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117.凡人を信じたみんなのために

5人が奥に進み、周りの邪人はスノーゴーレムとともに倒れた。

これで1対1。

相変わらず、勝てるビジョンが浮かばない。


「いいの?行かせて。あの子たちもあなたも、死んじゃうよ?」

「負けないよ、私たちは。信じてるから」

「あっそ」


それでも、やるしかない。

背中を任せてもらった。

一度負けた私を、信じてくれた。

その信頼に、応えろ。


こいつが使うのは花の魔法。

従来は火に弱く、対策は火属性の魔法だった。


しかし、以前の戦いでプロミネンスが通じないことをイリスは理解している。


蔓はプロミネンスで相殺、光属性のほうは雷と土で相殺。

魔法は完璧なものじゃない。

必ず隙ができてるはず。

チャンスを窺え、一瞬の隙を作るんだ。


草と光を操る邪人。

火と雷と土を操る少女。

両者の魔法が戦いの始まりを告げた。


「ねぇ、なんでまた挑んできたの?あのオッサンが命をかけて逃がしてくれたのに」

「戦う理由があるから」


恐らくアイツは私より魔力が多い。

蔓に魔力を注ぎ込んで無理やり火への耐性をつけている。

だから、倒すためには雷か土の魔法をぶつけないとだめだ。


「サンダーランス」


雷が蔓を裂く。

しかし、すぐさま再生する。

攻撃が効いていないわけでは無いが、火力が足りないのだろう。


隙を作るしかないと思ったけど、サンダーランスだと多分倒せない。

それはストーンエッジでも同じだ。

それに王級魔法のプロミネンスで傷すらつかない蔓。

彼女を倒すには神級魔法が必要だ。


できるの?私に。


「なにか考えてるみたいだけど、無駄だから」


光の槍が飛んでくる。

生成していたサンダーランスで相殺するが、隙を晒せば危険だと緊張感がさらに増す。


思い出す、あの時の絶望を。

私の成長は13歳の時に止まった。

その時から3年間、魔法を探究し続けたが、ついには神級魔法を使えることは無かった。

私には才能がない。


「エクスプロード」


爆炎がロメリアを覆う。

魔力で補強された蔓は火への耐性を持つが、本人自身にはその耐性がないと判断した。


範囲攻撃なら多少隙をつけれるかなと思ったけど、ダメみたい。

防御を突破するには溜めが足りないし、加えて魔力の消費が激しい。

それに、分散するから突破が難しそう。


蔓の盾、それに加えて光の盾によるオート防御。

状況は依然としてロメリアに分がある。


「わかってるでしょ?あなたじゃ無理。今なら降参してもいいよ。邪人化させて手駒にしてあげる」


攻撃が激しくなってる。

でも、無駄話をするために詠唱を省いてる。

付け入る隙は十分にあるはず。


「誘い文句が下手くそ。誰も着いてこないよ?オバサン」


怒らせすぎたら一瞬で片付けられる。

最悪の事態は単純な魔力勝負になること。

アイツの方が長く生きていた分練度の勝負でも分が悪い。


攻撃がさらに激しくなる。

捌くのは大変だけど、まだ大丈夫。

それに、ちゃんと苛立ってくれてる。


「私はね、全ての種族の進化を望んでるの。ヒデラとは違う。全ての種族の未来を、望んでいるの」


単純な魔力量の差が出始める。

相殺するために生成する魔法を増やさなければ攻撃が貫通する。

イリスの魔力消費量がさらに激しくなる。


「未来は、私の手の中にあるの」

「つまんないよ、それ。未来は自分で取るもの。あなたが決めることじゃない」

「そう、相容れないわね、私たち」


隙を作れ。

魔力を貯めろ。

一瞬だけでいい、作った隙を見逃さず、一撃で仕留める。


「あと、それ無駄って言ったよね?」


刹那、イリスの右腕が飛ぶ。


「ア゛ッ…!」


痛い、痛い、痛い。

何が起きた?

早く理解しろ。

右腕は?

