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私たちって本当に双子なの?  作者: 青いバケモノ
地獄のテストの始まり
12/19

一緒に勉強

「テストどうだった?」

「まぁまぁかな〜」

「まぁまぁ」

「ウーン、ムリ!」


 今は、杉、姫咲めさ、私、優子の仲良し4人組で集まって下駄箱へ向かっている。

少しの間だが、一緒に集まって一緒に話を出来るのは嬉しい。


「カエデはどうだったの?」

「結構出来たと思う」

「姫咲は…いつも通りだね」

「うん。普通に無理!」


 優子のまぁまぁは絶対高い。多分90は超えてるだろう。そして杉のまぁまぁも多分高い。80は超えてるだろう。そして姫咲のムリ!は…多分普通に低かったのだろう。


 昇降口で止まり、少しゲームの話をしたり、雑談をして帰る。

テストの日なので少しテストの話多めだったが、それ以外はいつもとなんら変わらない。


「ただいま…」


 まだお姉ちゃんは家に着いてないので家には誰もいない。が、家に帰ったらいつもの癖でただいまと言ってしまう。


 とりあえず着替えて、今日の昼はどうするか、お姉ちゃんはまだ帰ってきてないのでお姉ちゃんを待つか、私が作るか、で悩んでいる。


「ただいま〜」

「おかえり」


 そんな事を悩んでいたら、お姉ちゃんが帰ってきた。


「お昼ご飯どうする?」

「適当に作るよ。ちょっと待ってて」

「…何でもいいなら私が作るよ。お姉ちゃんは休んでて。」


 お姉ちゃんに使って貰った方が、手短に、かつ美味しくなるのは分かってはいるが、料理系全てはお姉ちゃんに任せてしまってるので今日くらいは私がお姉ちゃんに作ってあげたい。


