118.闇を操る追求者
闇が部屋全体を支配する。
置いてあるものの影が全てやつの支配下にあると考えた方がいい。
外のみんなはもう準備ができただろうか。
「音がしていたね。土属性の魔法を使えるやつが外にひとりいる、と考えるべきだろう」
「どうだろうな。俺が遠隔でやったかもだろ?」
魔法剣に魔力を流す。
炎を常に流し続けろ。
足元に闇を作るな。
「徹底しているね。僕の能力が割れている、という訳か。ロメリアにでも教えてもらったのかい?」
「さあな。地獄で聞いてみたらどうだ」
「彼女はムクほどでは無いが強く改造してある。彼女が負けることは無いよ」
自分の腕に自信があるってことか。
それを言うなら、俺たちもイリスを信じてる。
影から手が伸びてくる。
闇の手、ヒデラの魔法だろう。
「ファイアボール!」
火の光で闇を打ち消そうとする。
しかし、具現化した闇は光では打ち消せないのだろう。
幸いファイアボールで手を破壊することはできた。
だが、これからは油断しちゃダメだ。
まずは隙を作る。
「ファイアバレット!」
指先から発射するように、火の弾を放つ。
予備動作の大きいファイアアローは使えない。
まずはファイアバレットで出方を探る。
隙を作るにはまずは動きを知ることだ。
「バレット系統か。面白い撃ち方だ」
下から闇が生え、火の弾を打ち消す。
その闇はそのままこちらへと飛んでくる。
迎え撃つように魔法剣を振るう。
斬れる。
やっぱり具現化されてるのか。
となるとこれをどうにかした方がいいな。
闇を発生させている条件…なるほどな。
「ファイアバレット!」
「またそれかい?先に言っておくが、僕は他の場所から魔力を供給している。魔力勝負なら君に勝ち目は無いよ」
再び下から闇が生え、火の弾を打ち消す。
なるほどな、そういう感じか。
こちらに向かってくる闇をヒデラの方に走りながら斬り落とす。
どちらにしても近距離戦に持ち込むべきだ。
「グラビティシステム、起動」
「なっ…!」
5mくらいの範囲に入った時、そう聞こえた。
それと同時に体が重くなる。
グラビティシステム、セラエムが使ってたあれだ。
「油断は禁物だよ。グラビティシステム、これは彼が作ったものの劣化版だがね。本来は指定した場所の重力を操る魔道具さ。当然、旧時代の者たちには理解されないものだがね」
動けない、という訳では無い。
あの時よりも威力が弱いのだろう。
だとしても指を動かすので精一杯だ。
迂闊だった、くそっ。
「やはり彼の技術は素晴らしいね。僕と意見が会わなかったのが実に悔やまれる」
「…そりゃな。お前みたいなカスに賛同するやつなんて居ねぇだろ」
「嫌われているねぇ。お話は嫌いかい?なら、トドメと行こうか」
ゆっくりと近づいてくる。
それと同時に闇を操り、剣のようなものを生成する。
それを頭の上に持ってきて、手を離そうとする。
今がチャンスだ。
「ファイアボール!」
地面に向かって火を放つ。
自傷覚悟の作戦。
「ライトアロー!」
光の矢が飛んでくる。
それはヒデラに向かって飛ぶ。
しかし、それは闇の剣によって弾かれた。
「やはり仲間がいたか。めんどくさいね」
俺がしくった。
あんなのを隙とは言えない。
「すみません、仕留め損ないました」
「いや、俺のせいだ。このまま援護してくれ」
「了解です」
2対1になったな。
とは言え不意打ちができなくなった分ちょっと不利か。
「シスターか。僕の目指す新世界には必要ないね。神様は魔王様ひとりで十分さ」
「またお喋りか」
「不意打ちの用意をしていたのだろう?君のミスでそうなってしまったんだ。作戦を練る時間くらいはあげよう」
腹立つな。
俺のせいではあるんだけども。
「光属性の魔法が何に由来しているか知っているかい?」
「…神の加護とか?」
「不正解さ」
指でチッチッチとしている。
まじでなんだこいつ。
「…付き合います?」
「聞くだけ聞こう」
「わかりました」
話している間に隙ができるかもしれない。
それに、フロストがいつ準備が終わるかも分からない。
予定より早めにリアーシが出てきたからできるだけ時間を稼いでおきたいところ。
「正解は心さ。信仰心という心が光を与え、力をもたらすんだよ」
「神を信仰してるから使えるってゼノンは言ってたな」
「私別に神様とかどうでもいいと思ってます」
「てかあんた魔王を神と信仰してるのに光属性使えないんでしょ?その理論破綻してるじゃん」
ボロクソに反論したら喋んなくなっちゃった。
口喧嘩なら勝てそう。
このまま口論で倒せないかな。
「シャドウランス」
影から槍が生成される。
一旦まずいな。
「あれ相殺できる?」
「無理ですね。盾で防ぎます。いくつか作るので活用してください。ライトウォール!」
影の槍がこちらに向かって飛んでくる。
光の盾とぶつかると相殺し、消えていく。
しかし、光の盾もぶつかったところから消失していく。
リアーシが言ってたヤツだな。
光の盾を活用しながら影の槍を避ける。
「シャドウゴーレム」
影が地面から出てくる。
俺の影、リアーシの影、ヒデラの影、計3つの影が動き出す。
これって2対4ってこと?
「シャドウゴーレムは私が潰します。時間を作ってください」
「了解」
ということで時間を稼ぐ。
まずは近くにいる影を蹴り飛ばす。
リアーシが魔力を練る時間を稼ぐために最悪肉壁になろう。
「ファイアボール!」
なるべく1列に並ぶように誘導する。
シャドウゴーレムだけで十分と判断してるのかヒデラは優雅に本を読んでいる。
あいつも射線上に入るように誘導しよう。
剣を振るい、火を放つ。
「ピューリファイ」
あ、そっちなのね。
てっきりライトアローで貫くのかと思ってた。
恥ずかしい。
「そっちのシスターはなかなかやるようだ。外付けの魔力でもあるのかね?」
まだゼノンに貰った魔力が余っているのか。
てかリアムにも魔力渡してもらってたし、今のリアーシめちゃくちゃ魔力持ってる?
心強すぎるだろ。
「まずはそっちのシスターから駆除することにしよう」
ヒーラーから潰すつもりか。
いや、大丈夫だ。
俺が守ればいい。
あとは、隙を作るだけだ。




