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Vtuberの陰キャとギャルが百合する話  作者: 二葉ベス
第3章:聖夜のように綺羅びやかな毎日
31/75

第29話:赤の配信。語らないタイプのオタクだよね

「おきてーーーーー!!! 朝だよーーーー!!! バーチャル目覚ましギャルの朝田世オキテだよ!」


:夜だよ

:夜(定期)

:朝だね(夜)

:起きたーーーーーーー!

:朝だよ(夜だよ)


 いつものように配信を始める。ゲリラ配信だというのに、たくさんのオタクくんたちがそれぞれ挨拶してくれている。……いや、挨拶か、これ。毎回思うけど、やっぱり夜用の挨拶も考えた方がいいのかな。


「オタクくんたち、ゲリラだってのに来てくれてありがとね!」


:オタクくんは暇だから

:推しの配信であれば駆けつける


「めっちゃ嬉しいわー! んじゃ、今日はゲームすっから! えぺっぺね!」


:オキテちゃんのゲーム配信かぁ……

:割とレア

:オキテちゃん、ゲームできたんスカ?


 失礼な。あたしだって色んなゲームを触ってきたことあるし、えぺっぺだってやったことあるもん。めっちゃ銃撃てる。かっけー、って!


:ダメかもしれない

:初ゲーム配信のダークブラッドで割とお察し

:あれは、いいゲームでしたね……

:魔女の館とかも結構悲惨だったな


「うるさいぞ、オタクくん! あたしだってやりゃぁできるってことを、教えてやるよ!」


 そんな感じでゲームを始め、操作の確認がてらチュートリアルを進める。

 お、意外と操作感覚えてるもんだ。結構スムーズに銃を撃ててる! かっこよあたし!


:なんかぎこちない

:コントローラー?


「いや、キーマウ」


:そっちかー

:移動がぎこちないと、すぐに死ぬのでは?

:動きがカクカクしてる


 んー、なんか有名えぺっぺ配信者と比べたら! かなり。確かに! ぎこちないかもしれない。

 でもこれは許容の範囲内っしょ。ふれーむれーと? とかも前に音瑠香ちゃんに聞いたら大丈夫だって言ってたし。何故かえぺっぺのことだけは詳しかったからなぁ、あの子。

 さてまぁ、チュートリアルも終わり、早速カジュアル戦のマッチングへと入る。人口がかなりいるのか、すぐに始まるとそこは飛行機の上。これからあたしたちは3人1組のチームを組んで、地上に降りた部隊を全員殲滅すれば勝ち、というルールだ。

 まずは地上に降りてから、えーっと武器を見つけなきゃなんだよね。えーっと……。


:動きがおばあちゃん

:おばあちゃんでもよく動く

:指示厨湧きそう


「あ、あれか! えーっと、弾は……」


 その時だ。いきなり鳴り響く銃声。ヘッドホンから劈く火薬の音があたしを驚かせた。


「ひうっ!!! なになになになに?!」


 動揺してマウス操作を音がした方向へと定める。銃口と、目と目が合った。


:あっ

:あっ(察し


 あれはアサルトライフルと呼ばれる連射銃だろうか。連続で火花が弾き出されると、銃弾がバラけながらもあたしを一点に狙いながら襲いかかってくる。


「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!」


 背を向けた瞬間、弾が命中。シールド耐久値とHPがガリガリ削られていく。

 逃げなきゃ……。その瞬間、この場にいるのはサバンナの草食動物と狩人だけだった。好機と思った相手は、そのまま接近してきてアサルトライフルを乱射。あたしに収束していく弾丸を逃れることができず、そのまま……。


「死んだーーーー!!!」


:草

:草

:早かったじゃないか……

:RTA走者

:草


「いや、あれは運が悪いって!! あははは!!」


 なんだ。意外とちゃんと配信できているじゃないか。この調子なら1時間ぐらいゲームして、そのままちょっと雑談してから配信終了すれば、あたしの気分だって丸く収まってくれるかもしれない。

 現に今は別のことに集中してるから胸の奥のもやもやなんて全然ないし! よかったよかった。これで明日もちゃんと青原と会話できそうだ。


「よーし、次行こう次!」


:負けても気分良く続けられるの偉い

:弱いけどつよいギャル


「おーい、弱いとかいうなし!」


 でも、もうちょっとゲームの強い配信者、というかギャルになりたい。

 アニメばっかでゲームとかからっきしだったからなぁ。……ってあれ、あたしがアニメ好きな話ってしたことあったっけな?

