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109.弟子との出会い(過去編)

寒いな、ここは。


グロリアスから北の山を登った先、フローディアでは常に雪が降っている。

大国フローディアなんて呼ばれたりもするが、ただ国土面積が広いだけで別に使える土地は少ない。


こんな土地で冒険者なんてしてるやつの気が知れねぇ。

…俺のことか。


「エルダ、新しい依頼だ。お前が行け」


ギルドマスター、リアム。

この雪原の地でギルドマスターなんかをしている変人だ。

2年前こいつに負けて、16年間続けていた旅をやめた。

腕には自信があった。

26歳でAランクになって、力に溺れた。

自分より若いやつに負けてこうなるのは、その時から決まってたのかもしれない。


「依頼の内容は遭難者の捜索。商人の護衛の途中、白い魔物に襲われたらしい。証言だけなら最低でもCランクはある」


なるほどな、それなら俺に依頼をするのもわかる。

そもそも雪原と言うだけでここに残る冒険者は少ない。


「なら、アンタが行けばいいだろ?俺は探知系が苦手だし」


まぁ寒いから行きたくないってのが1番だがな。

とは言ったものの、どうせ俺が行くことになる。


無言の圧に耐えかねて依頼を受ける。

報酬は弾んでるから嬉しいが、使い道がなく溜まる一方だ。


2日くらい歩いた末に馬車の残骸を見つけた。

ここで襲われたんだろう。

食料や毛布などの物資が雪に晒され凍りついているものもあれば、魔物に引き裂かれたであろう傷跡もあった。

捜査対象は3人、だが今1人に変わった。


ひでぇもんだな。

喰うために襲われたんじゃねぇ、殺すために襲われてやがる。

魔物の暇つぶしに殺されたんだろう。


2つの死体から冒険者カードを探し、見つける。

雪を払えば捜査対象と同じ名前だ。

花を探して見れば既に散っている。


まぁ2日も経ってるんだから無理か。


ここに残って戦ったのが2人。

となると護衛で付いた奴がここから村への道で死んでるだろう。

いや、商人に殺された可能性もあるか。

依頼料を払いたくなくて殺す輩もいる。


数キロ、別の道を辿りながら捜査を再開。

俺が来た道は魔物が多いが近い道。

こっちの道は魔物が少ないが長い道。

このまま帰って、道中にいなかったら死んだことにしよう。


と思っていた矢先、下に落ちた跡があるのを見つけた。

降りなきゃかよ…めんどくせぇ。


そう思いつつ、剛化を使い下へ降りる。

落ちると言った方が正しいか。

もう雪が積もって足跡も血の跡も見当たらない。

探しようがないな。


そう思っていたが、木に切り傷がある。

なるほど、さすがに馬鹿じゃねぇな。


歩くこと数十分、洞窟へとたどり着く。

中の様子を見れば1人の男が倒れている。

幸い、息はあるようだ。


「おい、生きてるか」

「…い、き…て、ます…」


死にかけだ。

今運んだら道中で死ぬな。


その後、持ってきていた毛布やらを着させ、火を起こしてスープを飲ませる。


雪山で遭難者を探す時は見つけても助からない場合が多い。

今回は違ったようだが。


数時間休ませ、多少回復したのを確認しておぶって帰る。

寒いし重いし、やっぱり引き受けなきゃ良かった。


途中途中で休み、体調を確認。

無理をして死なれるのが1番嫌だからな。


無事村に戻ることができ、村の医者に見せた。

命に別状はないらしい。


依頼は無事達成、死んだ2人はDランクとCランク、生きてたあいつはEランクらしい。

大方若いのを生かすために殿を務めて死んだんだろう。

馬鹿な奴らだ。


村の外れに墓を立てる。

ぐちゃぐちゃになった死体を運ぶ程のお人好しではない。

墓を建てたのも自己満だ。


「あの…エルダさん、ですか?」


振り返るとあの時の遭難者がいた。


