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私たちって本当に双子なの?  作者: 青いバケモノ
地獄のテストの始まり
14/19

怒ったカエデ

「おはよう…」

「おはよ。あいかわらず遅いね~もうSHR始まるよ?」


 今日はテスト二日目。にもかかわらず私は相変わらず学校に着くのが遅い。


「今からでも少しはできるし、大丈夫だよ」

「流石、成績上位は違うね」


 京香があきれたような顔をしながら言う。


「本当、フウは朝弱いよねぇ…どうやって朝起きてるの?アラームで起きれてる?」

「朝は…いつも起こしてもらってる」


 愛しのカエデに、とは口が裂けても言えない。京香がカエデを認知しているかどうかは置いておいて愛しの、なんて付けたら誰だったとしてもダメだ。


「恋人に起こしてもらってるの?」

「え?」


 京香が突然意味不明なことを言う。何故そこで恋人が出てくるのか、関連性がなさ過ぎて京香の思考回路が全く分からない。


「なんで恋人?」

「今、幸せそうな顔してたから」


 幸せそうな顔をしていたつもりは全くないが、カエデ関連の話題だったのでもしかしたら少しニヤけていたのかもしれない。だとしても、幸せそうな顔、ではなかったと思う。


「家族だよ。恋人とかいないから。」

「まぁ、そうだよね~…親に起こしてもらってるの?」


 驚いたかのような顔で京香が見ている。別に高校生で親に起こしてもらってるのは全然おかしくはない…と思う。


「…親じゃなくて妹に起こしてもらってる。」


 少し悩んだが、まぁ、妹がいることを言ったところで別にどうともならない、大丈夫だと思ったので言った。

妹といっただけでカエデといったわけではないし。


「妹!いたんだ~!仲いいの?」

「それはもう。めちゃくちゃね」


 妹をカエデだと知られなければ何も問題はないので、仲がいいことを秘密にする必要は無い。


「妹って何歳?」

「…同い年」

「双子ってこと?」

「うん」


 ちょっと考えたが、まぁ、妹をカエデだと知られなければギリギリまでは言ってもいいだろう。名前とか、同じ学校だ、とかカエデだとほぼ100%ばれてしまうような質問だけは避ければいい。                 


