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私たちって本当に双子なの?  作者: 青いバケモノ
進路についてとお弁当
6/19

進路①

「お姉ちゃん、お姉ちゃん、もうそろそろ起きないと。ご飯作りに行っちゃうよ?」 

「…ん……んん…」


 カエデが私を起こした。眠すぎて目を開けれないが、手の感触でカエデがそこにいることは分かる。


「お姉ちゃん起きた?」

「うン…」


 とりあえず今は何時か聞きたいが、どうしても口が動かない。

 寝心地のいい枕に寝心地のいいベッド。それに加えて大大大好きなカエデが目の前にいるという状況なので、どうしても口と目が動かない。


「いま……な…」

「ん?もう1回言って?」

「な…じ……」


 本当に朝は口が動かない。めちゃくちゃ気合いを入れれば、明日や明後日を犠牲にする代わりに朝でも動けるのだが、まず家じゃ難しい。

 それこそ修学旅行などでないと、力が出ない。


「今は…7時半。もうそろそろ私は起きて朝ごはん作りに行くね」

「や……」


 やだぁ…カエデもっとここにいてぇ。と言いたいが、や、としか言えない。だいたい意味は通るので問題ないし、何より言えても言えなくてもどうせカエデは朝ごはんを作りに行くので意味は無い。


「や、じゃないでしょ。」

「…手……」


 少しでもカエデを感じたいので、手を繋いで欲しい。もちろん密度の高い恋人繋ぎで、だ。


「はいはい、手ね。はい。これでいい?」

「…」


 恋人繋ぎではなく、普通に手を繋いできたので首を少し横にずらし、違う、というジェスチャーをする。


「これじゃダメなの?じゃあ、これでいい?」

「ん…」


 私の意思を汲み取り、恋人繋ぎをしてくれた。首を少し縦に動かし、ありがとう、とジェスチャーで伝える。


「暖かいね」

「ん……」

「もっとくっついていい?」

「も………うン」


 カエデも流石に朝はちょっと辛いのか、夜よりも積極的になってくれる。

私が頼りないから代わりにカエデが積極的ななってくれてるだけかもしれないが、だとしても私としては利点しかないので最高だ。


「ありがと、じゃあお姉ちゃんもっとこっち寄ってきて」


 目を開けれないので忘れていたが、私は外側だった。カエデは壁側なので、私がどんどん壁に向かって行くと必然的にカエデとぎゅうぎゅうになることが出来る。つまり、くっつけるという事だ。


 思いっきり壁側に進む。カエデの柔らかい体が当たり、朝なのも相まって本当に最高の気持ちになる。


「ぎゅうぎゅうだね」

「ん…」

「密着してると落ち着けるよね」

「うン…」


 本当に朝のカエデはよく喋るし積極的だ。私ももっとちゃんと返しをしたいし、カエデをちゃんとみたい。

 うっすら目を開けると、そこには可愛い可愛いカエデがいた。当たり前だが、その当たり前が嬉しくて堪らない。


「あれ?お姉ちゃん目開けれてる?」

「うん…」

「そろそろ起きてきた?」

「うん…」


 ものすごく眠いが、それでも朝に至近距離でカエデを見るというイベントを逃すなんて事は耐えられないので、眠気程度我慢する。


「カエデ柔らかぁ…」

「私太ってないけど」

「知ってるよ」


 カエデは心配になるくらいには軽く、細い。だが、それでも何故かカエデを抱き締めると柔らかく感じる。多分、人間の肉は、思ったよりも抱き締めると柔らかく気持ちいいのだろう。


「気持ちいい…」

「もうご飯作りに行くから。お姉ちゃんはなんかテレビでも見てて」


 カエデが外に出ようとするが、カエデは壁側だし、何よりぎゅうぎゅうなので簡単には出れない。しかも、私と手を繋いでいるのでまず身動きが取れない。


「…動けないんだけど、お姉ちゃん」

「最高の時間だね」

「手離して、その後少し離れて」

「ヤダ」


 カエデが私を押す。朝じゃなければ私の方が力が強いので簡単に押し返せるのだが、朝は抵抗すら出来ない。ずるずると押され、ぎゅうぎゅうだったカエデとの距離が離れてしまい、そのままカエデはベッドから出た。が、手だけは繋いだままなので離さない。