もうない。

止血だ、止血をしないと。


「…もう、終わりね」


集中が途切れたその隙をロメリアは逃さない。

魔力で強化された蔓がイリスを吹き飛ばす。

壁に打ち付けられ、地面に転がる。


「よく持った方だと思うわ。せっかくなら、あなたのお父さんと同じように邪人化させてあげる」


ユージたちはもうたどり着いたかな。

本当は倒して加勢に行きたかったけど、無理そう。

ごめん、みんな。


ロメリアの操る蔓がイリスの体を持ち上げ、ひとつの花の入った瓶を口に近づける。


負けた。

私じゃもう勝てない。

私はもう、戦えない。

そんなのわかってる、わかりきってる。

それなのに…。


魂が『まだ戦え』と吠える。


「サンダーブラスト」


雷が落ち、爆ぜる。

サンダーランスとは比にならないほど強力な雷が。


「!…何をしたの?もう魔力も残ってないでしょ、それなのに…」


魔力とは身体機能の一部である。

死に際に脳のリミッターが解除され、火事場の馬鹿力と呼ばれる程の力を発揮するように、死に際に魔力のリミッターが外れる。

イリスはそれを理解はしていない。


蔓を引き裂いた雷を、そのまま自身の体に纏う。


昔、成長が止まったと思った時がある。

でも多分違う。

私が無意識に逃げていた。

もし自分が得意なそれで、誰かに勝てなかった時、立ち上がれないと思ったから。

だから私は火属性に逃げた。

雷属性がいちばん得意だとわかっていたのに。


もう、逃げない。


「なんか言ったらどうなの?」

「…私は…」


殺す…は、なんか違う。

仇討ち?も、多分望まれてない。

なら…。


「あなたを倒して、魔法の高みを見に行く」


私自身のために戦う。


イリスは自身の得意な雷属性の王級魔法の使用でギアが上がる。

今まで相殺でギリギリだった光魔法との押し合いに余裕が出る。

ロメリアに緊張が走る。


「諦めなよ、あなたじゃ私に勝てない。右腕を失ったあなたに何ができるの?」


明らかに焦ってる。

ということは火に耐性はできてても、雷への耐性がないんだ。


依然としてロメリアに隙はない。

焦っているとはいえ片腕を失ったイリスには特段損傷のないロメリアを正面から打ち負かす手段は無い。


「ストーンエッジ」


大地から生えた岩の柱がロメリアを襲う。

全方位からの攻撃にロメリアは防御に出るしか無かった。

攻撃の手が止まる。


魔力の流れが見える。

蔓に伝っている魔力。

その奥にいるアイツを形成する魔力。

その中に、魔石がある。

きっと、あそこが弱点だ。


「こんな攻撃で倒せると思ってるの?少し驚いたけど、大したことない」


光の槍がイリスに向かって放たれる。

サンダーブラストをそのまま転用した雷身流を纏っているイリスはそれを軽々と避ける。

一見すればイリスが押しているようにも見えるこの状況。

しかし、魔力は底を尽きかけていた。


あと1回、魔法を使えばもう魔力が無くなる。

最後の賭け。

状況はできてる。


何かをしようとしていると察したロメリアは魔力を集める。

イリスが何をしようともそれに対応できるように。

集められた魔力は光の盾となり、ロメリアを守る。


「何をしようとも、受け止めてあげ…」


ロメリアの後ろの蔓に衝撃が伝わる。

それに反応し、盾を後ろに回す。

そこにあったのは、岩のゴーレムだった。


イリスは先程ストーンエッジを放った際、ロメリアの後ろにある岩をゴーレムへと転用していた。


昔、魔導書で見た魔法。

賢者と呼ばれる魔法使いが残した、神にも届く魔法。

いつかそれを使えるようになりたいと夢に見た。

その頂きに辿り着きたいと願った。


今なら、できるよね。


雷属性神級魔法


「ミカヅチ」


神の雷が大気を裂き、大地を揺るがす。

蔓は意味をなさず、ロメリアの魔石はその魔法により捉えられ、破壊された。


「なっ…!なんであなた程度が、神級魔法、を…」


邪人化した人族には魔物同様の魔石が生成される。

それは元々の花と同じような役割を持ち、破壊されれば生命活動が途絶える。

それは、ロメリアとて例外ではなかった。


「…私の勝ち、だね」

「ありえない…何をしたの…?あなたが、私に勝てるはずが…」


崖っぷちからの覚醒。

神級魔法に到達するほどの才能。

そしてなにより、“人間”としての魂が、イリスを立ち上がらせた。


「あなたはもう、人間じゃないから。多分理解できないよ」

「…っ!私は!全ての種族のために!未来のために!」

「さっきも言った。未来は、あなたが決めるものじゃない」


ロメリアの体が崩壊する。

それを止める方法は無い。


「さようなら、哀れな怪物」


魔石が砕け、散る。


勝てた。

いや、まだだ。

早くユージたちのところに行かないと。


全身の力が抜け、その場に倒れる。

イリスの魔力はとっくに底をついていた。


…ダメ、か。

あとは、お願い。


「勝ってね、みんな」


イリスVSロメリア

勝者イリス(戦闘不能)

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