「え~!知らなかった!やっぱフウに似てるの?顔とか性格とか」

「いや、そこら辺は双子とは思えないほど似てないんだよね」

「じゃあ街中ですれ違っても気づけない?」

「うん。絶対気づけない」


 少なくとも、街中でカエデを見つけて、フウの妹だ!とはならないだろう。顔だけならそこら辺の年の離れてる兄弟よりも似てない。


「どこ高通ってるの?」

「それは…」

「SHRを始めます。今日もテストなので手短にやります。」


 流石に同じ高校とは言えないので、他の高校を言うしか無かったが、どうしても、適当な嘘だと京香にはバレてしまいそうなので言いたくなかったので、ちょうど良かった。


「それじゃ、バッグ廊下に置きに行くよ。」

「後でまた妹の話聞かせてね!」

「…また後でね」



 §



 テストが終わった。

テストが終わったあとも京香は妹の話をしてたが、何故かどこ高校かは聞かれなかった。多分、普通に忘れている。


「ただいまー…早いねお姉ちゃん」

「ちょっとね。京香が妹の話を聞かせてってグイグイくるから逃げるように帰ってきちゃった」


 カエデが驚いたような表情をしている。別に何もおかしいことを言ったつもりはない。


「…妹いるって言ってるの?」

「うん。別に妹がカエデだって知られなければ大丈夫でしょ?」

「…まぁ…でも、名字同じだし…」

「まぁ、大丈夫でしょ。」


 カエデの中では、私に妹がいると言うことすらダメだったのかもしれない。


「桜井さんにはお姉ちゃんがいるって言ってないの?」

「言ってない。…優子に聞かれてないから」


 桜井さんに聞かれてないからと言ってはいるが、多分、聞かれてもいないと言うつもりだったのだろう。


「カエデ嘘下手だし、嘘言ったらすぐバレちゃいそうだから、聞かれたらいるって言った方がいいと思うよ」

「…そんなことはどうでもいいから、早くご飯食べよ」

「カエデが作るの?」

「今日はお姉ちゃんが作って」


 せっかくならカエデの作った料理が食べたいが、こればっかりは仕方がない。昨日はカエデが作ってくれたのだし、今日は私が作るとしよう。


「適当でいいなら」

「いいよ」


 何にしようかと冷蔵庫の中をのぞいたら、冷蔵庫のチルド室に豚肉があった。脂っこいのを食べるとすぐに胃にきて苦手なのだが、簡単に作れてご飯が進む豚肉は適当なお昼ご飯にもってこいだ。

脂っこいものも、少しなら美味しく食べれる。


「じゃあ豚肉の照り焼き作るね~」


 しょうゆ、水、ほんだし、砂糖を混ぜ合わせ、広げた豚肉にまぶす。キャベツはせん切りにし、器に盛る。豚肉を一枚ずつフライパンに入れ、焼き色がついたら裏返して両面を焼く。そして、皿にせん切りにしたキャベツと、豚肉を置き、完成だ。


 完成した豚の照り焼きをテーブルに持って行く。


「…流石だね、お姉ちゃん」

「このくらいならカエデも作れるよ。」

「私にはお姉ちゃん程手際良くは出来ない。」

「そんなことないと思うけど」

「そんなことある」


いつもいつもカエデは過大評価がすぎると思う。まぁでも、そんな褒め上手な所もカエデの沢山ある良い所の一つだ。


「じゃ、ご飯持ってくるね」

「あ、私がやるよ。お姉ちゃんは座ってて。」


 カエデが私の代わりにご飯を茶碗によそってくれる。それだけでなく、お箸もコップもお茶も用意してくれた。やっぱり、テスト期間のカエデは妙に優しい。


「ごめん、お姉ちゃんが料理してる最中にやっとけばよかった」

「いや全然いいよ。ほんとありがとね?」

「お姉ちゃんの料理の手際の良さにれちゃってて…」


 料理を褒められるのはもちろん嬉しいが、やっぱり、カエデにはもっと別のところを褒めてほしい。


「え?私に見惚れちゃってて?」

「料理の手際の良さに、ね。」


 別に料理中の私を、という意味なら私に見惚れた、でも全然いいと思う。


「それじゃ、いただきます」

「いただきます」


 豚の照り焼きを一口食べる。私ながら、中々に美味くできたと思う。


「ご馳走様。」


 肉と米の相性は最高によく、すぐに食べ終わってしまった。

暇なので、ご飯中も可愛い可愛いカエデを見る。


「…いつもいつも、ほんとカエデは美味しそうに食べてくれるよね。」


 カエデを見ていると、定期的に微ニッコリする。カエデは、美味しいものを食べると、自然と顔がほころぶ。これは生まれつきで、私以外、お母さんもお父さんも美味しいものを食べると顔がほころんでいた。