 ちょいと聞いてみたところ、返答は知らないばかりだった。


「あー、そっか。あんまり話してなかったね」


:どんなアニメが好きなの

:ギャルが好きなアニメ、気になります!

:サブカルに強いギャル


「どんな、っていうか。大体バトルものかなー。あ、あとなろう系も結構好きよ! あの何とも言えない感じが!」


:何とも言えない感じ

:分かってしまうのが悔しい

:例えば?


「勇者一行だったけど、身内の嫉妬からパーティを追放されちゃって。そこからスローライフ始めたら、昔好きだった女の子と出会う、って話があってね? 名前は、えーっと……スロ勇だったかな」


:あれ好き

:なろうの中でも結構好き

:マイナーだな

:知らんやつや。今度見てみよ


「あとは破滅する悪役令嬢に転生しちゃったから、なんやかんやするけど結果としてみんなから人たらしと呼ばれる事になったやつとか」


:急にメジャーなのになったな

:今度映画やるやつか

:フラグ折ろうとしたら、元々なかったフラグが立ったやつね


 みんなとこうやってアニメの話できるとは思ってなかったなー。

 あたしはあたしが好きなアニメの話してるけど、それについてみんな詳しかったり、逆に知らないから興味出てきた、みたいなオタクくんもいるしなんだか新鮮だ。


「はぁ、音瑠香ちゃんともこういう話したいなぁ……」


:おっ!

:出たな

:呟いてくぅ!

:百合営業始まったな

:音瑠香ちゃんとアニメ雑談しろ


「え、いま音瑠香ちゃんの話した、あたし?!」


 無意識レベルで呟くとか、どんだけ音瑠香ちゃんのこと好きなんだよあたし。でも音瑠香ちゃん、もとい青原とそういう話ってしたことなかったかも。あの子、実際アニメは見るんだろうか。学校で話しててもアニメ関連の話を一切しないし。普通にオタク文化を知らないギャルだと思ってるのかね、あいつは。


「まぁー、したいかしたくないか、って言われたらしたいけどさ。音瑠香ちゃん、配信ではあんまり喋らないし」


:それ

:アーカイブ追ってるけど、マジで喋らなくて草

:落ち着くけど、虚無


「ほんと。もっと自分のこと言ってほしいよ……」


 「わたし、ちゃんと可愛くなれましたか?」とか「どうですか、赤城さん?」とか。

 そういう風に尋ねられたらちゃんとうん、かわいいよ、って言えるのに。結局照れてるだけで、何も言ってこないし。

 承認欲求がどうこう、とか言うならまず自分から発信しろっつーの。


:オタクちゃんだからな……

:オタクには2種類のオタクがいる。自分語りたがりと、めちゃくちゃ寡黙なやつ


「そうそれ! 音瑠香ちゃん、自分のこともっと語ってほしいわー」


 なんか方法がないものか。自発的に語らせる方法。うーむ。


「……って! もう時間じゃん!」


:うそやん

:え、終わっちゃうの

:いかないで


「ムリー! 明日も学校だし! じゃ、みんないってらっしゃーい!」


:いってらっしゃい(オフトゥン

:ベッドにGO!

:おつー!

:お疲れ様ですー

:お疲れさまでした


 配信を切ってから、あたしは一通りの片付けをして、パソコンの電源を切った。

 それから落ち着いて、ベッドに沈む。あとでお風呂とか明日の準備とかしなきゃなー、ということを考えながら、ふっとさっきまで忘れていたことを思い出してしまう。


「はぁ、今ごろにか先生と一緒かー」


 配信をして多少薄まったとは言えども、やっぱり引っかかってしまう。

 二人っきりで何を話しているんだろう、とか。やっぱりあたしのことを尋ねていたりするんだろうか、って。

 あー、やめやめ! こんなの考えてたら頭がどうにかなっちゃう!

 よし! さっさと準備準備!

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