「え、そう?ありがとう。カエデ」

「別に、美味しくなくてもいいなら」

「大丈夫。絶対美味しいから」


お姉ちゃんは相変わらずだ。多分、本当に私がちゃんと料理をすればあまり美味しくなくても、失敗作でも美味しいと言ってくれる。


「…絶対なんてないから」


 冷蔵庫の中を見る。キャベツ、ベーコン、卵、玉ねぎ、米、ケチャップがあったので、とりあえず私でも簡単に作れるチャーハンを作る事にした。


「チャーハンでいい?」

「いいよ。カエデのチャーハン美味しいから嬉しい」

「チャーハンなんて誰が作ってもそこまで変わらないよ。」


いつも通りの味付けで、キャベツ等を適当に切って、適当にフライパンに入れるだけで中々に美味い物が作れるチャーハンはやっぱり最高だ。

料理が苦手な私でもそこそこ美味く作れる。


「出来たよ」

「持ってきて〜」

「…分かった」


 何故かお姉ちゃんが甘えるモードになっている。いつもだったら絶対に自分で持ってかせるが、今日だけは特別にお姉ちゃんの分もテーブルに運ぶ。


 テーブルに座り、部屋に戻るでもなくジッと私を見ていたお姉ちゃんにスプーンとお茶とチャーハンを渡す。


「ありがと、相変わらず美味しそうなチャーハンだね」


 お姉ちゃんはいつも、私が適当に簡単な料理を作ったら美味しそうという。

 絶対にお姉ちゃんが作った方が美味しいのに。


「別に。お姉ちゃん程ではないし」

「そう?私はカエデのチャーハンの方が美味しそうに見えるけどね。それじゃ、いただきます」


 お姉ちゃんは私が関わると時々バカになる。見た目も味も明らかにお姉ちゃんの作ったチャーハンの方が美味いのに。


「やっぱり美味いじゃん。私より」

「…それはお姉ちゃんの舌が狂ってるだけ。」


 何だかんだお姉ちゃんほどでは無いとは言え、まぁまぁ美味しいチャーハンが作れたと思う。というより、チャーハンで不味い事なんてほぼない。

 やっぱりチャーハンは神だ。


「ご馳走様でした。」

「相変わらず早いね」

「美味しかったから。」

「それ関係なく早いでしょ。」


 お姉ちゃんがご飯を食べるのが早いのは、別にご飯が美味しいからではなく、いつもの事だ。


「カエデが料理してる姿って、なんか可愛いよね」

「…なにそれ」

「あと食べてる時もね」

「…」


 やっぱりお姉ちゃんは私関連だと何かとバカになる。

 ただ、何だかんだ私もシスコンなのでお姉ちゃんに可愛いと言われたら嬉しかったりする。

 可愛いのはお姉ちゃんだけど。


「…お姉ちゃん、休憩時間何するの?」

「え?…休憩って勉強の?急にどうしたの?」


 いつもはお姉ちゃんが話題を振ってくれるのに、今日は何やら悩み事でもあるのか黙ってジッと私を見ていたので仕方なく、私から話題を振る。

という建前を心の中に立てておく事で、スムーズに聞くことが出来た。


「…何の質問?これ」

「別に、何となく聞いただけ」


 お姉ちゃんが私に疑いの目を向けてるような気がする。…いや、あの顔は確実に疑ってる顔だ。


「本当に何の意図もない質問?」

「うん。…ご馳走様」


 逃げるようにしてお皿を洗いに台所へ行く。


「じゃあ逆に、カエデの休憩時間の過ごし方は決まってるの?」


 お皿を洗うのはお姉ちゃんも同じなので、全く逃げられていない。寧ろさっきよりも袋小路きみまろ(ただの袋小路)だ。


「…今から決まる」

「どういう事?」


次ここ↓


 休憩時間の過ごし方の理想は決まっているが、それが現実になるかどうかは決まっていない。


 皿を洗い終わり、自室に戻る。多分、お姉ちゃんは今、漫画、小説を読むか、アニメを見ていると思う。

 お姉ちゃんは勉強するのは大体夜のみだ。少なくとも、ご飯後は勉強していないはずだ。


「…お姉ちゃん、ちょっといい?」


 これからの休憩時間の理想を叶える為に、お姉ちゃんの部屋のドアをノックする。

 理想は、お姉ちゃんと一緒に勉強し、休憩時間はお姉ちゃんと休憩したい。という私の欲望丸出しの内容だ。


 別に休憩時間になったらお姉ちゃんの部屋に行き、お姉ちゃん成分を吸収する。とかでもいいのだが、どうせなら一緒に勉強をして疲れた所を一緒に休憩したい。

 いつもお姉ちゃんの事をヘンタイヘンタイと言っているが、私も何だかんだヘンタイなのかもしれない。


「あ、カエデ~!ちょうどよかった。私もちょうどカエデの部屋に行こうと思ってたから」

「私になにか言いたいことでもあったの?」

「…うん。だけど来たのはカエデだし、先どうぞ。」


 一緒に勉強して、休憩時間は一緒にいて欲しい。

 お姉ちゃんは100%、良いよ!と言うのは分かっているのだが、だからこそ、お姉ちゃんの成績を下げてしまわないかが不安で今日まで言うことが出来なかった。


「…」

「カエデ?」


内容が内容なだけに、中々言い出せない。私はお姉ちゃんと違いメンタルが弱く、ヘタレチキンなのだ。


「…」

「カエデ、なんか私に遠慮してるでしょ。」

「…え?」


 まだお姉ちゃんには何も言ってないはずなのに、何故かバレている。


「何でそう思ったの?」

「なんか、カエデが遠慮してる時独特の動きが見られたから」

「それは細かすぎて怖いよ」

「私はいつでもどんな時でもカエデを見てるからね。カエデのことなら細かい所まで分かるよ」


 普通に怖いが、普通に凄い。独特な動きとかした覚えは無いし、そんなものあるとは思えないが、実際バレているのであるのかも知れない。

 多分、お姉ちゃん以外の人には無理だと思うけど。


「で、私にどんな遠慮してるのか分からないけど、私には遠慮しなくて良いよ。」

「でも…」


 これでお姉ちゃんの成績を下げてしまったら、これでお姉ちゃんに迷惑をかけてしまったら、と考えるとどうしても言い出せない。やっぱりわたしは めんどくさいヘタレチキンだ。


