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キス習慣の始まり①

────本当に私たちって双子なの?


 最近、私とお姉ちゃんは本当に双子なのかと思う事が多々ある。その度に、今のようにお姉ちゃんに疑問をなげつけている。


「何言ってるのカエデ。いつも言ってるけど私たちが双子じゃないわけないでしょ」


 ここ最近よく言ってるせいか、お姉ちゃんが呆れたように言う。


「でも私たち性格も全然違うし、顔も似てないじゃん」

「確かにカエデは私よりめちゃくちゃ可愛いよね。」

「…そんな事聞いてないし、可愛くないから」


お姉ちゃんは明らかに真面目に答えてない。私が真面目に聞いてるのだから、真面目に答えて欲しいし、真面目に聞いて欲しい。

…いや、私の問い自体がふざけたものなのかもしれない。


「そんな事より、早くキスしよ?」

「…やっぱり今日もやるの?」

「そういう決まりでしょ。」


 お姉ちゃんと週に一回か二回、キスをする。お姉ちゃんが決めた決まりだ。明確な回数は決まってないが、だいたいそんな感じ。


 もう何回目かになるお姉ちゃんとのキスは何回やっても慣れる気がしない。


「…普通の双子はこんな事しない」

「じゃあ双子じゃなくてもいいから」

「双子が嫌だとは一言も言ってない」

「まぁ何でもいいから。決まりは決まり、約束は約束だよ。」


お姉ちゃんがキスをしようと、強引に話を終わらせようとする。こうなった時のお姉ちゃんは聞く耳を持たない。


 そして、隣に座っているお姉ちゃんがぐっと距離を詰めてきて、顔と顔がくっつきそうになる。


 本当になんでお姉ちゃんとこういうことをするようになったのか…


さかのぼること数週間前…



 §



 私は今、体育館のステージに体重をかけて座っている。今は体育の授業中で、皆はバスケをしている。


 その中で私は1人、ずば抜けて上手い人を見ていた。

そのずば抜けて上手い人、というのは私のお姉ちゃん、柏葉かしわば フウである。


「…相変わらずお姉ちゃんは凄いな」


 お姉ちゃんは完璧超人かんぺきちょうじんなのだ。成績優秀でスポーツも出来る。

 お姉ちゃんは非凡な才能を持っていて、本当に、周りより優れている。


 それに比べ私は今、体育の授業中なのにも関わらずバスケをせずに座っている。

別にめんどくさかったからサボった訳では無い。普通にパスを貰った時に突き指をしてしまったからである。


 私は先程、お姉ちゃんは完璧超人だと言ったが、お姉ちゃんも人間なのでもちろん短所もある。それは、超がつくほどのシスコン。という所だ。


 お姉ちゃんに、体育で怪我をした時は小さい怪我でもちゃんと先生に言って休んで。と言われている。


 学校ではあまり話さないという決まりを私が作っているため、怪我した時にお姉ちゃんが駆け寄ってくるなんて事はないのだが、言ったことを守らないと帰ってからグチグチ言われるので、体育の先生兼担任の先生の佐藤先生に突き指をしたと言い、冷やして固定する。


 幸か不幸か、佐藤先生はものすごく優しい先生なので、突き指程度でもしっかりと対応してくれる。



 そんなこんなでボーっとしているうちに授業は終わった。バスケは得意な方だったので普通にやりたかったが、まぁ、近くに体育館があってやろうとすればいつでも出来るのでそこまで落ち込む程の事では無い。


「カエデ、突き指大丈夫?」

「うん。突き指程度、どうって事ないよ。」


 彼女は私の友達の桜井さくらい 優子ゆうこ。名前の通り優しい性格で、聞き上手で、実は2Dが好きというちょっとしたギャップもあって、優美な女性、という言葉が良く似合う人だ。

私も、漫画やアニメ、小説が大好きで、そういうところも気が合い優子と私は親友になった。



 お昼休みになり、私は優子と一緒に、お姉ちゃんが作った弁当を食べる。


お姉ちゃんはいつもの友達らしき人と一緒にお弁当を食べている。

 私は、自分のお弁当に視線を戻し、優子と雑談をする。


 お昼休みが終わり、椅子を机の上に乗せて前に送る。今の私の掃除場所はDでぃーとうだ。D棟は教室から遠く、掃除の時間が簡単に潰れるし、一回掃除をしたら次の日の掃除はD棟に行って点呼をとるだけで良い。

