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私たちって本当に双子なの?  作者: 青いバケモノ
つかの間の休息と友達襲来
19/19

友達と友達

「…んぅ…んん…」

「カエデかわいい~」

「…おはよう。」


 今日もまた、お姉ちゃんより起きるのが遅かったらしい。…なんか、最近起きるのが遅くなってる気がする。


「…いまなんじぃ」

「いまくじぃ」


 …お姉ちゃんがふざけてる。起きたばっかで口が上手く動かなかった私の真似をして、とろけたような声で言う。


「真似しないで。」

「え~もう戻っちゃった。あの声レアで好きなのに。」

「…寝不足の時の朝の自分の声を録音でもしたら?」

「ちがう!カエデだからいいの!」


 それにしても9時?…9時!?優子が来るのは10時…というか、今日優子が家に来ることお姉ちゃんに言ったっけ?


「今日10時から優子が家に来るんだけど、そのことお姉ちゃんに言ったっけ?」

「………え?」


 お姉ちゃんがめちゃくちゃ驚いている。こういうお姉ちゃんは珍しい。

 じゃなかった、やっぱりお姉ちゃんに言うの忘れていたらしい。


 そして優子は待ち合わせの15分前には着いている。つまり、実質9時45分。そしてその5分前には外で待っていたいので、私に残された時間は40分しかない。優子なら遅れたって絶対文句など言わないが、やっぱり時間は守りたい。


「早くご飯食べないと!」

「え、何時に来るの?」


 お姉ちゃんは置いておいて、今日は時間がないので仕方がない。リビングに出て、目の前にあったスティックパンをとり、お姉ちゃんにも渡す。


「10時から。優子は待ち合わせの15分前に着いてるタイプだから実質45分。」

「…今日、京香も忘れ物したって言って家来るんだけど…」

「え?…え、何時?」

「今すぐ。多分もうすぐ着く」


 今から来る予定の梅木さんと優子。…このままじゃ普通に鉢合わせになってしまう。


「なんでもっと早く言わなかったの?」

「…言う前に寝ちゃった…というか、お姉ちゃんだって、梅木さんそろそろ来るって知ってたのに、なんでもっと早く起こさなかったの?」

「それは…別に忘れ物渡すくらいだったらパジャマでいいかなって…というか全然パジャマでいいと思って…カエデだって、寝ちゃったって、寝る前に言うべきでしょ?」

「…昨日は特別眠かったんだもん」


 今は喧嘩してる場合ではない。喧嘩なんかするより、この状況の打開案を練るべきだ。


「…どうする?」

「ここまで来てるのに追い返す、は可哀想だしねぇ…」


 仕方がない。二人には私たちが双子だという事を打ち明けるしかない。もし、梅木さんの方が優子よりも早くきて、早く帰ったら話は別だが、忘れ物のためだけにこんな遠くへは来ないと思う。

 ということは、多分あの梅木さんのことだ、ついでに遊ぶのも視野に入れてるだろう。


「梅木さんもこの家で遊んだりするの?」

「多分。忘れ物返してさようなら~なんてことはないと思うよ」

「…だよね。とりあえず歯磨きしよ。」


 どんな時でも欠かさない歯磨き。歯の綺麗さには私にも、お姉ちゃんにも自信がある。


「…いい音」

「そうだねぇ…」


 シャコシャコと、擬音があってるか分からないが、上手く歯磨きをできている音がする。


「どうする?カエデ。もう言っちゃう?」

「…そうするしかないかもね。」


 幸か不幸か、バレる相手は優子と梅木さん、お互いの親友だ。

 よかった。ギリ致命傷で済んだ。


「バレる相手が優子と梅木さんでよかった」

「本当にねぇまぁ、いい頃合いなんじゃない?」

 着替え終わり、今の時間は35分。ギリギリ間に合った。


「桜井さんと京香は友達らしいし、本当にギリセーフだね。」

「ギリセーフ…まぁ、そうかもね。」


 玄関の扉を開け、外に出る。

 梅木さんと優子、どっちが先に来るかは分からないが、どちらにせよ説明するならどっちが先に来てもいいように二人で外に出たほうがいい。という結論に至った。


「あ、優子からメール来てた。」

「え?」



 §



「どうしたんだろ急に…」


 今日は友達のカエデから家への招待を受けた。これだけ聞いたら普通のことのように感じるかもしれないが、問題は「カエデが」というの所だ。カエデは今まで私を家に誘うどころか、家に行きたいと言っても「無理」の一点張りだった。どうしても家の事は話したくないらしく、両親が共働きでほとんど家にいないという事しか分からない。


(優子)今から家出るね?₈ ₁₅


 …既読が付かない。多分寝ている。少々早く出すぎかもしれないが、早く見積もっても着くのは9時30分。その時は学校近くの公園で時間を潰せばいい。うん。久々のブランコもまた、良い。


 平日とは違いすっかすかな電車。改札でも思っていたが、本当に人が少ない。日曜のこんな朝早くに電車に乗ることなんて今までなかったから知らなかった。

 朝の電車で座り、くつろげる。これだけで一人の朝が楽しく感じる。


 カシャ


 ふとこの珍しい光景を写真に収めたくなり、スマホで写真を撮る。カエデに送ろうと、アプリを開いたら、カエデからまだ既読が付いていなかったので、送るのはやめる。

 …まだ寝てるのかな


 京香さんは…多分起きてないだろうし、やめておく。これで起こしちゃって迷惑になるのだけは嫌だし。


 目的地に着き、電車から降りる。ちらほら電車から降りている人が見えるので、日曜日でも仕事があったり、部活があったり、遊びに行ったり、何だかんだ人はいた。改札を通り、ホームから出るといつもの場所に戻る。いつもと何ら変わりないはずなのに、人が圧倒的に少ないのと、これから遊びに行くという気持ちで見ると、ここからの光景も全然違く見えた。