「…手離してくれないと朝ごはん作りに行けないんだけど」

「…カエデの手が気持ちよくて離せない」


 カエデと手を繋いでいると落ち着けるし、何より繋がってる感があって好きだ。


「何それ。朝だからって甘えすぎ。」

「…うン……」

「適当にテレビでなんか見てて。」

「分かった…」


 カエデが私と繋がっている手を解き、部屋から出て行った。



 §



 私の朝は遅い。学校は遠くから来る人の方が多いので、教室には8時50分までに着けばいい、という激緩設定だ。

 みんなは7時や7時30分に家を出たりしてるらしいが、私はいつも8時40分に家を出て、46.7分には教室に着くようにしている。


 起きる時間も8時15分くらいで、しかもカエデにいつも起こして貰っている。今日は早く起きたのでカエデに言われた通り動画配信サービスで動画を見ていた。


 このように、本当に自堕落な生活を行っている。大学に行ったら朝早くなるだろうから、今のうちに早い朝になれておかなければならないというのは分かるが、出来ない。


「おはよう…」

「おはよー!相変わらず朝は元気ないねぇフウ。」


 今、元気に挨拶してきたこの元気な子の名前は、梅木うめき 京香きょうかだ。どんな時でも元気ハツラツで、学校でよく話しをする友達だ。


「そういう京香はいつでも元気だよねぇ」

「うん!それが私のトレードマークだもん」


 本人も言っている通り、京香=元気みたいなイメージはある。お互い友達もいるのだが、何だかんだ京香と関わることが一番多い。いわゆる親友という関係性だ。


「そういえばそろそろテストだね。京香」

「……」


 京香が黙り込む。どんな事があっても黙らない京香が黙るのは、京香にとって弱点であるテストの話をしたときのみだ。

 京香は授業がだいっきらいで勉強もロクにせず、良いとは言えないような成績だ。

 だが、流石に今回の、二年最後のテストでは危機感を感じているらしく、結構前から勉強を始めていた。


「でもそれ以前に今日は企業説明会だよ?流石にそろそろ進路決めないと」

「…………」


 京香が、朝に弱い私以上に元気がなくなってしまった。


「まぁでも、今日は体育あるから、ね?確か今日は…」

「バレー」


 流石は京香、好きなことに関しての物覚えの良さは異常だ。


「流石京香。」

「でも私バレー嫌い」

「…」


 運動大好き京香でも嫌いなスポーツがある。それはバレーなどの、プレイするのに対して必ず痛さが伴うスポーツだ。

 特にバレーのサーブは素人がやると、力任せのサーブになるので手がメチャクチャに痛い。


「まぁでも、座学よりかはマシだし。いいもん」

「それなら良かった。一時間目は座学だけどね」


 また京香が顔文字のような、ひと目見てわかるショボン顔になってしまった。