「体調、もういいのか」


墓に冒険者カードをかける。

彼らが生きた証はここに残る。

遺族がいるなら届けたいが、さすがに無理だろう。


「体調はもう大丈夫です。本当にありがとうございました」


そういうと深々と頭を下げてきた。

別に感謝されることではない。

依頼だから助けた、それだけだ。

そう伝えたが、感謝はしたいらしい。

それと、お願いがあると言われた。


「僕を、弟子にしてくれませんか」


理由がわからなかった。

助けてくれたから、という訳では無いだろう。

どちらにしても俺にメリットはないな。


「断る」

「お願いです、お願いします!」


しつこいなこいつ。

理由くらいは聞いてやってもいいか。


理由を聞けば自分たちを襲った白い魔物を倒したい、との事。

特徴だけ聞けばそいつはBランクのウェンディゴだ。

俺でも単独討伐には少々骨が折れるし、リアムでもひとりなら苦戦するレベルだ。


「無理だな、諦めろ」


夢を見せるのは良くない。

キッパリ断れば諦めるだろう。


と思っていたが、俺の考えが甘かったらしい。

そいつはその日から毎日俺に付きまとうようになった。

弟子にして欲しいだの、稽古をつけて欲しいだの。

リアムは笑っていたが、俺からしたらくそほど迷惑だ。

適当に稽古をつけて才能ないっていえば離れるだろう。


「よろしくお願いします!」


実戦形式の戦闘訓練。

とにかくボコる。

スキルは使わず、肉体だけでボコる。

終わる頃には顔で誰か判別ができないほどになっていた。


「あ、あひあひょうほひゃあひひゃ」


何を言ってるかわかんないが、稽古をつけてわかったことがある。

こいつ、近接戦の才能がない。

魔法に関しては詳しくないから分からないが、そっちに才能がなきゃ無理だろうな。


リアムに言い、魔法の稽古をさせた。

Eランクってことはまぁ魔法は使えるだろう、あんなに近接弱かったし。


「あ〜、中級魔法は覚えられるんじゃないか?」


近接戦の才能よりはまだあるらしいが、それでもだ。

冒険者をしていればいつか死ぬ。

いや、こいつはこの前死ぬべきだったのかもしれない。


「才能ないから諦めろ」


ちゃんと言うのが優しさだ。

普通に生きればいい。

冒険者だけが全てじゃない。


そう思っていたが…。


「師匠!稽古お願いします!」


マジでなんなんだこいつは。

ボコってもすぐ帰ってくる。

いくらなんでもイカれてやがる。


次の日も


「師匠!」


次の日も


「稽古!」


その次の日も


「お願いします!」


まじでイカれてる。

心が折れるまでやるつもりだが、先に俺の心が折れそうだ。


リアムに相談したが、弟子にしてやればいいとニヤつきながら言われた。

本当に腹が立つ。

お前が俺の立場なら絶対めんどくさくて鬱になってたろ。


「師匠!稽古お願いします!」


また来た。

もう無理、疲れた。

てかこいつどんだけ図太いんだよ。


「やめだやめ、俺にメリットがねぇ」


そう言うと、そいつは少し考えてリアムに話しかけに行った。

何してんだこいつ。


「肩たたきでも部屋掃除でも何でもします、お金だって払います。だから、お願いします」


深く頭を下げてくる。

断りづらい、その上奥の化け物の圧がやばい。

潮時だな、俺が折れるべきだ。


「…死んでも知らねぇぞ」

「…!はい!お願いします!」

「で、名前は?」

「あ、まだ自己紹介してませんでしたね」


そう言うと、男は冒険者カードを出す。


「Eランクのタフトです!お願いします!」

「Aランク、エルダだ」


こうして俺は、1人の弟子をとることになる。

目的は白い悪魔、ウェンディゴの討伐だ。

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