 しかも、私が好きな優しい家庭科の先生が担当だ。先生(年上)が苦手な私でも比較的気軽に話せる先生で、私にとって最高な条件が揃った結果、D棟掃除は私が一番好きな掃除場所になっている。


 それにプラスして、掃除班の決め方は番号順なのでお姉ちゃんと同じ班だ。これは1年間統一なので、一年間絶対にお姉ちゃんと同じ掃除班という事だ。


 本来は同じ班でも他の班のメンバーがいるのでお姉ちゃんと話すことはできないのだが、D棟の場合、D棟のトイレ、廊下、階段と二人ずつ配置される。そして、それは番号順なのでお姉ちゃんと二人きりで掃除をすることが出来る。二人きりという事は、学校でお姉ちゃん成分を吸収する事が出来るという事だ。


「それじゃあトイレ掃除はカエデちゃん、フウちゃんで。」


 トイレ掃除に決まる。

 トイレは、中に入りすぐ壁があり、左側が男子用、右側が女子用になっている。個室は2つしかない、狭いトイレだ。

 トイレ掃除という所だけ聞いたら最悪だが、お姉ちゃんと一緒なので全然嫌じゃない。





 そして、私はお姉ちゃんに抱き着いた。


「…カエデ、そんなに密着されると掃除出来ないよ」

「大丈夫。トイレ掃除したかしてないかなんて見てわかる訳ないから。」

「…それでもやんなきゃでしょ?」

「D棟のトイレなんて誰も使わないし。そんな事よりお姉ちゃん成分を吸収する方が大事。」


 学校ではいつも不足しているお姉ちゃん成分を一気に吸収する。小さい頃からずっとお姉ちゃんと一緒だったので、定期的にお姉ちゃんとくっつかないと落ち着かない。


「まぁ、私もカエデ成分吸収出来るから全然良いんだけどね。」


 私がお姉ちゃん成分を必要としているという事は、お姉ちゃんも妹成分を必要しているという事だ。特に、お姉ちゃんは我慢が出来ない性格なので、尚更だ。


「お姉ちゃん、もっと密着して。」

「喜んで」


 お姉ちゃんの手が私の背中に回される。お姉ちゃんの方が背は高いが、そこまで差は無いので気持ちよくハグが出来る。


「これで満足?カエデ」

「もう少し…」


 掃除をサボり、お姉ちゃんとハグをするのはD棟のトイレ掃除でしか出来ないことなので、これくらいは神も許してくれるだろう、


…と、私は思っていた。


 が、どんな理由があろうとサボりはサボり。

天罰が下るのも時間の問題だったのかも知れない。


「カエデさん、フウさん、そろそろ掃除は終わりにして点呼しま………」

「「えっ」」


 先生がいる。そして、私たちは掃除もせずにハグをしている。それもギュッと。

D棟のトイレ掃除をしてない事で怒られる事は無いと思うが、それよりも、何よりも、この状況を見られたのは普通に考えてヤバイ。


 私とお姉ちゃんは双子の割にあまり仲が良くない。周りの人にはそう思われているはずで…いや、そんな事関係なくこの状況はヤバイ。


 頼りになるはずのお姉ちゃんは機能が停止したかのように固まっている。


「あら、あなた達…」

「え、いや…その…これはその…」

「仲が良いのね。それならそうと言ってくれれば良かったのに〜」


 先生が笑いながら言う。

 いや、普通掃除中に掃除をサボってハグしてたら他に言うことがありそうなのだが…


「…もしかして、今後2人きりになれる時があったら、カエデちゃんとフウちゃんにした方がいいのかな?」


 先生が茶化すように言う。


「い、いや、別にそうい」

「このことは、皆には言わないようにして下さい!」


 私の言葉を遮るようにお姉ちゃんが言う。


取り乱したように言うお姉ちゃんは珍しくて少し驚いたが、私が言うのならまだしもお姉ちゃんが皆に言わないようにして欲しいと言うのはおかしい。


 お姉ちゃんは学校でも私と話したいし仲良くしたいと駄々を捏ねていたはずだ。


 いや、今はそんなことを考えている場合では無い。


「そんな事言われなくても言いふらすようなことはしないわよ。」

「先生…ありがとうございます。」

「担任の先生には…言っちゃうかもだけど。」

「…」


 担任の佐藤先生は、カエデさんとフウさんが仲良くしてた!と言われても特に私たちに悪影響があるとは思えないので、佐藤先生ならギリセーフ…いや、普通にアウトだ。



 そして、点呼を取り、色々あった掃除の時間が終わった。

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