「カエデに遠慮されるより、多少迷惑かけられた方が嬉しいよ。というか、カエデの本音を知れた方が何倍も嬉しいから。」


 やっぱりお姉ちゃんは狂ってる。

 ドシスコンだとしても少しは自分を優先して欲しい。


「もっと自分のことを考えて言って」

「自分のことを優先した結果がこれだって。カエデは考えすぎ。」


 多分本心から、自分を優先したとしてもこういう結果になるのだろう。だとしたら、私に躊躇う理由は無い。


「……一緒に勉強して、休憩時間も一緒にいたい。」

「そんなことで言うの躊躇ってたの?」

「お姉ちゃんの勉強方法と私の勉強方法は全然違うから…成績に響いたりして、私の私欲のためだけにお姉ちゃんに迷惑かけたくなかったから」

「…」


お姉ちゃんが黙ったかと思ったら急に抱きしめてきた。結構強い力で。


「何?お姉ちゃん」

「カエデがそんなに私のことを考えてくれてたって思うと嬉しくて…」

「…で、いいの?ダメなの?どっち?」

「良いに決まってんじゃん。ダメな要素0でしょ」


 どう考えても0ではないし、寧ろ普通に考えてダメな要素の方が多いはずだ。

 人によって勉強方法は大きく異なるし。


「勉強方法とか、勉強する時間とか全然違うじゃん。私たち」

「別に、どうってことないよその程度」


 まぁ、分かっていた事だ。絶対了承してくれると分かってはいたけど、やっぱり言い出すのはちょっと緊張する。


「それにしても、カエデはシスコンだねぇ〜」

「お姉ちゃん程じゃないし。」


 シスコンなのは認めるけど、お姉ちゃんに言われるのは嫌だ。お姉ちゃんの方が私よりも何倍もシスコンなのに。


「じゃあ一緒に勉強する代わりに、私の部屋で勉強ね」

「…別にいいけど」


 なんの意味があるのかは分からないが、お姉ちゃんのは自分の部屋で勉強したいらしい。

 私の部屋でもお姉ちゃんの部屋でも一緒に出来るならどっちでもいい。


「勉強道具持ってくる」

「…」

「離してくれないと持ってこれないんだけど」

「もうちょっと…このまま…」

「こういうのは休憩時間に取っといて」

「…分かった」


 お姉ちゃんが、渋々といった様子で私から離れた。

 すぐに自分の部屋に行き勉強道具を取る。明日のテストは数学と歴史なので、数学と歴史の教科書とノートを持ってお姉ちゃんの部屋へ行く。


「お姉ちゃんはどの教科の勉強するの?」

「数学と歴史。カエデと同じだよ」

「…まだ私が何勉強するか言ってないけど」

「分かるよ。それくらい」


 確かに、明日の教科は数学と歴史で、普通に考えて今日勉強するなら数学と歴史だが、断言出来るほどの根拠ではないはずだ。


「なんで分かるの?」

「カエデはテスト前日のテスト勉強は次の日の教科の勉強するから。絶対にね」


 確かに、今のところ全てのテストがそうだ。

 なんか、お姉ちゃんに隅から隅まで知られてる気分になってちょっとむず痒い。


「はい、隣座って」


 お姉ちゃんが床をぽんぽん、と叩きながら言う。

 向かい合って座ってやっとギリギリの狭さの机なので、隣で勉強するのは無理だ。


「いや狭いし。向かい合って座る形しか無理だよ」

「まぁ、そうだよね」


 お姉ちゃんは私が否定するのをわかっていてこういうことを言う。わかっているなら元から言わないでほしい。


「分かってるなら最初から言わないでよ」

「ごめんごめん」


 絶対、全く反省してない。


「…まぁいいよ。ほら、勉強始めるよ」

「は~い」

「…お姉ちゃん?勉強始めるよ」

「は~い」


 返事だけで行動に移そうとしないので、お姉ちゃんが読んでいる漫画を取り上げる。


「ほら、数学と歴史勉強するんでしょ?早く持ってきて」

「…は~い。」