 いつも通り自転車置き場に自転車はあるが、時間はまだまだあるので歩きで行くことにした。


 §


「うーん、流石にまだ早い…」


 直線でカエデの家まで行って今は学校近く。このまま普通に歩いていたら、30分前に着いてしまう。カエデの性格だとギリギリまで寝てそうだし、流石にそれではカエデの迷惑になってしまうのでさっき決めていたように、近くの公園で時間を潰す。


 ブランコに乗りながら、高いところから周りを見ると、ちょっと動きやすそうで可愛らしい服を着た女の人が歩いていた。今日は日曜日でまぁまぁ朝早くで人もほぼ通らないようなところだからか分からないが、ふと、目に留まった。


 いや、でも…誰かに似ているような……


「………って、え、京香さん!?」

「え?……あ、桜井!私服だったから気づくのにちょっと時間がかかったよ。」

「私もだよ。奇遇だね、こんなところで。」


 まさかの京香さんだった。どおりで目に留まる訳だ。


 何を隠そう、私は京香さんのことが好きなのだ。一年生のころから同じ図書委員、視聴覚委員で、二年になってもそれは変わらなかった。その過程で、梅木さんから京香さん、と、呼び方が変わるとともに、私の京香さんへの気持ちも、友達から、好きな人変わっていった。


 可愛らしい服で、こんな朝早い時間に外。その時、ふと私の頭に嫌な考えがよぎった。


 もしかして、デート?


「…京香さんは…なんでこんな朝早くにこんなところに?」

「私は今日友達の家に忘れ物取りに、優子は…なんで日曜日のこんな朝早くに私服でブランコ漕いでるの?」


 絵面だけ見たら本当にヤバい人すぎる。


 友達の家に忘れ物を取りに、多分、本当なのだろう。京香さんは嘘が付けない性格だし、そもそも嘘をつかない。ただ、その為だけに1時間くらいかけて来るとは思えないから、そのあとも遊ぶ予定なのだろう。


「わたしは友達の家に遊びに。だけど少し早く来すぎちゃったからここで時間潰してたの。」

「へ〜じゃか私も久々にブランコ漕ごうかなっ、と…」


 京香さんがブランコに飛び乗り、そのままブランコを漕ぐ。高校生の立ち漕ぎはちょっと危なっかしいが、京香さんは小さくて運動神経がいいので比較的安定して漕げている。


「京香さんも待ち合わせよりちょっと早く来たの?」


 京香さんはイメージでは時間ピッタシ!派だと思っていたが、私と同じで早く来る派なのかもしれない。


「いや、今から行くね、としか言ってないからべつにいつ着いてもいいんだよね」

「そんなにブランコ乗りたかったの?」


 家に遊びに行くほどの仲なら、早く行けるなら早く行っちゃうと思うが、そうしないということは相当ブランコに乗りたかった、という事になる。

 それはそれで無邪気で元気な京香さんっぽくて良いが、流石にブランコだけで友達と遊ぶ、に勝てるとは思えない。


「日曜日のこんな朝早くのこんな場所で会うなんて奇跡みたいじゃん?だから、なんとなく。」

「なんか、京香さんらしいね。」

「そりゃ、私だからね!」


 やっぱり京香さんは笑顔がかわいい。眩しくて時々直視が出来ないくらいにはかわいい。


 ブランコに乗って、シーソーに乗って、気が付けばいい時間になっていた。


「じゃ、私そろそろ行くね」


 今から歩き出せば着くのは15分前くらいになると思う。ちょうどいい時間だ。


「じゃあ私も。途中まで一緒に行こ?」

「いいよ。じゃ、行こ。」


 方向が同じらしいので、一緒に行く。今日は朝から楽しい。いい一日になりそうだ。


「今のところテストは大丈夫そう?」

「うん。桜井ほどではないけど、今までで一番いい点数なはず!」

「じゃあ学年二桁以内確定だね。」

「…それは厳しい…」


 やっぱり、テスト関連の話だと、京香さんはちょっぴり元気がない。そんな京香さんも可愛いので、時々見たくなる。


 カシャカシャ


「ん?どうしたの急に写真なんか撮って。」

「なんとなく」


 元気がないレアな京香さんを写真で撮ることに成功した。京香さんはカエデと違って写真を撮られることに抵抗がないので気軽にとれる。もしこれがカエデだったら「撮らないで」と言い、そのまま私の写真フォルダから写真を消されてしまう。


「どうせ撮るならピースしてるときにしてよ。ほら!」


 京香さんがピースをしながら眩しすぎる笑顔でこっちを見てくる。これは大きなシャッターチャンスだ。


 カシャシャシャシャシャ


「ちょ、撮りすぎ撮りすぎ」


 約10枚+さっきの2枚でたくさんの写真が撮れた。この一瞬の間に私の写真フォルダがめちゃくちゃ潤った。


「ありがと京香さん」

「全然!これくらい大したことじゃないよ。」


 次の角を曲がったらカエデの家が見えてくる。ここまで付いてきているという事は、多分、京香さんの方が目的地まで時間がかかる。


「じゃ、私はここまでかな。」

「え、私ももうそこ。」


 どうやら京香さんの目的地と私の目的地はものすごく近いらしい。

 カエデの家が見えた…と思ったら、カエデが家の前に立っている。やっぱりなんだかんだ優しいところがある。


「「お~い!!」」「カエデ~」「フウ~」

「「…え?」」

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