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113.罪と償い(過去編)

ここから少し離れた場所に魔物が集まっている場所があるのをリアムが見つけたらしい。

今夜、そこの魔物を一掃しに行く。

でないとダンジョンになっちまうからな。


そんなわけでタフトにその話をしに行く。


「明日、俺とリアムで魔物を一掃してくる。その間、村のことを頼めるか?」

「…!はい!任せてください。命に変えても、守ってみせます!」


こいつ、また勘違いしてやがんな。

何が命に変えてもだよ。

そうなったら残されたやつはどう思うんだってわかってんのか。


「お前はなぁ…全員だ。お前を含め、全員を守れ。いいな」

「…はい!」


タフトとの話が終わったあと、荷物をまとめる。

まぁ俺は武器とか一切使わないんだがな。


そんなこんなで夜になり、魔物の集まっている場所に行く。

そして、リアムと魔物を討伐していく。


「あんまし強くねぇが、夜だからなぁ」

「油断して足元すくわれないようにな」


順調に討伐をしていく。

何も異変はない。

俺はそう思った。


「おかしい」


リアムが魔法で魔物を消し飛ばしながらそうつぶやく。

何が?と聞き返せばこう答えた。


「ウェンディゴがいない。これだけの数の魔物がいて、やつだけいないことがあるか?」


それは確かにおかしい。

特にウェンディゴは目撃情報もあった。

それなのにいないとなると。

まさか…!


「リアム!ここは頼んでいいか!」

「そう言うつもりだった!さっさと戻れ!ここを殲滅したら私も向かう!」


勘違いじゃなければ、ウェンディゴは村に向かっている。

タフトが勝てる相手じゃない。

下手したら、全員死んでる。

頼む、間に合ってくれ。


辿り着いたそこにいたのは、大きな魔物の死骸と、1人の女性を締め上げている人型の魔物だった。


遅かった。

間に合わなかった。


剛化を使い、人型の魔物を殴り飛ばす。

締められていた女性はナズナだった。


「ナズナ!おい!大丈夫か!」

「エル、ダ…さん…?」


良かった、生きている。

となると、あと2人は。


「タフトはどこにいる!イリスは!」

「イリスは…後ろ…」


指を指す方を見ればタオルにくるまっている赤ん坊がいる。

タフトがどこにいるかまで聞こうとしたが、そんな時間はないようだ。

後ろから足音が聞こえる。


そこに転がっている死骸はウェンディゴだ。

つまり、あの人型の魔物はウェンディゴよりも強いことになる。


「…まずはテメェをぶっ殺す…来いよォ!」


挑発、対象のヘイトを自身に向けるスキル。

ナズナとイリスから距離を取り、魔物を引きつける。

人型ならやりやすい、武術が通じやすいからな。


振り下ろされた腕を流し、カウンターを入れる。

体勢が崩れたところに蹴りを入れ、足を折る。


そこまで強くない、どういうことだ?


「エル、ダ、さん…だめ…!」


声が聞こえる。

振り返れば身を引きずりながらこちらに向かってくるナズナがいた。


「おい!こっちに来るな!」

「その人が…タフト…なん、です…」


こいつは今、なんと言った。

これがタフト?

この、魔物が?

違う、錯乱しているだけだ。

おそらくタフトがこの魔物に殺されて、そう思い込んでるだけだ。

そうだ、そのはずだ、そうに違いない。


向かってくる魔物を殴る。

脳裏によぎったその可能性を否定するように。

間違っていると証明するために。


殴る、蹴る、殴る、蹴る。

攻撃を避けてカウンターを入れる。

それだけで十分だった。


トドメを刺そう。

そう思った。


その時、ナズナが間に止めに入った。

俺がこのとき、ナズナを避けて魔物にトドメを刺していれば未来は変わっていたのかもしれない。


ナズナの腹が貫かれる。

腕が引き抜かれ、支えるものが無くなったナズナは地に伏せた。


助けられなかった。


それと同時に、更なる後悔が襲う。


「シ、ショ…コロ、シ…」


この魔物は、本気を出していなかった。

理由はすぐわかった。

こいつは、タフトだ。

俺の1番弟子の、タフトだ。


なぜ、魔物になっている。

何があった。

俺がいない間に、何が起きた。


俺はタフトを殺すしか無かった。


「アリ、ガ…トウ…タノミ、マス…」


俺はどうすればよかった。


戻ってきたリアムがこの惨状をみつけ、対処してくれた。

魔物はいなかったが、たくさんの人が死んだ。

村にはたくさんの死骸がころがっており、その中には胸を貫かれたナズナもいる。


リアムは声をかけてきた。


「何があったか深くは聞かない。だが状況は説明してもらう」


リアムには話すべきだと判断した。

信じて貰えないと思ったが、リアムはタフトが魔物になった話を信じてくれた。

タフトを手にかけた俺の気持ちを察したのかそれ以上は聞いてこなかった。


残ったイリスを抱える。

俺は、どうすればよかったのだろうか。


リアムはタフトが魔物になったことや、それを俺が殺したことなどを上に報告した。

その後上から尋問を受けたが、処分はリアムから言い渡されると言われた。


「…エルダ、お前にCランクへの降格処分を言い渡す」


弟子が魔物化、そして、弟子を手にかけた。

上層部からしたら俺は魔物化した冒険者の師匠、自分のケツは拭いているとはいえあってはならない問題だ。

ならば、当然の結果だ。

むしろ優しいまである。

殺されていてもおかしくないレベルだ。


「…お前、これからどうするつもりだ」

「どうするって…何がだ」


冒険者を続けるか、ということか。

それとも、どう生きていくか、ということか。


「死ぬつもりか?」


それも、ありかもしれない。


「…なら、お前に私から最後の依頼を言い渡す。依頼は、イリスを立派になるまで育てること、だ」


こいつは、何を言っているんだ。

俺はイリスの仇だぞ。

俺は、タフトを殺した。

ナズナを救えなかった。


「言いたいことは分かる。だが、これが最善の選択だと私は思う。それに…」


リアムはイリスを軽く撫で、こちらを真っ直ぐに見る。


「この子はお前に1番懐いている」


小さな手が、指を掴んで離さない。

イリスはこちらを見て、言葉を発する。


「ぱぱ?」


弱い力でしっかり掴んでいる。


この子は俺のせいで孤独になった。

だったら、俺が背負うべきだ。

人生をかけ、この罪を償おう。


〜9年後〜

イシュリアにて。


朝、目が覚める。

いつも通り決められた時間。

もうこの暮らしにも慣れてきたな。


買っておいた食材で料理をする。

俺的には雑なくらいがちょうどいいが、イリスもいるし、そうはいかねぇ。


腹に力を入れる。


「イリス!メシできたぜェ!」


そう言うと小さい物音が聞こえた後、ゆっくりとイリスが歩いてくる。


「オジサン、うるさい」

「なんだとォ?朝は元気に行かねぇとツレぇだろ?だから元気よく行こうぜ!」


明るく行こう。

過去が暗くても、未来は決まっていない。

この子の未来のために。

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