 今度はちょっと不服そうに言っている。は~い、だけでここまで伝わる日本語はやっぱりすごい。


「どっち先に勉強するの?」


 勉強道具を取るために席を立っているお姉ちゃんがそんなことを言ってきた。多分、一緒のを勉強する気なのだろう。


「数学」


 一緒の勉強をするのは、教え合うことができるのでちょっと不服だが、本当のことを教える。特にお姉ちゃんは頭が良く、教えてもらうのは私になるので私にとっても一緒の科目を勉強したほうが良い。


「じゃあ私も数学やろっかな。どう思う?」

「それ私に聞く必要ないよね?」

「まぁね」


 お姉ちゃんも机に座り、勉強を始めた。



§                                                       

「分からないところとかないの?」


 勉強始めてから30分くらいが経過した。お姉ちゃんは集中が切れたのか、急に変なことを言い出した。

 何のための確認なのか分からないが少なくとも、私に対して何か不満があることだけは声色でわかる。


「…あるけど、後回しにしてる。なにか不満でもあるの?」

「それだよ。後回しにしないで私に聞いてよ」


 静かな空気で集中しているお姉ちゃんの邪魔をしたくなかったので、分からないところは飛ばしてやっていた。が、それが不満だったらしい。


「せっかく一緒に勉強してるんだから分からないところは教え合おうよ」

「…でもお姉ちゃんわからない所ないでしょ?それじゃフェアじゃないじゃん」

「そんなの関係ない。ほら、どこがわからなの?教えるから」


 お姉ちゃんが立ち上がり、私の隣に来た。教えて、とは一言も言ってないが、お姉ちゃんはもう教える気満々らしい。


「…これがわかんない」


 数学は得意だが、まだ習ったばかりの積分定数があまり理解できておらず、問題が解けなかった。多分、お姉ちゃんなら、「簡単だよ」とか言ってすぐに教えてくれる事が簡単に想像つく。


「こんなの簡単だよ。∫3x²+2x²+3の、3x²はx³でしょ?そして、これをこうすると、こうなる」

「あ~…数学あるある、分かってしまえば簡単、だね。」

「でしょ?他には?分からないところないの?」

「ないよ」


 私は数学は得意なので、わからない所はそうそうない。

教えるところが無ければその分手間が省けていいはずなのに、何故かお姉ちゃんはめちゃくちゃ残念そうな顔をしている。


「なんでそこまでして教えたいの?」

「それは~ほら、教えるのって教える側もめちゃくちゃ身につくから。」


 少なくとも絶対に嘘だ。お姉ちゃんは私に教えなくとも元から完璧に身についている。

誤魔化そうとするという事は、何かろくでもないことを考えてるのだろう。


「噓でしょ、それ」

「…流石カエデ、よくわかったね」

「で、本当は何で?」

「教えるってていだと、カエデに近づけるから。」


 やっぱり碌でもない事だった。そういうスキンシップは休憩時間にやることで、今やることじゃない。


「そういうのは休憩時間まで我慢して」

「…その代わり休憩時間は覚悟しといてね」

「お姉ちゃんもね」


 お姉ちゃんは恐らく、めちゃくちゃに甘えるからね!的な意味での覚悟しといてね、だろうが、私も私でお姉ちゃん成分が勉強という大嫌いな行為で0になっちゃうので、めちゃくちゃに吸収するつもりだ。

 やっぱり、お姉ちゃんと一緒に勉強&休憩をする選択は大正解だった。


「分かった。じゃあ、覚悟しとくから覚悟しといてね」

「…分かった」


 お姉ちゃんが定位置に戻り、勉強を再開する。

 あと数十分、たったそれだけ頑張るだけで休憩出来る。それだけで勉強を頑張ろうと思えるのだから、本当に私は単純だ。


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