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114.敗北と喪失

背中が冷たい。

血が流れてるんだ。

イリスの小さい体で、流れちゃいけない量の血が。


エルダの犠牲が、無駄になる。


「おい、何をしている」


声をかけられた。

聞いたことある気がするが、冷徹な声。

誰の声だ。


「…イリスか」

「あなたは?」

「ギルド本部所属のリアムだ」


ギルド本部…つまり、ムバルトとかと同じってわけだ。


以前、ゼノンが言っていた。

邪人について知ってしまえば命を狙われると。

その刺客だろう。

タイミング最悪だな。


「行くぞ」

「どこに?」

「近くの村だ」


そういうと同時に雪が舞う。

記憶の断片にある、この人の魔法。

雪が、俺たちを囲む。

世界が白くなった。


気がついた時には村にいた。

リコリスやリアーシ、フロストが居る村だ。

ここへどう移動したかは分からないが、イリスの怪我の具合的にはありがたい。

こいつが味方なら、だがな。


「中に回復魔法を使えるシスターがいるだろう。早く回復して貰え」

「あんたは…」

「…私の事は今はどうでもいいだろう。早くしないと、その娘が死ぬぞ」


今はどっちでもいい。

イリスの命最優先だ。


ギルドのドアを開け、急いで中に運ぶ。

フロストは既に回復しているようでリコリス達と話している。

こちらに気がついたリアーシが駆け寄ってくる。


「イリスさん!?急いで回復します」

「魔力は私が渡そう」


これほどの致命傷、治すのは難しいと思ったが、リアムが魔力をくれるらしい。

なら、何とかなるだろう。


イリスを奥の部屋に運ぶ。

体の中にある岩だったりを取り除いてから回復しないと行けないらしく、そういうのをするために奥に運んだとの事。


その間にフロストと話しておくか。


「久しぶりだな、フロスト」

「ユージさん…ですか?随分と雰囲気が変わりましたね…」

「そんなことないよ」


とは言ったけど、まぁ結構旅をして時間も経ったしな。

最初に会った頃とは結構考え方とかも変わった気がする。


「クレイブやリリアは?」

「…2人は…死にました」


3人で旅を続けていたらしいのだが、ここフローディアに来て謎の魔物に襲われたらしい。

おそらく謎の魔物は邪人だろう。

邪人だけならまだ良かった。

その中にいた1体の化け物がクレイブを捕らえ、どこかに連れ去ってしまったらしい。

その後を追って2人はさっきの洞窟にたどり着いた。

そこで見たのはクレイブの無惨な死体だった。


「奴らはこう言ってました。魔力のない者がもたらす異変は新世界にはいらない。神に並ぶ者は必要ない、と」


魔族の時代を築くこと、それは魔王が新世界の神として君臨することを指しているのでは?

リコリス…魔王には魔力がない。

魔力がない者をフロストはもう1人知っているらしい。

俺も前に話してもらったことがあるから知っている。

それは、クレイブだ。

魔力適応障害。

魔力が体を流れることがなく、その身に魔力を宿すこともできない。

普通の人ならありえないことらしい。

それらをパッシブスキルである怪力で補いながら冒険者をしていたとの事。


「私のせいです…私が撤退する判断をできなかったから…リリアも…」


たどり着いた先に待っていたのは無惨な死体と化け物たち。

弔い合戦、なんていえばいいように聞こえるかもしれない。

しかし、その結果は明らかだろう。

リリアは仇を取ろうと戦ったらしいが、無惨にも殺された。

フロストは冷静に助けを呼ぶべきと判断して逃げ出したとの事。

しかし、邪人が追ってきてついには捕まってしまう。

そこで持っていた結界魔法の魔道具を何とか使ったらしい。


結果、邪人に殺されかけてる状態で結界に守られたということだ。


「運が良かったです。ユージさんたちが通ってくれたおかげで生きられました。本当にありがとうございます」

「俺は何もしてないよ。それに、これからだ」

「そろそろ本題に入ってもいいかい?」


静かにしていたリアムが口を開く。


「イリスが治療に入ったからな、まずは自己紹介だ。私はリアム。かつてこの地でギルドマスターを務め、今はギルド本部所属のAランク冒険者だ」

「知ってるよ。夢で見た」

「夢?」


ということでフロストもいるしもう一度邪人関連を1から説明、それから夢やセラエムから聞いた魂の話なんかもする。

フロストは何が何だかって顔をしているが、リアムは平然としていた。

おそらく、ギルド本部は邪人関連のことを知っているのだろう。


「あんたたちが禁忌を知った人を殺してることも知ってる」

「今私と敵対することに意味があるとは思えんな。合理的に行こう」

「…わかってる」


ただの八つ当たりだ。

しかも、人が違う。

己の弱さで他人に当たるな。


「イリスさん、回復終わりました」

「早いな」

「ゼノンさんから分けてもらった魔力がまだ沢山ありましたので」


なるほど、それなら納得だな。

元々致命傷を負ってから時間も経ってなかったのも関係しているらしい。

時間が経っているとちゃんとした場所じゃないと回復も難しかったとの事。


「で、イリスは?」

「それが…」


どうやらイリスはまだ奥の部屋にいるとの事。

しかも、声をかけても返事がないらしい。


「なん…で…」


なんでなんて言葉を口に出してから、出すべきではないと思った。

16歳の少女が、唯一の家族を失った。

その重みを、軽く考えすぎた。


「悪いが、彼女には出てきてもらわなければ困る。今回の件、彼女の力が必要不可欠なのだ」


夢の記憶で何となくわかる。

イリスとリアムの関係性。

リアム的には親戚のお子さんくらいの気持ちだろう。

だが、今はそんなことを言っている場合ではないのだろう。


「何があったんですか?」

「…あそこに行ったあと、化け物とあった。邪人化を促してる奴らだと思う。そのうちの1人と戦闘になって…負けて…エルダが殿を…」


実力差でわかる。

もう、エルダは…。


「それは…」

「それでもだ。彼女には戦ってもらわねば困る」


リアーシの声を遮るようにその声は響く。

多分、奥の部屋にいるイリスに聞こえるように言っているのだろう。


「エルダが求めているのは悲しみでも後悔でもない。それは貴様が1番わかっているだろう」


返事はない。

しばらくの沈黙後、リアムは溜息をつき再び口を開く。


「…魔力の集まり方的に、最短で3日で世界が終わる。イリス自身、それをわかってるはずだ」

「世界が終わる!?そ、そんな事態なのですか!?」


フロストもこの状況のやばさを理解したようだ。

奴らはゼノンとムクという邪人の戦闘で漏れだした魔力を使って何かをしようとしている。

無限の魔力と無限の魔力のぶつかり合い。

3日もすれば想像もつかないほどの魔力が溜まるだろう。

だからこそ、最悪の場合3日で世界が終わる、と言ったのだろう。


「私より、彼女を連れ出すのに適した人物がいるようだ。私は周辺の警戒にあたる。彼女が部屋から出てきたら、ここに戻ってこよう」


そういうとリアムは外へ行ってしまった。


状況を考えると、イリスの協力は不可欠だ。

あの化け物相手にリアムを含めても俺たちだけで勝てる気がしない。

何としても、イリスを立ち直らせるしかない。


「…今、ダメなこと考えてますよ」

「え?」

「その考え方はダメって意味です」

「声に出てた?」

「何考えてるかくらいわかりますよ。まずは私が話してきます。それまでに、ちゃんと言うべきことを考えといてください」


そういうとリアーシは奥の部屋へと行ってしまった。


俺が言うべきこと…。

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