「美味しいんだもん。」


 そう言われて嬉しくないわけがない。しかも、最愛のカエデに言われてるんだから、それはもう最高に嬉しい。


「ありがとねぇ。その言葉だけで頑張れるよ。」

「…大袈裟」

「本当だよ?なんたって愛しのカエデに言われてるんだから。」

「…よくそんな恥ずかしいこと面と向かって言えるね」


 カエデに対して言えない恥ずかしいことなんて一つもない。カエデにはいつも全てをさらけ出している状態だ。


「カエデに対しては全てをさらけ出してる状態だからね。私」

「それは怖い」


カエデに恐怖されてしまった。私だったら喜ぶようなことを言ったのに、それに対して怖いは酷いと思う。


「カエデは私に対して秘密が多いよね」

「…そんなことないもん」


 「もん」が語尾に付いてる時点で嘘だ。

カエデは私に隠してることが多すぎる。隠してることがなんなのかは分からないが少なくとも、隠しごとが多いのは分かっている。

 カエデはいわゆる秘密主義というやつなのかもしれない。


「ご馳走様。」


 カエデもご飯を食べ終わり、食器を洗う。


「今日はどっちの部屋で勉強する?」


 勉強部屋は正味どっちでもいい。カエデの部屋ならカエデの布団でカエデの匂いに包まれることができるし、私の部屋ならカエデとキスすることが出来る。


「私の部屋」


 悩む素振りもなく、即答だった。元から今日は自分の部屋で勉強すると決めていたのかもしれない。


「それじゃ、私は勉強道具持ってくるから。」


 食器も全て洗い終わり、自分の部屋に勉強道具を取りに行く。明日のテストは英語と情報2なので、プリントと、英語の教科書を持っていく。


「じゃ、勉強する?」

「あ、その前に。今日の休憩は私がしたいことするから」

「急にどうしたの?」


 カエデがやりたいこと…何をやるのかは見当もつかないが、カエデのことだしハグをする~だとか、そんな感じだろう。


「別に。勉強前に言っときたかっただけ。」

「まぁ、別にいいけど。何するの?」

「それは内緒」


 ちょっと引っかかる所はあるが、まぁ、大丈夫だろう。


 カエデが勉強を始めたので、私も素直に勉強を始める。本当はもっと雑談をしたかったのだが、カエデは英語がめちゃくちゃ苦手なのでその邪魔だけはしたくなかった。



 §



「…もう終わりでよくない?」


 昨日よりも明らかに長時間勉強したのに、カエデは勉強をやめる様子がなかったので私から言った。本当は、カエデが自主的に休憩って言うまで待っているつもりだったのに。


「…確かに。じゃあこの問題終わったら」


 カエデも流石にちょっと長すぎたと思ったのか、思いのほかあっさりと勉強時間が終わった。

待ってる時間が暇なので、カエデの隣に行く。


「…何?」

「私は終わったから。カエデを見てるだけだよ」

「…」


 隣に座るな、と言わんばかりの目でこっちを見てくるが、それでも動かずジッとカエデを見つめていたら、諦めたのか、視線を私からノートに移した。


「機会はチャンスだよ」

「…英語本当に覚えられない」


 カエデは本当に英語が苦手だ。何年も英会話を習っていたのに英語力は身につかず、それからずっと苦手意識を持っている。


「英語は積み重ねだよ。頑張って。」

「…お姉ちゃんと私はやっぱ双子じゃないね」


 また言っている。

 いつもいつも言ってるが、私たちが双子じゃないわけがない。

確かに、顔も似てないし、スタイルも、性格も全然違うし、髪型も違う。成績も全然違うし、ゲームの腕も全然違う。

…確かにこれは疑いたくなる気持ちもわかる。


 だとしても、私たちは双子であるという事実は変わらないし、変わってほしくない。


「いつもいつも何言ってるのカエデ。私たちは正真正銘の双子だよ。」

「…お姉ちゃんはそれでいいの?」


 それでいいも何も、私はシスコンだから。双子で、姉妹であってほしいと思っている。


「そりゃそうでしょ。カエデと私は仲良し姉妹。これの何が嫌なの?」

「…もういい」


 カエデがノートを閉じて、シャーペンを筆箱にしまう。

 …もしかしなくても、これは絶対に怒らせてしまったのかもしれない。

もしかしたら、休憩は無し。とか言って出て行ってしまうかもしれない。それだけは絶対に阻止しなくてはならない。


「ご、ごめんカエデ」

「…何が?」