 京香は色々と分かりやすいので、こうやって感情を上げ下げすると楽しい。



 §   



 一時間目を適当に過ごし、二時間目の体育が終わった。京香は何だかんだ楽しそうにしているし、私も何だかんだ楽しかった。


「何だかんだ楽しかったね〜フウ」

「スポーツはなんだかんだ言っても楽しいんだよね」

「結構先の話だけどクラスマッチ、バレーにしようかな」


 一か月後くらいにあるクラスマッチでは、バレー、サッカー、eスポーツ、オセロ、卓球の中から一つ選べる。てっきり京香はサッカーを選ぶと思っていた。


「サッカーじゃなくて?」

「サッカー私上手くないから…フウもバレーにしようよ」


 カエデはeスポーツを選ぶだろうが、私みたいにゲームが下手な人が行くと迷惑になるので京香と一緒のを選ぶのが一番安パイだと思う。


「うん。私もバレーにしようかな」

「やったー!決まりね!」



 それから三時間目も終わり、昼ご飯の時間になる。今日は企業説明会があるのでご飯を食べる時間は10分程度しかない。

 三時間目の片付けをし、スマホの電源を付ける。私は歩きで、みんなより少し早く出発しなくてはならないので全部食べる時間もなく、半分だけ食べて教室を出る。

 食べるのが早い私でもこの時間で全部食べるのは厳しいし、何よりこれから歩くのが辛くなってしまうので仕方がない。


「フウ、もう行くの?ちょっと早くない?」

「歩きだし、先生は30分で着くとは言ってたけど行ったことない所だし、怖いからね。」

「ふ〜ん。じゃ、また後でね~!」

「また後で」


 カエデはまだお弁当を食べていた。それも、めちゃくちゃに急いで食べていた。食べるのが遅いカエデが急いで食べてるのは珍しくて、少しその場にとどまってしまった。


「どうしたの?フウ」

「いや、何でもない。また後で」


 私はバッグを持ち、外に出る。今からでも歩いてる人はちらほらいるし、先生もいるので途中で迷うということはないだろう。

 普段は校門から出て真っ直ぐか右に行くが、家に帰るわけでは無いので左に行く。真っすぐ歩いていくと家庭科の先生が見える。


「ここは左だよー」

「こんにちは」

「あ、フウちゃん。あれ?カエデちゃんは一緒じゃないの?」

「はい、そもそも学校ではあまり関わらないので。」


 本当に相変わらず、もう歳もいってるはずなのに、それを感じさせないほど元気な先生だ。


「あら、そうなの。前はあんなに仲良さそうにくっついてたのに」


 先生がニコニコしながら言う。生徒が仲良さそうにしてるのがそんなに嬉しいのか、はたまたニヤニヤを隠すニコニコなのかは分からない。


「私たち家では仲良し姉妹ですから」

「そうなの?それは良かった。それじゃあ、この先はずっと真っ直ぐ行って、交差点を斜めに行って、また真っ直ぐ。まぁ、自転車の人たちがそろそろ来るだろうし、その人たちについて行く感じで大丈夫よ。」

