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私たちって本当に双子なの?  作者: 青いバケモノ
初めての出来事と楽しい添い寝
9/19

フウのイタズラ

 枕を取りに自分の部屋に戻りながら、今日あったことを振り返る。


「なんか今日は色々あったな…」


 初めてカエデからキスされたせいで、ちょっとタガがは外れて少し違うキスをしたり、一緒に寝たいなどと言ってしまった。

 一緒に寝るのはまだしも、ちょっと違うキスはやりすぎたかもしれない。

 枕を取ろうとした時、ふと思った。


「枕を持っていかなければもっとカエデとくっつける?…」


 枕を持っていかなければカエデと一緒の枕で寝れるかもしれない。となると、もっと近くでカエデを感じる事が出来る。

 いつもなら出ないような発想だが、今日は色々ありすぎてタガが外れてるので関係ない。


 長考すること約10秒。枕持ってっても持ってかなくても密着度はそこまで変わらないので持っていかないことにした。うん。別にあんまり変わらないなら持っていかなくてもいいはずだ。

 私は、枕を持たずにカエデの部屋に行く。


「あ、お姉ちゃんどっちで寝…枕は?」

「いらないかなぁって思って。置いてきた」

「普通に必要でしょ」

「一緒の枕使えばいいし」

「…まぁ別にいいけど」


 やっぱりカエデは簡単に許してくれる。カエデも私に負けず劣らずのシスコンなので枕を一緒に使う程度、些細なことなのだ。


「で、どっちにする?壁側?外側?」


 いつも通りカエデを壁側にし、くっつこうと思ったが今日はいつもとはちょっと違う。なら超久々に私が壁側になるのもいいかもしれない。


「久々に壁側にしようかな」

「え?…どうしたの?熱でもある?」


 確かに私が壁側を選ぶことなんて珍しいけど、それでも熱を疑うほどでは無いと思う。


「熱なんてないよ。そんな事より早く寝よ?」

「まぁいいよ。はい、先入って」


 椅子に座っていたカエデが立ち上がり、布団をめくる。カエデが壁側の時程では無いが、カエデが布団を捲って入って。というシチュエーションはやっぱり良い。


「ありがと。はい、カエデもここ。」


 布団に入り、枕のもう半分側をぱんぱん、と優しく叩きながら言う。カエデがいつもやってくれてる事の似たようなことをする。


「ありがと、お姉ちゃん。」


 特に反応はせずに入ってきた。もう少し戸惑ったりしてくれてもいいのに。

 かく言う私も、いつも心のなかで喜んでいるだけで表情には出していないので、人のことは言えない。だが、カエデの表情は分かりやすいので多分、本当に何も感じていないのだろう。

 私はいつもカエデにやってもらうと気分が高ぶってるのに。双子なのにこういうところは合わない。


「どう?久々の壁側は」

「カエデの髪のいい匂いがする」


 一つの枕を一緒に使っているので、頭同士がものすごく近くなっている。普通に息をしているだけでもカエデの髪のいい匂いがダイレクトに伝わってくる。


「ヘンタイ」

「しょうがないでしょ。近いんだし」


 カエデにだけは変態と言われても納得できるような行いをしちゃっているので否定はしない。

 それに、カエデにヘンタイと言われるのは嫌いではない。なぜなら、ヘンタイと言ってる時のカエデの顔が結構好きだからだ。

 というか、カエデのあまり日常的に見ない顔は全部好きだ。


「私別に枕なくても寝れるから」


 そういい、カエデは外側を向き、枕から出る。

 こういう時、カエデが壁側だったら枕を壁側に置いて、逃げ場をなくすことが出来たのに。

 ただ、外側には外側なりの弱点がある。


「カエデ?こっちきなよ」

「ヤダ」

「枕使ったほうが睡眠の質も上がるよ」


 いつも寝てるカエデに話しかけて睡眠の質を下げてる私が言うことでは無いが、それくらいしか枕で寝る利点が見つからなかったので仕方がない。


「別にいいもん」

「じゃあ強制ね」


 私に背中を向けているカエデの柔らかい体に抱きつき、お腹まで手を伸ばしてそのまま壁側へ向かって思いっきり引っ張る。心配になるほどに軽いカエデは簡単に引っ張られ、私とカエデの距離は0に等しくなる。


