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高校へはいつも雅俊と一緒に行っていた。
帰りも同じだ。
親同士も仲のいい幼なじみだ。
最近の二人の話題はただ一つ。
女の子のことだ。
二人とも彼女いない歴イコール年齢で、色気づいて彼女が欲しいと毎日のように言っていた。
飽きることなく。
それ以外の話題はなかった。
そんなある学校帰りのこと、いつも通る細い近道にある倉庫のような建物のシャッターが腰近くの高さまで開いていたのだ。
この細道は人通りが少ない。
というより高校へ通い始めてからこの道で誰かに出くわしたことが一度もないのだが、そんなところに民家より少し大きいくらいの倉庫があるのだ。
倉庫には見える範囲ではシャッターとドアと小さな窓しかない。
その窓の明かりがついていたこともあるので誰かが使っているようなのだが、会社のものらしき倉庫には会社名はおろか、なにも文字は書かれていなかった。
シャッターの前に細道と同じくらいの幅がある荷車がいつも置いてあるのだが、それも今日はない。
俺は雅俊と顔を見合わせた。
そしてそのままシャッターをくぐった。
中にはマネキンがあった。
胸のふくらみその他から見て女性のマネキンだ。
数えてみるとその数はちょうど二十体。
なんのために二十体ものマネキンがそんなところにあるのかはわからないが、とにかくあるのだ。
俺と雅俊は無言でマネキンを眺めていたが、やがて俺は外に出た。
見ていても当然のことながら何の変化もないし、なにもわからないからだ。
しかし雅俊は、とてつもなく真剣な目でマネキンの顔を見ていた。
「おい、いつまで見てるんだ。帰るぞ」
しかし雅俊は微動だにしなかった。
そのままマネキンの顔を凝視している。
目が血走っていた。
俺はもう一度声をかけた。
でも雅俊は全く動かない。
「おい、いい加減にしろよ」
俺は中に入り、雅俊の手を引っ張った。
するとようやく雅俊が動いた。
しぶしぶといった感じで。
そのまま二人して家に帰った。