 やっぱりカエデは怒っている。なんで怒ってるのかはさっぱりだけど、とにかく、今はカエデの怒りを鎮めることが最優先だ。


「何かは分からないけど、怒ってるでしょ?カエデ」

「…本当に分からない?」


 少し考えるが、やっぱり、怒る要素はなったと思う。


「見当もつかない」

「…じゃあ、お姉ちゃん、ベッドに寝っ転がって」


 カエデに言われるがままに、ベッドに寝っ転がる。うつ伏せか、仰向けかは指定されてなかったので、よりカエデを感じるためにうつ伏せになる。


「何か言う事はある?」

「…カエデのいい匂いがする」

「ヘンタイ」


 確かに少しはヘンタイかもしれないが、カエデがいい匂いなのも悪いと思う。


「じゃあこれだったら?」


 カエデが私の隣で寝っ転がる。今日一番カエデが近くて、少しドキドキする。


「カエデが近くて嬉しい」

「…じゃあこれだったら?」


 カエデが抱き着いてくる。さっきまで怒ってたはずなのに、何故かカエデとハグしている。何が何だか知らないが、結果オーライだ。


「うーん…カエデ可愛い」

「他には?」

「キスしたい」


 ここはカエデの部屋だし、このシチュじゃダメだと絶対言われるが、それでもカエデが何か言いたいことはないかと言ってきたので仕方がない。

今思ってるありのままを伝える。


「…分かった。」

「………え?」


 分かった?…何が?

 もしかしなくても、カエデの部屋でキスをしていいという事なのだろうか。しかも、現時点で一番ハードルの高いお互い寝っ転がってるというシチュで、だ。


「い、いいの?」

「いいよ。でも舌入れようとするのは禁止ね。」


 流石にそれは許してくれないらしい。ワンチャンいけるのではないかと内心期待していたけど、まぁ、キスができるだけで満足だ。


「分かった。じゃあしていい?」

「いいよ」


 慣れた手つきでカエデのほっぺを触り、そのままキスをする。もうかれこれカエデとキスをするのは当たり前になっているが、それでも、何回キスをしてもカエデとのキスが飽きる気がしない。

ぷにぷにで気持ちよくて、カエデを一番近くに感じれて…全てが最高だ。


「…どうだった?」

「え?」

「キス、どうだった?」


 カエデが私をジッと見つめて言う。こんなことを聞くカエデは珍しい如きの騒ぎではない。


「大丈夫?熱でもあるの?」


 カエデのおでこを触るが、すべすべで気持ちよかった。…ではなく、別に熱があるような熱さではなかった。


「…ふざけてないで、どうだった?早く言って」

「最高だった」

「他には?ドキドキした?」

「まぁ、そりゃ。したけど」


 カエデとのキスでドキドキしないわけがない。カエデだってドキドキしてるはずだ。今度胸を触りながらキスをしてみるのもいいかもしれない。

 …まず胸を触らせてくれるかどうかという問題ではあるけど。


「でしょ?それで、本当に私たちは正真正銘の双子でいいよ思う?」

「え?…思うけど」


 当たり前のことを言ったつもりだったが、何故かカエデがこれまでにないくらい冷ややかな、呆れたような、残念そうな顔をしている。


「…もういい」


 急に失望されて、虚を突かれた私をよそにカエデは布団から出て行ってしまった。そのまま部屋の外に出て、リビングへ行った。

 私もその後を追い、リビングへ行く。


「どうしたの?カエデ」

「…次の勉強は個人個人でやって」

「え、なんで?嫌なんだけど」


 カエデと一緒に勉強して、カエデと一緒に休憩する。私はそれを楽しみにしていたのに、急に無しにするのは良くないと思う。


「…明日はまた一緒にするから。今日だけは一人一人で勉強で。お願い」

「…」


 本当に嫌だが、カエデも生半可な気持ちで言ってるわけじゃない。カエデから一緒に勉強して、一緒に休憩したいと言い出したのだから、カエデも私と同じくらいそれを楽しみにしていたはずだ。


「…分かった。その代わり明日はとことん甘えるからね」

「…こっちこそ」


 急になんでこんなことを言い出したのかなど、聞きたいことは山ほどあるが、今は聞くべきではない。

私は、渋々カエデの部屋から勉強道具を持ち、自分の部屋へ戻る。


 これからやることもないし、ちょっと寝不足気味なので寝ることにした。

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