「お姉ちゃんっ!急にやめて!」

「ヤダね」


 カエデが私の腕を振りほどこうとするが、私のほうが力が強いので努力虚しく少しも離れない。

 私は、カエデのお腹の感触を楽しみながら更にギューッとする。

 服の中に手を忍ばせて直でカエデのお腹を触りたいが、そんな事をしたらガチで拒絶されかねないので流石にしない。


「…」

「抵抗しないの?」

「諦めた」


 私がカエデを離すつもりが無い限り、離れられないので良い判断だ。私は、ギュッとしている腕の力を弱め、身体を少し上げる。

 カエデのお腹に抱きつくために少し下に行っていたので、それを調整するために少し上に行き、カエデの首に抱きつくような形にする。


「…何?お姉ちゃん」

「こっち向いてよ」


 こんなに近くにいるのにカエデが反対側を見ているだけで、遠くにいるように感じる。せっかく一緒に寝てるのだからカエデを近くで感じたい。ので、こっちを向いてもらわないと困る。


「なんで?」

「なんでも」

「…手、退けたらいいよ」


 カエデに抱きつくのは、私の人生の中でもトップレベルにリラックス出来て最高な時間だが、それよりもカエデにこっちを向いて貰う方が優先度が高い。


「分かった。はい。手、退けたよ?」

「…」


 カエデがこっちを向く。

 同じ枕の上で、結構な近さで、向かい合って寝る。

 ただ向かい合っただけなのに、急激に距離が縮まったように錯覚してしまう程には近い。


 キスする時もめちゃくちゃ近いが、キスをしている時はキスに夢中なので今の方が圧倒的に近くに感じる。


「…近くない?」

「別にいいじゃん」

「まぁいいけど」


 結局はカエデもシスコンなのでこの程度なら許してくれる。

 というか、許すと言うより多分カエデもこの状況はどちらかと言うと嬉しいはずだ。なのに私から行かない限りだいたいカエデは我慢する。

 私からしたらカエデには積極性が足りない。


「…カエデ何か私にしたいことある?」


 カエデから抱きついたりしてくることは確かにあるのだが、私8割カエデ2割くらいだ。

 私はいつでもどんな時でもカエデとイチャイチャしたいのだが、カエデは甘えたいゲージが極限まで来ないと積極的になってくれない。


「何かって?なんで?」

「さっき勝手に引っ張っちゃったから。その分今できることなら何でも1つ言うこと聞くよ」


 甘えたい日のカエデはすぐに甘えてくるので今日がその日では無いことは分かる。だが、カエデも甘えたくない訳ではないはずなので、私からこう言えばもしかしたら甘えて来てくれるかもしれない。


「そんな事言われても」

「カエデだってシスコンだし、何か私にしたいことあるでしょ?」

「私はお姉ちゃんと違ってヘンタイじゃないから」


 やっぱりカエデはシスコンだということは否定しない。カエデがシスコンだというのは分かってはいるのだが、それでも嬉しいものは嬉しい。


「私がヘンタイならカエデもヘンタイだよ」

「なんで?」

「双子だから」

「いつも言ってるけど私たち似てないから。」


 カエデはよく本当に双子なの?という疑問を口にする。普通ならバカバカしい、で流すのだが、なにぶん私たちは似て無さすぎる。顔も似てないし性格も似てない。

 だが、お互いシスコンだし、こんなに仲がいいのだからその程度の疑いで双子じゃないと断言は出来ない。


「確かに似てない所も多いけど、それだけじゃ断言出来ないでしょ」

「…まぁ、確かにそうだけど」


 カエデだって流石に、本気で双子じゃないと思ってる訳じゃないはずだ。


「で、なんかないの?したいこと」

「…」

「じゃあカエデのこと抱き締めていい?」

「ダメ」


 カエデからスキンシップをして欲しいと思ったが、やっぱり高望みだったのかもしれない。


「お姉ちゃん…」


 そんな事を思った矢先、カエデが私の両頬を両手で包むように触れた。


「えっ、ど、どうしたの?」


 急に積極的になったカエデに驚き動揺してしまい、変な感じになってしまった。

 心臓が有り得ないほどドキドキしており、間近にいるカエデに聞こえてるのではないかと思う程にはドキドキしている。


「…カエデ?」

「…」


 カエデは両手を頬に触れた後、何をする訳でもなくジッと私を見ている。キスするのかと思ったけど、そんな様子はない。


「…はい。ありがと、お姉ちゃん。」

「え?」

「やりたい事出来たよ。」


 頬を触ることがやりたかった事?結局今カエデは何をしていたんだろう?


