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111.新しい幸せ(過去編)

2年の月日が流れた。

タフトは無事、Dランクになった。

まぁ俺が推薦したのだが…。

近くで見ていたリアムも了承し、無事駆け出しをぬけて正式な冒険者となる。


「タフト!Dランク昇格、おめでとう!」


ナズナは未だにこの地に残っている。

多分、永住するのだろう。


あんまり恋愛的なものには詳しくない方だが、まぁあの2人はくっつくだろうな。


「弟子に先越されるんじゃないか?」

「俺は好きで独身やってんだよ」


Dランクの昇進祝いはギルドでやることとなった。

村の人からもいつも手伝ってくれる好青年、と言った形で祝われている。

俺にはもったいない弟子だな。

才能はないが。


「師匠!これからもよろしくお願いしますね!」

「おう、頑張るのはお前だがな」


祝いが終わり、解散となる。

ベロベロになったタフトとリアムをナズナが介抱する。

こいつら…まじで情けねぇな…。

2人を布団に運んだ後、ナズナが話しかけてくる。


「…エルダさん、タフトがこの村にいる理由って知ってますか?」


まさか、こっちから先に聞かれるとはな。

まぁタフトはそういうところ気にしないだろうし、当然か。


「知ってたらなんだ」

「教えて欲しいんです。なんで、この人がこの村にいるのか」


少し考え、話してもいいだろうと考える。


「復讐だよ。お前の兄を殺した魔物を殺したい、ってだけだ」


そう聞くと、やはりかと言った表情で下を向く。

そして、少し下を向きながら話し始める。


「私、兄がこの村で死んだと聞いて、きっと兄の性格だから誰かを助けるために死んだんだろうって思いました」


ナズナの推測は合っている。

こいつの兄はタフトを生かして死んだ。

そういう性格だったんだろう。


「別に恨んでなんていませんよ?兄がその判断をしたのなら、私はそれを尊重します」


親もおらず、唯一の家族が死んだ。

その悲しみを誰かに転嫁するなんてことはよくある話だ。

でも、こいつはそれをしなかった。

目の前に兄の死因がいるのに、だ。


「でも、心の奥底で、タフトを…エルダさんを…リアムさんを…みんなを、恨んでました。なんで兄を救ってくれなかったのか、なんで兄が死ななきゃ行けないのか、なんで、なんでって…」


当たり前だ。

この村に来た頃は19歳程度だったはず。

その若さなら、その現実を受け入れられないだろう。


「でもここに来てわかったんです。みんな、いい人だって。だから兄はタフトを助けた。そして、タフトは兄の仇を取ろうとしている。恩を返そうと」


信じた人が助けた存在、そんな人が悪い人なわけない。

きっとそれはわかっていた。

それでも疑ってしまうのが種族の絆が最も薄い種族、人間だ。


「私は、タフトにそんなことをして欲しくない。普通に生きて欲しい。きっと、兄もそう望んでいます」


言いたいことはわかる。

普通に生きて欲しい、全員が思うことだ。

だが、今のあいつは…。


「あのバカはもうそんなん忘れてるよ」

「…え?ど、どういうことですか?」

「もう、復讐なんて忘れてる。あいつが今、自分自身でやるべきと思ってることは…」


途中まで言い、俺の口から言うべきじゃないと気がつく。

ちらっとナズナの方を見るが、もう察してはいたらしい。

だから話しかけてきたのだろう。


「…私に、タフトの隣に立つ資格ってありますかね…?」


そこで悩んでるだろうとは思ってた。

でも、俺に言えることがあるか?


少し考え、ひとつの答えを出す。


「あ〜、ひとつだけ言えることがあるとすれば…あいつはお前のことが好きだよ、きっと」


ナズナのすすり泣く声が聞こえる。

マジで勘弁して欲しい。

そう思いつつ、逃げることもできないため泣き止むのを待つ。


こういうのはリアムの役割だろ…。


「…私、決めました。逃げないって」

「そうか、頑張れ」


立派だな。

俺が同じくらいの歳の時は現実と向き合うなんてしなかった。

向き合った。

それだけで立派だ。


後日、タフトとナズナが結婚すると報告があった。

Dランク昇格祝いがあったばかりだが、結婚式も行った。

村の老人たちからしたら自分の孫世代が結婚したようなものだ。

みんなに祝われていた。


「先越されちまったな、エルダ君」


ニヤつきながら肩に手を置くリアム。

テメェも独身だろ、とツッコミたくなったが今はやめておこう。

弟子の晴れ舞台だ。

今は祝おう。


「師匠!ちゃんと来てくれたんですね!」

「お前、俺をなんだと思ってんだ…」


軽く雑談をする。

2年と少しの付き合いだが、この村では俺が1番こいつらと関わりが深い。


話を聞く限り、毎日稽古でボコられる自分に気をかけてくれたナズナにだんだんと惹かれたとの事。

最もナズナの方は兄の救った人物がどんなもんかを見るためだろうが。


どちらにしても、いい方にころがった。

復讐なんてするもんじゃない。

何もしていない俺が言うのもなんだがな。


「お前、自分がやるべきこと、わかってんだろうな?」

「もちろん!ナズナのこと、しっかり守れるようにもっと頑張ります!」


ちょっと違う気がするが、これでいい。

意思確認をし、改めてかけるべき言葉をかける。


「タフト」

「はい!」

「おめでとう」

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