「はい、ありがとうございます」


 先生にペコッとお礼し、真っ直ぐと歩いていく。この先のことが面倒くさく、少し憂鬱な気分で歩いていたらいつの間にか交差点まで来ていた。


「おーーーーい!!!!フウ〜!」


 歩行者用のボタンを押し、信号が変わるのを待っていたら後ろから私を呼ぶ大きな声が聞こえた。

 後ろを見ると、1人、大きく手を振っている人がいた。


「京香じゃん!」

「フウ〜一人じゃ寂しいかなと思って急いで来たよ!一緒に行こ?」


 どうやら京香が私のために急いで来てくれたらしい。自転車なんだからそんなに急がなくても良かったのに。

 まぁでも、一人で憂鬱な時間を過ごすよりも、京香と話しながら行く方が圧倒的に楽しい時間になるので本当にありがたい。


「本当に2人はいつも仲良しだよね〜」


 京香と一緒に来ていた白藜しろざヒユと、五加うこぎあかざが茶化すように言う。

 二人とは一年生のころ同じクラスだったが、二年生で別れてしまった。のだが、何故か京香と一緒に来ている。

 このためだけに他クラスまで行ってわざわざ誘ったのか、なんにせよ私と一緒に歩く予定だったのならそこまでする必要は無かったと思う。


「ほんと、その京香に付き合わされた私たちの事はどうするつもりなんだか。」

「2人はそのまま先行ってていいよ。今なら人も少ないし、だから誘ったんだよ?」

「京香ちゃんなりに気を回してくれたんだねぇ。ありがとう」

「それほどでもないよ~」


 今なら人も少ないし?…確かに人が多いよりは少ない方が楽ではあるだろうけど、着いてこさせる程の理由とは思えない。


「人が少ないって関係ある?」

「そりゃあこの二人は」

「ちょ、ストーーーップ!!」


 五加がめちゃくちゃ慌てて、大声で京香の言葉を止める。


「別に私はいいのに。」

「いや、でも…」

「藜は考えすぎだよ~」

「ヒユが楽観的すぎるんだよ…」


 何やら2人には秘密があるらしい。今は言いたくないみたいだし、無理に聞く必要はない。


「じゃ、じゃあ、私たちは先に行くから。また後でな。フウ、京香」

「また後でね~フウちゃん、京香ちゃん」


 五加と白藜は昔からよく一緒にいるイメージだったが、最近はより一層仲良しになってる気がする。同じクラスだからより絆が深まったのかもしれない。


「やっぱあの二人って親友なのかな?」

「いや?それよりも深…いや、何でもない。」


 それから約20分間、京香と話をしながら、ガラスの王宮とかいう豪華な名前のホテルへ歩いていく。

 カラオケでは何を歌うか、最近見たアニメや漫画の話等、色々話をしている内に見慣れないホテルに着いた。


 ホテルの玄関?前には生徒達がたくさんいた。みんな何並ぶわけでもなく、個々グループごとに駄弁だべっている感じだ。


「そういえば京香、今日の3つの話を聞く大学、専門学校の番号何?私は4.38.20」

「私は〜、4.20.38。」


 番号は同じだが、順番は違った。同じ進路なので、私も4,20,38にしたはずだが、順番が変わってしまったという事は、二回目の20番が定員オーバーになってしまったからだろう。


「それじゃあ皆さ〜ん!就職組の方から、中に入ってきて下さ~い!」


 案内の人が来て、大声で言う。就職組の人がゾロゾロと中に入り、外にいる人の方が圧倒的に少なくなる。


「次は進学組の方、私の後に着いてきて下さい。」


 案内の人の後ろを着いて行く。中に入り、少し進んだところで階段を降りる。


「それじゃあ、専門学校が一番目、最初の人はこちらに来て下さい。1番目が大学の人は廊下で待ってて下さい。」


 案内の人の指示に従い、廊下で待つ。大学組は少なく、少人数しか廊下にいない。


「はい君、どこ行きたいか、決まってる?」


 指示通りに廊下で待っていたらなんか変なおじさんに話しかけられた。急に話しかけられたのでビビったが、よくよく考えれば大学のパンフレットが大量にある机の前にいるので、多分、パンフレットを配る人だ。


「はい。IT系に行きたいと思ってます。」

「IT系ね。大学?」

「はい。今の所そのつもりです」

「はいはい、じゃ、これとこれと…」


 行くつもりはなかった大学のパンフレットを4つくらい渡された。そして、渡した後に、はいこれ。書いて。と言われ、鉛筆とボードを渡された。

 ボードには紙が挟まっており、貰ったパンフレットと住所を書く紙らしい。


 私は、無駄に重くなったバッグを背負いながら書く。パンフレットは要らなかったが、鉛筆とボードはありがたかった。学校から、今日の計3社の話を聞き思ったことを書く、ワークシート(メモと感想)を配られていたから、それを書く時に便利だ。


「フウ〜、なんか変なパンフレット配りおじさんからパンフレット渡されちゃったよ〜」

「まぁまぁ、少し重いぐらい我慢しな。おもしろかったし。」

「確かにおもしろかったね」


 どうやら、京香もパンフレット配りおじさん(?)にパンフレットを渡されていたらしい。周りを見渡すと、みんな沢山のパンフレットを手に持っていた。

 ニコニコ、というよりニヤニヤしながら渡す変なパンフレット配りおじさん。


「はいじゃあ、大学志望の人はこっちの部屋に入って来て下さ〜い。」


 専門学校側の部屋の反対側の部屋から先生が出てきて言った。そして私はドアの近くにいたので、一番乗りで部屋の中へ入った。



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