「何もやってなくない?」

「お姉ちゃんの顔を至近距離で見た」


 いつも私の顔は見てるし、何より丁寧に見る必要はない程私たちはお互いの顔を日常的に見ているはずだ。


「いつも見てるじゃん」

「至近距離で見ることはあんま無かったし、ジッと見たかっただけ」


 これもカエデにとっては甘えてる…のかも知れない。やっぱりカエデは私とは違って消極的だ。私ならカエデに何してもいいよと言われたこの状況だったら迷わずキスしている。


「そんなの何も言わなくてもやっていいよ。他にはないの?やりたい事」

「ない」


 どうやら本当にさっきのだけで満足したらしお。同じ双子なのにここまで違うというのは確かに双子じゃないかもと疑う気持ちも分かる。


「もう眠い おやすみ」


 カエデが目を閉じた。目を閉じてるカエデは目を開けてる時よりも可愛く見える。というか、珍しいカエデは全部可愛い。

 普通に欲求不満だが、今日は色々あったしカエデと一緒にこんな近くで寝れたのだからそれだけで良しとする。


「おやすみ。カエデ」

「ん…」


 カエデが声にならない声を出して反応している時は、寝る寸前or起きる寸前状態の時だ。

 目を瞑ってすぐにこうなるということは、そうとう眠かったのだろう。


「カエデ〜?」

「ゥ〜ン…」

「カエデ?抱き枕要らないの?」

「んぅ…」


 カエデは普段周りに人形や抱き枕を置いて寝ている。私がいる日は人形は他の所に避難されるので、私が抱き枕になる。

 ただ、カエデは恥ずかしがり屋なので、甘えるモードの日以外は私を抱き枕にしないで寝る。が、カエデは寝て30分くらい経ったら周りのものに抱きつく癖があるので、暫く待っていればカエデから抱きついて貰える事が出来る。


「カエデ〜抱き枕だよ〜」

「…」

「カエデ?」

「…んん……」


 カエデは1度寝たら起きないので寝ているカエデには好き放題出来る。

 今みたいにカエデの普段聞けないような可愛い声(普段ももちろん可愛い)を聞いたり、超至近距離でカエデの可愛い顔を見たり、カエデのほおをムニムニしたりetc…

 私がやり過ぎない限りカエデは起きずに寝れ、私は己の欲求を解消できるというウィンウィン状態(?)だという事だ。本当は意識があるうちのカエデに触ったり、色々したいのだが、そればっかりは仕方ない。いつかカエデが許してくれる日を待つしかない。


「…お姉ちゃん……」


 カエデの寝言は基本的にお姉ちゃんor声にならない声だ。

カエデが普段出さないような声で不意にお姉ちゃん、と言われるといつもと違う感じなせいか、胸が高鳴ってドキドキが止まらなくなる。いつもいつも嬉しくて心拍数が跳ね上がってしまう。


「お姉ちゃん…」


 カエデが抱き着いてくる。冬の布団は暖かくて気持ちいいが、そんなものよりも圧倒的に暖かくて、気持ちが良くて、体全体がポカポカして、全てが上位互換だ。


「カエデ暖かいね」

「んぅ…んん……」


 カエデの髪のいい匂いがする。同じシャンプーなのに、同じ匂いとは思えないほどいい匂いだ。


「じゃあ私も寝るね。おやすみカエデ」

「うんぅ…」


 流石に寝不足になりそうなのでもう寝る。カエデの温もりも充分感じれたし、私の無限の欲求が満たされてる訳ではないが、妥協は出来るレベルだ。

 そろそろテストが始まるし、こうやって一緒に寝ることも出来なくなってしまうのかもしれない。

 そんなことを考えながら私は瞼を閉じた。











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