表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

月零 -getsu-rei-

作者: みふぎゅ

さようなら

目を開けてひとつ吐く


朔月あざやかな紺青に

ひとこと分の温度が溶けただけ


なにも変わらない今に

知らずもうひとつ息を吐く




左様なら

耳を閉じて指を食む


止め方を忘れた悪癖に

爪紅が今日を彩る


枝葉からにじりよる熱さに

詰めた想いをまた溢した





赤い糸を引く


ゆるく伸びる先はただ

引力に従い落ちるだけ


しとり

地に結ぶころには

指先が乾いて縁が綻ぶ



ひとりよがりの縁結び


新月だけが見届け泣いた







さようなら

頭を上げてひとり吐く


高く広がる紺青に

ひとこと分の穴を穿つ


ぽかりとあいた丸い闇に

仕方がないなと霞が覆う




左様なら

掌を握りやり過ごす


疎らに渇いた爪紅が

一層まだらに剥がれ落ちる


つま先から這い寄る冷たさに

背中を縮めて吐息を詰めた




透明な糸を引く


ぬるく伝う先はただ

引力に従い落ちるだけ


渦巻く激しさから押し出されて

ぽつりぽつり不本意に


紡ぐに足らぬ重い糸


新月さえも見逃し泣いた







歩くことさえ

ままならない宵闇に

無粋な街灯が

目をくらませる


開いた瞳で何も見えないの

閉じた瞼で何も見えないの


へたりこんだ地面の手触りが

ひどくやさしくて

もう少しだけこのままで


誰にともなく赦しを乞う



細く開けたばかりの上弦の気配が

微かにゆるんだ口元に似ていた





いつの間にか

乾いた風が朧を払い空をひろげた


白み始めた今日に今度こそ と

別れを告げた


季節の変わり目に翻弄されがちリターンズ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