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107.呪いの花

え、死んでる?

急いで駆け寄り、脈を確認する。

脈はある。

それに、わずかだが呼吸もしてある。

生きてるってことはリアーシならなんとかできるんじゃないか?


「リアーシ、回復魔法を…」

「っ…無理ですね…ここまで欠損が激しいとなると私の魔力では…」


そうなると本格的にまずい。

ポーション…でも無理だろ。

なにか助けられる方法は…。


「なら俺の魔力を渡す。底を尽きることはないから安心しろ」


救世主現る。

そういえばこいつ魔力5桁以上確定の化け物だった。

リアーシは魔力さえあればおそらくは回復させられるとの事なので助かる可能性が高くなってきた。


そんなわけで一旦村のギルドまで戻ってきた。

村の人たちは俺たちに近づこうとはしない。

まぁ好都合ではあるが。

そんなわけで貸切のギルドでリアーシがフロストの回復を始める。

ゼノンが魔力を貸しているためほぼ無限に回復魔法を使えるとの事で、重要な器官が欠損していない限りは回復するらしい。

ひとまず安心だな。


「あるよね、話すこと。私たちに」

「…それは…」

「俺が話す。いいか、これを聞けば戻って来れないものでもある。最悪の場合命を狙われることだってある」


俺命狙われる可能性あったの?

…待て、命が狙われる…。


「それって…」

「説明はあとだ。覚悟があるかどうか、それを聞いてからだ」

「あるよ、覚悟。知らないままの方が嫌」

「私も大丈夫ですよ。この状況、聞いても聞かなくても命は危ないでしょうし」


2人とも覚悟はできているようだな。

それとリコリスに関してだが、Sランクは基本的にみんな知らされることだから知っても問題ないらしい。


そんなわけで邪人関連のことを話す。

イリスはともかく、リアーシはめちゃくちゃ驚いてたな。

まぁ25年生きててそんなこと1回も話されてなかっただろうし、教会的な考えとは違うものだろうし当然と言えば当然か。


「これは前提だ。今までの常識と食い違うなら今までの常識を改めろ」


言い方ちょっとキツくない?


「そこまではわかりましたが…この方が瀕死の状態となっているのとはなにか関係しているのですか?」

「似てるんだよ。前回の、この村が襲われた時と状況が」


魔物に色々異変が起きていること。

誰も知らない魔物…邪人がこの場所でかなり見つかっていること。

それらを踏まえて考えたら邪人化を促す奴ら、いわゆる黒幕共がここら辺にいたっておかしくない。


「なら、急いだ方がいい?」

「何を急ぐんだ?」

「多分判別できる、邪人を。1箇所に集まってる」


待て待て待て。

相当やばい事態になってないか?

魔物が集まってるってことはダンジョンが作られてるってことか?

一旦ゼノンに聞くか。


「…俺はそれを感じ取ることができない」

「イリスだけはわかるってことか?」

「おそらくそうだろう。…初めてだ。何千年も生きてきてそれを判別できる人材がいることは」


ゼノンの目が怖い。


詳しく話を聞けば、どうやら邪人化を促している奴らがいること自体はわかっていたらしい。

しかし、その場所を見つけることができないまま何千年も過ごしていたとの事。

つまり、それを発見できる人材、イリスの存在が今いちばん欲しかった存在だったということだ。


「行くぞ」

「どこに?」

「その邪人が集まっているところにだ」


なんでそうなった。

…ゼノン的にはそれが目的だからそりゃそうか。


「おいおい、そんな危険なところにイリスを連れて行かせるわけねぇだろ?」


そりゃそうだ。

まだ16歳なんだぞ、Aランクとはいえ。


「だから俺も着いていく」

「あ、そっちなのね」


そんなわけでリコリスとリアーシはここで待機。

フロストの面倒を見なきゃ行けないのもあるからな。

それで俺とイリスとエルダとゼノンの4人でそこへ行く。


ここから結構離れているようだが、近くまではぶっ飛んで行けるらしい。

ということでゼノンに運んでもらった。

空を飛ぶ感覚ってのはこんな感じなんだな。


「…ここら辺のはず、なんだけど…」

「何もないな。俺の魔力探知にはなんも引っかからないし」


魔力を隠してるのか?

それならイリスが感じて俺が感じない理由は何となくわかる。

ただ、姿が見えないとなると明らかにおかしい。


「ここは…」

「なんか知ってるのか?」


エルダが少し考え込んでいる。

頼むから思い出してくれ。


「あそこだ!前にダンジョンになりそうになってた!」


全然違う場所では?と思ったが、前ってのは十数年前の話らしい。

よく思い出せたな。


入口が雪に埋もれているようで、そこに結界も張られているらしい。

そんなわけでゼノンがぶっ飛ばしてくれる。

少し離れたところで見ていると、爆音とともに雪が宙に舞う。


「もう大丈夫だ。行くぞ」


めちゃくちゃ邪人がいるらしいけど、この人がいれば大丈夫だろう。


雪と結界が無くなった先に洞窟があり、俺でもわかるほど強い魔力を感じる。


「大丈夫、私たちがいる」


足を見ると震えていたらしい。

恐怖に身を晒されたのはこれで3回目か?

紅竜とデーモンロードの2回。

それと同じくらい、恐怖を感じてる。


今回はゼノンがいる分いくらかマシだが、それでも怖さはあるな。


奥へと進んでいくと3人の人影が見える。

そのうちの1つは2つの影に何かを言うと奥へと去ってしまった。


「やっと来た。待ってたよ、最強」


この声、聞いたことがある。

あの時の声だ。

あの時、タフトに声をかけたあの。


いや、そんなことはどうでもいい。

あの女の横にいるあれは一体なんだ。

あんなもの、見たことがない。

紅竜?デーモンロード?それがなんだって言うんだ。

あれの前では、赤子に等しい。

あれは一体、なんなんだ。


「…貴様…そうか、貴様らの仕業か…」

「ムク、作戦通りに」


ムクと呼ばれたその異形はゼノンへと向かっていく。

それに呼応するようにゼノンは光と闇を手のひらに集め、剣のようなものを生成し迎え撃つ。


「やっと見つけた!貴様を、今ここで!殺す!」

「オレ、の、タタかウバショ、ここジャ、ナイ。いく、ゾ」


それと同時にゼノンとそれは通ってきた方へとぶっ飛んで行った。


おそらく、ゼノンが邪人となった恋人と再会した時にいた奴があの化け物なのだろう。

息が詰まった。

あの化け物が消えて少し楽になった気もする。


「で、あなたたちは?」


目の前のあれは…鑑定ができない。

鑑定遮断持ちか。


「あなたに教える名前はない。プロミネンス」


炎の鞭が洞窟の壁面ごと引き裂かんとばかりに荒れ狂う。

魂が理解しているんだろう。

目の前のそれが、父親の仇であると。


しばらくして炎の鞭が消える。

視界が晴れた先には光の盾があった。

そして、その後ろには先程ほどの女がいる。


「まずは自己紹介しましょ。私はロメリア。この世界に、未来の可能性をもたらす者」


あれを喰らって無傷…化け物だ。

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