表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/120

115.1人じゃない

何を言えばいいんだ。

唯一の家族を失った16歳の少女にかける言葉なんて思いつかないぞ。

その上、戦闘に参加しろって言うのは無理すぎる。

どうすりゃいいんだよ一体。


「ユージさんは大切な人を失ったこと、ありますよね」

「…そりゃ、転生してきたからな。家族と会えなくなったのは失ったのと同じだと思う」

「私もクレイブとリリアを亡くして、イリスさんの気持ちが何となく分かります」


そうだろう。

この数日で俺の知っている人が3人も死んだことがわかった。

知らない誰かじゃない。

かつて共に旅をした、共にダンジョンを攻略した、共にご飯を食べた、仲間だ。


「…何となく、イリスになんて言うべきかわかった気がする」

「助言になったなら幸いです。あの人がいなければ戦力的にも話になりませんからね」


それはそう。

でも、それを踏まえても、もっと優先するべき言葉があるよな。


「…イリスお姉ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫…じゃないかもしれない。けど、きっと大丈夫だ」

「…うん…」


リアーシが1人で戻ってくる。

外に連れてくることはできなかったようだ。


「ダメですね、私だと会話をしてくれません」

「俺、ちょっと行ってくるよ」


そんなわけで入れ替わりで中に入る。

部屋の隅には、うずくまっているイリスが居る。


「今、ちょっと話せるか?」

「…」

「隣座るぞ」

「…」


リアーシの言う通り会話拒否状態なのか。

顔が見えないし、泣いてるかどうかも分からないな。


「…ごめん、俺のせいだ」

「…」

「逃げる判断も俺がした。俺がもっと強ければ、俺が残ることもできた。でも弱かったから、こうなった。本当にごめん」


これは励ましとか、説得じゃない。

ただの自己満足だ。

言わなきゃいけないこと。

じゃないと、俺の心が潰れてしまうから。


「俺の親父は車が好きだったよ。俺が免許取って、助手席に最初に乗せた時嬉しそうにしてた。まぁ運転が下手すぎてめっちゃ色々言われたんだけどな」

「…」

「お袋は買い物が好きだったから、よく買い物に連れてったよ。最初の方は親父同様運転下手くそって言ってきたけどな」


反応はないけど、とりあえず話そう。

言いたいこと全部言って、最後に伝えたいことを言えばいい。


「もう、全部できないことだ。後悔はある。けど、後悔することを2人は望んでないって思ってる」

「…」

「今を笑って生きることが、たとえ伝わらなくても今の俺にやるべき事なんだって思ってるから。だから、今やるべき事をやりたい」


亡くなった人がそれを望んでいない、っていうのは周囲の勝手な解釈だ。

復讐を望んでいない、自由に生きてほしい、囚われるな。

それらを言うのはいつだって失っていない人だ。

同じ立場に立ってるから、言えることがある。


「…ユージは、弱くない。弱いのは、私…もう、私は…」


俺が弱くなくて、イリスが弱い。

ってことは強さの話じゃないな。

精神面か、もっと別の場所か。

どちらにしても…。


「それは、今のイリスが決めるべきことじゃない。これからのイリスが決めることだ」

「…」

「俺の知ってるイリスなら、強い子だ。…エルダの代わりにはなれないし、むしろ余計なお世話かもしれない」


エルダほど、俺は強くない。

エルダほど、イリスと一緒にいない。

エルダほど、イリスのことを知らない。

エルダほど、頼りにならない。

それでも。


「それでも、俺たちを頼って欲しい。仲間だろ?」

「…」

「明日、またあの場所に戻るつもりだ」

「…死ぬよ」

「それでもだ」

「…」

「イリスはよく頑張った。休んだっていい。あとは俺たちに任せてくれ」

「…」


そんなわけで部屋を出る。

結構長々と話したな。

まぁ言いたいこと言えたしいいか。


「いや何が、あとは俺たちに任せてくれ、ですか。頭イカれてるんですか?」

「私、遺書を書いてきますね」

「ごめんて」


そういえば説得しに行ったんだった。


「でもさ、よく考えて欲しい。16歳の少女に戦うから来い!って言うのは酷じゃないか?戦いたくないと言うなら、それを尊重するべきだ。たとえ世界が終わるとしても」


…世界終わるならダメじゃね?


「それは…そうかもしれませんが…考えても仕方ありませんね。私たちだけでできる作戦を立てましょう」


そんなわけで作戦会議。

その前にお腹が減ったのでご飯を食べる。

どれだけ嫌なことがあってもお腹は減る。

お腹がすけば戦いに全力を出せない。

ご飯は大事だ。


「とりあえず確認なんですけど、敵は2人ってことでいいんですか?」

「2人と邪人がたくさんだな」

「具体的な数はわからないんですか?」

「わからないが、集まってるって言ってたし100はいるんじゃないか?」

「私も遺書書かないとかな…」


あながち遺書を書くのは冗談でもないな。

絶望的な戦力差すぎる。

こっちはAランク1人、イリスが居ても2人、あとはCランクとDランクとヒーラーのみ。

リコリスがまだ未熟だからあれだが、ちゃんとした大人だったら邪人全員に命令して自害とかさせられたんだろうが、できないことは考えるべきじゃないな。


「そもそもなんだが、多分俺たちだけじゃロメリアってやつにも勝てない」

「それってもうダメじゃないですか…」

「最悪の場合、リアムさんに抑えてもらって、その間に我々で奥に行くって形が1番ですかね」


それしかないよなぁ。

とはいえヒデラってやつがどんくらい強いのかがわからない。

わかることといえば闇属性の魔法を使うことぐらいだ。


「ちなみに闇属性の魔法って光属性の魔法に弱いとかある?」

「ありませんね。光は闇を消せる、闇は光を飲み込む、互いに互いが弱点と言ってもいいかもです」


互いが弱点…なら、リアーシは不意打ち要員でいた方がいいな。


「てか、話すならリアム?さんもいた方がいいんじゃないですか?」

「それもそうだな」


ということでリアムにも戻ってきてもらい作戦会議。

一旦はイリスはいないものとして考えることに。

ロメリアについてリアムに伝えると、やはり先程の作戦同様リアムひとりでロメリアを抑え、その間に俺たちが奥に行くというパターンになる。

その後出てくるだろう邪人はなるべく無視、数が多すぎる場合は俺が残ることになる。

そう決まりそうになった時、リコリスが声をかけてくる。


「…私も、戦う」

「リコリス、心配してくれるのはありがたいが…」

「私だけ、何もしてない…力に、なりたい」

「君ができることは?」

「…魔物に命令できる、ちょっとだけ」


無茶だ。

リコリスのそれは不完全。

頼る訳にはいかない。


「十分だ。君も戦力にカウントしよう」

「待ってくれ。リコリスはまだ…」

「君は、彼女の決意を踏みにじりたいのか?」


そう言われると、何も言えないだろ。

…くそっ、これも、俺が弱いから。


そう思っていると、扉が開く。

イリスがいる、奥の部屋の扉が。


「遅れた、ごめん。戦うよ、私も」


目の周りが赤い。

沢山泣いたのだろう。

辛いだろう。

それでも、覚悟を決めたんだ。


俺だけ、生ぬるい気持ちでいる訳には行かない。


「改めて、作戦を伝える」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