は、この海を超えるために、金貨50枚を集めなければいけない。
料理大会の計画もそろそろ考えなきゃいけないな。
と、言っても実のところ何にも決まっていない。
参加する気はあるが、何をどんな材料でどうやって作るかも全く決まってない。
だが、この大会で優勝しないと、俺は海を超えることができない。
そんなことを考えながら海を眺めていたら、ミントが唐突に話した。
「ユージってランクDだけどさ、結構筋が良いよね〜。最近冒険者になったんでしょ? ステータスも高いし、私と同じ鑑定スキルも持ってるし、絶対もっと成長するよ!」
励ましの言葉。と同時に少し、いや、だいぶ違和感…コイツ今なんて言った?
「ステータス? 鑑定スキル? 一体何の話をしてるんだ?」
「…? ユージのステータスを見ただけだよ? もしかして、言っちゃいけなかった?」
「いや、ステータスを見るって…」
「知らないの? 鑑定スキルを使うんだよ!」
「鑑定スキル…?」
ミントは少し困惑していた。
困惑したいのはこっちだ。
と思ったが、ミントは色々説明してくれた。
全ての生き物にはステータスが存在する。
もちろん俺にも存在する。
自分のステータスは見ようと思えば見れるらしい。
ミント曰く、ちょっと念じたら頭の中にステータスが見えてくるとのこと。
原理は誰も知らない。
と、いうことで実際にやってみた。
ユージ (22)種族:人間
HP:290 MP:171 攻撃力:230 防御力:136 素早さ:96
おー…って、これが高いのか低いのかよくわからないな。
初めて見るステータスがこれだから、俺にとっての基準はこれになるのだが、もしかして実はめっちゃ強かったりするのか?
まあ、そんなことは無いだろうが…
そして次にスキルだ。
スキルというものはとにかく色々種類があるらしい。
さっきミントが言ってた鑑定や、状態異常耐性系のスキルや、探知系、強化系など、例を上げればキリがない程存在している。
ほとんどは才能だが、自力で習得できるスキルもあることにはあるそうだ。
そして、俺のスキル欄にはミントが言っていた通り、鑑定がある。
つまり俺も鑑定スキルが使えるということだ!
なんで今まで気付かなかったんだろうな。
鑑定の使い方は、対象を見ながら鑑定スキルを発動させる!
って感じで念じると頭の上にステータスが見えるという。
早速、ミントに対して使ってみることにした。
…鑑定!!!
名前:ミント (24) 種族:獣人
HP:167 MP:203 攻撃力:238 防御力:62 素早さ:471
おー、これは、俺よりも合計が高いな。
特に素早さが飛び抜けている。流石猫族。
「スキルは見えないんだな」
「そうだね〜、鑑定でスキルを見るには鑑定レベルを上げなきゃだからね」
鑑定レベル、及びその他スキルのレベルを上げる方法は、基本的に魔物を倒しまくることだそうだ。
そうすれば勝手に上がっていく、いわば経験値みたいなものだ。わかりやすくて助かる。
一部そうじゃないスキルもあるらしいが、俺が知る意味はないだろう。
ミントは、スキルが見れるくらいまで鑑定レベルが上がっているようだった。
これをもっと早く気付いていたら、エルダやイリス、他の冒険者たちのステータスもわかったのかもしれないと考えると少し損した気分になるが、イリスのステータスが化け物であることは容易に想像できるので、自分の実力に絶望するよりかはいいのかもしれない。
そんな感じで、ミントと色んなことを話しながら大会のエントリーをしに戻っていった。
大会のエントリーは料理ギルドと呼ばれる場所でやるらしい。
冒険者ギルド以外にもギルドがあったんだな。
そう思いながら、ミントに案内されるがまま歩いていった。
料理ギルドに着くと、受付の人が待っていた。
エントリー自体は資格がなくてもできるらしいので、渡された資料を見て、エントリーした。
無事に受付が終わった俺らは料理ギルドから出ていった。
大会に提出する料理を何にしよう。
とはいえ元配達員の俺が作れるものなんて限られてるし…なんだろう。
日本食ならスシ、カツ丼…この世界にとって珍しいものなら別に日本にこだわらなくていいのかもな。
ピザ、ラーメン…いやいや、冷凍食品やカップラーメンじゃないんだぞ。
作れるはずがない。
それに、材料だって自分で集めなきゃならない。
色んなことを考えていると、急に一人の男性に話しかけられた。
「やあ、僕はキルバス。キミ、面白いことを考えてるね。それ、僕にも教えてよ」
俺は思わずその男性を鑑定してしまった。
フィル・キルバス 種族:人間 (31)
HP:155 MP:171 攻撃力:110 防御力:96 素早さ:112
なんだかパッとしない。
そう思っていたら、ミントが驚くように言った。
「キルバス…もしかして、あの有名な料理人さん!?」
「そうだよ。僕はキミに興味が湧いたから、協力してあげようかなって思っただけさ。海へ渡るためのお金が欲しいんでしょ? どうする? 僕と一緒に優勝してみる?」




